【声明】
 

世田谷国公法弾圧事件の不当判決に抗議する

 

1 東京地方裁判所刑事第11部(小池勝雅裁判長)は、2008年9月19日、厚生労働省職員(元)の宇治橋眞一さんに対する世田谷国公法弾圧事件(国家公務員の政治的行為禁止)について、罰金10万円とする求刑どおりの有罪判決を言渡した。日本国民救援会は、この不当判決に厳しく抗議する。
2 この事件は、2005年9月、宇治橋さんが世田谷区内警察官舎の集合ポストに「しんぶん赤旗号外」を投函していたことをとらえ、「住居侵入罪」にあたるとして逮捕・送検し、宇治橋さんが国家公務員であることがわかると「国家公務員法違反」で追送検した後、逮捕理由とした「住居侵入罪」を不起訴とし「国家公務員法違反」で起訴したという異常な捜査の展開を示した事件である。
3 宇治橋さんのビラ配布行為は、場所・時間を含め、その職務とはまったく関連なく行われており、また、その態様も、1階の集合ポストへの単純な投函であって、住居の平穏や住人のプライバシーを侵害することはもちろん、そのおそれすらまったくない行為であった。このような行為は、主権者国民の政治的表現行為として憲法21条・国際自由権規約19条等によって厚く保障されているものであり、かつ、行政の中立的運営やそれに対する国民の信頼を害する事情などはいっさい存在しない。
4 そもそも、国家公務員の政治的行為禁止規定(国公法第102条1項、110条1項、19号、人事院規則14−7)は、占領下にアメリカ軍の命令により、まともな国会審議もなされないままに改悪された結果、刑罰をもって包括的かつ一律に禁止したものであった。爾来半世紀を経た今日では、人事院による抑制的な運用に止まらない「死に体」法制となっていたのである。また、最高裁大法廷が1974年にこれを合憲とした判決(猿払判決多数意見)は、「公務内容の政治的中立性」と「公務員個人の政治的中立性」を恣意的に同一視することによって合憲の根拠としたものであったが、この粗雑で偏向した暴論は判決直後から厳しい批判に曝されてきた。それは、当時から、一般職公務員の政治的行為を萎縮させるとともに、高級官僚が政権党から選挙に出馬した際に、「職務と密接に関連する」態様で「官庁ぐるみ選挙」を展開していた事実を免罪する役割も果たしたからである。
5 東京地裁判決は、「本件ビラ配布行為は、…強い違法性を有する」などと傲慢不遜な指摘をして見せながら、事件の客観的事実と、法に対する多様な批判的論点の検討に際しては、「下級審裁判所である当裁判所としては、公平性、法秩序の安定性等の観点からも、同判決(猿払判決)を尊重することが、その採るべき基本的な立場である」とした。この「基本的な立場」ほど、憲法や国際人権法で保障された表現の自由の意味や、これらに依拠した今日における国内外の基本的人権尊重意識の昂進を理解せず、苔むした判例を単純に祖述するだけの無気力・怠惰性を白日の下に曝すものはない。
6 結局、判決は、今日破綻しつつ暴走する戦争国家・構造改革路線に追従し、言論・表現の自由に対する政治的刑事弾圧の頻発を無批判に受容して、本件の本質・狙いである日本共産党への弾圧と「もの言わぬ公務員」づくりに加担するものであり、絶対に容認できない。
  創立以来80年にわたって人権・民主主義擁護のために活動してきた日本国民救援会は、判決を厳しく糾弾するとともに、その破棄を求めて引き続き本件の真実と国公法・人事院規則の違憲・違法性を広く国民世論に訴え、大衆的裁判闘争を展開する決意を表明するものである。

 
2008年9月26日
 
日本国民救援会中央常任委員会