【会長声明】
 

横浜事件の再審請求の上告棄却決定に強く抗議する

 

 3月14日、最高裁第二小法廷(今井功裁判長)は、先に横浜地裁及び東京高裁が横浜事件の再審裁判で宣告した免訴判決に対する上告について、「有罪判決が確定した後に大赦を受けるなどした場合は免訴とすべきで、免訴判決に対しては上訴できない」と、元被告側の上告を棄却した。この不当な棄却決定により、有罪か無罪かを判断しないまま裁判を打ち切る「免訴」とした1、2審判決が確定した。
横浜事件は、侵略戦争が敗北する直前に、悪名高い特高警察が「共産主義運動の再建」なる架空の事件をでっち上げて、60名もの無辜の人びとを逮捕し拷問を加え、うち4名が虐殺されたという残虐な権力犯罪である。
 しかも、犠牲者らに対して言渡された有罪判決は、1945年8月の侵略戦争が敗北した後であって、特高警察が言語に絶する拷問によって作り上げた「自白」調書をもとにした架空の事実をあたかも真実であるかのごとく認定したものである。さらに重大なことに、事件に関係する全ての訴訟記録を、裁判所が焼却したことである。すなわち、絶対にあってはならない証拠隠滅を、裁判所が行ったのである。
元被告側の再審請求を認めた東京高裁は、拷問による虚偽自白を認定し、「無罪を言い渡すべき新証拠がある」と指摘していました。再審裁判は、これらの事実を解明し、請求人らに無罪を宣告するのが当然であった。
 しかるに横浜地裁は、こともあろうに、「無罪判決を言渡すべきとの弁護人らの主張は相当の重みをもつことは否定できない」としながら免訴を宣告して権力犯罪に蓋を被せ、東京高裁、最高裁がこの不当な判決を支持したのである。
最高裁第二小法廷の上告棄却決定は、正義を守るべき最後の砦であるべき最高裁判所もまた、本事件の真実を明らかにして権力犯罪の責任を明確にすべき責務を放棄したものである。
 日本国民救援会は、治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟と連帯して、治安維持法のもとで逮捕・投獄されて残虐な拷問を受け、思想信条・生命身体の自由を侵害された被害者に謝罪し、救済と賠償、そして名誉を回復することを政府に対して強く求める。
 現在、戦争をする国への動きが加速化しているなかで、治安維持法の現代版といわれる共謀罪の成立が狙われ、憲法改悪に反対するビラ配布など国民の言論・表現活動への弾圧・抑圧が強められている。同時に、鹿児島・志布志事件や富山・氷見事件、福岡・引野口事件など、特高警察の再来を思わせるような非人道的な冤罪事件がでっち上げられている今日の状況を見るとき、この横浜事件について示された裁判所の一連の態度は、極めて遺憾というほかない。
日本国民救援会は、二度と横浜事件のような弾圧事件がおこされないように、憲法改悪に反対し、言論・表現の自由を守るため奮闘することを表明する。

 
2008年3月15日
 
日本国民救援会中央本部
                               会長 山田 善二郎