人間の尊厳」をまもり、当面、死刑の執行停止を
―死刑制度に対する見解―(1994年2月6日)

日本国民救援会

 一 日本国民救援会は戦前、創立直後から、治安維持法の下、天皇制警察による野蛮極まる弾圧に抗し、弾圧犠牲者救援に奔走するとともに、拷問など残虐刑罰廃止を掲げ運動しました。
 戦後も、権力による多くの謀略事件とたたかい、特に5名が死刑を言い渡された松川事件では「無実の人間を殺すな」という広範な大衆的裁判闘争の力で無罪の判決を勝ち取りました。また、八海事件をはじめとする数多くの死刑えん罪事件に取り組み、一度死刑判決が確定した後の無罪を勝ち取った免田、財田川、松山、島田の再審四事件は、世界的にも例をみません。
 しかし一方で、日本国民救援会が支援をしていた三鷹事件の竹内景助さん、帝銀事件の平沢貞通さん、牟礼事件の佐藤誠さんなど、死刑囚が無実を叫びながら無念の獄死を遂げました。また、藤本事件の藤本松夫さんに至っては、再審請求中に突然死刑を執行され殺された苦い経験をもっています。このほか、無実の罪で処刑された例も少なくありません。
 二 日本国憲法は国民の生命、自由を保障し、第36条で残虐な刑罰を禁止しています。死刑は国家が一定の手続きにもとづき、計画的に報復的に行う冷酷かつ人為的に作られる死です。人間の生命を、国家の名において剥奪することは許されません。
 人間の行う裁判制度に絶対的に誤りがないということはいえません。誤判による死刑はその悲惨さとともに、他の刑罰とちがい回復不可能な質的に違う刑罰です。加えて私たちは、誤判だけでなく、松川事件のように権力によって意図的に死刑を言い渡された恐怖も身をもって体験しています。
 三 死刑存置論には死刑の犯罪抑止力と被害者の感情などが、その主な理由としてあげられています。しかし、死刑を存置することによる犯罪抑止力の効果については、死刑廃止国で凶悪犯罪が増えたというデータはなく、科学的にも立証されていません。応報感情は歴史的にも変化してきています。近代の刑罰制度は、応報刑から教育刑、身体刑から自由刑へと大きく変わってきています。
 四 世界的には、市民的政治的権利に関する国際規約や死刑廃止条約などで死刑を廃止する方向が打ち出されています。現在、世界の半数近い国で死刑が実質的に廃止され、先進国といわれている国で死刑制度が残っているのは、アメリカ(州によっては廃止しているところもある)と日本だけです。国連規約人権委員会においても、日本の人権状況が審議され、日本政府に対して「死刑廃止に向けて努力すべきである」との勧告を出しています。
 日本国民救援会は以上のような経過をふまえ、人間の尊厳の一番の源である「生命」を尊重する立場から、当面、死刑の執行を停止し、死刑廃止条約を批准し、死刑は廃止すべきものと考えます。
もどる