2月6日、柳澤伯夫厚生労働大臣は、閣議後の記者会見において、「若い人が結婚したい、二人以上子どもを持ちたい」というのは、「極めて健全」と語った。去る1月27日、同大臣が島根県松江市において行った講演で少子化問題にふれた際、「15から50歳の女性の数は決まっている。産む機械、装置の数は決まっているから、あとは一人頭で頑張って貰うしかない」などと述べた発言に対して、厳しい批判の声が沸き起こっている最中である。これは、女性を「生む機会」と発言したことが単なる失言でなく、本音を語ったことを示す重大な発言であり看過できない。
この一連の発言は、人権とりわけ女性の人格と尊厳を根底から否定するだけでなく、今日、わが国も批准した差別撤廃条約にも採り入れられている「リプロダクツヘルス・ライツ(産むか産まないか等の自由な選択権、そのための情報と手段を得る権利)」を平然と侵し、この権利の実効性をはかるために内閣がすすめている男女共同参画等の施策にも反するものである。さらに、憲法は、国民の幸福追求権(13条)、家族関係における個人の尊厳と両性の平等(24条)、生存権保障と国民生活の社会的進歩向上に努める国の義務(25条)を規定しているところ、柳澤発言は、これらをことごとく踏みにじっている。
とくに重大なことは、このような発言が、「社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進並びに労働条件その他の労働者の働く環境の整備及び職業の確保を図ることを任務とする」(厚生労働省設置法第3条)厚生労働省の最高の責務にある大臣が行ったということにある。柳澤氏に厚生労働大臣の資格はない。加えて、憲法99条は国会議員等に対して憲法を尊重し擁護する義務を課しており、柳澤氏には国会議員にとどまる資格もないといわなければならない。思想・信条、党派を超えた広範な国民が、安倍晋三首相に対して柳澤厚生労働相の罷免を、柳澤厚生労働相本人には辞任を要求していることは、当然至極である。
しかるに安倍首相は「厳重注意」でこの問題を済ませようとし、柳澤氏は単なる謝罪で国民の非難をかわそうとしている。この態度は、「美しい国」を標榜する安倍首相が施政方針演説で触れた、政治家たる者が「襟を正す」のではなく、露見した内部の醜いものを隠すために「襟をつくろう」ための仕草以外の何ものでもない。
日本国民救援会は、創立以来78年余にわたって多くの弾圧事件やえん罪事件の犠牲者救援運動をはじめ、男女差別の是正を求めてたたかう女性労働者の裁判闘争を支援してきた団体である。日本国民救援会は、去る2月3・4日に開催した第50回中央委員会において、国民の人権擁護を任務としている本会にとって、柳澤大臣のこの暴言を見逃すことはできず、安倍首相には柳澤大臣の速やかな罷免を、また柳澤厚生労働相に対しては、直ちに辞任して国民の前に謝罪の意を表するべく強く要求することを、全員の総意で決定した。
安倍首相及び柳澤厚生労働大臣は、国民の厳しい批判を真摯に受け入れて、速やかに罷免・辞任を実行に移すよう強く要求するものである。
以上
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