名張毒ぶどう酒事件の再審の
取消し不当決定にあたっての抗議声明

 本日(12月26日)、名古屋高等裁判所刑事2部(門野博裁判長)は、名張毒ぶどう酒事件第7次再審請求異議審について、奥西勝さんの死刑執行停止と再審請求を認めた、昨年4月5日に名古屋高裁刑事1部が行なった決定を取り消し、奥西勝さんの再審請求を棄却する不当決定を行いました。日本国民救援会は、今回の不当決定に満身の怒りを込めて断固抗議するものです。

 第7次請求審では、犯行に使われたぶどう酒の瓶に装着されていたと認定された四つ足替栓の足の極端な折れ曲がりは人間の歯では到底不可能であることや、ぶどう酒に混入されていた毒物は確定判決が認定した農薬ニッカリンTとは異なること、さらにはぶどう酒瓶は封緘紙を破らずに開栓可能であり、犯行機会の時間帯に関する原判決の認定も崩壊したことなどが明らかにされました。また、検察官による異議申立によって、名古屋高裁刑事2部でたたかわれてきた異議審の事実調べでも、毒物鑑定を行った二人の鑑定人の証人尋問が再度行われ、科学的な分析によって毒物が異なることがいっそう明らかにされました。
 こうした裁判で明らかにされた客観的証拠と事実を真摯に判断するならば、奥西さんを犯人と認定した確定判決には「合理的な疑い」が生じるばかりか、奥西さんの無実が認められて当然のはずです。しかし、今回の決定は、弁護団が提出した科学的な新証拠を、何ら合理的な理由も示さず「可能性」や裁判官の恣意的な判断だけで退け、奥西さんの無実の叫びに背を向けた極めて不当な決定と言わざるを得ません。これは、「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則は再審裁判にも適用されるとした最高裁の白鳥・財田川決定の判断方法を意識的に無視し、無辜の救済という再審制度を真っ向から否定する不当なものです。
 
奥西勝さんは、間もなく満81歳を迎えます。今回の不当決定によって死刑執行の停止も取り消され、ふたたび死刑の恐怖にさらされながら最高裁に特別抗告を行い、たたかうことを余儀なくされました。一旦は、再審開始が認められ雪冤を果たし社会に出られることに大きな希望を抱いた奥西さんの心中を察すると、門野博裁判長らの不当決定は人間の命をあまりにも軽視するもので絶対に許せません。

日本国民救援会は、45年間一貫して無実を訴え続けてきた奥西勝さんの救出のためにご支援を寄せられた全国の多くの皆さんに心から感謝申し上げるとともに、引き続き、最高裁での特別抗告審にむけて支援活動をいっそう強化し、再審開始・無罪を求めてたたかう決意を表明するものです。
全国のみなさん。これまで以上のあたたかなご支援、ご協力をよろしくお願いいたします。

                      
                               

 2006年12月26日

日本国民救援会