2021年5月15日号
2021年5月15日号
デジタル監視法案反対
宮城県本部が地元の国会議員に要請
宮城県本部の堤智子副会長と菅原秀俊事務局長は、４月２１日、地元選出の参議院議員４人の事務所を訪問し、「デジタル関連法案は徹底審議して、廃案に」と要請しました。桜井充議員（自民党）事務所では、秘書は、「法案の内容が議員に十分理解されていない。拙速に進めない方がよい」などと答えました。和田政宗議員（自民党）事務所でも秘書と対話。「法案はいろんな人の意見も聞いて、進めなくてはならない」などと語り、丁寧な対応。石垣のりこ議員（立憲民主党）事務所では秘書は、「デジタル法案の学習会を党内で４月中におこなう。講師は大学教授に依頼している。法案は数の力で決まる。通させないために議員を増やさないとならない」と強調していました。�盂�恵美子議員（自民党・比例代表）については、後援会の有力者と対話。病歴など個人情報が国に一元化される危険を話すと、理解を示しました。
堤副会長は、「いろんな人と対話でき面白かった。こちらから一方的に話すだけでなく、相手からの話を聞くことも大事です」との感想。
（県本部）
再審法改正をめざす市民の会 第６回ＷＥＢセミナー
日本・台湾・韓国の 再審法の現状と課題（下）
前号に続き、３月１３日に開かれた再審法改正をめざす市民の会第６回ＷＥＢセミナー（要約）を紹介します。報告は、日弁連人権擁護委員会再審法改正特別部会長の鴨志田祐美弁護士、龍谷大学犯罪学研究センター招聘研究員の李怡修さん、関西学院大学助教(当時･青山学院大学助教）の安部祥太さんです。
韓国に「白鳥決定」ない「過去事清算」と再審
安部 韓国は、第二次世界大戦後にアメリカの信託統治下で英米法の考え方を取り入れます。その後、日本の刑訴法が出来た時には、これを踏まえながら現行の刑訴法を１９５４年に制定しました。しかし、日本の再審規定の条文をそのままに焼き直したもので、全２０条だけです。実質的な文言は、日本とほとんど変わりません。
しかも、韓国には、日本の「白鳥決定」に相当する判例が存在しません。白鳥決定以前の日本のような状況下で、再審開始決定が出されることが難しい状況にあるわけです。そのような中、以下のような再審をめぐる動きがあります。
まず、「過去事清算」についてお話します。韓国は、１９８７年に民主化をしました。民主化以前の権威主義政権では、人権侵害や市民弾圧が行われました。この弾圧の時には、無令状拘束や拷問、拷問による自白に基づく処罰が行われました。そのため、民主化以前に制定された法律・制度の改廃を通じて民主化をより徹底させたり、あるいはそれを通じて権力を抑制し、さらに過去の人権侵害を救済したり、被害者の名誉回復、弾圧事件の真相解明などを行う一連の動きがあります｡これを｢過去事清算｣と呼びます｡｢過去事清算」は、現在も韓国社会における最重要課題の一つと理解されています。
韓国では、刑訴法上の再審について議論が不足していることと、「過去事清算」を早く行わなければいけないということから、特別法によって事件単位で救済する方法をとってきました。そして、このことが、現行の刑訴法上の再審の規定が不十分であることを認識させる一つの契機になりました。
次に、再審をめぐる近時の動向を３点話します。
改革のために独立した機関
２０１７年１２月に、今の文在寅大統領が、法務部（日本の法務省にあたる）内に、検察改革のために「検察過去事委員会」を組織しました。また、実際に調査をする下部組織として、「大検察庁真相調査団」（調査団）を設置しました。特徴は外部有識者が委員を務め、調査の実働部隊も検察官だけでなく弁護士、研究者が入っていることが重要です。この調査団が調査した事件の１つに、薬村五叉路事件があります。殺人事件の目撃者の少年が被告人とされ有罪となった事件です。その後、捜査機関は、真犯人らしき者の情報を得ます。真犯人とされたＸさんは自白をしました。しかし、十分な捜査を行わずに、この少年は受刑生活を送ります。少年は、出所後、Ｘさんの自白を新証拠として再審請求し、再審開始決定が出ました。ところが、公訴時効との関係で、検察官が時間を引き延ばそうと抗告をしました。調査団は、検察官の抗告を「機械的」であると評し、その過程をしっかりと検証すべきであると勧告しました。
２つ目に、検察官抗告に関する国家人権委員会決定です。韓国には、国内の独立した人権機関として、国家人権委員会が置かれています｡この機関は､国際人権水準や憲法的価値の実現をめざす機関です。国家人権委員会は人権侵害があると認めると、関係各機関に是正勧告を出します。この勧告に法的拘束力はありません。しかし、多くの機関が勧告を履行しています。
検察官抗告は慎重にと勧告
１８年国家人権委員会決定は、法務部長官（日本の法務大臣にあたる)に対し､�仝〇ヾ厩街陲魏�善する刑訴法改正案を作成すべきこと、��運用上も検察官抗告は慎重に行うべきことを勧告しました。
また、大法院長（日本の最高裁長官にあたる）に対しても、再審事件の処理期限を定めたり、再審専門部を設置するなどの改善策を検討し、抗告審を迅速に進行すべきであると意見を示しました。
これを受け、法務部や検察は実際に抗告を控えることを決め、明白な誤りがない限り、再審開始決定に対する抗告はしないようにマニュアルを作ったり、職権で再審開始決定を行うようになるなどの変化があります。
３つ目に、検察官抗告制限に向けた法改正の動きについてお話します。イチュンジェ連続殺人事件（女性１０人が殺害された事件）の第８事件で無期懲役となった人が、別件で服役していた人の自白を元に再審請求をおこない、検察官も再審請求を支持し、再審開始決定に結実しました。
この事件をきっかけに、国会議員や弁護士を中心に再審規定改正案が作成されました。具体的には、�〆匿崖�始決定に対する検察官抗告の制限、�∈枷十蠅凌獲�期間設定などであり、１９年末に国会に上程されました。直後のコロナ対応の混乱や会期満了などで、法案は自動廃案になりました｡しかし､内容は与党の支持が厚いので、再発議の可能性は高いと言われています。
権力は間違えることがあると共有される
鴨志田 台湾で法改正がされた際、世論の影響はありましたか。
李 世論、マスコミの影響はすごく大きいです。１３年に、台湾はまだ軍事審判法というのがあり、韓国と同じで、男は軍隊に行くんです、軍隊でいじめられた事件があり、２５万人も集まるデモがおこなわれて、半年以内に軍事審判法の改正がおこなわれました。
韓国もそうかもしれませんが台湾では、何かあればすぐにデモをします。独裁政権があった歴史と関係すると思いますが、何かあれば反応をすぐにしないと政府にやられてしまうという恐怖心があるかもしれないです。
鴨志田 韓国には白鳥決定にあたる判例がない中で、検察批判を契機として、段々と法制度の改正につながる道筋ができつつあるのが現状のようですが。この推進力は何でしょうか。
人権保障徹底こそ先進国だ
安部 おそらく、過去を見る視点と未来を見る視点がしっかりと持たれているからだと思います。権力は間違えることがある、権力が濫用されることがあるということが、共有されている。ですから、公権力が行うこと全体に対して、市民にシビアな視点が共有されていることが重要な点であろうと思います。
未来を見る視点で言うと、憲法的な価値や国際人権の保障が極めて重視されています。１９８７年に民主化を遂げた後、経済面や技術面などと同様に、人権保障を徹底してこそ先進国の仲間入りができるという認識が強く持たれたためです。
さらに、これはなかなか実証しにくいのですが、韓国人はとりあえずやってみようという精神にあふれていると言われます。韓国人の気質も相まって、改革を厭わない姿勢があります。
台湾と同様、韓国でもよくデモを見ます。朴槿恵政権の時は、それで政権が代わるわけです。市民の関心と熱意は、それぐらいパワーがあります。
鴨志田 検察についてですが、台湾と日本との違いはどこから来ていると思いますか。
李 私がよく言っているのは国民の圧力や、台湾イノセンス・プロジェクト（ＩＰ）の圧力､マスコミの報道､法律家だけでなく市民団体も一緒にがんばらないと、検察官はそんなにきれいなことをしゃべらないですよ。それでも１６年台湾の高等検察庁の中にも確定判決を検討する委員会を作ったのも、台湾ＩＰに負けない位、検察自らが冤罪かどうかを再確認するという考えを持っていると思います。
鴨志田 韓国では検察内部にも自分たちを正していこうという価値観が出てきているのでしょうか。
市民の批判が検察の姿正す
安部 基本的には外圧によるものと、上からの動きによるものです。再審手続との関係では、検察官が当事者として振る舞う事例はまま見られます。あるいは、再審開始決定に対する機械的抗告を行う側面もあります。その背景には、韓国の検察にも、やはり「検察は誤らない、誤ってはならない」という姿勢が強く見受けらます。
しかし、李さんのお話でも出てきたように、市民が公権力をしっかりチェックしている点がすごく大きい。検察が無謬の姿勢を貫けば、市民の批判が高まっていくということを、検察は把握しています。その中で、市民の信頼を得ようとして、少しずつ変わってきています。
ただ、基本的には外からの影響が大きな役割を果たしているのかなと思います。
李 台湾では市民団体のスローガンがすごく極端になるんですよ。例えば「大統領が殺人した」「検察官が殺人した」と。それで私が大統領や検察官だったら、無視できないだろうと思います。
民主主義の国家で政府がやっていることを明らかにしてくださいということは、市民の権利だと思います。
鴨志田 お二人のお話を伺って、日本の再審法を早急に変えていかなければという思いを強くしています。ありがとうございました。
岐阜・大垣警察市民監視国賠個人情報抹消請求事件
警察は実態を証言せよ １７日の弁論に向け団体署名
２０１４年に岐阜県大垣市での風力発電建設をめぐり、勉強会を開いた市民ら４人の個人情報を警察が収集、蓄積し、風力発電建設をすすめる企業に提供していた事件で４人が原告となり、監視等は違憲として国賠と個人情報の抹消を請求しています。
岐阜地裁での裁判で、警察は原告・弁護団の請求に対して、未だに認否さえ明らかにしない不当な訴訟活動に終始しています。提訴から４年が経過し、５月１７日には原告・弁護団が申請した警察から情報の提供を受けた企業側の証人尋問が、その後（日程未定）、警察の証人尋問が予定されています。
ところが警察は警察官の証人尋問について、尋問に応じるが「役職名と氏名を述べるのみ」という旨の回答をしています。万が一、裁判所の判断でこれがそのまま認められれば、裁判で問われている警察の違法行為の実態が明らかにされないばかりか、何のための証人尋問かといわざるをえない事態となります。
警官の十分な証人尋問の実現と、事件の全容を解明するために警察庁警備局長の証人採用を決定することが、いま緊急に求められています。
岐阜県本部と中央本部は岐阜地裁に充実した証人尋問の実現と証人採用を求める団体署名を緊急に全国に呼びかけています。
大阪・東住吉冤罪事件本田訴訟
最高裁に要請行動
東住吉冤罪事件の当事者青木惠子さんは再審無罪が確定した１６年１２月、国家賠償請求とともに、火災原因として認定された車両の製造物責任を明らかにするために本田技研工業株式会社に対し損害賠償請求訴訟を提訴しました。しかし大阪地裁・高裁はともに、除斥期間を適用し門前払いの判決。即座に上告しました。
４月２７日、青木さんと弁護団の主任である塩野隆史弁護士らは最高裁へ要請に赴き、青木さんは娘を無くした無念の想いを、塩野弁護士はこれまでの最高裁判例、そして前日のＢ型肝炎判決を引用し、本件への除斥期間適用は著しく正義に反すると強く訴えました。
（大阪府本部）
無罪求め３１人で要請
岡山・倉敷民商弾圧事件
４月２１日に倉敷民商弾圧事件禰屋裁判・禰屋町子さんの「無罪判決を求める」要請を、兵庫、広島、山口、岡山の各県から３１人が参加しておこないました。提出した個人署名は累計１５万７９５８人分。団体署名は７２７団体。
要請書は、禰屋町子さん、救援会山口県本部、同島根県本部、無罪を勝ち取る兵庫の会、岡山県商連から７通読み上げて提出しました。兵庫の会は「高裁は、検察に争点を整理した証拠資料の提出、わかりやすい立証を示唆しましたが、検察官が守らず、高裁判決から４年が経過するという異常な事態が続いており、起訴すべき事案ではないことが証明されている。税理士法違反でも、課税の適正を損なう『恐れがある』があるという仮定に基づいて罪に問われている。無実の人を犯罪者に仕立て上げ、民商の壊滅を狙った弾圧事件である。裁判所は、憲法の定める人権救済の本来の役目を発揮し、検察の姿勢を正し、公正な判断を要請する」と述べました。
要請後、裁判長との面会を求めたら、総務課長から「禰屋さんが面会することは手続き上可能である」との回答があり、同日進行協議で弁護団から「禰屋さんの同席」を求めたら、裁判長から「検討する」との回答がありました。要請終了後、３７人で地裁前宣伝行動を行いました。
（県本部）
代表世話人が訴え発表
倉敷民商弾圧事件全国連絡会は４月１５日、全国の支援団体に向けて、運動を強化し２０万署名を達成しようと代表世話人七氏連名の「訴え」を発表しました。
滋賀 えん罪撲滅びわこ一周キャラバン
３日間で１０市１町回る 再審法改正の必要性強調
滋賀県本部は４月１６日から１８日まで、えん罪撲滅と再審法改正を訴えるため「びわこ一周キャラバン」をおこない、１３市６町のうち１０市１町、１５カ所で街頭宣伝を展開し、５２人が参加しました。
キャラバン隊には救援会県本部中野善之助会長や川東繁治事務局長、日野町事件再審無罪を求める会の長谷川信夫事務局長らが３日間、対応する救援会支部の皆さんとともに駅頭やスーパー前、商店街でマイクを握り、通行人や買い物客に、日野町事件と湖東記念病院人工呼吸器事件の国家賠償請求裁判の支援を訴えました。同時に、えん罪救済において証拠の全面開示と検察の上訴禁止、再審のルールづくりがいかに切実であるかを強調しました。
１０支部中９支部が、雨のなか傘をさしながら横断幕を広げました。
（川東繁治）
名張事件第10次再審（最高裁）署名用紙
