2021年2月5日号
2021年2月5日号
岡山・倉敷民商弾圧事件
逮捕から７年、怒りの全国宣伝
１月２１日は、２０１４年に倉敷民商事務局員の禰屋町子さんが逮捕された日です。全国連絡会は、昨年の総会で、公安警察が不当な弾圧で禰屋さんを逮捕したことに怒りを表明する宣伝を全国でおこなおうと提起していました。あいにく新型コロナウイルスの感染拡大が続き、宣伝の中止を余儀なくされた地域もありますが、地元岡山をはじめ、いくつもの地域で元気に宣伝行動がおこなわれました。
北海道では、北海道の会がＪＲ札幌駅南口広場で、お昼の時間に１０人が参加し、ハンドマイクで宣伝。無罪を勝ち取る室蘭の会は、暴風注意報が出されているなか、横断幕を宣伝カーに張って、４人が参加し、市内２カ所で宣伝。ビラをポケットティッシュに入れる工夫もしておこない、好評でした。横断幕をみて寄ってきた女性が「弱いところにしわ寄せがくる今の政治が悪い」と声を寄せてくれました。
東京では、全国連絡会と東京の会のメンバー１２人が御茶ノ水駅頭で宣伝。横断幕をじっと見る人もいました。ビラを見て、署名をするために寄って来て、事件のことなど話し込んでいく人や、「この前もやっていましたね」と声を掛けていく人もいました。
神奈川では、伊勢佐木町商店街で、５人で横断幕のスタンディング、マイクでの訴えをしました。行き交う多くの人々から注目され、「署名はないのか」と男性から声を掛けられる場面もありました。平塚駅北口でも４人で宣伝。２２日には、武蔵小杉駅で宣伝。
兵庫では、兵庫の会が神戸大丸前で５団体１４人が参加し宣伝。「会」会長の松山秀樹弁護士らが「この事件は、ウソの供述で４２８日間も女性を勾留した、人権侵害の冤罪事件です。事件の本質は、憲法に基づく、納税者の自主申告権に対する攻撃であり、消費税増税や社会保障の改悪など『税金の集め方、使い方』を見直そうと運動している団体に対する不当な弾圧です。ご支援をお願いします」などと訴えました。
地元・岡山では、倉敷駅前で禰屋さんはもちろん、１７人が参加して宣伝。２０人の方が署名に応じてくれました。横断幕をじっと見ていた男性が署名に応じてくれたり、参加者７、８人でおこなったリレートークをずっと聞いていたご夫婦が、聞き終わると寄って来て、署名を集めると言って署名用紙を持って帰る場面もありました。
全国連絡会では禰屋さん無罪に向けて、引き続き３・１３重税反対全国行動でも全国で宣伝することにしています。
静岡・袴田事件弁護団インタビュー（後）
早期に再審決定を
前号につづき、袴田事件の西嶋勝彦弁護団長へのインタビューを掲載します。
２裁判官の意見
―最高裁の２人の裁判官が再審開始すべきとの意見を出しました。
西嶋 ２人の裁判官は、みそ漬け実験についてはもちろん、ＤＮＡ鑑定についてもそれなりの証拠価値を認めています。常識的な判断だと思います。
それに対して、本田鑑定の価値を否定している多数意見は、対象物が古くて劣化しているとか、常温で保管しているとか、関係者が触ったりしているとかいろいろ言っているけど、証拠物は発見されてすぐに検察官が証拠調べ請求し裁判所が採用して押収しているんです。劣化の原因は裁判所の保管中に生じたのです。その不利益を再審請求人の袴田さんに転嫁するのはけしからんことです｡｢疑わしきは被告人の利益に」の刑事裁判の鉄則にも反します。それから、実験の方法等についていろいろ言っていますが、誤解に基づくところがかなりあります。
―今後高裁では本田鑑定についてもきちっと主張されるということですか。
西嶋 そうです。新しい第三者によるＤＮＡ鑑定を求めるというのは時間の浪費だし、本田鑑定が正しいということを補強していく方が早道だし、それが正道です。資料が劣化していても、ＤＮＡは検出しているわけだから、本田鑑定のどこに多数意見が言うような弱点があるかどうかももう一度検討し直して、補強していくということです。
高裁決定の問題
―最高裁は再審を取り消した東京高裁決定を破棄しました。
西嶋 いかに東京高裁の決定が非常識だったかということです。証人尋問など、こちらが求めていることはやらないで、全然違う方法でやりました。裁判所が命じた嘱託事項を無視した検察官推薦の鑑定人の鑑定内容を取り上げる一方、弁護人の再現実験を退けるなど審理のあり方から言っておかしい。
高裁で取り調べ時の録音テープが出てきて、初めて違法な取り調べの実態がわかりました。警察は、散々拷問的な取り調べをしておきながら、公判ではうそばかりついていた実態が、二審になって初めて取り調べの録音テープが開示されて明らかになった。だから、弁護団は、捜査の違法を再審事由に加えたのです。それについて高裁は何と言ったか。二審の段階で加えるのはけしからん。そういう審理経過を無視した決定でもあったわけです。
―破棄された高裁決定には、本田教授の人格非難のようなことも。
西嶋 本田鑑定を排斥する理由の補強にしたんでしょうね。正面からの批判だけでは弱いから。本田さんは裁判所に言われるままに資料を提出しているにもかかわらず、していないとうそまでついているのです。
この事件は、がらくた証拠だけで検察が公判に突き進み、このままでは無罪判決が出かねないというところに検察は追い込まれた。最後の手段として５点の衣類が出てきた。あれがなければ、無罪でした。ほかにはまともな証拠がないのですから。誰が見ても事件の構造は明らかです。高裁決定の最大の弱点は､警察がそこ(証拠の捏造（ねつぞう））までするかという考えに陥っていることです。信じがたい、警察権力がそこまでしないだろうというわけです。開始決定すべしとする少数意見は、この点につき「誰がなぜそのような隠匿（いんとく）、工作をしたのかが究明されない以上」と捏造を示唆しています。
短期決戦で
―高裁の勝利へ支援団体への要望があれば。
西嶋 ２人の裁判官の反対意見の重みを大いに宣伝する必要があると思います。反対意見がまともなんだということ、そして、３人の多数意見というのは曖昧で、ないものねだりの意見であり、審理を長引かせるだけだということを広げる必要があると思います。２人の少数意見の線で審理を進めろということを声を大にして言うべきです。しかも袴田さん姉弟が高齢だということをあわせて。開始決定からもう６年。これからあと何年裁判に付き合わせるつもりなのかと。
それと、高裁での審理は短期決戦でしたいけれども、検事がいろんな画策をしてくる可能性があります。検察は、みそ漬け実験を始めているかもしれない。都合のいいようにね。それから、メイラード反応に関していろんな人の意見を集めて、科学論争に持ち込み、何が何だか分からないようにする可能性がある。
それと、証拠開示を最後まで主張したいと思う。まだいろんなものが隠されている。これまで証拠開示を求めてきたが、まだ不十分だから。初期捜査の段階でいろいろ集めた証拠で、まだ隠されている資料がたくさんあるはずです。袴田さん犯人説には障害になる証拠群です。
それから、もし東京高裁が最高裁の意向に従って差し戻しを受けて、再審開始決定を出すと、検事がまた特別抗告をする可能性がある。これをいかにさせないかという大きな運動をつくっていかないといけない。
今はひで子さんが請求人になっているけれど、ひで子さんに何かあったら裁判は終わっちゃうんですよ。時間がないのです。
―私たちも早期の再審開始・無罪へ支援を強めたいと思います。
岡山・倉敷民商弾圧事件
裁判所は公訴棄却を 署名１４万６千余に応えよ 岡山地裁
岡山地裁に対して１月２０日、２０１８年５月から６６回目（月２回）の要請を１２人で行いました。提出した署名の累計は、個人は１４万６，８３２、団体は７２４となりました。要請では、禰（ね）屋（や）町子さんをはじめ５人が要請書を読み上げて提出しました。裁判の現状は、高裁判決が求めた「分かりやすい資料の提出」を、高裁で原審に提出した証拠が破棄され、検察官が高裁判決に沿った資料を出さないために、三者協議で合意できない状況にあります。私たちは裁判長に対して、不当逮捕されて８年目、高裁判決から４年目、禰屋さんは刑事被告人として人格が否定されており、直ちに検察に「公訴の取り下げを勧めよ」、自ら「公訴棄却をするべき」と強く求めました。禰屋さんは「私を証拠隠滅の恐れありと４２８日間も勾留させておきながら、検察が未だに証拠が出せないということはどういうことか。どういう見識で訴訟指揮を執っておられるのか裁判長に面会を求める。」と迫りました。終了後、１８人で地裁前の交差点で支援の訴えをしました。（県本部）
第２４９次最高裁統一要請行動
「せん妄への理解を」 乳腺外科医師事件を要請
第２４９次最高裁統一要請が１月２１日におこなわれ､東京､千葉、神奈川から１０人が参加しました。袴田事件は昨年差し戻し決定が出たため、東京・乳腺外科医師冤罪事件のみの要請となりました。
署名は４７６７名分提出(累計23団体･4万9138名分)｡高裁判決後に結成された「乳腺外科医師の高裁判決に対する日本医師会・日本医学会の声明に賛同する医師の会」は５７５名になり、届いた上申書も出しました。
要請で参加者は、「夫が手術後、せん妄に。医師から『とても手がかかった』と言われた」「私は２４年間、看護師をしていた。麻酔から覚醒するときの状態を考慮すべき。普通の生理的状態じゃない。高裁判決は、国民の福利に反する」「袴田事件の決定のように、本件も『審理不尽の違法』と言うべきだ」「看護師は宣誓し、反対尋問も受けている。一審では証言が採用されているのに、二審でなぜ排斥されるのか」「全ての看護師の尊厳も傷つけている。絶対に許せない｣と訴えました｡
また、「外科医師を守る会」に届いている声として、「安心して医療がしたい」「コロナで疲弊している医療現場に、更なる負担をかけるのか」「一体いつまで、この不条理が続くのか」「誰も納得してない判決。医療界は怒っている。司法は医療界を敵に回すのか」という声が紹介されました。
外科医師の叔父である渡辺誠二さんは、「甥は、性犯罪をするような人間ではない」と訴えました。（東京都本部）
福岡・防衛大学校人権侵害事件
国の賠償責任が確定
防衛大学校人権侵害事件は国が上告を断念したため、福岡高裁の勝訴判決が確定しました。
事件は防衛大学校で上級生の｢指導｣の名による人格権を否定する暴行やいじめにより退学に追い込まれたＡさんが、国(防衛大学校)と上級生を相手に損害賠償を求めた裁判です。上級生に対しての裁判は１９年に福岡地裁で勝訴が確定。国に対する裁判は一審は不当判決。福岡高裁は１２月９日、一審判決を見直し、国の安全配慮義務違反を認め､賠償を命じました｡
ご支援に御礼
裁判当初、チラシを福岡県本部の清水さんが見つけて下さったことがきっかけで署名活動､カンパ､県版、大会と…全国に広がり。さらに判決後すぐ「上告断念を」と防衛省にまで、出向いてくださった。小さな声を拾って、いつも寄り添って下さり、本当にありがとうございました。（原告Ａの母）
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兵庫・神戸質店事件
同じ証拠で無罪が無期 証拠、目撃証言とも不一致
■事件の概要
２００５年１０月１８日、兵庫県神戸市中央区の質店店舗で、店主が亡くなっているのが発見されました。床面には被害者のものでない足跡、指紋、タバコの吸殻が多数、残っていました。被害者は頭部を多数回鈍器によって殴られていたため、当初は怨恨（えんこん）の可能性が疑われました。
ところが、１年１０カ月後の０７年８月、神戸市で電気通信設備工を営んでいた緒方秀彦さんがたまたまスピード違反で検挙され、その指紋が現場のものと一致し、靴跡、煙草の吸い殻のＤＮＡを証拠に強盗殺人罪で逮捕・起訴されました。
■裁判の経過
神戸地裁（岡田信裁判長）は０８年６月、無罪を言い渡しました。判決は、電気通信設備工の緒方さんが以前、この質店に防犯カメラ取り付けの相談を受けて立ち入り、タバコとビールをごちそうになったと証言しており、証拠に照らして検討した結果、指紋、吸殻、靴跡の付着のしかたは、その主張と矛盾しないこと、自白もなく凶器もないこと、事件当夜、質店の前で不審な男を見たという目撃者の供述では緒方さんを犯人と言い切れないことなどを指摘。緒方さんと犯行を結び付ける証拠は一切ないとしました。
ところが、二審の大阪高裁（小倉正三裁判長）は０９年９月、全く同じ証拠について正反対の評価をし、緒方さんが金品強取の目的で被害者を殺害したと認定し、無期懲役の逆転有罪判決を言い渡しました（被害金額１万円余）。最高裁で有罪が確定し、現在再審請求準備中。
■事件の争点
高裁は、現場の遺留物を有罪の証拠としました。しかし、現場の状況は、むしろ緒方さんの無実を証明しています。
被害者は大量に出血し、店内の壁や天井には多数の血痕が飛んでいます。当然、犯人の身体や着衣に多量の血液が付着していたと考えられますが、現場の緒方さんの指紋や押収された靴からは、血液反応が一切検出されていません（靴を洗ってもルミノール反応は検出できます）。電話機には血液が付着、床には血液が付着した足跡も発見されましたが、いずれも緒方さんのものとは違います。そもそも、犯行当時の靴を１年１０カ月も所持していることや、現場に多量のタバコの吸殻や指紋などを無造作に残していくこと自体が不自然で、防犯カメラなど防犯器具の設置を業務とする緒方さんによる計画的犯行と考えるのは不合理です。
また、高裁は目撃証言を有罪の根拠としています。目撃者は「男はスポーツ刈りか、少し長くした感じ」と証言。しかし、緒方さんは「縮れ毛で額に垂れた髪型」です。目撃者は「不審者はジャージのような黒っぽいスポーツウェアを着ていた」と証言。しかし、ジャージで飛び込みの営業をすることは不自然ですし、緒方さんの営業中の服装は「薄緑色の作業着」であることに争いはありません。そもそも目撃者は、捜査段階でも法廷でも、「目は似ているが全体的には似てない」と一貫して供述しており、当初は別の人物を写真台帳で選んでいます。さらに、事件当日、店内から男数人と被害者が大声で言い争う声を聞いた人がいることも一部新聞報道がありますが、判決はこうした証拠をすべて見落とすか無視しているのです。
緒方さんは、捜査段階から一貫して無実を訴えています。
〈激励先〉〒７０１―２１４１ 岡山市北区牟佐７６５ 岡山刑務所 緒方秀彦様
名張事件第10次再審（最高裁）署名用紙
