2021年2月25日号
2021年2月25日号
デジタル関連法案の危険な内容
−自由法曹団・大住広太弁護士に聞く−
政府は２月９日、デジタル関連６法案を閣議決定し、今国会での成立を狙っています。自由法曹団構造改革ＰＴ担当事務局次長・大住広太弁護士に同法案の危険な問題点を聞きました。
いわゆるデジタル改革関連法案には６つの法案があり、「デジタル社会形成基本法案」というのが、これまでＩＴ基本法と呼ばれる法律に替わるものになります。デジタル社会を目指すにあたっての基本理念などを定めています。
次に、「デジタル庁設置法案」です。デジタル庁は首相の直轄で、デジタル化に関して省庁横断的に統合調整をし、勧告権等を有し、情報システムの整備・監理についての事業の統括監理、予算の一括計上等、デジタル化に関し強い権限を持つことが示されています。また、デジタル監などの特別職を設置して、「適材適所」の名のもとに民間人を省庁の役人として登用していくことが想定されています。
３つ目に、「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案」ですが、個人情報保護法やマイナンバー法、多数の法律を改変してデジタル化に対応するもので、その中で大きいのは個人情報保護法を改変することです。これまで、個人情報保護法と行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律、独立行政法人の保有する個人情報の保護に関する法律の３つに分かれていましたが、これが統合されます。また、自治体が保有する個人情報については、自治体ごとに定められる個人情報保護条例で管理されていますが、今後は、改定される個人情報保護法により原則として一元的に統括・管理することになります。
そのほか、預貯金関係の法律案が２つあります。マイナンバーと預貯金口座を結びつけるものです。最後が、現在地方公共団体の個人情報管理システムを国が統一化、標準化して、一括管理するというものです。
警察が全個人情報掌握
関連６法案では、国民の個人情報を集約し、データを利活用することが主眼とされています。特に、マイナンバーカードと免許証や健康保険証、各種国家資格を一体化し､さらに､マイナンバーカード機能をスマホに搭載するということも進められており、マイナンバーを基軸に、あらゆる個人情報を統合しようとしています。いま個人情報は､国､地方公共団体、医療機関、民間企業などがそれぞれ保有し管理するという分散管理がされていますが、個人情報が集約されれば、行政機関があらゆる個人情報にアクセスできるようになる可能性があります。現在でも、捜査機関が任意捜査として、民間団体や公的機関に対して捜査照会（刑事訴訟法１９７条２項）という形で個人情報の開示を求めることができるとされています。最近、Ｔポイントカードを運営する会社が捜査照会に応じて個人情報を捜査機関に提供していることが報道で取り上げられ、これをきっかけに多くの民間企業が捜査照会に応じていることが明らかになりました。行政機関も同様に開示に応じているものと思われます。その上、個人情報が一か所に集約されれば、警察などの捜査機関としては、個人情報ごとに保有機関に捜査照会をかける必要もなくなるわけです。法案では、基本的に本人の同意がなければ第三者に開示できないことになっていますが、例外規定が設けられています。民間事業者については、例えば学術関係について研究等に必要な場合です。公的機関については、法令に基づく場合で相当な理由がある場合などに開示することができることになっています。捜査照会もこれに該当することになります。しかし、これに応じて、行政機関の個人情報管理を適切に監視するシステムは設けられていません。
国民監視反対の運動を
現在、行政が保有する個人情報は、国による個人情報保護法と、地方公共団体が定める個人情報保護条例という、二重構造で保護されています。今回の法案では、これを統一化、標準化して、情報管理システムも統一化することにしています。もともと、国による個人情報保護規制が遅れている中で、先進的な自治体が、住民合意のもと、様々な個人情報保護制度を作り上げてきました。今回の統一化、標準化により、そのような先進的な取り組みは否定され、個人情報保護のための規制が緩和される可能性があります。
ＥＵには、一般データ保護規則(ＧＤＰＲ)という規則があります。ＧＤＰＲでは、全ての者が個人データ保護の権利を有することとデータ主体が個人データについて支配権を持つことが定められ、訂正の権利、消去の権利等、データ主体としての様々な権利が定められています。しかし、今回の法案からは、そのような方向性は見えてきません。法案では情報主体の権利も定めずに、個人情報の利活用のみを推進しようとしています。
たとえば、スウェーデンなどの諸外国でも、国民に番号を付して個人情報の集約をおこなっています。それは、行政機関による個人情報の取り扱いに対する監督権限を持つ独立機関があり、かつ、国民と政府との間に、個人情報を不正に利用したり政府の情報を隠さないという合意があるからです。ところが日本の場合は、森友学園や加計学園問題、検察庁問題でも国の側は様々なデータを隠しておきながら、国民の情報はすべて寄こせという状況ですから、個人情報の取り扱いに関して基本的に政府を信頼するという状況はありません。また、日本の場合、個人情報の取り扱いについて監督する機関として個人情報保護委員会が置かれていますが、今回の法案でも行政機関に対する監督権限は十分とはいえません。
私たち国民は、個人情報を把握されている、行動を監視されていると感じれば、自由な発言や調査研究をすることができなくなります。ひいては、自由な議論を前提とする民主主義も破壊されかねません。国民救援会の皆さんは、冤罪や国民に対する不当な捜査、盗聴法や共謀罪等、様々な問題に取り組んでおられます。デジタル化関連法案も、国民監視の一環と思われますので、ぜひ一緒に運動を広げられればと思います。
第７１回中央委員会のポイント
第６０回全国大会に向けて 全会員参加で運動しよう
２月６日〜７日に開かれた第７１回中央委員会決定のポイントについて、岸田郁事務局長に聞きました。
中央委員、中央役員など９０人がリモートを併用して参加し、２７人から発言がありました。
情勢 監視強化許さない デジタル法に反対
憲法審査会への改憲案の提示や、国民投票法改正案の採択を８国会阻止しています。引き続き「９条改憲ＮＯ！改憲発議に反対する全国緊急署名」をすすめます。
菅政権は、日本学術会議会員任命拒否問題にみられるように、時の政権に対して物言う人物を排除する暴挙をおこなっています。同時に内閣情報調査室（内調）の責任者を経験した公安警察出身の杉田和博氏や北村滋氏などの要職への起用が目立ち、いっそうの国民監視をすすめようとしています。
コロナ対策特措法改悪は、反対世論の広がりによって、当初提案されていた刑事罰の導入を許しませんでした。しかし、事業所などへの自治体の立ち入り調査権が導入されており、警察が行政とともに立ち入りをおこなうなど濫用させない監視を強化することが必要です。
警察による違法な強制連行や職務質問に対し、現場に駆け付ける、対策会議で集団的な議論をするなどの早期の適切な対応で、早期解決しています。
菅政権は、国や自治体の「システム統一化」やマイナンバーカードの普及促進にむけデジタル関連法案の一括提出を予定しています。「デジタル改革関連法案」は国と地方のシステム標準化やマイナンバーカード普及と合わせて、個人情報を一元化して管理し、中央集権的な管理支配がすすみ、国民監視の強化につながります。国民救援会は、法案の内容や危険性をよく学び、広げ、法案成立を阻止する運動をおこないます。
総選挙に向けて民間パトロールなどの体制作りと弾圧を許さない心得の普及を強化します。
住民投票運動の経験から、公選法改正運動の具体化に期待が高まってます。
事件 再審法改正めざす 現状と問題点学ぶ
再審法改正をめざす地方議会意見書採択は、１２月末日現在４３議会で採択されています。とりくみの特徴は、�〇拮瑤燃惱�会を開いて再審制度の現状と問題点を学び、�△垢戮討療淒匹竜聴�を訪ね、資料を渡して粘り強い説得活動を展開し、��出された疑問について丁寧に説明して理解を広げていることです。各地の教訓に学び、地方議会への働きかけを強めます。
３月１１日、東日本大震災と東電福島原発事故から１０年を迎えます。放射能汚染水の海洋放水に反対し、被害の完全賠償や原発廃炉の実現を求めて、各地の裁判支援をすすめます。
倉敷民商弾圧事件禰屋裁判は、高裁の差戻し判決から３年が経過し、今年は公判が開かれる見通しです。全国連絡会は事件を学び、世論を広げて２０万署名達成を呼びかけています。（２月３日現在１４万８１６２人の到達）
大垣警察市民監視違憲訴訟は大垣署及び県警警察官などの証人尋問がほぼ決まり、さらに警察庁警備局長の尋問を求めています。各都道府県本部の会員数をこえる署名を集め支援を強めます。
布川国賠訴訟は、６月２５日が判決期日に指定されました。
袴田事件第２次再審請求で、最高裁第三小法廷は再審を認めなかった東京高裁決定を取り消して､東京高裁に差戻しました｡差戻し審においては、関係支援団体と協力して最高裁決定及び再審を開始すべきとした２人の反対意見を踏まえた、迅速で公正な審理を求めていきます。
名張毒ぶどう酒事件では、事件直後の村人の９通の供述調書が開示され、「自白」との矛盾が明らかになりました。また、証拠の閲覧によって、ぶどう酒瓶の封緘紙の二度貼り再現実験が再び行われ、証拠物の封緘紙には２種類の糊が付着していることが新証拠として裁判所に提出されました。
乳腺外科医師冤罪事件は、東京高裁が地裁での無罪判決を破棄して逆転有罪判決をおこないました。最高裁での無罪判決を勝ちとるため、急ぎ支援を強化します。
大崎事件第４次再審請求は事件現場での三者協議を開催させ、事実上の現場検証を実現。さらに、心理学鑑定につき、鑑定人尋問が行われました。大崎事件に学び、事件の原点に立ち返って、捜査、裁判記録や判決などを検証して、弁護団とともに徹底して事件の真相究明に努力し、裁判所に証拠の採用と事実調べを実現させます。
コロナ対策を理由に、公判や判決の期日指定が延期され、刑事裁判においては身柄拘束の長期化などが問題となっています。また、裁判傍聴についても大幅に傍聴者の制限が行われています。
国民救援会は、憲法が保障する迅速で公正な裁判の実現を求めるとともに、代替措置をとって裁判の公開原則を保障することを求めます。
また、現在、法制審議会で議論がすすめられている民事裁判手続きのＩＴ化は大衆的裁判闘争に重大な影響を与えます。国民の裁判を受ける権利を守る活動をすすめます。
労働者の権利をめぐる裁判は、せめぎ合いの状況にあります。引き続き、「労働事件４原則」に沿って、事件の地元都道府県本部や支部などが、当事者、支援組織と団結して奮闘します。
合葬追悼・顕彰運動
第７４回解放運動無名戦士合葬追悼会は「参列者なしの式典」の模様を事前録画して、全国に配信し、新遺族にはＤＶＤを届けます。
いしずえ会と共同し、遺族との交流を深めます。
組織 運動と結びつけて 自立した支部活動
コロナ感染対策をおこないながら、これまでに４２府県本部大会が開催されました。
１１月〜１２月の「年末組織財政強化期間」では、湖東記念病院事件無罪判決のテレビ報道で国民救援会の旗が映ったことや、支部役員などが訪問して国民救援会の魅力を語ったことで、快く入会された経験が生まれています。
７月の第６０回全国大会を組織と運動の前進で迎えるために、都道府県本部・支部が全国大会までの目標を決め、支部活動を軸に、事件支援や再審法改正などの運動と結び付け、全会員に依拠した「入会の声かけ」をすすめ、地域で目に見える救援運動を推進します。
コロナ禍において、人と会うことや集うことの制約がある中で、支部ニュース発行の努力が強められ、会員から歓迎されています。会員のみならず、知り合いに配る、また他団体の機関紙に折り込んでもらって、地域の救援運動を知らせる機会としています。
会員の得手や条件を活かし、救援新聞の配布、支部ニュースの作成、宣伝行動への参加などの協力を呼びかけ、会員に依拠した活動を意識的に行って、全会員参加の救援運動をめざします。
全国大会成功に向け、「第６０回全国大会成功へ『打って出て、組織も事件も前進を！』（２０２１年５月〜７月）」として、�〜換顳桔�人会員をめざして前年比会員増、�∋�件支援や再審法改正など運動と結び付けた組織の拡大強化、�２餔�に依拠した全会員規模の入会声かけ運動、�ぜ�立した支部活動の推進を重点課題と位置づけます。本中央委員会決定を受け、直ちに都道府県本部・各支部で具体化を図ります。
すべての会員から１００％会費納入をすすめるための体制の確立を、会員に協力を呼びかけてすすめます。各支部は財政担当者を配置すると同時に、担当者任せにせず、会員台帳の整備と、適宜支部役員会への状況報告と必要な手立てを集団的に検討してすすめます。
名張事件第10次再審（最高裁）署名用紙
