日本国憲法と世界人権宣言を羅針盤に、弾圧事件・冤罪事件・国や企業の不正に立ち向かう人々を支える人権団体

2020年4月5日号

救援新聞より

2020年4月5日号  

栃木・今市事件 上告棄却の不当決定 理由示さず誤判を追認 最高裁 無期懲役刑が確定  

 栃木県内で起きた小学1年の女児殺害事件の犯人として、殺人罪で無期懲役判決を受けていた勝又拓哉さんの上告審について、最高裁第2小法廷は、3月4日付で上告を棄却する決定をしました。弁護団は決定を不服として異議申し立てをおこないましたが、3月16日付で棄却され、有罪判決が確定しました。(裁判官=三浦守裁判長、菅野博之裁判官、草野耕一裁判官、岡村和美裁判官)

 決定は1ページだけで、裁判官全員一致の意見での決定でした。弁護団が主張した憲法違反や判例違反について、最高裁は一切答えず「事実誤認の主張であって上告理由に当たらない」として退け、実質的な理由は何も説明していません。

矛盾する自白 なぜ信用する

 事件は2005年12月、栃木県今市市(現日光市)で、小学1年の女児が行方不明となり、翌日、茨城県内の山林で遺体となって発見されたものです。警察は事件から8年後に台湾出身の勝又さんを別件逮捕し、その身柄拘束を利用して勝又さんに女児殺害を自白させました。自白は、女児を拉致してわいせつ行為をおこない、山林に連れていき、女児の胸をナイフで10回刺して殺害し、遺体を捨てたというものでした。
 一審の裁判員裁判は、情況証拠からは犯人性を認定できないが、自白は信用できるとして無期懲役判決。二審は、殺害日時と場所、殺害方法についての自白は、客観証拠と矛盾して信用できないとしました。しかし、殺害場所を「栃木、茨城県内またはその周辺」に広げて、殺害時刻を女児が行方不明となってから発見されるまでのおよそ14時間と幅を広げる予備的訴因(検察が後から追加主張した犯罪事実)を認めて、勝又さんが犯人と認定。一審判決を破棄し、あらためて無期懲役としました。
 最高裁の上告審で弁護団は、予備的訴因は事件の根幹にかかわるもので、東京高裁がこの追加を許可すること自体が違憲・違法だと主張。裁判員裁判に差し戻して再度審判を受けずに自判したことも違法で、裁判員制度の趣旨にも反すると指摘しました。また、勝又さんが母宛てに書いた手紙を「自白」として有罪根拠の中心に据えたことも違法だと主張して、控訴審判決の破棄を求めていました。

提起すれども 最高裁答えず

 3月6日に開かれた会見で主任弁護人の一木明弁護士は、「事件は国民的に話題になり、自白の中核的部分、犯行場所、時間が違うことが科学的に明らかになった。それなのに理由もつけずに棄却した。これで司法に対する国民の信頼を得られるのか」と憤りました。
 鹿島秀樹弁護士は、「自白の根幹が揺らげば自白全体の信用性が揺らぐとしたのが従来の実務。本件は自白を拉致、殺害、遺棄と切り離して信用性判断をした。そういう判断があり得るのか、刑事裁判のあり方に問題提起をしたのに、最高裁は視座を示さなかった。その結果一人の人間が長期の身柄拘束にさらされる。断腸の思いだ」と述べました。

【抗議先】〒102―8651 東京都千代田区隼町4番2号 最高裁第2小法廷 三浦守裁判長
【激励先】〒124―8565 東京都葛飾区小菅1―35―1 勝又拓哉様(近く移送される可能性があります)

勝又さんの獄中手記 胸張って無実訴える

 国民救援会、守る会、ご支援くださった皆さま
 この度、最高裁への上告が棄却される結果となり、ショックでたまりませんでした。決定書は1枚の紙でした。棄却の理由は「法令違反や事実誤認の主張であり、上告理由にならない」というものでした。事件の犯人ではないという事実誤認は大変大事なことじゃないかと思いましたが、冤罪の可能性は上告理由に当たらないそうです。
 先日、森まさこ法務大臣が(カルロス・ゴーン氏に対して)「無実なら無実の証明をするべき」と述べた言葉を思い出し、(検察側の)有罪の立証よりも、(被告の)無罪の立証に重きを置く今の日本の司法を目の当たりにしました。
 これから拘置所から刑務所へ、普通の裁判から再審へと舞台が変わりますが、私はあきらめません。やってないことはやってないから、胸を張って言い続けます。たくさんの方々から今回の決定に怒りのお手紙をいただきました。今後も応援し続けてくださるというお手紙もたくさんありました。全員に返信できず、この場をお借りしてお礼をお伝えしたく思います。ひきつづき署名などの活動に協力していただけるとありがたいです。
 最後に、不(ぶ)躾(しつけ)なお願いですが、私の家族も棄却決定に大変ショックを受けております。この先も私のために色々な集会に出ると思います。精神的な負担もあり、交通費も生活を圧迫すると思います。家族の力になっていただければ幸いです。よろしくお願いします。
 (3月11日記)

激励の手紙が力に 拘置所に170通届く  

 勝又さんが最高裁からの上告棄却決定の送達を受けたのは、3月5日午後3時すぎ、収監されている東京拘置所でした。
 直後に面会した国民救援会の瑞(ず)慶(け)覧(らん)淳(あつし)副会長によると、勝又さんは青ざめた顔で「たった今上告棄却の知らせが届いた」と切り出し、アクリル板越しに決定書を示しました。ひどく落胆した様子で、今後、移送先の刑務所がどこになるか、どのような処遇になるのかと、先の見えない不安を吐露しました。また、病気を抱えて毎週面会に来る母・イミ子さんの様子を心配し、「母を支えてほしい」としきりに話していました。
 勝又さんは、「最高裁に期待していただけに、ショックだった」と述べる一方、「いつかは必ず真実が明らかになることを信じて、再審をめざして頑張りたい」と気丈に話しました。
 その後、拘置所に激励の手紙が約170通届き(3月19日時点)、中には過去に報道を見て冤罪だと確信したという高校生や大学生からも手紙があり、力になったと話していました。現在、首都圏の国民救援会の会員や支援する会が入れ替わりに拘置所を訪れ、勝又さんを激励しています。

静岡・袴田事件 法務省  

議員連盟が要請 恩赦で死刑回避求める

 東京高裁で再審開始決定が取り消され、ふたたび死刑台に連れ戻される危機にある袴田事件で、超党派の袴田巖死刑囚救援議員連盟(会長=塩谷立衆院議員)、袴田弁護団、国民救援会も参加する袴田巖さんの再審無罪を求める実行委員会は3月10日、法務省更生保護局の今福章二局長を訪ね、刑の執行を免除するよう要請しました。
 議員連盟は要請書で、恩赦における誤判救済機能に大きな意義があることを強調し、恩赦を審査する中央更生保護審査会が、迅速で十分な調査をおこない、公正な判断をするよう求めました。
 議連の塩谷会長が「袴田さんは今日で84歳になった。一刻も早く恩赦の決定をお願いしたい」と要求すると、今福局長は、「(袴田さんが)死刑囚という観点から、慎重に検討している。できるだけ早く審議のスピードを上げるよう伝える。審査会には、その独立性を害しない範囲で要請の内容を伝える」と回答しました。
 再審無罪を求める実行委員会からは、浜松・袴田巖さんを救う市民の会の寺澤暢(のぶ)紘(ひろ)さんが要請書を読み上げ、「無実の人を死刑にすることは絶対にあってはならない」と強調しました。

岡山・倉敷民商弾圧事件 岡山地裁・地検 起訴取り下げを要請 署名累計11万9千超に  

 民商会員の確定申告を手助けしたことで、民商事務局員の禰屋町子さんが脱税ほう助と税理士法違反に問われている倉敷民商弾圧事件で3月24日、46回目の裁判所要請と宣伝をおこない、個人署名を当日分3,221人分累計で11万9,238人分提出しました。
 禰屋さんは、要請書を読み上げ、「建設会社の脱税は、査察官報告書でも行っていないことが明らかになっています。脱税であれば、隠し財産があるが、それもなかったことが、原審で既に明らかになっています。税理士法違反については、原審で十分な審理がされなかったので、十分な審理を求めます。適正な納税をすすめるために、私たちは自主記帳、自主計算、自主申告の運動をすすめてきました。税務署から一度も注意や警告を受けたことはありません。また、高裁差し戻し判決に従って、『分かりやすい争点を明らかにすること』が示されないのであれば、裁判長自ら、検察に対して起訴の取消しを示唆していただきたい」と要請しました。
 3月5日には23回目となる検察要請をおこないました。禰屋さんは、「この間の11回にわたる3者の打合せで、今後の裁判方針が未だに決まらないのは、『検察官が真に立証すべき事実は何かということを吟味して、その主張を明らかにすべきである』とした高裁判決に忠実に従っていないことに原因がある」と検察の問題点を指摘し、要請しました。岡山県本部は、脱税ほう助については、禰屋さんは決算期に3日程度建設会社に出向いて、会計責任者の社長夫人の指示に基づき決算報告書とそれに添付する内訳書の作成をサポートしたにすぎず、建設会社の工事進捗状況や収入、支出を知り得る立場にはないこと、また税理士法違反については、民商会員が作成した決算書に基づいて、市販されている申告ソフトの入力手順に従って入力をサポートしたもので、税額について禰屋さんが判断する余地は全くないことなどを指摘し、この事案は刑事事件としての要件を満たしていないものであり、公訴の取り下げを求めると要請しました。

長野・あずみの里「業務上過失致死」事件 東京高裁 弁論再開求め要請 署名26万人分を突破  

 特養あずみの里の利用者がおやつに出されたドーナツを食べた直後に意識不明となりその後亡くなったことで、介護をお手伝いした准看護師の山口けさえさんが業務上過失致死罪に問われている特養あずみの里「業務上過失致死」事件裁判。無罪を勝ち取る会とあずみの里裁判支援中央団体連絡会は3月10日東京高裁に要請し、東京高裁(大熊一之裁判長)が弁護団の申請した専門家の証人調べをすべて却下して結審した訴訟指揮を批判し、弁論を再開し、公正な裁判の実現することを求めました。
 一審の長野地裁松本支部では、利用者の死因は窒息と一方的に決めつけて有罪判決を出しました。そのため、弁護団は即日控訴し、死因が窒息ではないことを立証するために準備しました。
 ところが、東京高裁は、控訴審第1回公判において、弁護側が申請した証拠調べ申請を不当にも棄却し結審しました。弁護団が提出した3通の医学意見書は利用者の死因は脳梗塞との見解を示す大変重要な証拠でした。
 要請では、「患者の死因について医学的、科学的に究明することが求められている」、「専門医の証人尋問は、事件の真実を究明するうえで絶対に不可欠である」と、公正な審理と科学的で客観的な証拠に基づく公正な裁判の実現を強く求めました。
 弁護団は、不当な訴訟指揮を行った東京高裁の大熊一之裁判長、奥山豪裁判官、浅香竜太裁判官3名に対して、忌避を申し立て最高裁まで争いましたが、最高裁は申立を退けました。東京高裁は4月23日に公判期日を指定し、判決を出す予定です。
 この日、全国から寄せられた無罪を求める署名5,023人分(累計26万6,494人分)を提出しました。

第246次最高裁統一要請行動 袴田さんに再審開始を  

 3月23日、首都圏の救援会をはじめ今市事件の守る会などから27人が参加し、第246次最高裁統一要請行動がおこなわれました。
 要請では、勝又拓哉さんのお母さんは「東京高裁では科学的な鑑定と客観的な証拠によって1審の有罪判決の根拠が崩れたのに、息子に再び無期懲役を出し、それを最高裁も追認したことに納得できない」と怒りを込めて抗議しました。他の参加者からは「大崎事件では最高裁が職権を発動して再審請求を棄却したが、今市事件こそ職権を発動して無実の人を救済すべきであった」と刑事裁判の原則に反する不当な決定が相次いでいる最高裁の動きを批判し、国民の信頼を回復するためにも袴田事件では一日も早く再審開始決定を出すよう要請しました。

広島・山陽高校雇い止め事件 広島高裁 高裁で一部勝訴 教員の地位確認は棄却  

 山陽高校に常勤講師として勤務していた越智(おち)竜也さんに、学園がおこなった雇止めは無効としてたたかっている地位確認等請求事件で2月26日、広島高裁(山本一岳裁判長)は、雇止めを有効とした一審判決を取り消し、逆転一部勝訴の判決を出しました。
 越智さんは2010年、別の高校の正規教諭だった時に野球部の指導ができる教員としてスカウトされ、「4年目から正規教員に。それまではフルタイムの常勤講師で」との条件で職を辞し、翌年山陽高校に赴任。
 ところが学園は、4年間口頭での形式的な「契約更新」をおこなっていたのを15年4月、突如雇止めを通告。理由は、野球部の練習に常時立ち会わなかったために生徒に怪我をさせたなどというもの。教員不足で過重労働を強いられていた越智さんにとって無理難題を強いる不合理なものでした。
 一審の広島地裁(小西博裁判長)は、被告学園側の理由には合理性がないとしながら、雇止め後の生徒との金銭トラブルという「後出し」の、しかもウソの追加理由を認めて雇止め有効としていました。
 高裁判決は、「後出し」の追加理由を違法として退けた一方で、金銭トラブルは事実だと認定して、雇用期間を1年としていた点に着目し16年3月までの賃金の支払いを命じたものの、地位確認請求は棄却しました。
 (県本部版より)

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