日本国憲法と世界人権宣言を羅針盤に、弾圧事件・冤罪事件・国や企業の不正に立ち向かう人々を支える人権団体

2019年9月15日号

2019年9月15日号  

「死刑をなくそう市民会議」設立集会  国民的議論進めよう  

 死刑制度の廃止をめざして6月に発足した「死刑をなくそう市民会議」。多くの国民に死刑について情報発信しようと、8月31日に東京都内で設立集会を開き、350人の市民が参加しました。

 元法務大臣で「市民会議」運営委員長の平岡秀夫さんが開会あいさつ。法務大臣当時、生まれた国の違いで命が奪われるかどうか決められてはならないと思い、執行命令を出さなかった経験から、死刑について国民的な議論が必要だと至ったと話しました。
 日本弁護士連合会の前会長・中本和洋さんが、2016年10月の日弁連人権擁護大会で、死刑制度の改革を求める宣言を採択した経過について講演しました。
 この中で中本弁護士は、死刑制度を廃止すべきと考えている3つの理由を、「死刑は非常に残虐な刑罰であること」「誤判が避けられない以上、執行されれば取り返しがつかないこと」「人は変わりえるという観点から見た時、更生し社会復帰する可能性を奪うことになる」からだと述べました。
 そして、「日本の絞首刑の実態の情報提供、国際的な廃止の流れ、死刑に代替する刑を設けることなどで世論は変わると考えられ、法改正するためには、国民一人ひとりの声と運動が重要」と、市民会議とともに廃止めざして歩んでいきたいと結びました。
 シンポジウム「死刑廃止へのみち」として、交通事故被害者の家族や宗教者、新聞記者がそれぞれの立場から、死刑制度についての意見を述べました(別掲)。
 続いて、作家の中山千夏さん、東本願寺元教学研究所長の玉光順正さん、明治大学名誉教授(死生学)の金山明生さんがてい談をおこない、死刑廃止の意味について語り合いました。
 集会は最後に、弁護士で明治大学名誉教授の菊田幸一さん(共同代表世話人)が閉会のあいさつをおこない、「市民会議」では今後もあらゆる分野の市民が死刑廃止についての理解を深め、死刑のない民主主義社会のすみやかな実現に向けて活動していこうと呼びかけました。

死刑の情報公開を 毎日新聞記者 長野宏美さん  

 ロサンゼルスに4年間在住し、取材しました。アメリカでは死刑を廃止もしくは停止している州が過半数で、実際の死刑執行数も大幅に減少しています。イノセンスプロジェクトの運動によって166人の死刑囚が無罪となったことが大きく影響しています。また、民主党が人種差別や貧困が冤罪につながっていると議会で追及しました。市民団体の運動が大きな役割を果たしています。
 アメリカでは執行日や費用などだけでなく、実際の執行が関係者や記者に公開されています。それに対し、日本では死刑の情報が国民に知らされていません。
 被害者は必ずしも死刑を望んでいるわけではなく、「刑罰よりも犯罪予防を」の声も大きいと思います。死刑を廃止するには、死刑の情報を公開することと当事者の発言から考えることが大事ではないでしょうか。

執行望んでいない 被害者と司法を考える会代表 片山徒有さん  

 私は8歳の息子を交通事故で亡くしました。遺族が知りたいのは、なぜ事故が起きたのかということ、そして同じような被害者を出さないでほしいということです。
 死刑の理由に、国は被害者遺族の気持ちをあげますが、執行前に遺族に執行を望むかどうかなど調査はしません。国が殺人(死刑)をおこなうことには反対です。
 私は遺族として、受刑者の矯正の力になりたいと、矯正施設を訪ね、お話しをしています。刑務官から、「彼らは自尊心とコミュニケーションが不足している」と聞きましたが、本当だと思います。
 人は立ち直ることができます。国は受刑者に対する教育に、もっと力をいれてほしい。
 死刑をなくすだけでなく、人が殺されない社会になるように、働きかけていきたいと思います。

つながりをつくる 「死刑を止めよう」宗教者ネットワーク 柳川朋毅さん  

 私は宗教者として死刑に反対しています。
 死刑制度は、「命は大切だ」と言う一方で、死刑囚を「生きるに値しない命があるんだ」という、矛盾したメッセージを発しています。
 宗教者は教誨師(きょうかいし)として死刑囚と接します。罪に向き合い、苦しめば苦しむほど、死刑囚が人間らしく変わっていきます。それなのに死刑となれば、その人間の存在がなくなってしまうのです。
 被害者遺族の幸せのために死刑囚を殺すしかないんだという考え方にとらわれても、それはいっときのまやかしにしかならず、遺族は幸せにはなれません。命を奪ってケリをつけるというやり方を変えなければいけないと思います。
 「あなたは一人ぼっちではない」と人と人のつながりをつくる、あたたかな社会をつくることを発信していきたいと思います。

長野・あずみの里「業務上過失致死」事件 控訴審で逆転無罪を 弁護団が控訴趣意書を提出 東京高裁  

 8月30日、長野・あずみの里「業務上過失致死」事件で、弁護団が控訴趣意書を提出するため、弁護団の激励と宣伝、控訴趣意書を学習する行動がおこなわれました。

 この事件は、特別養護老人ホーム「あずみの里」の入所者Aさんが、おやつのドーナツを食べた直後、意識を失い心停止となったことで、准看護師の山口けさえさんが業務上過失致死罪に問われ、一審の長野地裁松本支部で有罪判決(罰金20万円)が出された事件です。
 支援者130人が東京高裁前に集まり、宣伝行動をおこないました。併せて裁判所要請もおこなわれました。宣伝行動では、医労連の森田しのぶ委員長、民医連の増田剛副会長、国民救援会の岸田郁事務局長らが、一審の有罪判決の誤り、無実の山口さんを有罪にすれば一人の冤罪犠牲者を生むにとどまらず、介護職場に否定的影響を与えることをそれぞれ訴えました。
 午後3時30分、弁護団長の木嶋日出夫弁護士がマイクをとり、一審判決を徹底的に批判した控訴趣意書を作成したことを述べ、支援者の拍手のなか提出にむかいました。
 その後、控訴趣意書報告集会が開かれ、報告に立った木嶋弁護士は、以下のように、控訴趣意書の要旨を説明しました。

地裁3つの誤認

 一審判決は、山口さんがおやつの形態を確認すべきなのに確認しないでAさんにドーナツを渡して窒息させたと認定しました。しかし、3つの「前提事実」で事実誤認を犯しています。
 一つは、Aさんには自歯・義歯がなく、丸飲み傾向があるので、窒息の可能性が高かったとしました。しかし、Aさんには嚥下障害がなく、窒息の危険が高かったとまでは言えないことは判決自身が認定しており、Aさんは入所以来、副菜がキザミ食形態で、これは嚥下障害がなかったことを示しており、判決の事実誤認は明白です。
 次に本件のドーナツが、気道を閉塞して窒息を生じさせる可能性があると認定しました。しかし、本件のドーナツは付着性、凝集性ともに低く、しかも、Aさんの歯茎でつぶせる程度の硬さですから、判決の事実誤認は明らかです。
 3つめに、Aさんのおやつがドーナツからゼリーに変更されたのは、誤嚥窒息対応もあったと認定しました。しかし、Aさんは入所以来、キザミ食であり、おやつは普通系(ドーナツなど)で問題がなかったが、介護士会議で、2度の嘔吐対策として、3食の主食の量を半分に、おやつの形態を普通系からゼリー系に変更することにしたにすぎないと説明しました。

因果関係なし

 また、判決は、Aさんの死因について、窒息と認定しましたが、Aさんの意識喪失と心肺停止という急変の原因が窒息ではないことは、Aさんには窒息した場合に見られる窒息サインがないことなどから明らかです。そして、Aさんの死因は、脳梗塞、一時的脳虚血や心疾患の可能性も排除できないことを説明しました。
 最後に、木嶋弁護士は、一審有罪判決には、介護現場が委縮し、まともな振り返りもできなくなるとの介護関係者の不安と怒りがあると述べて控訴審で無罪判決を勝ち取る決意を表明しました。

神奈川・日産非正規切り裁判 会社と和解が成立 10年のたたかいに決着  

 8月19日、日産非正規切り事件で、原告5人と会社が和解し争議が全面解決しました。
 本件は、2009年2月に、カルロス・ゴーン社長(当時)が2万5千人の人員削減を発表し、日本国内で約8千人の非正規労働者が解雇され、そのなかの5人が雇止め撤回と正社員化を求めて提訴した事件です。
 裁判では、2016年12月までたたかい続けましたが、最高裁で原告の請求を認めない不当判決が出されました。その後は、会社の団体交渉拒否などの不誠実な対応に対して、県労働委員会に救済を申し立て、県労委は「不当労働行為に当たる」として救済命令を出しましたが、双方が中央労働委員会に再調査を求め、調査中でした。
 和解内容は非公表で、職場復帰もできませんでしたが、5人の原告は10年間諦めずにたたかい続け、今回の和解をもって決着をつけることができました。県労委での勝利命令は、最終的には失効となってしまいましたが、たたかいの中でその命令を勝ちとったことは重要な成果でした。

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