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2019年7月15日号

2019年7月15日号  

鹿児島・大崎事件 最高裁が再審取消し 弁護団に反論の機会与えず 職権で、無実の叫びを棄却  

 鹿児島地裁、福岡高裁宮崎支部と相次ぎ再審開始決定が出された大崎事件で、6月25日付で最高裁第一小法廷(小池裕裁判長)は、原口アヤ子さんの第3次の再審請求を棄却しました。

 最高裁決定は、検察官の抗告には理由がないとしたにもかかわらず、抗告自体は棄却せずに、職権で調査し、再審開始決定を取り消しました。これは、最高裁が事実取調べをおこなわない法律審であるにもかかわらず、有罪判決を受けた者に不利な裁判を弁護人の意見も聞かずにおこなったという点で、無(む)辜(こ)の救済という再審の理念に反するだけでなく、憲法31条の適正手続きに反する違憲の決定です。

2つの新証拠

 再審請求が認められるためには、無罪を言い渡すべき明らかな新証拠が必要です。第3次再審請求で、弁護団は心理鑑定と法医学鑑定の2つの新証拠を出しましたが、高裁では心理鑑定は「明らかな証拠」とはいえないとされ、吉田鑑定を根拠に地裁の再審開始決定が支持されました。
 東京医科大学の吉田謙一教授の法医学鑑定は、本件の被害者(仮名=四郎)の遺体全体をみて、死斑(死後、皮膚下に移動した血液が身体の表面から透けて見える紫色等の斑紋)や血液就下(死後、心臓や血管内にあった血液が重力に従って身体の低い部分に移動したもの)がなく、白っぽい遺体なので、出血に関連する死(出血性ショック死)を想定させる、したがって首を絞めて殺害したというものではないという鑑定です。

輝く吉田鑑定

 最高裁は、吉田教授が、豊富な経験と専門的知見を備えた法医学者であることやその鑑定が条件の制約された中で工夫を重ねて専門的知見に基づく判断を示していると認めながら、死体を直接検分しておらず、死体解剖の際に撮影された12枚の写真からしか死体の情報を得ることができなかったこと、しかも主として写真上の死体の色調に基づいて鑑定をおこなったことを取り上げ、鑑定を問題としました。
 最高裁は、吉田鑑定を批判してみたものの、それだけでは、内容が分かりやすく明白な吉田鑑定が「明らかな証拠」ではないといえないので、次のように言い出します。
 すなわち、もし高裁の認定のように吉田鑑定を根拠に、四郎が溝に落ちたことによる出血性ショックにより瀕死の状態にあった可能性があるとすると、事実上四郎の死体を堆肥中に埋めた者は、四郎が道端に倒れているところを自宅まで運んだ近所の2人の男性以外にないが、そんな証拠はない。だから、近所の2人の男性とは考えられない。そうすると犯人は原口さんら以外想定し難いと断定します。そして、共犯者3人の各自白並びに親族の女性の目撃供述は相互に支えあって、その信用性は相応に強固なものと認定します。

異常さ際立つ

 最高裁のこの論理は、捜査機関の怠慢によって証拠がないなかで原口さんらの有罪を維持しようとするものであり、しかも、なんら根拠を挙げずにいきなり断定し、最後は、原口さんの共犯者とされた人たちの「自白」と親族の女性の供述という警察によってでっち上げられた供述証拠に逃げ込んだものといわざるをません。文字通り、偏見と自白偏重による裁判そのものです。
 今回の最高裁決定は、書面審査だけで下級審の決定を取り消した異常さだけでなく、弁護団に反論の機会を与えずに決定を出した異常さ、そして、再審開始決定を「取り消さなければ著しく正義に反する」とさえ断じた異常さは、およそ裁判の名に値しないものといわざるを得ません。
 また、「疑わしいときは被告人の利益に」との刑事裁判の鉄則が再審にも適用されるとした最高裁の「白鳥・財田川決定」を大きく踏み外したものであり、再審制度が無辜の救済を目的とすることを忘れたものです。
 同時に、今回の決定は、検察側の異議申し立てを認める現行制度が、無辜の救済という再審制度に反する結果を生むことを明らかにしました。再審法の改正が急務です。

*不当決定を出した裁判官=小池裕、池上政幸、木澤克之、山口厚、深山卓也

大崎事件〉1979年10月12日、鹿児島県大崎町で農家・四郎(仮名)が酔っぱらって自転車に乗り、落差1メートルの溝に落ちた後、道端に倒れているところを近所の2人の男性に自宅まで運ばれ、3日後に、自宅の牛小屋の堆肥の中で発見されます。警察・検察は、義姉の原口アヤ子さんが殺意を抱き、親族と共謀し、四郎の首を絞めて殺害し、牛小屋の堆肥の中に遺棄したとして逮捕・起訴。親族3人は、いずれも知的障がいを抱えた、「供述弱者」で、犯行を「自白」しています。また、「共犯者」の1人の妻が目撃供述をおこなっています。

長野・あずみの里「業務上過失致死」事件 判決の不当性を学ぶ 「高裁で必ず無罪を」と学習会 東京  

 長野・あずみの里「業務上過失致死」事件の学習会が6月25日に都内でおこなわれ、控訴審で主任弁護人を務める藤井篤弁護士が「裁判の経過と一審判決について」と題して講演し、113人が参加しました(写真)。

 この事件は、2013年12月に特別養護老人ホーム「あずみの里」で入所者の一人(Aさん)が、おやつのドーナツを食べた直後、意識を失い心停止となったことで、准看護師の山口けさえさんが業務上過失致死罪に問われた事件です。
 藤井弁護士は、大要次のように話しました。
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 検察官の起訴状では、Aさんは、食事中に食物を口腔内に詰め込む等の特癖があり、山口さんには、Aさんの食事中の動静を注視して、食物による窒息事故を未然に防止する義務があったのにそれを怠った過失があるとしました。

検察追い詰め

 弁護団は、Aさんには嚥下障害はなく、Aさんへの注視義務は山口さんにはないと主張しました。また、そもそも山口さんは、Aさんの隣で食事全介助の方の食事の介助をしていたのであり、Aさんを「放置」したのでは決してなかったのです。山口さんには過失はありません。また、Aさんの死因が窒息ではないことが分かり、因果関係もないことを主張し、かなり検察を追い詰めました。

訴因変更2度

 そうすると、検察は2度も訴因変更をしてきました。最後の訴因変更は、証拠調べが終わった後です。弁護団としては、今頃になって訴因変更は認められないと主張しましたが、裁判所は認めました。実際のところ、裁判所が促したような面もあったのです。

事実歪め有罪
 裁判所は、Aさんには摂食嚥下の能力に問題があったと認定しました。そして、検察が主張した過失のうち、注視義務違反については、Aさんがむせぶなど周囲の者が窒息に気付きうる言動をとれないことを予測したうえで、その異変に気付くことができる程度の注視を求めることは困難なので注視義務違反はないとしました。しかし、おやつを確認して提供する義務(形態確認義務)に違反したと認定しました。つまり、ゼリー系のおやつを配膳することとされている利用者にドーナツを与えた場合、誤嚥・窒息等により死ぬ可能性があることを予見できたし、介護業務の引継ぎ資料の確認をしておくべきであったのに怠ったことに過失が認められるとしました。
 しかし、Aさんには嚥下障害などなかったのです。そして、今回のドーナツはゼリー系のおやつに比べて、窒息する危険はないし、誤嚥する危険性が高いものではなかったのです。ですから、山口さんには形態確認義務など認められないのです。また、Aさんは窒息によって心肺停止となったわけではないので、山口さんに窒息を予見することなど不可能で予見可能性はないのです。高裁では、これらのことを認めさせていきたいと現在準備しているところです。
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 質疑応答では、「亡くなった方の死因は窒息ではなかったということを明確にしていくことが必要なのではないか」など質問が出され、山口さんの無罪に向けて奮闘する決意を固め合いました。

福岡・防衛大人権侵害事件「防衛大に変わってほしい」 国の責任認める判決を 国会内  

 福岡・防衛大人権侵害事件の国会報告集会が6月25日、衆議院議員会館内で開かれ、市民や国会議員など約80人が参加しました。
 この裁判は、防衛大の学生寮で起きたすさまじい暴力や人権侵害で退学に追い込まれたAさんが、国と加害学生を相手に損害賠償を求め、2016年に提訴したものです。幹部自衛官を養成する防衛省管轄の施設機関・防衛大の実態を問う、全国初の裁判として注目されています。
 今年2月、福岡地裁は学生7人の加害行為は違法であると、賠償命令を出し、確定。国に対する裁判は結審し、10月3日に判決言い渡しとなります。
 集会では井下顕弁護士が弁護団報告。これまで6人の指導教官の証人尋問がおこなわれたが、国は徹底した情報隠ぺいと責任逃れの姿勢に終始しており、暴行等は予測不可能であり、国は安全配慮義務は負わないと主張していると述べました。
 また、報告集会に先立ち、弁護団と原告らが防衛省に赴き、防衛大に蔓延する、「学生間指導」という暴力や私的制裁などを絶対に許さない体制を確立することなど、要望をしてきたことも報告されました。
 原告のAさんとお母さんがそれぞれ発言し、Aさんは「私は、裏山が崩れる土砂災害があった時に、救助活動する自衛官の姿を見て、自分も人を助ける自衛官になりたいと思いました。防衛大は悪しき伝統を断って変わってほしい」と訴えました。
 福岡県本部とたんぽぽの会では、判決に向け、さらに署名の協力を呼びかけています。

〈要請先〉〒810―0043 福岡市中央区六本松4―2―4 福岡地裁・足立正佳裁判長

国連人権理事会 日本は勧告不履行 特別報告者が追跡調査報告  

 国連人権理事会が任命した「意見及び表現の自由」の調査を担当する国連特別報告者のデビッド・ケイ氏が、2016年4月に日本を訪れ、表現の自由等に関する調査を行い、2017年6月、人権理事会にレポートを提出しています。ケイ氏はレポートのなかで、来日時に国民救援会から得た情報をもとにして選挙運動の規制についても項目を設けて報告しており、公職選挙法が戸別訪問や文書活動に制限を課していること、国連・自由権規約委員会も日本政府に対して公選法などの制限規定の廃止を勧告しており、現在の規制が国際人権規約の基準に適合しないと報告しています。
 さらにケイ氏は今年5月30日付で、人権理事会に追跡調査の報告書を提出し、理事会で討議されています。報告書は、上記の勧告の実施状況について、日本は勧告を履行していないと評価しています。また、ケイ氏は、表現の自由を確保する施策の強化を日本に強く求めています。

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