日本国憲法と世界人権宣言を羅針盤に、弾圧事件・冤罪事件・国や企業の不正に立ち向かう人々を支える人権団体

2019年6月5日号

2019年6月5日号  

無実の人を救おう 国会議員に法改正を要請 冤罪根絶一日行動(第2弾)  

 国民救援会は「無実の人を救おう」と、再審(誤った裁判のやり直し)の扉を開けた最高裁白鳥決定(1975年5月20日)を記念し、5月、全国各地で「いっせい宣伝」にとりくんでいます(6面)。5月20日には、昨年12月につづき第2弾となる「冤罪根絶一日行動」にとりくみました。

「一日行動」では、次の行動をとりくみました。

・衆参の法務委員に、冤罪犠牲者を救済できるよう再審法の改正、裁判員制度の改善を求め要請
・最高裁に対し、冤罪事件の再審・無罪を求め要請
・法務省に対し、施行10年目を迎える裁判員制度の改善を求め要請
 要請後に参加者は「再審法改正をめざす市民の会」の結成集会に参加しました。
国会議員要請
 11都府県から参加した約50人が、再審制度の改善と裁判員制度の改善要求書を携え、衆参両院の全法務委員55人の国会事務所を訪ね要請しました。
 要請では、ゞ畴、重大事件で次々と再審・無罪が出されているが、それらの冤罪に警察・検察、裁判所など国家機関が関与しており、国会の責任が問われていること、刑事訴訟法には再審の規定がほとんどなく、裁判所によっては事実調べもおこなわないなど「再審格差」が生まれていること、そこで、再審制度が真に冤罪者の救済に資するよう法律の改正(少なくとも、再審において検察のもつ全証拠の開示、第2に、再審開始決定に対する検察官の不服申立の禁止の2点)をおこなうよう訴えました。
 要請に先立つ集会では、一橋大学法学部特任講師の李怡修さんが台湾の再審制度について講演しました。
最高裁へ要請
 参加者は、最高裁に対し、宮城・北陵クリニック筋弛緩剤冤罪事件、栃木・今市事件、静岡・袴田事件、鹿児島・大崎事件を、一日も早く救済するよう要請しました。
 なお、要請に先立ち、最高裁前で40人が宣伝し支援を訴えました。
法務省へ要請
 2009年5月21日の裁判員制度施行から10年にあたり、国民救援会は「改善要求」を発表しました(詳細7面)。
 国民救援会を代表して、望月憲郎会長、伊賀カズミ副会長が、法務省を訪れ改善要求書を手渡し、裁判員への厳しい守秘義務の弊害などの事実をあげて、冤罪を生まないよう裁判員制度の改善を求めました。
 応対した職員は、「参考にさせていただきます」とこたえました。

「市民の会」が結成 再審法の改正めざし広がる共同  

 「再審法改正をめざす市民の会」の結成集会が5月20日、衆議院第2議員会館で開催され、会場いっぱいの参加者で埋め尽くされました。「市民の会」は、冤罪犠牲者を救済するための再審のルール作りを目的とし、その実現のための当面の中心課題として、〆匿海里燭瓩里垢戮討両攀鬚粒示、検察官の不服申立ての禁止、再審請求審における手続きの整備をあげています。再審制度の改善をめざし、市民の共同の運動が大きく広がっています。

「市民の会」の結成への経過  

 「再審法改正をめざす市民の会」の結成集会で準備会事務局の客野美喜子さんから報告された結成に至る経過(要旨)について紹介します。

▽再審めぐる歴史
 戦後、再審は「開かずの扉」と言われる時代がつづきます。
 その扉を開く鍵になったのが1975年の「白鳥決定」です。「疑わしきは被告人の利益に」の刑事裁判の鉄則は再審にも適用されるとしました。この決定を受けて、80年代には4人の死刑囚が再審無罪になりました。日弁連を中心に再審法改正運動が盛り上がり、国会に4度も改正案が出されましたが、成立には至りませんでした。
 90年代には再び再審の扉が閉ざされ、「冬の時代」となります。
 2000年代に入り、11事件で再審開始が相次ぎ出され、再審は活性化します。
 足利、布川、東電OL、東住吉、松橋(まつばせ)の5事件で再審無罪を勝ちとります。
 一方、再審決定が覆(くつがえ)された名張毒ぶどう酒事件福井女子中学生殺人事件、再審決定に検察が徹底抗戦している大崎事件、再収監の危険にさらされている袴田事件などがあり、再審全体では再審開始になった事件はほんの一握りです。

▽再審法の不備
 このようななかで、裁判官によって審理の方法や証拠の取扱いに違いが出る「再審格差」、開始決定への検察の不服申立による「再審妨害」など、再審制度の不備が顕在化します。そこで、無実の人を救済するには制度を改善すること、再審法の改正が必要だとの認識が広がり、世論も高まります。
 再審法=刑事訴訟法の再審についての規定は、戦後、日本国憲法の制定により不利益再審(元被告人の不利益となる再審)の規定が廃止された以外は、大正時代のままで、その条文もわずかです。時代に取り残された再審法を、いまこそ「無実の人の救済」の理念にふさわしいものにただすべきときです。

▽「会」の結成へ
 2000年代に入っての相次ぐ再審開始決定にくわえて、2016年の刑訴法「改正」の際、附則に「再審請求審における証拠開示についての検討義務」が盛り込まれ、日弁連は今年の人権擁護大会で、再審法改正をテーマにした分科会を開催します。
 このような情勢と世論の高まりなど、今を絶好の機会として、「再審法改正をめざす市民の会」の結成をすすめてきました。

ビデオメッセージ 「市民の会」の活動で再審ルールの実現を 厚労省郵便不正事件 村木厚子さん  

 日本の刑事司法は、非常に大きな問題を抱えています。裁判員制度の導入や、私の逮捕をきっかけにした一連の刑事司法制度改革の中で、通常審については一歩前進しました。一方で再審に関しては、今後の課題として放置されたまま、冤罪を訴える人々が明確なルールもないまま、気の遠くなるような年月、再審の開始を待ち望んでいます。
 身に覚えのない罪に問われるということは、自分自身の人格と異なる「犯罪者」という烙(らく)印(いん)を押され、一生あるいは亡くなった後も背負っていくということです。冤罪の疑いが生じた場合は、できる限り早く、公正に裁判のやり直しをおこなわなければなりません。
 刑事司法のあり方を変えるには、国民一人ひとりがこの問題にきちんと関心を持つことが重要です。市民の会の活動によって、多くの方々がこの問題に関心を寄せ、再審のルールを作る法改正が実現することを心からお祈りします。

会場の発言から 証拠の開示について素早く実現させよう 映画監督 周防正行さん  

 現行の再審についての法律は、「再審できますよ」と言っているだけで、その後どういう手続きを踏むかは全く決められていません。
 法制審議会刑事司法制度特別部会で委員をやらせていただき、その時に「再審の証拠開示については、きちんとした法律を作るべきだ」と訴えましたが、結局先送りになってしまいました。ただ、証拠開示について何らかの手だてをしなければいけない義務があるとなっています。すぐ救わなければいけない人たちがたくさんいますから、その義務を素早く果たすために、「市民の会」に参加して、引き続き訴えていくつもりです。
 マスコミの皆さんには、再審というものがどういうものであるかを、多くの市民に理解していただける記事を書いていただきたい。政治家の皆さんにも、こういう不正義がまかり通っていることをきちんと理解していただいて、再審の法改正を早く実現していただきたいと思っています。

冤罪の原因を分析し改革した米に学ぼう 甲南大教授 笹倉香奈さん  

 アメリカでは「自分たちの国に冤罪は存在しない」との考え方が非常に強く、冤罪防止や救済のための法制度は発展しませんでした。
 しかし、80年代の終わり頃からDNA鑑定で無実の罪を晴らそうというイノセンス運動が広がり、89年以降2446件で冤罪が晴れました。これは、アメリカ人にとって大きな衝撃でした。事件を分析して、冤罪の原因を明らかにし、2000年代以降に冤罪の防止や救済のための制度改革、立法や運用の改革がおこなわれるようになりました。
 私は決してアメリカの刑事司法はいいものだとは思っていません。しかし、少なくとも、過ちから学んで、少しでも制度を良くしようという制度改革の試みをおこなっています。
 このような姿勢に学んで制度を改革するというとりくみを今こそ始めるべきではないかと思います。そして「市民の会」でも、このような海外の動きと連携できればと思っています。

〈「結成集会」のもよう〉  

 村井敏邦一橋大学名誉教授のあいさつで開会。西嶋勝彦袴田事件再審弁護団長の講演。
 各界からの発言では、自民党の鈴木貴子衆院議員(袴田巖死刑囚救援議員連盟事務局長)、日本共産党・仁比聡平参院議員、藤野保史衆院議員、社民党・福島瑞穂参院議員(メッセージ)、東住吉国賠・青木惠子さん、布川国賠・桜井昌司さん、袴田事件・袴田秀子さん、映画監督の周防正行さん、笹倉香奈・甲南大学教授などが発言。名張事件・野嶋真人弁護士は「奥西さんをなぜ生きて帰せなかったか。大きな理由は証拠開示ができなかったことだ」と述べ、大崎事件・鴨志田祐美弁護士は「6月で原口さんは92歳。3回の再審開始、しかし検察の再審妨害でいまだに救われない。今年を再審法改正『元年』にしよう」と呼びかけました。厚労省郵便不正事件・村木厚子さんのビデオメッセージも紹介されました。
 伊賀カズミ国民救援会副会長が「結成宣言」を読み上げ、宇都宮健児元日弁連会長が「一刻も早く再審法改正を実現しよう」とあいさつし、閉会しました。

 ●「市民の会」運営委員
(敬称略・50音順、●印は共同代表7人、☆印は事務局長)
●青木惠子(冤罪犠牲者の会共同代表、東住吉国賠原告)/●伊賀カズミ(関西冤罪事件連絡会代表、国民救援会副会長)/泉澤章(日弁連えん罪原因究明第三者機関の設置に関する特別部会事務局長)/市川寛(弁護士、元検察官)/井戸謙一(弁護士、元裁判官)/指宿信(成城大教授)/今井恭平(フリージャーナリスト)/●宇都宮健児(元日弁連会長)/海渡雄一(弁護士、監獄人権センター代表)/●木谷明(弁護士、元裁判官)/☆客野美喜子(なくせ冤罪!市民評議会代表)/川崎英明(関西学院大教授)/鴨志田祐美(日弁連再審における証拠開示に関する特別部会会長)/小池振一郎(日弁連死刑廃止及び関連する刑罰制度改革実現本部副本部長)/小竹広子(弁護士)/●桜井昌司(布川国賠原告)/笹倉香奈(甲南大教授)/里見繁(関西大教授)/篠田博之(月刊「創」編集長、日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長)/白取祐司(神奈川大教授)/●周防正行(映画監督)/瑞慶覧淳(再審・えん罪事件全国連絡会事務局長)/豊崎七絵(九州大教授)/成澤壽信(現代人文社代表取締役)/新倉修(青山学院大名誉教授)/新田渉世(日本プロボクシング協会袴田巖支援委員会委員長)/西嶋勝彦(袴田事件弁護団長)/水谷規男(大阪大教授)/水野智幸(法政大教授、元裁判官)/●村井敏邦(元刑法学会理事長)

裁判員裁判施行10年 国民救援会の「改善要求」 国民の裁判監視・批判の保障を  

 国民救援会は、5月20日、「裁判員制度施行10年にあたっての国民救援会の改善要求」を発表しました。その概要を紹介します。全文は、ホーム・ページに掲載しています。

 重大刑事事件を対象とした裁判員制度が2009年5月21日に施行されて10年が経過しました。

国民救援会の見解
 裁判員制度に対する国民救援会の基本的な見解は、次の2点です。
 第1に、国民が裁判に参加する意義は、裁判の事実認定について生活実態に裏打ちされた「市民の健全な常識」を反映させることにあります。これまでの職業裁判官のみによる裁判の弊害を正し、冤罪を生まない公正な裁判の実現への一歩となる可能性があると考えます。第2に、裁判員制度は、「自白」偏重の捜査や冤罪を生んできた刑事司法制度を放置したまま施行されており、「迅速裁判」ならぬ拙速裁判の危険のもとで、国民が治安強化と冤罪・誤判を増大させることに手を貸すことになりかねない危険があることです。
 国民救援会がこれまで制度と運用の両面にわたって主張してきた改善要求は、以下の通りです。

制度改善の要求
 (杆邯△鮗綢硫修垢觚判前整理手続終了後の立証制限の廃止など
 国民の裁判批判や知る権利を抑圧する検察の開示証拠の目的外使用禁止規定の廃止など
 「裁判員であった者」に対する守秘義務の削除
 ぜ萃瓦戮忘櫃靴討諒杆鄂佑領会保障、取調べ過程の全面可視化
 ジ〇ヾ閏蟷ち証拠の全面開示
 μ戯疊酬茲紡个垢觚〇ヾ云總覆龍愡

運用改善の要求
 〆枷修砲ける中核的な事項が「秘密のベール」に覆われている問題に関して、実質的公開裁判の推進、公判冒頭の刑事裁判の鉄則の説示、評議のつどの刑事裁判の鉄則徹底、守秘義務の緩和
 ¬牛磧覆爐魁砲良埆菷魁事案の真相解明のために不可欠な充実した審理に関して、検察に対する積極的な全面的証拠開示のための措置、弁護側立証の保障に関する諸項目
 9駝韻砲茲觝枷修隆道襪犯稟修紡个垢詈歉秡蔀屬亡悗靴董検察開示証拠の目的外使用禁止規定の限定適用、国民による裁判の監視・批判の保障
 ず枷衆の選任に関して、辞退許容の拡大
 ト鏥深圈θ鏐霓佑凌畔噌澗に関して、形式的理由による安易な勾留等の禁止

10年間の実施状況
 今回の「改善要求」では、以上の前提に立って、裁判員制度の施行から10年間の実施状況について次のように分析しています。
 制度改善は、審理期間が長期にわたることが予想される事件の対象除外など、その制度設計の「ほころび」を繕う一部改定等はありましたが、刑事裁判の基本理念にかかわる課題は一顧だにされませんでした。その一方で、運用に関しては、公表された実施状況での統計数値や報道等から、一部で前項の運用改善要請の趣旨に添う誠実な実施が伺える事情が存在します。同時に、前記指摘の期待に沿う裁判事例が一定数存在したことが推認できますが、それはごく一部にとどまります。刑事裁判の理念・原則の視点からは、一部の変化はありますが、大部は職業裁判官のみに拠った裁判動向の延長といえる状況です。
 次に、制度施行から本年2月末日までの実施状況の概要を〜任状況、⊃獲期間、H酬萋宛について分析したうえで、裁判員経験者のアンケートを紹介。判決を導く非公開の評議で、市民の感覚が裁判官と違うと感じることが「あった」が46%、「なかった」が47%で拮抗している中で、違和感を感じた刑事裁判のルールについては、全体の17%が黙秘権、14%が推定無罪、12%が検察官に立証責任があることを挙げているという驚くべき事実を指摘しています。

的を射た会の指摘
 裁判員制度施行前から施行中に掛けて、国民救援会が問題点を指摘し、改善要求を掲げてきた事項が、本来あるべき刑事裁判の姿に照らして的を射たものであり、その意識的改善努力が裁判所において組織的にはなされないまま推移したことが浮かび上がっており、これでは冤罪をなくすことができません。

今後の課題と決意
 冤罪をなくすためにも、裁判員制度のメリットを生かすためにも、〃沙裁判の鉄則をあらゆる機会を通じて徹底することの重要性、国民が裁判員裁判に参加する意義は、生活実態に裏打ちされた「市民の健全な常識」を反映させる事実の認定に関する審理・判断にこそあり、量刑判断にはなじまないこと、制度の全面的な検証は、裁判員被選任事実の秘匿義務も加えて、厳しい守秘義務とこれによる萎縮効果が最大の障壁になっていることを指摘しています。
 最後に、今回の「改善要求」は、裁判員制度施行10年にあたって、国民救援会は、あらためて、制度と運用の抜本的改善を厳しく要求すること、そして裁判員が様ざまな制約を課せられるなかででも、その本来もっている積極的可能性を引きだすような事件支援運動を探求し、冤罪犠牲者の救援と、これを通じた今後の冤罪防止のための活動にいっそう力を注ぐ決意を表明すると結んでいます。

岐阜・大垣警察市民監視国賠事件 情報収集の目的自体違憲 適法いうなら具体的に主張せよ 岐阜地裁  

 中部電力の子会社が山の尾根に計画する風力発電所について勉強会を開いた市民の個人情報を岐阜県警大垣署の警備課(公安警察)が子会社に漏らし、住民運動つぶしの相談をした大垣警察市民監視国賠事件で、損害賠償と個人情報の抹消を岐阜県などに求めた裁判の口頭弁論が5月20日、岐阜地裁(池町知佐子裁判長)で開かれました。
 これまで被告の岐阜県は、中電子会社の議事録で明らかになった大垣署の市民監視について、一切認否していません。一方で、こうした市民監視を「公共の安全と秩序の維持」(警察法2条)という一般的抽象的な主張のみで合理化しようとしています。
 今回、原告らは「そもそも公安警察に目をつけられ、個人情報を収集されるいわれはない。『適法』というなら、適法性を主張する被告・岐阜県こそが具体的に主張と立証をすべき」とあらためて釈明を求めました。
 これを受けて、池町裁判長は「個人情報の収集について必要性や妥当性など具体的な事情にもとづいた主張をしてはどうか」と県に促しました。
 原告らは、この日の陳述で「県警警備部が『自然破壊に反対する人物』という点に着目して、長年にわたり情報収集してきたこと、また、勉強会以降は、反対運動が大々的な市民運動に展開しないようにする目的で情報収集したことは明らか。そのような目的での収集が正当化されるはずがない。本件の情報収集・保管・提供の目的はそれ自体違憲・違法だ」と強調しました。
 裁判後、傍聴参加者のための報告集会(写真)があり、裁判の内容の説明があり、参加者との意見交換も行われました。次回の口頭弁論は、7月31日午後1時半からです。

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