日本国憲法と世界人権宣言を羅針盤に、弾圧事件・冤罪事件・国や企業の不正に立ち向かう人々を支える人権団体

2019年4月15日号

2019年4月15日号  

熊本・松橋事件で無罪 宮田さん、35年目の無罪  

 1985年、熊本県松橋町(現・宇城市)で起きた殺人事件(松橋事件)の犯人として懲役13年の刑を受け、無実を訴えてきた宮田浩喜さん。そのやり直し裁判(再審公判)で、3月28日、熊本地裁(溝國禎久裁判長)は宮田さんに無罪判決を出しました。九州各県から会員約30人が駆け付けました。

 「主文、本件公訴事実中殺人の点については、被告人は無罪」。
 溝國裁判長は、宮田さんが「被害者殺害の犯人であることを示す証拠はなく、被告人が被害者を殺害したとは認められない」と明快に断じました。これで宮田さんの殺人犯の汚名が正式に返上されることになりました。

迅速さを考慮し証拠調べず判決

 2月8日におこなわれた第1回再審公判では、検察は有罪立証をできませんでした。
 この点について判決は、検察官が宮田さんの「自白」を含めて確定審で取り調べ済みの証拠など多くの証拠の取り調べを請求したが、/年にわたる再審請求審で取り調べた結果、「自白の重要部分に客観的事実との矛盾があるとの疑義が生じたことなどから、その信用性が否定された」こと、検察官が「被告人が有罪である旨の新たな主張・立証はおこなわない旨を宣明した」ことから、仮に相当の時間をかけて証拠調べをおこなっても、客観的事実と矛盾する疑いがあることを根拠とする再審請求審の判断と異なる結論に至ることは想定しえないこと、5榲弔気鵑稜齢や体調などを考慮して迅速な審理・判決を弁護団が求めていること、こ猟衄酬茲ら長い年月が経過していることを踏まえると、被告人の「自白」を取り調べる必要は認められないとして、証拠調べ請求を却下したとしました。
 判決後、弁護団、国民救援会は、それぞれ検察に対して控訴しないよう要請をおこないました。その後、その日のうちに、検察が上訴権を放棄したため、宮田さんの無罪が確定しました。
 記者会見では、弁護団は凶器とされた小刀と被害者の傷が符合しないこと、凶器に巻き付けたとされる布に血痕がないなど無罪となった理由を説明したのち、さらなる冤罪を生まないために、代用監獄の廃止、取り調べの全面的可視化、証拠開示、再審請求審での検察官の上訴禁止などが必要だと述べました。
 次男の宮田賢(まさ)浩(ひろ)さんは、「これで宮田家の矜(きょう)持(じ)が保てたことになり、弁護団には感謝しかありません。ただし、検察については、最後まで抵抗し、何らの謝罪もなかったのは残念です」と悔しさをにじませました。

花束を手渡して無罪おめでとう

 記者会見後、宮田さんが住んでいる施設に東住吉冤罪事件国賠裁判の青木惠子さん、布川事件国賠訴訟の桜井昌司さん、熊本県本部の佐藤秀年事務局長、中央本部の坂屋光裕事務局次長が訪問しました。
 代表して青木さんが、「無罪ですよ、宮田さん。おめでとうございます」と花束を渡し、数々の冤罪事件の無罪判決にあたって雪冤のリレーを引き継いできた「無罪」の掛け軸を示して祝福しました。

長野・あずみの里 「業務上過失致死」 事件 罰金20万円の不当判決  

山口さん「控訴し、たたかう」 長野地裁松本支部

 長野・あずみの里「業務上過失致死」事件で、長野地方裁判所松本支部は3月25日、山口けさえさんに対して罰金20万円の不当判決を出しました(裁判長=野澤晃一、裁判官=眦舁拡子、岩下弘毅)。
 2013年12月、特別養護老人ホームあずみの里の利用者Aさん(当時85歳)が、おやつで出されたドーナツを食べたのちに意識を失い、その後死亡しました。警察は、Aさんの死因について医学的な検討もおこなわず、Aさんが喉にドーナツを詰まらせた窒息死であると断定し、また当日の職員の動きや利用者の状況などについて現場の検証も不十分なまま、見込み捜査で「事件」としました。検察もずさんな捜査をチェックせずに、14年12月、当日おやつ介助の応援に入っていた准看護師の山口さんを、注視義務(Aさんがドーナツを食べる際にこれを注視して窒息を防止すべき義務)を怠ったとして業務上過失致死罪で起訴しました。
 裁判で弁護団は、異変の際にもがくなどの反応がなかったことやドーナツの量やのどに詰まる形態ではないなど、窒息とするには医学的に説明ができない、またAさんのCT画像などから脳や心臓の疾患に起因する心肺停止が考えられることを医学的に示しました。また、山口さんには注視義務がなかったことも明らかにしました。追い込まれた検察は、おやつを配る際にAさんに提供するおやつの形態(ゼリー状のもの)を確認せずにドーナツを配り窒息事故を防止すべき義務を怠った(確認義務違反)ことを訴因に追加しました。
 判決は基本的に検察の主張を追認し、死因についてドーナツによる窒息が原因だとしたうえで、「注視義務違反」は認められないとしながら、追加された訴因である「確認義務違反」を認めて有罪判決を出しました。
 この事件は、介護施設で食事中の利用者の異変を刑事事件として起訴するという前代未聞の事件であり、介護や福祉の未来がかかっている裁判として注目を集めました。無罪要請署名も44万5千人分が寄せられ、医療・福祉に携わる幅広い団体をはじめ、全国に支援が広がりました。
 判決当日も、400人を越える支援者が駆けつけました。判決後の集会で、山口さんは「残念な結果になりました。でも負けません。本日控訴します。改めてご支援よろしくお願いします」と決意を語りました。支援者を代表して、長野県看護協会の松本あつ子会長が「大変悔しい、憤りの思いです。不当な結果がまかりとおらないようにがんばらなければと思います」と述べました。つづいて、全日本民主医療機関連合会の岸本啓介事務局長、国民救援会の鈴木猛副会長が無罪判決へいっそう奮闘する決意を語りました。

〈抗議先〉〒390―0873 松本市丸の内10―35 長野地裁松本支部・野澤晃一裁判長
〈激励先〉〒399―8204 安曇野市豊科高家5285―11 協立福祉会気付 「無罪を勝ちとる会」 FAX:0263(73)0788

最高裁事件統一要請 「一日も早く判断を」 署名提出し要請行動  

 第240次最高裁要請行動が3月27日におこなわれ、係属している冤罪4事件(宮城・仙台北陵クリニック事件、栃木・今市事件、静岡・袴田事件、鹿児島・大崎事件)から30人が参加しました。
 冒頭、9日前に最高裁で再審開始決定が確定した湖東記念病院人工呼吸器事件の支援者・木村清和さんが発言。西山美香さんの再審を求める闘いで得た教訓を他の事件の裁判でも活かしてほしいとして、自白偏重による裁判の是正、検察への証拠開示の促進、再審決定に対する検察の不服申し立て禁止などを徹底するよう要請しました。
 栃木・今市事件・勝又拓哉さんを守る会の須黒雪枝さんは、「客観証拠が乏しいなら、遺体に残ったDNAなどの証拠は重要なはずなのに、なぜか扱いがずさん。わいせつ目的の犯罪なのに勝又さんのDNAが検出されなかったという点が一番重要な事実ではないか」と強調。勝又さんの母・イミ子さんも、「(検察の立証が苦しくなると)裁判官が訴因変更を促して(有罪にした)。裁判は真実を明らかにする場であるべきだ」と批判しました。
 大崎事件・原口アヤ子さんの再審を勝ちとる首都圏の会の平川明雄さんは、「検察は特別抗告から10カ月もたって意見書を提出するなど、裁判の遅延を計っている。最高裁があるべき姿を示してほしい」と訴え、同会の福田磨理子さんは、「良心にもとづき、公平・公正な裁判をしてほしい」と付け加えました。

●宮城・仙台北陵クリニック事件
 3月25日には、北陵クリニック事件の独自要請行動がとりくまれ、北は北海道、南は高知から約30人が要請しました。
 守(もり)大助さんの母・祐子さんは、「裁判官にとっては一つの事件かもしれないが、息子にとってはただ一度の尊い人生。潔白だからこそ誇りを持って闘っている。夢の中で『僕はやってない』という声に胸が張り裂ける思いです。息子は無実です」と訴えました。

●静岡・袴田事件
 3月27日の午後に、袴田事件の独自要請行動がおこなわれ、弁護人の村崎修弁護士や、日本プロボクシング協会袴田巖支援委員会、袴田巖さんの再審をめざす会、国民救援会など、総勢17人が参加しました。それぞれ、袴田さんの再収監を許さず、早期再審開始を要請しました。

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