日本国憲法と世界人権宣言を羅針盤に、弾圧事件・冤罪事件・国や企業の不正に立ち向かう人々を支える人権団体

2019年3月5日号

2019年3月5日号  

東京地裁 外科医師は無罪 東京・乳腺外科医師冤罪事件 科捜研鑑定に厳しい批判  

 乳腺腫瘍の摘出手術を執刀した外科医師が、術後に患者の胸を舐めるなどのわいせつ行為をおこなったとして起訴されていた事件で2月20日、東京地裁(大川隆男裁判長)は外科医師に対して無罪判決を言い渡しました。

被害供述はせん妄によるもの

 裁判所はまず、女性の供述の信用性について判断しました。女性の供述によると、麻酔で意識もうろうとしている女性の胸を外科医師がはだけさせ、乳首を舐めたり、ズボンに手を入れて自慰行為をしたとされています。
 判決は、他の患者の担当医や看護師が頻繁に出入りする4人部屋で、カーテン1枚で仕切られた空間でおこなったとされることから、「被害状況はかなり異常で、供述の信用性に疑問を生じさせる」と指摘。また、「胸に唾液がべったりついていた」とする供述は、相当印象が強かったはずなのに、事件発生時の供述調書には記載されておらず、後から付け加えられた可能性があるほか、エピソードの詳細は信用しがたい点があり、信用性に疑問を生じさせるとしました。しかし、女性の証言は「具体的で迫真性に富み、一貫性がある」ことなどから、信用性を否定するまでにはいたらないとしました。
 女性の供述について弁護団は、手術のための麻酔から覚醒する際にせん妄状態(※)に陥ったことによるものだと主張していました。
 判決では、専門家の証人尋問をおこなった結果から、「薬学的知見及び精神医学的知見を踏まえて検討」すると、「麻酔から覚醒する際にせん妄状態に陥りやすい状態にあった」と認定し、犯行時間に女性が、せん妄状態に陥っており、「せん妄に伴って性的幻覚を体験していた可能性も相応にある」と認定しました。

ずさんな科捜研鑑定を非難

 二つ目の争点として、検察官は、女性の胸から採取されたDNAの量が多量であったことや唾液の成分のアミラーゼが検出された警視庁科捜研の鑑定結果から外科医師の犯行を推認できると主張していました。これに対して弁護団は、そもそも外科医師が医師としておこなう触診により唾液やDNAが乳房付近に付着する可能性は高いと主張。
 判決では、科捜研の鑑定が信用できるのかを検討し、鑑定者がワークシート(鑑定の記録紙)にやってはいけないとされている鉛筆で書き込みをおこない、消しゴムで消して修正をしていることや検査結果の重要性を知りながら、残った検査資料を廃棄し、再検証できないようにしたことについて、合理的な理由なく不適切で、職業意識が低く誠実性を疑わせ、警視庁の通達にも反すると厳しく非難しました。
 ただし、結果を捏造したとまでは認められず信用性がないとまでは言えないとして、最後に鑑定の証明力の程度について言及。弁護団の実験結果から、アミラーゼ鑑定で陽性反応が出たことは医師と女性との診察時の会話による唾液の飛沫によって生じたものである可能性や、触診の際に付着した汗などの体液による可能性を排除できないとして、鑑定結果の証明力は十分とは言えないとしました。
 判決は結論として、刑事裁判の鉄則である「疑わしいときは被告人の利益に」に忠実に、検察官の主張する犯罪事実があったとするには、合理的な疑いを差し挟む余地があるとして、外科医師を無罪としました。
*裁判官=大川隆男裁判長、内山裕史、上田佳子

無罪に涙ぬぐう姿 控訴させないたたかいに全力  

 2月20日の東京・乳腺外科医師冤罪事件の判決公判には38席の傍聴席を求めて、200人近い人々が東京地裁を訪れました。
 午後1時半過ぎに、支援者から「無罪判決」の一報が知らされると、法廷に入れなかった支援者からは「よかった」「ヤッター」の喜びの声があがりました。ほっとしたのか、涙をぬぐう姿もあちこちで見られました。
 判決言い渡し後に支援者が東京地検に、「控訴するな」の要請に赴きました。「予約がないと受けられない」と30分以上押し問答の末、ようやく要請書を手渡しました。
 報告集会では弁護団から判決についての報告を受けた後、被告とされた外科医師の両親に支援者を代表して国民救援会東京都本部の山友代事務局長より花束が、弁護団から「無罪」のデコレーション入りの特製パンが贈られ、みんなで無罪を喜び合いました。
 外科医師を守る会からは、無罪判決を確定させるために、検察庁あての団体署名に広くとりくんでほしいと呼びかけがされ、無罪確定まで運動を続けることを確認しました。
 国民救援会東京都本部と中央本部は同日、声明「無罪判決を心より歓迎し、検察が控訴を断念することを求めます」を発表しました。
 記者会見での、外科医師のコメント(一部)を紹介します。

ご支援に感謝 外科医師  

 私は100日以上、警察あるいは拘置所で身体拘束をされて、社会的な信用を失い、職を失い、大変な思いをしました。また、警察の一方的な発表に基づく報道など、私と私の家族、私の周りの方が大きく傷付きました。
 (この判決が)今の法体系や、それを実行する方へ、何らかのメッセージになればいいと思います。
 また、多くの方にご支援をいただきました。この場を借りて御礼を申し上げます。

選挙運動の権利を守る共同センター 公正で自由な選挙を 警察庁と中央選管へ申し入れ  

 統一地方選挙にあたり、全国労働組合総連合、自由法曹団、日本国民救援会で構成する「選挙運動の権利を守る共同センター」は2月19日、警察庁と中央選挙管理会に公正で自由な選挙を求めて、要請をおこないました。

警察庁  

 国民救援会の鈴木猛副会長は、公職選挙法によって言論・表現活動に不当な制限が加えられているもとでも、日本国憲法に則って、のびのびと選挙活動ができるように、不当な干渉・制限をおこなわないことを強く求めました。
 全労連の橋口糺塩副議長から、選挙期間中であっても、労働組合の要求実現の宣伝活動は自由であり、公選法違反にはならないにもかかわらず、警察官から干渉・妨害を受けた事例を具体的にあげ、国民の権利を保障するように求めました。
 自由法曹団の緒方蘭事務局次長からは、通常の街頭宣伝に対する妨害がたびたび報告されると述べ、街頭宣伝に対する不当な規制はしないように、重ねて要請しました。
 警察庁の担当者からは、「関係部局に周知するように努める」との回答にとどまりました。

中央選管  

 中央選挙管理会に対しては、近年、投票率が極めて低いことが問題となっており、要因として住民が政治について議論すること、十分な情報提供があまりに少ないことが最大の要因ではないかと述べ、国民の言論・表現活動を最大限に保障するように求めました。
 特に、期日前投票する有権者が増えているもとで、選挙期間に入ってすぐに投票する有権者が十分な判断材料を受け取ることができるように、選管として、国民の権利を保障してほしいと述べました。
 インターネット選挙に関して、総務省の選挙に関するホームページを示しながら要請。買収などを禁止することは当然のこととして、多くの市民が選挙に参加するようになったもとで、実際に選挙期間中にできる活動についての説明が不十分で、有権者が萎縮するような表記ではなく、具体的にできる選挙運動を示して、活発に選挙活動がおこなわれるように、もっと積極的に啓蒙活動をしてほしいと要請しました。

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