2019年12月5日号
2019年12月5日号
岡山・倉敷民商弾圧事件禰屋裁判全国決起集会 各地の活発な活動を交流
元民商会員の確定申告を手伝ったことで倉敷民商事務局員の禰屋町子さんが脱税ほう助・税理士法違反に問われている倉敷民商弾圧事件禰屋裁判。同事件の全国連絡会は、１１月１３日、「禰屋さんは無罪！ ２０１９秋の全国決起集会」を開催し、２６都道府県から３１５人が参加しました。
検察官の立証計画がずさんなために禰屋裁判の公判がいまだ開かれないなか、「禰屋さんは無罪」の圧倒的世論で裁判所に迫ろうと９月１６日から２カ月間「禰屋さんは無罪！ 倉敷民商弾圧事件全国いっせいアクション」が全国で繰り広げられました。その総決起として開かれた全国決起集会。鶴見祐策弁護士が「禰屋事件の現状と今後の闘いの方向」と題して記念講演をおこないました（詳細は次号）。
弁護団からも支援の必要性
則武（のりたけ）透、千田（せんだ）卓司両弁護士が検察との攻防の状況について、弁護団報告をしました。
則武弁護士は、検察の立証計画が本来の立証とは程遠いもので、それを指摘すると検察は、「（法に則った立証の準備）作業をしていたら、２〜３年はかかりますよ」と居直りともいえる発言をするなど、違法な方法でも裁判所が味方をしてくれることを前提にした対応だと批判し、刑事訴訟法に則った立証活動を検察にさせられるかどうかは、支援運動にかかっていると強調しました。
千田弁護士は、正犯のＩ建設に脱税が成立するのか、禰屋さんに脱税ほう助が成立するのかについて述べ、「たまり」（脱税によって蓄えた財産）がないことを見ても正犯が成立しないこと、検察が脱税とする事実については間違いはあるが、犯罪として立件されるものではないと述べました。そのうえで、今後の方針とし、脱税の手段とされたものについて、そうではないことを税理士の協力を得て明らかにし、正犯・ほう助犯については法律問題がかかわるので、専門家に意見書を作成してもらい弁護団の主張を裏付けてもらう予定であると述べ、「裁判所が公正・公平な訴訟指揮をするように支援の側からの『禰屋さんにも無罪を主張する機会を与えろ』という声を大きくしてください」と支援の強化を強調しました。
その後、全国からの発言があり、学習によって禰屋無罪に確信を深め、署名目標を大きく超えて集めていることやそれぞれの会の会員拡大でも前進している状況、県内１９か所で４３団体１４６人が参加して宣伝行動をおこなったなど活発な活動が報告されました。全国連絡会から、�’�屋さん逮捕に怒りを込めて、１月２１日に全国でのいっせい宣伝、�■魁Γ隠浬点波紳仭換馘�一行動での宣伝行動などの行動提起がおこなわれ、小原（こはら）さん、須増（すます）さん、禰屋さんが決意表明をおこないました。
禰屋町子さんの決意表明
力を貸してください
逮捕されて、もう５年１０カ月。差し戻し後２年近くも公判が開かれていない異常な事態です。
昨年１月１２日の広島高裁岡山支部での原判決破棄、差し戻しの判決は、刑事裁判で９９％以上有罪判決が出されているなかで、皆さんが勝ちとってくれたものです。小原さん、須増さん、私の裁判のために、５０万人分の署名が、裁判所に届けてくれています。この数字は、倉敷市の人口に値します。それだけの署名を全国のみなさんが１人ひとりから集めてくれました。厚くお礼を申し上げます。それから、お金のない私のために弁護してくれている弁護団に感謝したいと思います。
いま弁護団と、Ｉ建設の仕訳日記帳を分析しています。１万７千の仕訳を分析して、仕訳の日付が８０％以上も違っていることがわかりました。こんなものを証拠にして私を有罪としようとしている検察は許せません。
私はあきらめません。最後までがんばります。みなさん、力を貸してください。
宮城・仙台北陵クリニック筋弛緩剤冤罪事件 守さんの無実の叫びを棄却
最高裁
准看護師の守大助さんが患者５人の点滴に筋弛緩剤を混入したとして、殺人及び殺人未遂罪で無期懲役が確定し、再審を求めている仙台北陵クリニック・筋弛緩剤冤罪事件で、最高裁判所第三小法廷（林景一裁判長）は１１月１３日付で、守さんの再審請求を認めない不当決定をしました。
確定審が守さんを有罪とした根拠は、科学的裏付けのない大阪科捜研の土橋均氏の「鑑定」と､自らの目で患者を診断することなく、患者の症状を「筋弛緩剤の薬効と矛盾しない」と述べた東北大医学部・橋本保彦教授の「証言」でした。
事実調べせず
再審請求で弁護団は、�‥擽挟嫩蠅篭效亟忘泙寮�分を検出していないとの志田保夫・前東京薬科大教授の意見書、��発端となった患者の急変の原因は筋弛緩剤中毒ではなくミトコンドリア病であるとの池田正行・前長崎大教授の意見書、��守さんの「自白」を真犯人の供述とみるのは不自然であるとの浜田寿美男・奈良女子大名誉教授の意見書を新証拠として提出していました。
最高裁決定は、新証拠についてなんら実質的判断をおこなわず、「疑わしいときは被告人の利益」という刑事裁判における鉄則が再審にも適用されるとした白鳥・財田川決定に反し、立証責任を弁護団に負わせた不当なものです。
第２次再審へ
弁護団は、１５日に記者会見を開き、最高裁の不当決定を批判し、第２次再審請求の準備に入ることを明らかにしました。
県本部と守さんを守る宮城の会は６人で１６日、仙台市の繁華街で最高裁決定本文とその批判をセットにしたビラを使って、最高裁の不当な決定が出されたこと、それに負けず、引き続き、守さんの再審無罪まで支援を続けることを訴え、９６枚配布しました。受け取りはあまり良くありませんでしたが、「北陵はおかしいやり方をする病院と自分も感じていた。前日のニュース見て、１９年も刑務所に入れられ気の毒だ。東北大学教授の証言はおかしい。今日は署名を取らないの」とビラを受け取りに来た男性もいました。また、「いてもたってもいられない」と山形・置賜の会の会員が手製のプラスターを作って参加してくれました。
守さんも、ご両親も、諦めません。「命のある限りたたかうと決意しています」（守祐子さん）。私たち支援団体としても無罪まで奮闘する決意です。
（宮城県本部事務局長・菅原秀俊）
【抗議先】〒１０２―８６５１ 千代田区隼町４番２号 最高裁第３小法廷 林景一裁判長、戸倉三郎、宮崎裕子、宇賀克也、林光晴の各裁判官
【激励先】〒２６４―８５８５ 千葉市若葉区貝塚町１９２ 守大助様
兵庫・姫路花田郵便局事件 元検察側証人が証言 神戸地裁
２人組の黒人男性による強盗事件でナイジェリア人のジュリアスさん（仮名）が再審を求めている姫路花田郵便局事件の再審請求審で１１月１４日、２度目の証人尋問が神戸地裁でおこなわれました。今回の証人は倉庫の扉が見える所で働いていた男性。事件後、警察や検察から倉庫の扉に南京錠がついていたかなど、しつこく聞かれたが、裁判で検事に言われた通り「はいはい」と証言した旨の証言をおこないました。
有罪判決はジュリアスさんがいなければ奪った金などをジュリアスさんの倉庫に隠すことはできないとしましたが、前回尋問で倉庫所有者の妻が、「ジュリアスがいなくて倉庫の扉が開けっ放しになっていたことがある」と証言したのにつづき、今回も倉庫に鍵がついていたという前提を崩すなど、重要な証言でした。
記者会見で池田弁護士は１月１５日の進行協議にはジュリアスさんも出席することになったと述べ、守る会の里見繁代表は、署名が累計で３０００人分を越えたことを報告しました。
裁判官は、証拠改ざん問題を追及する国賠裁判の動向にも強い関心を持っており、再審開始には国賠裁判での証人採用が重要です。県本部と守る会では、傍聴者を増やす努力をしています。
花田郵便局事件（国賠）の次回口頭弁論は、１２月１０日午前１０時から神戸地裁です。
滋賀・日野町事件第１１回全国現地調査 「若い世代が頑張らなければ」 大学生など全国から８０人が参加
検察の異議申立てにより大阪高裁でたたかっている日野町事件は１１月１７、１８日、全国現地調査をおこない、１０府県から８０人が参加しました。
現地調査直前に、被害者が殺害された時刻について胃の内容物の状況から「食後３０分以内」とした解剖医の報告書が実は根拠がなく、実際は１〜２時間、あるいはそれ以上経過していた疑いがあるとする法医学者の意見書を、弁護団が新証拠として裁判所に提出しました。
事前学習会で弁護団長の伊賀興一弁護士は、「食後３０分問題」が他の重要な証拠を捜査線上から排除してしまった、今回提出した新証拠は決定的であり、爆発的インパクトがある、と報告しました。また裁判所との二者協議が実現し、今後の成り行きによって三者協議の開催もあり得るとの裁判所の見解を引き出すことができたと報告しました。
二日目は殺害現場とされる日野町豊田の酒店や遺体発見現場、金庫発見現場等を見て回り、説明員が事件資料をもとに移動の車中や事件現場で説明し、質問にも答えました。また金庫発見現場では工事用道路から崖下に向かって被害金庫と同型の手提げ金庫を投げ捨てる実験をおこないました。大学の刑事訴訟法ゼミの学生から「ゼミでいろいろ調べていたが、実際現地調査に行くとまた違った景色を見ることができた」「この事件がこのまま風化して、『なかった』ことにならないためにも私たち若い世代ががんばらなければ」などの感想が寄せられました。
三重・名張毒ぶどう酒事件全国支援集会 「それでも奥西さんはやってない」
11月16日、名古屋市内で名張毒ぶどう酒事件の全国支援集会が開催されました。
最初に鈴木泉弁護団長が、証拠の閲覧や鑑定請求などに対し、何ら応答することなく不誠実な対応を重ねた名古屋高裁刑事二部高橋裁判長以下３名の忌避申し立てを、三度にわたり行ったことを報告、高橋裁判長は11月１日に依願退官したと述べました。
続いて集会のメインである周防（すお）正行監督と南山大学菅原真教授による対談。周防監督は映画「それでも僕はやってない」を製作するきっかけとなった痴漢冤罪事件のこと、シナリオ完成までに３年半もかかったこと、しかし痴漢冤罪ネットワークや全国弁護団の会議に参加し、日本の刑事司法の実態を知ることになったと語りました。
後に法制審議会委員となり、知り得たことをもとに意見を述べたが、悉（ことごと）く専門家の反撃にあい、証拠の全面開示等々が退けられたと語りました。
菅原教授は大学教授になったきっかけに始まり、今は憲法の観点から、39条の二重の処罰の禁止、いわゆる上訴権の禁止について、また加害者やその家族の人権救済について、学生と議論を深めていると報告されました。
弁護団を代表して市川哲弘弁護士から忌避申立の詳細、封緘（ふうかん）紙（し）問題、今後弁護団としては、改めて三者協議を求める等々パワーポイントを使って詳細に述べられました。
岡美代子さんの「兄はやってません。助けてください。」という切々とした訴えに、会場は水を打ったような静けさに包まれました。（伊賀カズミ）
名張事件第10次再審（最高裁）署名用紙
