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2018年8月25日号

2018年8月25日号  

栃木・今市事件 一審の誤り認めながら改めて無期懲役の判決 東京高裁「自白」偏重で有罪ありき  

 勝又拓哉さんが無実を訴えている栃木・今(いま)市(いち)事件に対し、東京高裁(藤井敏明裁判長)は8月3日、一審判決(無期懲役)の誤りを認め、いったん破棄したうえで、あらためて無期懲役の不当判決を言い渡しました。弁護団は判決を不服として即日、最高裁に上告しました。*担当した裁判官=藤井敏明裁判長、田尻克巳、大西直樹裁判官

 「主文。原判決を破棄する。被告人を無期懲役に処する」。
 主文を聞いて、勝又さんのお母さんは「なぜ」とひとこと声を出しました。
 午前10時30分から休憩をはさみ午後4時までかかった判決文の朗読中、勝又さんは裁判長の方向に身を乗り出し、ノートをとり判決を聞いていました。

「自白」映像で一審は有罪に

 今市事件は、2005年12月1日、栃木県今市市(現在の日光市)の小学1年の女児が行方不明となり、翌日、茨城県常陸大宮市の山林で遺体となって発見された事件です。約8年後の14年1月、警察は勝又さんを商標法違反(偽ブランド品の譲渡目的所持罪)の別件で逮捕し、拘束して今市事件についてウソの「自白」をさせました。
 一審・宇都宮地裁は、事件当日、勝又さんの車が死体発見現場方向へ向かい、帰ってきたというNシステムの記録や、勝又さんが女児と同じ小学校に通っていた経歴から土地勘がある、母親に宛てた「事件」のお詫びの手紙がある、女児の遺体に付着していた獣毛は勝又さんの飼っていた猫の毛であるなどの状況証拠をあげながら、それだけでは有罪を認定できないと認めたうえで、捜査機関で作成された「自白調書」とその取調べの一部を録画した映像によって有罪を認定しました。

客観的証拠と「自白」は矛盾

 高裁の審理で、弁護団は、「自白」は客観的状況と矛盾し信用できない、取調べの録画映像は採用すべきではないと主張。
 弁護団が依頼した鑑定人の吉田謙一東京医大教授は、「自白」では、死体が発見された現場で女児を立たせ、ナイフで6、7秒の間に10回刺し、その場に投げ棄てたとしていることについて、「自白」の殺害方法と遺体のキズは合わず、女児は寝かされた状況で刺されたこと、現場に大量の血液が流れた痕跡がなく、別の場所で殺されて、遺体が遺棄された旨、明らかにしました。「自白」が客観的証拠と合わず、「自白」の核心部分が崩れました。
 そこで裁判所は、検察官に対して、訴因の変更を事実上促し、検察官は、殺害時間を女児の行方が分からなくなった時間から翌日の午前4時までの間とし、殺害場所も遺体が発見された山林から「栃木県内か茨城県内、またはそれらの周辺」と大幅に広げたのです。

本来なら無罪推測で有罪に

 高裁は判決で、取調べを録画した映像を有罪の認定に使うことは違法、「自白」のうち、殺害方法や殺害現場は信用できないなど、弁護団の主張を認め、一審の判断は誤っているとしました。有罪証拠の核心部分が崩れたことで、本来、無罪にしなければなりません。しかし、藤井裁判長は、一審では、有罪の決め手にならないとしていた、勝又さんの母への手紙を、今市事件について謝罪しているものだとして証拠価値を引き上げ、その他の状況証拠とあわせ、勝又さんの犯人性は揺るがないとしました。
 しかし、それではなぜ勝又さんが、殺害方法などでウソをついたのかという疑問について、藤井裁判長は「自己に有利になるよう虚構を言った」など、なんらの証拠にももとづかず、勝手な推測で判断しています。
 結局、裁判所は「有罪ありき」の立場で、これまでの検察の起訴事実では有罪が出せないと判断し、検察に訴因の変更をさせ、それで有罪としたのです。殺害方法などの「自白」の核心部分を否定しておきながら、最終的には勝又さんのお詫びの手紙という実質的な「自白」を有罪の根拠としたもので、「自白」偏重の不当な判決です。
 判決後、勝又さんは面会した支持者に「とても信じられない判決。早速激励の手紙が届き、最高裁で頑張ろうという気持ちです」と決意を語りました。

〈抗議先〉〒100―8933 千代田区霞が関1―1―4 東京高裁・藤井敏明裁判長
〈激励先〉〒124―8565 葛飾区小菅1―35―1 東京拘置所 勝又拓哉様

茨城・布川国賠裁判 「膨大な時間を失った」 桜井さんと妻、姉が陳述 東京地裁  

桜井さん「膨大な時間失う」

 強盗殺人犯として無期懲役刑が確定し、29年間の服役後に再審無罪となった桜井昌司さんが、警察や検察の違法な捜査や公判活動の責任を追及している布川国賠裁判で、7月24日、東京地裁で桜井さんが受けた損害についての尋問がおこなわれました。
 傍聴席で支援者が見守る中、桜井さん本人、妻・恵子さん、桜井さんのお姉さんが証言台に立ちました。まず、桜井さんのお姉さんが、桜井さんが逮捕されてからの桜井さんを含めた家族のつらさ、両親の死に目に会えなかったことなどを涙ながらに話しました。長い年月が経ってもそのつらさは鮮明に記憶に残っているようでした。
 恵子さんは、いつも明るく前向きにみえる桜井さんの心の内側にある重い苦しみ、拘禁症の症状や「うそ」に過敏になり周囲と摩擦を繰り返してきたことや、指示命令を極端に嫌うことなどを語りました。仮出獄後結婚し、第2次再審請求申立て、再審決定、再審無罪、そして今に至るまで長い間傍らでいろいろ感じ悩み、共にたたかってきた恵子さんの話は桜井さんのつらさを本人以上に伝えてくれるようでした。
 桜井さんは、「何事かをなすべき膨大な時間を失った」「普通のおやじになりたかった」と話しました。涙あり、ときとして笑いもあり、裁判官も身を乗り出して聞き入る場面もあり、冤罪の罪深さを心に刻む尋問でした。裁判は9月19日に結審となります
 また、裁判に先立っておこなわれた要請行動では、誤判の原因となる証拠隠し・証拠のねつ造という検察警察の違法行為を認定するよう要請。その後、今市事件の支援者と合同で40人で宣伝行動をおこないました。
 報告集会には、青木恵子さん、勝又拓哉さんのお母さん、菅家利和さん、志布志事件の川畑幸夫さんら冤罪被害者も参加し、冤罪を作り出す検察警察の責任追及する活動、冤罪をなくすための活動を続けていく決意を述べました。(支援する会・山川清子)

最高裁統一要請行動「無罪向け頑張る」 湖東記念病院事件 西山美香さん訴え  

 最高裁係属事件の統一要請行動が7月26日におこなわれ、5事件25人が参加し、宮城・仙台北陵クリニック筋弛緩剤冤罪事件、滋賀・湖東記念病院人工呼吸器事件、熊本・松橋事件、鹿児島・大崎事件、神奈川・相模原児童相談所事件などの支援者が宣伝と要請行動をおこないました。
 宣伝でマイクを握った西山美香さんは、「特別抗告されて、なぜ私の無実が分かってもらえないのか、憤りで一杯だった。けれども、ここで諦めては、冤罪被害者に申し訳がたたない。再審無罪をめざして頑張ります」と力強く訴えました。
 北陵クリニック事件全国連絡会の高橋満さんは、有罪の根拠となった筋弛緩剤の成分が検出されたとする鑑定について、検察側の鑑定人が鑑定資料をすべて使用したとしていたが、実は残存していたことが再審請求審の中で明らかになったことをあげ、「事件性があったかなかったかも含めて考え直すべき事件だ」と述べました。

東京・小石川えん罪事件 「一日も早い再審を」1500人分署名提出 東京地裁  

 2002年に、文京区小石川のアパートで発生した強盗殺人で、同じアパートに住む伊原康介さんが別件逮捕で「自白」させられ無期懲役が確定している小石川えん罪事件の伊原康介さんを支援する会は7月31日、裁判所に要請行動をおこない、1500人分の署名と国民救援会第59回全国大会の決議を提出しました。

要請では、証拠開示と慎重な審理を求め、再審請求人の伊原さんと面会している支援者が、伊原さんが刑務所内で一生懸命勉強している様子などを話し、一日も早い再審開始を訴えました。

 その後、東京地裁前で35度を超える暑さの中、支援する会、救援会員など13人が参加し、ハンドマイクで宣伝しながらビラを配布しました。

三重・名張毒ぶどう酒事件「事件に真剣に向き合え」名古屋高裁・高検に要請  

 名張毒ぶどう酒事件の要請行動が7月27日におこなわれました。行動には3府県から16人が参加し、裁判所、検察庁に要請しました。
 要請では、「山口正之裁判長はまったく弁護団の要請にも応えず、三者協議もおこなわないままに不当決定を出した。いま高橋徹裁判長もまったく動こうとしていない。名古屋高裁は仕事をしない人たちの集まりか?」「裁判所が誤った判断をして、奥西さんを獄死に追い込んだのに、真剣に向き合おうとしないのはなぜだ」、「裁判所が間違った判断をしたら、罪もない人が罰せられるのに、間違った判断をした裁判官は、なぜ罰せられないのか」などと要請をおこないました。
 名古屋高検に対しては、「事件から57年も経過しているのに、いまだに証拠が隠されている。検察は国際社会からも批判を浴びているのに、なぜ知らん顔をできるのか」、「奥西さんを死刑囚として獄死させたという責任をどう取るのか」、「大阪地検特捜部の証拠改ざん問題が発生してから10年近くたつのに、いまだに総括もできておらず、再発防止策すら明らかにされていない」などと要請しました。
 名古屋高裁に対し個人要請署名2102人分をあらたに提出し、累計1万2620人分となりました。

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