日本国憲法と世界人権宣言を羅針盤に、弾圧事件・冤罪事件・国や企業の不正に立ち向かう人々を支える人権団体

2018年10月25日号

2018年10月25日号  

松橋事件が再審確定! 最高裁、検察の特別抗告を棄却  

 熊本県松橋(まつばせ)町(現宇城(うき)市)で1985年、男性が殺害され、宮田浩喜さんが犯人とされた「松橋事件」の再審請求審で、最高裁第2小法廷は検察側の特別抗告を棄却し、裁判のやり直しを認める決定を出しました。(裁判長・菅野博之、裁判官・鬼丸かおる、山本庸幸、三浦守)

検察が保管の無罪証拠発見

 松橋事件の再審の扉が開いた要因は、検察が判決確定まで公判に提出していなかった証拠を弁護団が発見したことです。
 宮田さんは、眼鏡が壊れるくらいの暴行をうけるという警察の厳しい取り調べで、「自白」をさせられます。その自白の中で、宮田さんは、被害者を殺害するときに用いた小刀に被害者の血がつかないように、シャツの切り取り布を小刀の柄に巻き付け犯行をおこない、犯行後自宅に帰って、その血が付いたシャツの切り取り布を自宅の風呂釜で燃やしたと言わされていました。しかし燃やしてなくなったはずのシャツの切り取り布が検察庁に保管されていたことが判明しました。それだけではありません。犯行時に来ていたとされたジャンパーに血がついたことにされていましたが、そのジャンパーからはルミノール反応が出なかったことも分かりました。さらに、凶器とされた小刀では出来ようもない刺し傷が被害者にあることも分かり、犯行に使われた凶器も違っていることが判明したのです。
 このような数々の無罪証拠が出てきたため、「自白」の信用性が認められなくなり、地裁・高裁で再審開始決定が出されていました。

証拠開示こそ緊急の課題だ

 再審段階になって「新証拠」が見つかり、無罪につながるケースは少なくありません。捜査機関が保管している証拠の開示が極めて重要であることを示しています。しかし、現在、多くの再審請求審で、検察は、刑事訴訟法に再審請求審での証拠開示の規定がないことを盾に取り、事件の真実を示す証拠を開示しようとしていません。

次は再審公判早期の無罪を

 今回の最高裁の決定を受け、今後、宮田さんのやり直し裁判である再審公判が熊本地裁で始まります。
 2年前の熊本地裁での再審開始決定以来、検察の上訴によって、施設にいながら無実を叫ぶ宮田さんの救済が遅れ、この間、再審請求人でもあった息子さんもお父さんの無罪判決を見ることなく亡くなりました。
 1日も早い無罪判決が求められています。
〈激励先〉 国民救援会熊本県本部FAX=050(3335)8986

松橋事件〉1985年1月8日、熊本県松橋町(現宇(う)城(き)市)で男性が自宅で刃物のようなもので刺され遺体となって発見されました。犯人として3日前に被害者と口論していた宮田さん(当時51歳)が疑われ、警察の厳しい暴力的な取調べを受け、犯行を「自白」させられ、逮捕、起訴されたものです。裁判では無実を訴え、犯行と宮田さんを結びつける物的証拠もありませんでしたが、「自白」を唯一の重要証拠として殺人罪で有罪(懲役13年)が確定。2012年に再審請求し、2016年に熊本地裁で、2017年11月に福岡高裁で再審開始決定が出されたものの、検察が特別抗告していました。

全国で、大いに宣伝を

 中央本部から、秋の冤罪いっせい宣伝のためのビラの版下や宣伝スポットを都道府県本部にお送りしています。
 現在、最高裁には、宮城・北陵クリニック筋弛緩剤えん罪事件、栃木・今市事件、静岡・袴田事件、滋賀・湖東記念病院人工呼吸器事件、鹿児島・大崎事件の5つの事件が係属しています。松橋事件の再審確定に続き、再審開始や無罪(今市事件)を確定させ、「無実の人には無罪」の流れをつくりましょう。この流れをつくるために、全国心ひとつに、宣伝に、署名にがんばりましょう!

鹿児島・大崎事件 原口さんの再審早く 全国現地調査で決意固める  

 10月13日、14日、鹿児島・大崎事件第20回全国現地調査が鹿児島・大崎町内でおこなわれ、8都道府県73人が参加しました。

 第1日目は、弁護団事務局長の鴨志田祐美弁護士が、地裁・高裁と2度の再審開始決定を勝ちとってきた内容と現在最高裁での弁護団・検察の攻防について解説しました。その後、参加者は、「被害者」とされる人が酔って落ちた側溝の第1現場にバス2台で向かいました。第1現場では、自転車に乗った「被害者」が側溝に落ちてかなりの重症になりうることを確認する実験(人形を自転車に乗せて側溝に落とす実験)をし、弁護団の一員でもある鹿児島県本部の永仮正弘会長をはじめ、弁護団から説明を受けました。
 その後、「被害者」が発見された牛小屋や自宅があった第2現場に向かい、家の見取り図を使って2人の「共犯者」とされた男性の「自白」に基づく犯行の問題点などを弁護団から説明を受け、質疑応答で学びました。
 2日目は、宿舎で各地の活動の交流と今後の活動方針を討議・決定しました。
 参加者からは、「これまでは印刷物で事件を学んでいたが、現地調査では立体的にものが見えると感じた」、「人形をもとにこういう風になったんですよと実際に見せられて、文章で読むのとは全然違うということを初めて参加して思いました」「原口さんのご家族がバラバラにされ、竹林の荒廃した土地を見て本当に悲しくなったし、権力に対する怒りが沸きました。原口さんの無罪を勝ち取る決意を固めたところです」など、感想が語られました。
 参加者一同の決議を挙げて、10日に最高裁で再審開始決定が確定した熊本・松(まつ)橋(ばせ)事件に続いて再審を確定させる決意を固め合いました。

大崎事件 1979年、鹿児島県大崎町の農家の牛小屋で、その家に住む男性の遺体が発見された。警察は義理の姉の原口アヤ子さんら親族4人が、共謀して殺人、死体遺棄をしたとして逮捕、起訴。原口さんは一貫して無実を訴えたが、有罪が確定。懲役10年を満期で服役し出所後、再審請求申し立て。2002年にいったん再審開始決定が出されるが、高裁で取り消しに。鹿児島地裁に第3次再審請求をして、地裁、高裁で再審開始が認められるも検察が特別抗告したため、現在最高裁に係属。

宣伝活動に許可は不要 各地で自治体に要請  

 自治体が市民の言論活動を規制する事例が増えています。国民のたたかいが広がるもと、萎縮せず、のびのび宣伝活動ができるように、憲法で保障された権利や干渉・妨害への心得を普及し、干渉などに機敏に反撃することが大切です。広島、群馬でのとりくみを紹介します。

広島 共同で質問状 ビラ配り規制は違法  

 広島市では市のホームページに、「道路上でのビラ配りには許可が必要」との記載があり、その道路を管轄する警察署に道路使用許可の申請をするようにとし、警察署とその電話番号を掲げていることが分かりました。
 記載に気づいた広島県本部役員からの報告を受けて、県本部常任委員会で早速議論し、10月16日、広島市長あてに質問状兼請願書を提出しました。
 質問状兼請願書では、街頭でのビラ配りに許可はいらないこと、道路交通法77条1項4号や県公安条例において、映画のロケや露店の出店など「一般交通に著しい影響を及ぼすような行為」のみ許可が必要になることを説明。しかも、この許可の理由となる「著しい影響」の要件は、表現の自由を保障した憲法21条や国際人権規約19条により、厳格な解釈が要求されているうえ、一般のビラ配りには許可が不要であることは判例上も確立されている、と述べています。
 また、広島市の記載では、道路上のビラ配りに一律に許可が必要であるかのように受け止められ、同様の掲示が憲法違反であるとの指摘を受けて、撤回した自治体もあり、広島市において、一律に許可が必要と考えるのであればその理由と根拠(その法令、条例等)について文書で回答するように求めています。
 今回の質問状兼請願書には自由法曹団広島支部、原水爆禁止広島県協議会、全日本建設交運一般労働組合広島県本部など22団体の代表らが名を連ね、共同して提出しました。
 直後に道路管理課より、ホームページの掲載を削除したとの連絡が入りました。

国民救援会広島県本部の川(せん)后(こう)事務局長(左から3人目)らが広島市道路管理課へ質問状兼請願書を提出

群馬 宣伝規制を撤回 市民の声が市を動かす  

 群馬県の高崎駅前周辺の商業施設には、駅から2階建て通路で直接出入りできるように整備されています。高崎市は駅前の道路整備に伴い、突然、「駅ぺデストリアンデッキなどの貸し出しルールが決まりました」という記事を、6月1日付の広報で発表しました。その内容は、「宗教や政治、営利などを目的としたもの、騒音や振動を伴うものなどは使用できません」というものでした。今まで長年にわたって駅周辺で宣伝や路上ライブなどを続けてきた団体や個人にとっては、驚きの発表でした。
 事態の重大さを感じた国民救援会などの団体が集まり「駅ぺデ問題連絡会」を結成、市に対してルールができた経過の説明を求めました。自由法曹団群馬支部は要請書を提出。同時に多くの市民が直接市役所に電話して説明を求めたり、問題点を指摘したりしました。こうした市民の声を代表して伊藤あつひろ市議が議会で質問し、市は9月1日付けの広報で、駅ぺデ貸出しルールについて、「宗教や政治、営利などを目的としたもの」を削除したことを発表しました。市民が声を上げることの大切さを改めて示しました。(県版より)

三重・名張毒ぶどう酒事件 新たな全国組織を結成 裁判所を300人の人間のくさりで包囲  

 奥西勝さんが八王子医療刑務所で無念の獄死をされてから3年となる10月4日、名古屋高裁前にて名張毒ぶどう酒事件の「人間のくさり集中行動」に取り組みました。この行動は、同日午後に結成した新しい全国組織の結成準備会と日本国民救援会、再審・えん罪事件全国連絡会の三者で共催し、全国へ呼びかけたものです。1都2府9県からおよそ300人の方にご参加いただきました。
 再審・えん罪事件全国連絡会の新倉修代表のあいさつ後、間もなく89歳となる請求人の岡美代子さんが「兄はやっておりません。無実です。どうか助けてください。」と声を振り絞って訴えました。
 また、死刑再審や死後再審といった名張事件と課題を共通にする袴田事件の袴田秀子さん、日野町事件の中野善之助滋賀県本部会長、そして、午前中の検察庁要請から駆けつけていただいた東住吉冤罪事件国賠訴訟の青木惠子さん、国民救援会中央本部の瑞慶覧淳副会長、愛知県本部の渥美雅康会長に訴えをいただきました。参加者全体で集会アピールを採択、裁判所へ向かってシュプレヒコールをあげて終了しました。
 代表による裁判所へのアピール提出行動後、場所を移して新たな全国組織「名張毒ぶどう酒事件の再審・無罪を勝ち取り、奥西勝さんの名誉を回復させる全国の会」の結成総会を160人の参加で行いました。
 宇佐見大司愛知の会会長の開会あいさつ後、市川哲宏弁護人からこの間の裁判所の不当な審理とそれに対する忌避申立(10月1日に最高裁が弁護人の特別抗告を棄却)の経緯と糊鑑定についての報告がなされました。その後、新たな全国組織結成にいたる経過報告や今後の方針、会則、役員などの提案がなされ、全員一致で承認されました。役員には、宇佐見大司会長のほか各地から4人の副代表と7人の世話人が選出され、また事務局長として愛知の長尾忠昭さんが選ばれました。
 結成総会にも参加された岡さんはメッセージを読み上げ支援を訴え、全国の参加者からは、各地での取り組み紹介と合わせてあらためて支援運動にとりくんでいきたい旨の積極的な発言、わかりやすい統一署名の作成やDVDでの学習、国際的な取り組みの必要性など今後の活動にいかす発言が相次ぎ、熱気あふれた結成総会となりました。
 この全国組織に結集し、裁判所の不当な審理を許さず、再審無罪を実現する運動を盛り上げていきます。(名張事件・愛知の会事務局長・田中哲夫)

米・ムミア事件 検事に緊急団体署名  

 米・ムミア事件で、再審請求棄却決定が無効となる可能性が出てきたという重要な局面を迎えていることを受けて国民救援会は、次回10月29日の法廷に向けて、緊急にラリー・クラスナー州検事に対して、警察と検察が持っている関係文書を開示するよう求める団体署名を全国に呼びかけ、検事に送付しました。
【解説】81年の白人警官殺害事件で黒人ジャーナリストのムミア・アブ=ジャマール氏が有罪とされた。しかし、殺害に使用された拳銃とムミアの拳銃は別物で、ムミアとは別人が現場から逃走したとの目撃証人もいる。
 事件の原審においてペンシルベニア州最高裁で関与したロナルド・キャスティル判事が死刑判決やその後の上訴過程で検察官として関与していたことが判明し、ムミアが新たに再審請求できる権利を取得することになるかもしれない状況が生まれている。裁判所は、検察に関係文書の開示を命じたが、今年8月に開かれた法廷で検察側は、関係文書を開示せず。そのため、次回法廷で検察に開示をさせることが求められている。

栃木・今市事件 最高裁で無罪を 総会で決意固める  

 10月6日、栃木・今市事件の守る会第2回総会がおこなわれ、80人が参加しました。
 一木明主任弁護人が東京高裁の不当判決の問題点について報告しました。一木弁護士は、「東京高裁判決は『有罪ありき』の立場で、これまでの検察の起訴事実では有罪が出せないと判断し、検察に訴因の変更をさせ、有罪としたのです。殺害方法などの『自白』の核心部分を否定しておきながら、最終的には勝又さんの手紙という実質的な『自白』を有罪の根拠としたもので、『自白』偏重の不当な判決です」と述べました。また、高裁が情況証拠を総合評価すれば勝又さんの犯行は認定できるとした点について、「一審判決でさえ情況証拠だけでは犯行は認定できないというほど、証拠は脆弱なものであり、大阪母子殺人事件の最高裁判例にも反するもので、高裁が独自の解釈を施して、再び無期懲役という重罪を無実の勝又さんに言い渡したことは全く許されない。最高裁で無罪判決を勝ちとるべく奮闘したい」と述べました。
 また、勝又さんのお母さんは、「拓哉を無罪にするために、皆さんのご支援をお願いします」と訴えると、参加者は拍手で応え、最高裁で逆転無罪を必ず勝ちとる決意を固め合いました。

司法総行動2018 国民の権利守る司法へ  

 国民の権利を守る司法の実現を目指しておこなわれる2018年度司法総行動が10月4日に東京都内でおこなわれ、最高裁や東京地裁・高裁、警察庁、法務省などの各省庁に対して要請行動をおこないました。この行動は、全労連、自由法曹団、国民救援会などの実行委員会で主催したもので、約80人が参加しました。
 要請行動は事前に送付している共同要請書への回答を得て、質疑をする形で進行しました。
 警察庁に対する要請で国民救援会の望月憲郎会長は、この15年間で刑法犯が3分の1に減少している事実をあげ、警察官を3万人以上増員しているにもかかわらず検挙件数が半減していることを指摘。犯罪取締りよりも、「公共の安全と秩序の維持」を口実にした国民監視のための情報収集に比重が置かれているのではないかと追及し、岐阜の大垣警察市民監視事件や、東京・小金井署の9条改憲反対署名不当連行事件などについて言及しました。
 最高裁に対する要請では、誤判の原因究明と冤罪の根絶に向けた第三者機関の設置について最高裁は、「個々の裁判の判決の当否の検証は、裁判官の職権行使の独立という観点から問題がある」として、「答える立場にない」と態度を明確にしませんでした。
 この回答を受けて、社保庁不当解雇事件の公正判決を求めて参加した全厚生労働組合の大門晋平中央執行委員は、「裁判官の独立は何のためにあるのか、国民の権利を守るためだ。人権を守るのが裁判所の責務のはずで、誤判による刑罰で人権侵害が起きているのに、裁判官の独立を盾に誤判の検証をしないのはおかしいじゃないか」と厳しくただしました。
 昼の最高裁前宣伝行動には81人が参加。マイクを握った北陵クリニック・筋弛緩剤冤罪事件東京の会の長濱慎さんは、多くの冤罪事件が警察の見込み捜査や自白強要で作られ、多くの再審事件が検察の証拠隠しや、まっとうな審理をしない裁判所によって、誤判救済の機会を奪われている実態を述べ、「無実の人の声に耳を傾け、無罪を獲得することは、私たち自身の問題でもある。私たちの声で裁判所を動かし、日本の司法を変え、健全な国づくりにつなげよう」と締めくくりました。

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