日本国憲法と世界人権宣言を羅針盤に、弾圧事件・冤罪事件・国や企業の不正に立ち向かう人々を支える人権団体

2017年9月5日号

2017年9月5日号  

岡山・倉敷民商弾圧事件 禰屋さんは無罪 控訴趣意書のポイント  

 岡山・倉敷民主商工会事務局員の禰屋(ねや)町子さんの裁判で、弁護団が7月に提出した控訴趣意書をもとに、弁護団の主張をまとめました(文責・編集部)。

 この裁判では、‥時、倉敷民商会員だったI建設の脱税を禰屋さんが手助けしたとされた「法人税法違反ほう助」、禰屋さんが税理士以外に禁止されている税務書類を作成したとされた「税理士法違反」(同民商事務局員の小(こ)原(はら)淳(じゅん)さん、須(す)増(ます)和(かず)悦(よし)さんも税理士法違反)に問われています。
 一審・岡山地裁は3月、前記の2つの点で禰屋さんを有罪とし、懲役2年・執行猶予4年の不当判決を出しました。

脱税の手助けしていない 法人税法違反ほう助は冤罪  

 一審判決は、広島国税局の木嶋輝美査察官の報告書(以下、「報告書」)を鑑定書として採用し、それにもとづきI建設が脱税し、禰屋さんがほう助(手助け)したと認定しました。
 弁護団は、脱税ほう助は冤罪であるとして、次のとおり指摘します。
■「報告書」は鑑定に値せず、採用したことは誤り [#q1054585]
 この「報告書」は鑑定書といえるものではありません。
 木嶋査察官は、国税局の捜査官として、国税局が収集した資料をもとに脱税のストーリーを作り上げ、訴追のための資料として検察官に提供するために報告書をまとめただけです。その中身も、木嶋査察官自身が帳簿などの全資料に当たったものではなく、他の査察官の報告書を孫引きするなど、他人のものを利用したものです。また木嶋査察官は、I建設を脱税で告発した本人で、公平な鑑定人とは到底いえません。一審判決が「報告書」を採用したことは誤りです。

■I建設に脱税の故意はない [#vfa345a9]
 裁判所は、有罪方向の事実のみを取り上げ、禰屋さんが法廷で詳細に主張した内容を全く検討していません。
 弁護団が税理士の協力も得て検証したところ、売上の繰り延べはありましたが、翌年以降の売上になるので結局は課税され、課税される金額は減りません。さらに、査察官の調査でも、脱税による蓄財(「たまり」)はありませんでした。脱税のために原資料を偽造したり、隠(いん)匿(とく)した事実もありません。仮にI建設関係者に経費の水増しや棚卸の調整などの認識があったとしても、I建設には「たまり」はなく、「たまり」がない場合には法人税法違反として告発しないというのが国税局の扱いです。

■「脱税」ほう助の事実ない [#rfc579fa]
 一審判決で、禰屋さんを有罪とした証拠は、「報告書」とI建設の会計担当者の供述です。しかし担当者の供述は、脱税の経緯などあいまいで、一審判決も「具体性を欠く部分が多いことは否めない」と認めています。
 禰屋さんは、毎年I建設の決算期に数回、I建設の事務所を訪れる程度で、個々の建築現場の進行状況や金銭の動きなど、事業の実態を把握できる状況にはありません。また、帳簿類の真偽についても、禰屋さんは関知していません。禰屋さんは、会員が正しい法人税等の確定申告をするようにと、I建設の担当者の指示に従い、数値をパソコンに打ち込み、会計処理をしただけです。
 くわえて禰屋さんには、脱税を手助けする動機もなければ、I建設からなんらの利益を供与された事実もありません。

税理士法違反ではない 禰屋さんは会計処理をしただけ  

 税理士法では、税理士でない者が、他人の求めに応じて、業として税務書類を作成した場合、それを犯罪としています。
 弁護団は、禰屋さんは会計処理をしただけで、他人の求めに応じて、業としておこなったものではない、と主張します。
■禰屋さんの行為は税務書類の作成ではない [#o9f00a85]
 禰屋さんの行為は、民商の会員から提供された会計資料の数値を、民商事務所にあるパソコンに機械的に打ち込み、印刷しただけです。

■「他人の求めに応じて」 [#wf61ded2]
 民商は、「自主記帳」「自主計算」「自主申告」を掲げ、会員同士が学び合い、知識や能力不足を補い合っています。民商事務局員は、それに必要な支援と手助けをする関係にあり、それは業者運動の推進をめざす仲間の関係です。決して「他人」ではありません。

■「業として」 [#n3817234]
 民商事務局員は、民商の活動の共同の運動の推進者であり、中小業者の仲間として、営業と暮らし、権利を守り向上させるため、ともに民商・全商連運動に参加しているのです。単に雇用された労働者でなく、役員と一緒に運動に責任を持つ立場にあります。禰屋さんの行為も、私利を図ったものではなく、民商がめざす運動の一環です。いわゆる「生(なり)業(わい)」とはいっさい無縁の行為です。

■無害な行為の処罰許されない [#c32e1ae5]
 禰屋さんの行為は、課税の適正を害することのない行為です。小原・須増裁判では、課税の適正を侵していないけれども、侵す「おそれ」があるとして有罪とされました。しかし憲法が求める「適正な手続」の理念から、無害の行為を観念的に「おそれ」があるとして罰することは許されません。国公法弾圧堀越事件の最高裁判決でも、「公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが、観念的なものにとどまらず、現実的に起こりうるものとして実質的に認められる」行為に限定して適用すべきだとしています。
 税金を申告して納税することは憲法上の権利であり、申告納税制度の理念に沿って、罰則の適用は限定的に解釈されなければなりません。無害な行為は処罰せず、私利を図り、みだりに他人の「税務処理」に介入することを反復するような行為のみに、処罰は限定すべきです。税理士以外が税理士業務をおこなえば一律処罰される、との解釈は誤りです。

■結社の自由の侵害 [#ld6a1686]
 民商は、中小業者の営業と暮らし、諸権利を守り、社会的・経済的地位の向上を図ることを目的とする、憲法で保障された結社です。その活動は、不公正な税制を改革する運動、経営を守る運動、平和と民主主義を守る運動など、申告納税権の実現を含んでいます。
 禰屋さんら事務局員は、民商会員とともに、民商の結社の自由の重要な主体です。

事件の目的は民商弾圧 禰屋さんを428日も拘束  

 弁護団は、本件起訴が倉敷民商の活動に対する弾圧を目的としてなされたものであると厳しく指摘します。それは捜査の経過から明らかです。
 2014年2月、警察・検察は、個人所得税の確定申告(3月)や消費税率の5%から8%への増税(4月)を控えた時期に、禰屋さんら3人を逮捕し、小原さん・須増さんを184日間、禰屋さんを428日間も身柄拘束しました。事件とは関係のない民商や会員に関わる大量の資料や、民商の活動に不可欠なパソコンなどを違法に押収しました。この事件によって法人会員が96社から40社へと大幅に減少しました。
 その一方で、I建設の社長夫妻は逮捕されず、いっさいの身柄拘束もされていません。パソコンも押収されず、データを印刷させ提出させただけです。脱税した際に課せられる重加算税の課税の可否についても、社長の妻は証言を拒絶し、裁判所からの照会に税務署は回答を拒絶するなど、妻、税務署、検察が一体となって事実を隠そうとするのは、実際には重加算税が課せられていないからだと断ぜざるを得ません。I建設に国税の筋書きを認めさせるために、パソコンの差押えを控え、身柄拘束を勘弁してやると、利益を供与しているのです。
 また、木嶋査察官によれば、脱税で調査していた国税局は当初税理士法違反を問題にしていませんでした。しかし、検察が問題にしたため告訴したものです。
 一連の捜査や起訴の経過から、今回の事件が、倉敷民商の弾圧を目的としておこなわれたことは明らかです。

愛知・豊川幼児殺人事件 田邉さんの無実を確信 8都府県64人が現地調査し学習  

 田邉雅樹さんが無実を訴えて再審を申し立てている愛知・えん罪豊川幼児殺人事件の第3回全国現地調査が7月29日、愛知県豊川市内でおこなわれ、8都府県から64人が参加しました。
 まず、事件説明のDVDを視聴し、田嶌久資弁護士による再審請求についての説明を聞いたうえで、バスで現地調査に出かけました。
 参加者は、「自白」にもとづき、男児が連れ去られた駐車場から男児を遺棄したとされる海岸の岸壁までバスで移動しました。

自白の嘘検証
 田邉さんの「自白」では、男児を連れ去った駐車場からすぐの山桃交差点で、赤信号で停止し、助手席の男児のシートベルトをかけ、青信号で発進した、となっています。しかし、有罪確定後の調査で、その時刻、山桃交差点の信号は点滅信号になっており、青信号にはならないことが判明しています。
 参加者は、山桃交差点を通過し、犯行現場とされる佐脇浜の岸壁に移動しました。当初「自白」では、高さ3メートルほどの岸壁に男児を立たせ、背中を押して突き落としたことになっていました。しかし、事件当時、潮が引いて、岸壁の下の岩場が出ていたと報道され、男児の遺体に岩場に当たったようなキズがないことと矛盾することが明らかになると、突然、「自白」が変更され、岸壁で男児を両手で持ち、バスケットボールを投げるようにして海に投げ捨てた、と遺体の状況と矛盾しないようにされました。参加者は、男児と同じ10キロの人形で実験をしました。
 参加者からは「意外と10キロは重く、なかなか3メートルは投げられない」「現地調査に参加したことで、田邉さんの無実に確信が持てた」などの感想が出されました。

支援を広げて
 現地調査後のまとめの会で、国民救援会の鈴木猛事務局長が閉会のあいさつをおこない、「今日見た事実を持ち帰り、一日も早く田邉さんを社会にとりもどすために支援を広げましょう」と訴えました。
 弁護団は、再審にあたり、山桃交差点の信号問題、漂流予測から自白どおりの犯行では遺体が発見された時刻に遺体発見地点には漂着しないとする専門家意見書、田邉さんの車に男児を乗せたのなら、必ず男児の服の繊維などの痕跡が残ることを明らかにした実験結果などを新証拠として裁判所に提出しています。
 なお、現地調査に先立ち「田邉さんを守る会」の第7回総会が83人の参加でおこなわれました。総会では、雅樹さんのお父さんがあいさつに立ち、「息子は気が弱く、人にあわせる性格でした。息子は無実です。皆さんのご支援をお願いします」と訴えました。

〈事件の概要〉2002年7月、豊川市内のゲームセンターの駐車場に停められていた車から男児(1歳10カ月)が何者かに連れ去られ、翌日、9キロ離れた佐脇浜で遺体で発見されました。警察は当時、同じ駐車場に車を停めていた田邉雅樹さんを呼び出し、ホテルに警察官とともに宿泊させるなど警察官の監視下におきながら長時間の取調べをおこない、「自白」させ、未成年者略取、殺人の罪で起訴しました。一審無罪、二審で逆転有罪。最高裁で懲役17年が確定。昨年7月15日、名古屋高裁に再審を申し立て。

静岡・袴田事件 事件現場歩き学習 10都道府県から60人参加 現地調査  

 袴田巖さんの再審無罪を求める実行委員会(国民救援会など8団体で構成)は、袴田巖さんが逮捕されて51年目にあたり、8月19日に現地調査をおこないました。現地調査には10都道府県から60人を超える参加がありました。国民救援会からは、群馬、東京、静岡、愛知、岐阜、滋賀、大阪から32人が参加しました。
 現地調査は、2班に分かれてDVDなど使っての学習会と地元の支援する会のガイドで事件現場の説明を受けました。
 現地調査には、姉のひで子さんも参加。巖さんが獄中から家族に送った手紙を紹介し、家族に必死に無実を訴える巖さんを孤立無援の状態なかで家族で支えてきた当時のことを思い出して涙をこらえながら、「今日も多くの方に参加していただき感謝しています。巖は元気に毎日浜松の街を歩いています。おかげさまで表情も変わってきました。今も死刑囚のままなので、一日も早く再審を開始して無罪となるため、ご支援をお願いします」と訴えました。
 参加者からは、「初めて現調に参加して、権力で一人の人生が変わってしまう恐ろしさを感じた」と感想が出されました。
 前日の18日には、静岡県警へ謝罪を求める抗議行動をおこないました。

宮城・仙台北陵クリニック事件 「再審開始の決断を」 高裁署名8万2千余に 仙台高裁  

 准看護師の守大助さんが患者5人の点滴に筋弛緩剤を混入したとして無期懲役が確定した仙台北陵クリニック・筋弛緩剤えん罪事件の第26回の要請行動が7月26日におこなわれました。当日は5県から19人が参加、仙台高裁の裁判官に守大助さんの一日も早い再審開始決定と無罪を訴えました。
 この日提出した署名は2492人分、提出累計は8万2634人分となりました。
 大助さんの母・祐子さんは大崎事件の再審開始決定を例にあげ、「犯罪を裏付ける客観的証拠がない点が同じ、証拠とされるものは警察が自ら病院内を捜索せずクリニック職員から手品のごとく提出されたものばかり、直接証拠とされる19本のアンプルも写真のみ。自白も刑事に誘導、強要されたもので急変時間が合わず訴因変更を繰り返し自分たちのストーリーに合わせた。訴訟指揮ができるのは裁判所だけです。嶋原裁判長には是が非でも再審開始の決断と一生心に残る裁判を心からお願いします」と訴えました。

岡山・倉敷民商弾圧事件 最高裁、署名が9万突破 倉敷民商弾圧事件の小原・須増裁判で8月18日、最高裁への独自宣伝・要請行動をおこない、小原さんをはじめ25人が参加しました。  

 小原さんは要請のなかで、みずからの勾留について述べ、「184日の間、すべての生活を警察、検察に支配されました。私は否認をしているのに犯罪の処罰のような奴隷的拘束を受けました。それまでの普通の生活を奪われました。明らかに、憲法に違反する身体の奴隷的拘束がおこなわれたと思います」と訴えました。
 この日、個人署名6789人分(累計9万3638人分)、団体署名26団体(同778団体)、裁判官への手紙96通を提出しました。個人署名が9万を突破し、全国連絡会では、早期に10万署名を達成しようと、協力を呼びかけています。

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