日本国憲法と世界人権宣言を羅針盤に、弾圧事件・冤罪事件・国や企業の不正に立ち向かう人々を支える人権団体

2017年7月15日号

2017年7月15日号  

鹿児島・大崎事件 無実を叫び38年 鹿児島地裁が再審開始決定  

親族らと共謀して殺人・死体遺棄をしたとされ、原口アヤ子さん(90歳)が再審を求めていた鹿児島・大崎事件で、鹿児島地裁(冨田敦史裁判長)は、6月28日、原口さんと亡くなった元夫の再審を開始する決定を出しました。

涙浮かべ「嬉しい」原口さん  

 午後1時30分すぎ、鹿児島地裁の玄関から勢いよく飛び出してきた男女2人の弁護士。「再審開始決定」、「二度目の画期的決定」と書かれた垂れ幕を広げると、正門前に集まった支援者から喜びの声が上がりました。
 同じ頃、志布志市内のホテルで一報を待つ原口さんの元にも知らせが届きました。そばにいた支援者の稲留淳子さんによると、原口さんの次女が「再審開始だよ」と伝えると、緊張していた原口さんの表情が解け、みるみるうちに涙がこぼれ、絞り出すように「うれしい」と話したそうです。原口さんは数年前から認知症が進行し、身体機能も低下。最近では、言葉を発することも困難になっていました。稲留さんによれば、「アヤ子さんは再審決定が出たことを理解して、顔をくしゃくしゃにして喜んでいた。心の底から解放されたような笑顔だった。娘さんと抱き合い、しばらく涙を流していた」とのことでした。

'支援者も安堵'

 裁判所から渡された決定書を携えた弁護団事務局長の鴨志田祐美弁護士は、支援者から祝福の言葉を受けると、背中を震わせ、むせびながら号泣。「皆さんの力でもぎ取った再審決定です」と、決定書を高くかざしました。
 安堵の表情を浮かべていた国民救援会鹿児島県本部の福一涼子事務局次長は、「全国から2万千人を超える署名をいただき、今回の決定がお礼代わりになった。毎月、宣伝と裁判所要請を続け、事件の地元の大崎支部では、再審をめざす会と一緒に、アヤ子さんの見舞いやサポートに力を尽くしてくれた。こうした運動が効を奏したと思う。自分の命を削って頑張るアヤ子さんに、早く再審無罪の知らせを届けたい」と展望を語りました。
 歓声と拍手にわく様子を感慨深く眺めていた救援会宮崎県本部の堀田孝一事務局長は、過去に福岡高裁宮崎支部で棄却決定を受けたことから「決定が出るまで心配だった。やっと真実が認められたなあ」と話し、瞳を潤ませていました。

'事件が離れず'

 大崎事件は、2002年にいったんは鹿児島地裁で再審決定が出されたものの、その後取り消されています。今回が2度目の再審決定です。
 決定後に開かれた記者会見では、原口さんの長女・西京子さんが、「母は認知症になり、自分の事もよく分からなくなって苦しんできたが、事件のことだけは頭から離れなかったようです。38年間の(無実を訴え続けてきた)人生が無駄にならないよう、もう少し頑張ってほしい」と話しました。
 会見には、布川事件の桜井昌司さん、東住吉冤罪事件の青木惠子さん、足利事件の菅家利和さんも顔を揃えました。青木さんは、「この再審決定を確定させて、アヤ子さんが残りの人生を心穏やかに過ごせるようにしてほしい」などと話しました。

新旧証拠 総合評価 決定「共謀も殺害もない」  

 大崎事件は、原口アヤ子さんとその親族3人が、共謀の上、被害者をタオルで絞殺して死体を遺棄したとされたものです。有罪の根拠となったのは、「共犯者」とされた親族3人の「自白」で、その一人が「打っ殺してきた」などと言うのを聞いたとする家族の「目撃供述」がその自白を支えていました。そして死因は頸部圧迫による窒息死と推定した鑑定(城旧鑑定)が、これらの供述の裏付けとなっていました。
 決定は、弁護団が新証拠とした法医学鑑定(吉田鑑定)により、遺体に頸部圧迫による窒息死を示す所見がなく、城旧鑑定の証明力が減殺されると判断。家族の「目撃供述」の供述心理分析をした大橋・高木鑑定により、体験に基づかないことを話している可能性があると認め、目撃供述の証明力も減殺されるとしました。その上で、新旧証拠を総合的に再評価。3人に知的障害があり、捜査機関の暗示や誘導を受けて供述した可能性を否定できないことや、供述を裏付ける客観証拠が存在しないことから、「共謀も殺害行為も死体遺棄もなかった疑いを否定できない」として再審を開始しました。
 鴨志田弁護士は、供述心理鑑定が再審で初めて新証拠として認められたと評価。「決定は、事件に関わる人たちがなぜ虚偽自白をしたのか、生身の人間として見て判断をした」と指摘。「司法の良心をヒシヒシと感じ、裁判所の覚悟を示した」と評価しました。

弁護団、周防監督が検察要請  

 再審開始決定を確定させようと、6月29日、再審請求人でもある原口さんの長女・京子さん夫妻、弁護団の森雅美弁護団長、映画監督の周防正行監督、国民救援会の鈴木亜英会長ら12人で、最高検察庁に要請をおこないました。
 法制審議会特別部会の委員も務めた周防監督は要請で、「いま検察官は知的障害がある人たちの取調べを検証したいと録音・録画を積極的にしようとしている。大崎事件は、知的障害のある方への配慮がまったくなされずに取調べがおこなわれた。現在の検察官の立場から、批判的な目で当時の捜査を検証するべきだ。そのことが検察が失った信頼を回復する手だてになる」と話しました。

検察が即時抗告 「公益の代表」の責務放棄  

 鹿児島地検は7月3日、大崎事件の再審開始決定を不服として即時抗告をおこないました。これにより、福岡高裁宮崎支部で再審を開始するかどうかをあらためて判断することになります。
 国民救援会はじめ支援する4団体は同日、連名で抗議声明を発表。「検察の即時抗告申立は、『公益の代表者』としての検察の責務を放棄し、検察が信頼回復のために自ら打ち立てた『検察の理念』にも反する」と厳しく批判し、「原口さんが命がけで勝ちとった2度の再審開始決定が、検察の即時抗告で救済が遅れることになる」と指摘しました。
 救援会鹿児島県本部と原口アヤ子さんの再審をめざす会は、開始決定以降、連日「即時抗告をするな」と鹿児島地検に要請をおこない、中央本部と「首都圏の会」も共同で最高検に要請。福岡県本部も福岡高検に要請していました。

〈激励先〉 国民救援会鹿児島県本部 FAX=099(298)5161

袴田事件 直ちに審理終結を ''''裁判所が鑑定人尋問の意向  

 袴田事件の三者協議が6月29日、東京高裁でおこなわれ、協議後、弁護団が記者会見をおこないました。
 三者協議の内容について弁護団によれば、裁判所は(再審開始決定の根拠となった鑑定をおこなった)本田教授と(検察の意見に沿った方法で検証実験をおこなった)鈴木教授の2人の証人尋問を9月中におこなう意向を示しました。これに対し弁護団は「尋問は必要ない」と意見を述べました。しかし、裁判所は、弁護側、検察双方に2人に対する尋問事項を今後示すよう求めるとともに、年内に最終意見書を提出してもらう方向ですすめる意向を示しました。
 会見で弁護団は、裁判所の指名によって本田教授の鑑定方法についての検証実験をおこなった鈴木鑑定書に対して、6月28日付で意見書を提出したことを明らかにしました。意見書では、2月に出された鈴木教授の中間報告では、本田教授が使用した試薬ではDNAの酵素が分解され、DNAを消失してしまうとされていたが、6月に出された鑑定書では、DNAは消失せず、検出されることが明らかになり、袴田さんの着ていたとされる白半袖シャツについていた血液は「袴田さんではない別人」の血液だったという地裁の再審開始決定が揺るがない、ただちに審理を終結して、検察官の即時抗告を棄却するよう求める、としています。
 また、弁護団は、鈴木教授の中間報告が、裁判所にも弁護側にも示される前に、マスコミで報道されたことの問題を指摘。くわえて報道機関が、実際にはDNAが検出されているにもかかわらず、本田教授の鑑定方法を「不適切」などと間違った報道をしたことを厳しく批判し、反省と是正を求めました。
 一方、検察は、鈴木鑑定書に対して意見を表明していません。また、弁護団に対し本田鑑定に関わる資料を提供するよう求めています。

署名19万に

 同日、支援者が東京高裁前での宣伝行動をおこない、その後、裁判所に対し、要請をおこない、署名2万2634人分を提出しました。累計で19万人分を超えました。
 参加者は、弁護団の入廷の激励をおこなったのち、検察に対し、即時抗告を取り下げるよう求めました。

滋賀・日野町事件 写真の混在認める 証拠捏造の疑い強まる 大津地裁  

 滋賀県日野町で酒店の女性経営者が殺害され、犯人として客であった阪原弘さんの有罪(無期懲役)が確定した日野町事件の第2次再審請求審の三者協議が6月29日、大津地裁で開かれました。阪原さんは再審請求するも2011年に亡くなり、遺族が12年に第2次再審請求審を申し立てています。
 この日の協議で、阪原さんが遺体発見現場と被害者の店から奪った金庫の投機現場へ自発的に案内したことの証拠として出されていた実況見分調書の写真が、行きと帰りが入れ替えられており、捜査員の誘導があったという弁護団の主張に対して、検察側は「不自然な点はない」と反論したとのことです。
 検察側は写真の混在は認めたものの、誘導はなかったと反論していますが、証拠の捏造の疑いが強まっています。
 7月18日、19日には、阪原さんの捜査にあたった警察官、検察官の証人尋問がおこなわれます。

〈要請先〉〒520―0044 大津市京町3―1―2 大津地裁 今井輝幸裁判長

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