日本国憲法と世界人権宣言を羅針盤に、弾圧事件・冤罪事件・国や企業の不正に立ち向かう人々を支える人権団体

2017年6月5日号

2017年6月5日号  

「私は無実です」国民救援会が新たに支援決定した冤罪事件 栃木・今市事件  

「自白」と証拠が矛盾
 国民救援会は、勝又拓哉さんが無実を訴えている栃木・今(いま)市(いち)事件を、冤罪事件として支援決定をしました。事件を紹介します。

■事件の概要
 2005年12月1日、栃木県今市市(現日光市)の小学1年生の女児が行方不明となり、翌日、茨城県の山林で、遺体となって発見されました。
 警察が捜査しましたが、犯人逮捕に至らず、事件発生から約8年後の14年、勝又拓哉さん(台湾生まれ、当時31歳)を商標法違反(偽ブランド品の販売等)、銃刀法違反(ナイフの収集)で別件逮捕。その勾留中に本件の取調べをおこない、女児を車に乗せ、ナイフで刺して殺し、死体を遺棄したとの「自白」をさせ、逮捕・起訴しました。16年4月、宇都宮地裁で無期懲役の判決を受け、現在、東京高裁で控訴審がおこなわれています。

■事件の特徴
 事件の特徴は、‐)瑤気鵑糧塙圓鯲付ける物的証拠がない、⇒罪を支える証拠は「自白」と状況証拠ということです。
 有罪判決も状況証拠だけでは有罪にできないことを認めています。しかし、「自白」は信用でき、状況証拠と「自白」をあわせれば犯人と認定できるとしました。裁判員裁判では、別件逮捕による長期勾留と「自白」の任意性が問題となり、取調べの録音・録画テープが証拠として採用され法廷で流され、この「自白」の映像が有罪の決め手とされました。

■判決の問題点
 以下、有罪判決の問題点を指摘します。

(1)「自白」と客観的事実が不一致
 「自白」では、―児の両手両足をガムテープで縛った状態で立たせ、女児の右肩を左手でつかみ、正面から右手で一気に10回刺した、5回くらい刺したとき女児は崩れ膝立ちになったが刺し続けた、△修慮綵児を投げ捨てた、6Т錣箏骸蠅覆匹魑△訶喘罎納里討拭△箸気譴討い泙后
 しかしこの犯行態様は、被害者の刺創や現場の状況と矛盾します。
●被害者は立っていることが困難
 女児は、大量に出血し死亡していることから、刺された後に意識が低下して体勢を崩し倒れてしまう、と考えられます。膝立ちになった後も肩をつかみ体勢を維持させることは困難で、それだけの強い力で肩をつかめば痕が付くはずですが、そうした痕はありません。
●殺害方法と血痕との矛盾
 「自白」どおり、立った状態で被害者を刺した場合、下の方(足の方)に流れた血痕があるはずです。しかし遺体には、身体の上方や左右に流れる血痕はありましたが、下の方に流れる血痕はありませんでした。これは、寝かせた状況で刺したことを示すものです。
●血液の量と殺害場所との不一致
 鑑定結果から少なくとも1箸侶豈佞流れ出たと考えられます。しかし、現場には被害者の血痕は微量で、弁護団の実験から地面に血が染み込まないことが明らかになりました。したがって、どこか別の場所で殺害して遺体を遺棄したと考えられます。

(2)「自白」を裏付ける証拠がない
●「わいせつ行為」の痕跡はない
 「自白」では、当初「強姦した」、その後、「被害者の陰部や胸を触った」「キスをしたり、自分の陰茎を握らせ、射精した」と供述しています。しかし、被害者にはわいせつな行為を受けた痕跡はありません。「自白」通りであれば遺体に付着しているはずの勝又さんのDNA(精液、汗、唾液、皮膚片など)は検出されていません。
●第三者の存在の可能性
 被害者の頭に貼り付いていた粘着テープから、勝又さんのDNAは出ず、第三者のDNAが存在する可能性が出ています。

(3)「秘密の暴露」がない
 「自白」には、真犯人にしか知りえない「秘密の暴露」がありません。凶器を捨てた場所、血で汚れた手を洗った公園などは不明のままで、凶器や、女児を脅したとされるスタンガン、返り血をあびたという衣服なども発見されていません。

(4)「自白」に任意性はない
 今市事件では、「自白」後の取調べが録音・録画され、それが有力な証拠とされました。しかし、この「自白」の映像には、警察に心身共に痛めつけられて人格的に屈服させられ「自白」に至る過程は録画・録音されていませんでした。
 勝又さんは別件逮捕後、警察で「殺してゴメンナサイ」と50回言わされ、人格を否定する暴言、顔をビンタされる暴行を受け、「認めれば罪が軽くなる」と利益誘導にわたる取調べで自白を強要されました。
 一審判決が根拠とした録画映像は、捜査機関に都合の良い取調べ場面だけが録音・録画されるという不当なものです。

共謀罪 強行採決に怒り 必ず廃案に!全国で連日の行動  

世論を恐れ
 国民の内心の自由を奪う共謀罪(テロ等準備罪)法案が5月23日、与党(自民・公明)と維新によって衆議院本会議で強行採決されました。
 共謀罪法案は4月19日から衆議院法務委員会で審議が始まりましたが、審議の中で問題点がいっそう浮き彫りになっています。さらに与党は、金田法務大臣に答弁させないために、国会法を無視し官僚答弁を優先させるなど強権的運営を強行してきました。
 審議時間が30時間の目安を超えるからと無理矢理採決に持ち込んだのは、国民の中に共謀罪の危険性が広く知れわたる前に採決してしまおうという、与党側のあせりの表れです。世論調査でも、「今国会で成立させる必要はない」が6割を超えるなど、世論は変化してきています。
 国民救援会の会員・組織が、廃案をめざし、これまで全国各地で758カ所(学習323、宣伝340、集会95)でとりくんでいます。
 運動をさらに広げ、四度目の廃案を勝ちとりましょう。

国連も懸念
 国連プライバシー権に関する特別報告者のジョセフ・ケナタッチ氏が、共謀罪法案について、プライバシー権や表現の自由を制約する懸念があるとする安倍首相宛ての書簡を5月18日付で出しました。書簡では、法案の「計画」や「準備行為」の文言が抽象的であり、恣意的な運用の恐れがあり、対象犯罪が幅広くテロリズムや組織犯罪と無関係のものを含んでいることを指摘し、いかなる行為が処罰の対象となるかが不明確であり、刑罰法規の明確性の原則に照らして問題があるとしています。

静岡・袴田事件 検察の抗告棄却を 弁護団「検証実験は無意味」東京高裁  

 1966年、強盗殺人・放火事件の犯人として袴田巖さんが起訴され、死刑が確定した袴田事件。2014年3月に静岡地裁で再審開始決定が出されたものの、検察の抵抗により即時抗告審が東京高裁に係属しています。
 5月23日、東京高裁(大島隆明裁判長)で三者協議がおこなわれ、裁判所が職権でおこなっているDNA鑑定の「検証報告書」が4月末までに提出され、その結果を踏まえて今後の進行について議論されることになっていました。しかし、裁判所が嘱託した鈴木鑑定人からは「報告書」が提出されず、具体的な内容については次回以降の三者協議に持ち越すことになりました。
 記者会見で西嶋勝彦弁護団長は、裁判所の決定からすでに1年5カ月以上が経過していることを厳しく指摘し、「81歳を過ぎた袴田さんの人生を、このような無意味な実験によりこれ以上翻(ほん)弄(ろう)するのは裁判所のあるべき姿ではない」と、怒りを込めて批判しました。
 同日、弁護団は、再審開始決定の根拠の一つになった弁護側DNA型鑑定の検証実験について「高裁が嘱託した鑑定人の最終報告書を待つのは無意味だ」とし、検察による抗告の速やかな棄却を求める意見書を提出しました。
 これに対して、裁判長からは、鑑定人には5月末までに「検証報告書」を提出するように促し、今後DNA鑑定について、再審開始決定の根拠とされた本田鑑定人と今回裁判所が嘱託した鈴木鑑定人の尋問を行う意向が示されました。

署名17万に
 袴田巖さんの一日も早い再審無罪を勝ち取る実行委員会は、東京高裁前宣伝行動のあと高裁、高検への要請行動をおこないました。この日、1062人分の署名を提出(累計17万人分)。要請行動には、静岡、神奈川、東京、埼玉などから19人が参加しました。
〈要請先〉〒100―0013 千代田区霞が関1―1―4 東京高裁 大島隆明裁判長

滋賀・日野町事件 当時の捜査官を尋問へ 大津地裁が決定  

 日野町事件の三者協議が4月26日、大津地裁(今井輝幸裁判長)で開かれました。
 事件は1984年、滋賀県日野町で起きた強盗殺人事件の犯人とされた阪原弘さんの無期懲役が確定したもので、阪原さんは2011年に亡くなり、遺族が第2次再審請求を大津地裁に申し立てています。
 三者協議後、弁護団(伊賀興一団長)は、新しく着任した今井裁判長が、証拠開示と並行して証人尋問を7月から始めるとの意向であることを明らかにしました。裁判所は、金庫発見現場引き当て捜査を担当した捜査官の尋問をおこなうことを決定しました。
 確定判決は、阪原弘さんが被害者宅から盗んだ金庫の発見現場を案内することができたことは「秘密の暴露」であるとして、引き当て捜査報告書を有罪判決の根拠としています。しかし、第2次再審請求審で開示された引き当て捜査報告書に添付された写真のネガを弁護団が分析したところ、警察は金庫発見現場への行きの写真と帰りの写真を差し替えて添付し、いかにも阪原さんが金庫発見現場に案内したかのように報告書の添付写真を捏(ねつ)造(ぞう)していたことが判明しました。今回の警察官の証人尋問は、確定判決の重要な証拠に関わる証人尋問となります。
 裁判所は、この尋問を踏まえ、捜査を指揮した検事と、弁護団が提出した被害者の死因と阪原さんの自白が矛盾することを明らかにする法医学鑑定意見書を書いた吉田謙一東京医大教授の証人尋問をおこなう意向を示しました。
 事件は、再審開始にむけて大きな前進を勝ちとっています。ひきつづき、全国からのご支援をよろしくお願いします。(滋賀県本部)
〈要請先〉〒520―0044 大津市京町3―1―2 大津地裁 今井輝幸裁判長

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