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2017年12月15日号

2017年12月15日号  

熊本松橋事件 高裁も再審支持 自白の信用性を否定 検察は抗告し最高裁へ  

 福岡高裁(裁判長・山口雅、裁判官・平島正道、盒狭Ъ)は、11月29日、熊本地裁が出した熊本・松(まつ)橋(ばせ)事件の再審開始決定を支持し、検察官の即時抗告を棄却する決定を出しました。しかし、検察は執拗に抵抗し、12月4日、最高裁に特別抗告しました。

 弁護団が「再審開始」の垂れ幕をかかげると、集まった支援者から歓声と拍手が起こりました。
 記者会見で弁護団は、「高裁決定は、弁護団が提出した鑑定書などについても一つひとつ丁寧に検討を加えたうえで、熊本地裁の再審開始決定を支持する判断をおこなっている。宮田浩喜さんの自白に関して、取調べの苦痛に耐えかねてウソの供述をおこなったという弁解を信用できると明確に示し、地裁決定よりもさらに積極的な判断をおこなっている」と評価しました。

犯人の理由は相当疑わしい

 再審請求審の審理では、有罪判決の根拠が宮田さんの「自白」のみであることを踏まえ、「自白」の信用性が最大の争点となりました。
 熊本地裁の審理で、自白では「凶器の小刀の柄に血痕がつかないように巻いて、犯行後自宅の風呂釜で燃やした」と説明したシャツの切りとり布が、検察庁に保管されていたことが明らかになりました。弁護団は、これを決定的な新証拠として、再審請求審で提出しました。
 また、男性の遺体に凶器とされた切り出し小刀ではできるはずがない傷が少なくとも2カ所存在することが法医学者の鑑定により、明らかとなりました。宮田さんの「自白」を揺るがす新証拠として、法医学鑑定書を提出しました。
 今回の高裁決定は「宮田さんを犯人とする理由の主要な部分が相当に疑わしくなった」とし、「捜査段階の自白全体の信用性が大きく揺らぐことになる」と述べています。そして、裁判のやり直しを再び認めたのです。

一報を聞いて宮田さん笑顔に

 宮田さんの後見人として再審請求申立人となっている衛藤弁護士は、「本日の決定は、弁護団の執念が結実したもの。先ほど宮田さんが入所している施設に連絡して様子を聞き、決定を伝えた。その後再度連絡をして、決定を伝えた際の様子を聞くと、嬉しそうな表情をしたとのことだった。できるだけ早く直接訪ねていって、報告したい」と語りました。
(関連記事3面)

再審開始を報告する弁護団。九州各県から会員が集まり、のぼりや横断幕で出迎えました

松橋事件〉1985年1月8日、熊本県松橋町(現宇(う)城(き)市)で男性が自宅で刃物のようなもので刺され遺体となって発見されました。犯人として3日前に被害者と口論していた宮田さん(当時51歳)が疑われ、警察の厳しい暴力的な取調べを受け、犯行を「自白」させられ、逮捕、起訴されたものです。裁判では無実を訴え、犯行と宮田さんを結びつける物的証拠もありませんでしたが、「自白」を唯一の重要証拠として殺人罪で有罪(懲役13年)が確定。2012年に再審請求し、2016年6月、熊本地裁で再審開始決定が出されたものの、検察が即時抗告していました。

熊本・松橋事件 特別抗告するな 検察庁に連日要請行動  

 松橋事件の再審開始決定をうけて、11月29日、国民救援会と支える会のメンバーは福岡高検におもむき、最高裁に特別抗告をするなと要請しました。
 要請には6県と中央本部から要請書を持って15人が参加し、「検察は、高裁の審理で書面提出を引き延ばした挙げ句に、最終的に提出しなかった。提出することができなかったのではないか。このような不誠実な態度は、公益の代表者としていかがなものかと怒りを感じていた」、「熊本地裁と今日の高裁決定をあわせて、真摯に受け止め、速やかに再審開始決定に従い、特別抗告はしないで」など、参加者がそれぞれ一言ずつ意見を述べました。

再審確定せよ 最高検に要請  

 また、翌30日には中央本部や再審えん罪事件全国連絡会、なくせ冤罪!市民評議会の代表と日本共産党の仁比聡平参議院議員が最高検を訪れて要請。あわせて全国から寄せられた要請書を提出しました。
 要請で仁比議員は、「即時抗告審での検察の訴訟遂行の態度は、即時抗告そのものがどうだったのかを問わざるを得ない。抗告したにもかかわらず、開始決定を覆すだけの主張・立証をしていない。物的証拠がないことから、自白強要のために小刀を凶器と見立て、血痕がないからシャツだとして、自白を作ったのではないか。それが検察庁に保管されていたことを『取り違えた』という。脆弱な争い方で即時抗告審で争ったことを恥じるべきだ」と述べました。応対した事務官は「要請内容は、上司と福岡高検に伝えます」と述べました。
 また12月1日と4日には、福岡県本部が福岡高検に、4日に中央本部が最高検に再度要請をおこないました。

京都・全厚生分限免職処分取消訴訟 原告の訴えを棄却 上告不受理の決定 最高裁  

 社会保険庁の廃止と民営化(2009年)に伴い、京都社会保険事務局から分限免職処分(解雇)を受けた元職員15人が解雇撤回を求めていた裁判で、最高裁第3小法廷は11月21日、解雇を容認した一、二審判決を追認し、元職員の上告を受理しないとする決定を出しました。(裁判長・木内道祥、裁判官・岡部喜代子、山敏充、 戸倉三郎、 林景一)
 事件は、2009年に旧社会保険庁が廃止・解体され、新たに日本年金機構を発足した際、懲戒処分歴のある職員を機構に採用させないようにしたため、525人の職員が分限免職処分を受けたものです。これは、年金の納付記録がきちんと管理されていないことが明らかになった「消えた年金」問題の責任を職員に負わせ、大量の懲戒処分を強行したことで起こったものでした。全国7カ所で解雇無効を求める裁判がおこなわれており、京都事案は一番最初に提訴していました。裁判は一、二審とも厚生労働省が解雇回避の努力をしなかった責任は認めたものの、裁量権の逸脱・濫用は認められないとして原告の訴えを退けました。
 原告の一人で国民救援会大阪府本部の常任委員でもある北久保和夫さんは、「労働事件とはいえ、事実にもとづかない懲戒処分など冤罪事件の要素が強い」と指摘します。「年金機構への採用基準となった懲戒処分は、年金記録の目的外閲覧によるものだが、興味本位で見たものにとどまらず、他人のIDを使って閲覧した場合は、見た人ではなくIDを使われた人が処分を受けている。窓口でのトラブル回避のために上司に許可を得て閲覧したにもかかわらず懲戒を受けた例もある。携帯端末の管理者が処分された例もあり、処分は政治的判断だ」と話しています。

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