日本国憲法と世界人権宣言を羅針盤に、弾圧事件・冤罪事件・国や企業の不正に立ち向かう人々を支える人権団体

2016年7月15日号

2016年7月15日号  

松橋事件で再審開始 宮田さん頬ゆるめ喜ぶ 熊本地裁  

 1985年、熊本県松橋町(現宇城市)で起きた殺人事件の犯人とされた宮田浩喜さん(83歳)が再審を求めていた松橋事件で、6月30日、熊本地裁は再審開始を決定しました。当日は、熊本県本部をはじめ、九州の救援会員が裁判所前に集まり、開始決定を喜び合いました。

 午前11時過ぎ、弁護団の村山弁護士が跳ねるような勢いで熊本地裁の門前に走り出てきました。「開始決定」の垂れ幕を見た支援者の「やったー」「再審開始決定だ」「良かった〜」との声が響きます。門前には、雨の中、地元熊本をはじめ、福岡、宮崎から国民救援会の会員10人とその何倍もの報道関係者が集まっていました。
 記者会見では、弁護団から、今回の開始決定の内容について説明がされました。再審開始の理由は大きくいって2つ。
 一つは、凶器とされている小刀では被害者の傷はできないという弁護側鑑定が認められたこと。
 もう一つは、再審請求審の審理で提出された客観的証拠により、宮田さんの「自白」に虚偽の疑いが生じたこと。これにより、宮田さんを有罪とした確定判決に合理的疑いが生じたため、「(再審においても)疑わしきは被告人の利益にという刑事裁判の鉄則が適用される」とした白鳥・財田川決定に沿い、再審開始を決定しています。今回の決定はDNA鑑定などの証拠ではなく、「自白」の信用性そのものを崩しての再審決定です。「再審の王道で勝った」と、齊藤誠弁護士はうれしそうに報告しました。

車イスの宮田さん
喜びをあらわす

 記者会見の途中で、宮田さん本人が車イスで姿を見せました。宮田さんは現在、認知症を患い、意志疎通が難しい状態ですが、齊藤弁護士が「勝ったよ。勝ちましたよ」と報告すると、宮田さんは、うれしさで頬を緩ませて喜びを表現しました。
 国民救援会は、「即時抗告をするな」の声を検察へ集中しようと全国に呼びかけ、翌7月1日、熊本地検に「即時抗告をするな」との要請をおこないました。同日、中央本部の鈴木亜英会長ら中央本部5人も最高検に対し、要請しました。
 しかし、検察は不当にも7月2日、福岡高裁に即時抗告しました。一日も早い再審開始確定へ、ご支援をお願いします。
 再審開始を出した裁判官=溝國禎久裁判長、伊藤ゆう子、瀧澤孝太郎両裁判官
〈激励先〉 〒862―0954 熊本市中央区神水1―30―7 コモン神水 国民救援会熊本県本部気付 宮田浩喜様

松橋事件 「自白は作り話」有罪判決の根拠崩す  

 松橋事件は、有罪判決の根拠が宮田さんの「自白」のみであることを踏まえて、「自白」の信用性が認められるか否かが最大の争点でした。弁護団が提出した数々の新証拠によって、宮田さんの「自白」の信用性には疑問が生じたとし、新旧証拠を総合判断すれば、確定判決には合理的な疑いが生じたため、白鳥・財田川決定に沿い、再審を開始すると決定しました。

凶器が自白と矛盾
 再審請求審では、男性の遺体の傷は凶器とされた切り出し小刀ではできないとする弁護側の主張に対し、検察側は「刃先が挿入される際などに皮膚が伸縮する押し下げ現象で説明できる」と主張していました。
 決定では、傷の場所や方向などから、顕著な押し下げ現象がおこったとは考えられないとする弁護側の法医学者鑑定(大野鑑定)は、合理的であり、十分に首肯できるとし、凶器とされている小刀では、被害者の傷を作ることはできないとの合理的な疑いが生じていると述べました。
 また、宮田さんの「自白」では、犯行の前に、小刀に血が付かないように布を巻き付け、犯行後、その布を焼却したことになっていました。ところが1997年に弁護側が地検に証拠物の閲覧をしたところ、その布切れは地検が保管していたことが明らかになりました。さらに「自白」によれば、血が付くはずであるにもかかわらず、保管されていた布には血がまったく付いていません。弁護団はこの布を、新証拠として提出。決定は巻きつけ布に関する新証拠によって、確定判決の判断は揺らいでいる、と述べています。

疲弊させて「自白」
 さらに決定は、宮田さんが「全体的に具体的かつ詳細で迫真性に富む」「自白」をしていることについて、新旧証拠を検討すると、捜査官や報道等から知り得た捜査情報を踏まえて供述することが可能であり、さらに宮田さんが長時間にわたり取り調べを受け、ポリグラフ検査実施後の追及的な取り調べで、肉体的・精神的に相当追い詰められ、疲弊した状況に置かれ「警察に迎合して作り話をした疑いがある」と述べています。

〈松橋事件〉1985年1月8日、熊本県松橋町で男性が自宅で首などを刃物のようなもので刺され死亡しました。3日前に男性の自宅で飲食をともにした知人のうち、男性と口論していたことから宮田浩喜さんが犯人と疑われ、警察から暴力的な「任意」の取り調べを受け、犯行を「自白」し、逮捕されました。

 裁判では、犯行と宮田さんを結びつける物的証拠がないまま、「自白」を唯一の重要証拠として有罪とされ、懲役13年の刑が確定。宮田さんは服役後、2012年に熊本地裁に再審を請求しました。

岡山・倉敷民商弾圧事件 証人請求 すべて却下 弁護団 裁判官全員の忌き避ひ申立て 岡山地裁  

 建設会社の脱税ほう助と資格がないのに税務書類を作成したなどとして、倉敷民商事務局員の禰(ね)屋(や)町子さんが法人税法と税理士法違反に問われている裁判で、第19回公判(6月28日)と20回公判(30日)が岡山地裁(江見健一裁判長)でおこなわれました。20回公判で被告人質問終了後、江見裁判長は検察側の請求証拠をすべて採用する一方、弁護側が請求した証人をすべて却下しました。弁護団は厳しく異議を述べ、3人の裁判官全員を忌避しました。

 弁護団が申請していた証人は、元国税庁の職員で法人税の調査をしてきた山室功税理士や、税務当局による民商弾圧の実態を知る太田義郎全商連会長、事件後に民商の脱会工作を受けた元倉敷民商会員、倉敷民商事務局長で被告人の小(こ)原(はら)淳さんです。いずれも事件の真相解明に必要な証人でしたが、裁判所はすべて却下しました。
 一方、検察側が証拠請求をしていた国税査察官の木嶋輝美氏が作成した11通の「査察官報告書」などは、すべて証拠として認められました。弁護団は、報告書は反対尋問で誤りを指摘できないため「不同意」としており、本来ならば却下されるものですが、検察が報告書を「鑑定書」だと強弁して証拠採用を迫り、裁判所が認めました。
 本来、鑑定書は専門的知見を持つ「第三者」がおこなうもので、客観的な事実を明らかにした上で結果を評価(鑑定)するものです。木嶋氏は「第三者」ではなく、禰屋さんを告発した「当事者」です。また、報告書は木嶋氏の推論による結論しか記載されず、検討対象とした帳簿など原資料の指摘もなく、「鑑定」といえるものではありません。
 検察側が躍起になって、査察官報告書を証拠としたのは二つの理由があります。一つは単純な検察の実務ミスの繕いです。木嶋氏が証人として出廷した際、膨大な帳簿を示して尋問がおこなわれました。木嶋氏が「これ」と指摘した証拠物について、検察官が該当箇所のコピーを調書に添付する要求を怠ったため、尋問調書の「これ」が何を示すか分からなくなっているのです。
 二つ目は、起訴時の目論み通りの立証を裁判所に認めさせたいという思惑です。禰屋さんは証人尋問で伝票や書面などの事実を示して検察の誤りを指摘し、検察の筋書きは崩壊しました。そこで、「禰屋さんのほう助が推認できる」という、事実に基づかない一方的な評価の報告書を証拠として裁判所の判断を求めたいものと考えられます。
 弁護団は、公正な裁判を期待できないとして、裁判官3人の忌避申し立てをおこないました。倉敷事件全国連絡会では、弁護側証人を採用するよう、裁判所に再考を求める要請の集中を呼びかけています。

〈要請先〉〒700―0807 岡山市北区南方1―8―42 岡山地裁・江見健一裁判長

袴田事件 再審・無罪実現を 事件から50周年の日に宣伝  

 味噌会社の専務宅で一家4人が殺され、従業員の袴田巖さんが犯人とされた静岡・袴田事件で、発生からちょうど50年にあたる6月30日、国民救援会も参加する「袴田巌さんの一日も早い再審無罪を求める実行委員会」は、県庁前での街頭宣伝と静岡県警へ謝罪を求める要請行動をおこないました。
 正午、県庁前の交差点でビラを配り宣伝行動をおこないました。袴田さんに自白を強要した取調べについて、「取調べ時間は1日平均12時間。長い日は16時間30分にもわたり、やっていない殺人事件の自白を迫られた。開示された供述録音テープには、捜査官が取調室に便器を持ち込み、その場で用を足させる音も入っている」などと述べ、非人道的な取調べのもとで自白させたと訴えました。さらに血に染まった衣類を「犯行着衣」としてねつ造するなど、袴田さんを警察が組織ぐるみで犯人に仕立て上げたことを明かしました。
 通りがかった60代の主婦が「私も」とマイクを握り、自らの冤罪の体験も交えながら、「警察は過ちを認め謝罪すべき」と訴える場面もありました。
 午後、静岡県警本部を訪れ、事前に約束していた要請をおこないましたが、マスコミも多数いたためか、警察は「文書を持参した者だけ一人ずつ別室で対応する」と人数制限をしてきました。
 実行委員会は抗議した上で、「静岡県警が半世紀にわたって袴田さんの人権を侵害した違法捜査の実態を検証し、責任を明らかにして袴田さんに謝罪せよ」と求めました。

福井・福井女子中学生殺人事件 前川さん長野でオルグ 裁判に人生を翻弄された口惜しさと怒り訴えて  

 長野県本部は、「無実の人々を救う全国いっせい宣伝行動」の一環として、30年前に福井市で起きた福井女子中学生殺人事件の当事者・前川彰司さんと諏訪市の特急あずさ35号窃盗冤罪事件の当事者・元諏訪市職員Aさんとともに、県内の労組・民主団体を訪問し、事件の真実を語り、支援の要請をおこないました。
 6月14日は、長野支部の役員が前川さんや特急あずさ35号事件の「勝ちとる会」小池事務局長とともに長野市内の16カ所を訪問しました。前川さんは、冤罪で苦しみ無実を叫び続ける30年を語り、「こんな理不尽な冤罪は許せない」と、第2次再審請求にむけて理解と協力を訴えました。
 前川さんは、一審で無罪、二審で逆転有罪となって刑務所に収監され、出所後の再審請求で再審開始決定、その後取り消されています。裁判所に翻弄されてきた口惜しさと怒りを語り、冤罪被害者の「無実の叫び」が聞く人の心の底まで響いた宣伝・訪問活動でした。(長野県本部版より)

三重・名張毒ぶどう酒事件 再審求め裁判所要請  

 6月24日に名張毒ぶどう酒事件の要請行動がおこなわれ、山形、宮城、東京、大阪、兵庫、愛知の6都府県から、18人が参加しました。
 名古屋高裁に対しては、「新証拠が提出されたというのに、訴訟指揮が弱いのではないか」「いまの名古屋高裁は三権分立の役割を果たしているとは言えない」「罪を背負ったまま、無実を叫んでいる人を死に追いやった。裁判所は人命に対して鈍感」「新証拠を見れば、奥西さんの自白との矛盾は明白。隠している証拠をすべて開示せよ」などと訴えました。
 一方、名古屋高検に対しては、「新証拠を見たらもう抵抗するのをやめたらどうか」「検察庁は自分たちで『検察の理念』というものを、明らかにしているが、現状は、それに反するような状況ではないか」などと訴えました。名古屋高裁に署名を2,575人分を提出し、累計22,723人分となりました。(再審開始をめざすニュース)

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