日本国憲法と世界人権宣言を羅針盤に、弾圧事件・冤罪事件・国や企業の不正に立ち向かう人々を支える人権団体

2014年7月25日号

2014年7月25日号  

東京・三鷹バス痴漢冤罪事件 高裁で逆転無罪に おめでとう津山さん  

 東京・三鷹バス痴漢冤罪事件の津山正義さんに対して、東京高裁(河合健司裁判長)は7月15日、一審の有罪判決(罰金40万円)を破棄し、逆転無罪判決を言い渡しました。事件が起きてから2年7カ月、痴漢という汚名を晴らすべく、必死になってたたかってきた津山さん本人と家族、弁護団、真実を守ろうと多くの支援者たちが勝ちとった無罪判決です。

 「主文、原判決を破棄する。被告人は無罪」。
 裁判長が言い終えると、法廷にほっと安堵のため息、そして、あちこちで拍手が起こりました。傍聴席の最前列に座った津山さんのご両親。お父さんの孝義さんが、傍聴席の支援者に向かって頭を何度も下げます。

一審判決の判断
「合理的でない」

 津山さんは2011年12月、バスの車内で女子高校生のスカートの上からおしりをなでたとして、逮捕、起訴されました。一審の東京地裁立川支部で弁護団は、バスの車載カメラの画像の鑑定をおこない、津山さんの左手はつり革につかまり右手は携帯電話を操作していたため、犯行は不可能であると主張してきました。しかし、一審判決は、バスの揺れによってつり革が写っていないわずかの時間に、右手で携帯電話を操作しながら、左手で痴漢をおこなうことは「不可能とか著しく困難とまでは言えない」と、津山さんを痴漢の犯人だと認定しました。
 控訴審で、弁護団は画像の再鑑定をおこない、「左手の状況は不明」とされた時間帯にも、津山さんの左手はつり革をにぎり、右手は携帯電話を持っているため、痴漢行為は不可能であると主張してきました。
 これに対し東京高裁の河合裁判長は、画像鑑定の信用性を認め、「車載カメラの映像では左手でつり革を持ち、右手で携帯電話を操作しており、痴漢をおこなったとは考えがたい」と判断。女子高校生の供述を全面的に信用し、「不可能とか著しく困難とまではいえない」と痴漢行為を認定した一審判決を、「慎重さを欠き不合理だ」と批判し、破棄しました。
 そして、津山さんが前にかけていたリュックが女子高校生に当たったことを、「痴漢と勘違いをしたと考えるのが合理的」と判断。津山さんを犯人とするには合理的な疑いが残ると、無罪を言い渡しました。

訴えにこたえて
高裁に署名4万

 判決当日は27席の傍聴席を求めて173人の支援者が裁判所内に並び、報告集会には100人が参加し、勝利判決を喜び合いました。津山さんの友人、教職員の会や国民救援会の支部、江戸川大学の学生らから、街頭宣伝では津山さんの訴えに大きな反響があり、多くの署名の協力が寄せられたことが話されました。三鷹バス痴漢冤罪事件を支援する会からは、判決当日までに、東京高裁に4万4538人分の署名を提出したことが報告されました。
 津山さんと家族から、これまでの支援にお礼が述べられました。
 支援する会と国民救援会東京都本部、三多摩総支部では、検察に対し上告を断念するよう要請電報を呼びかけています。

〈要請先〉〒100―8904 東京都千代田区霞が関1―1―1 東京高等検察庁 検察官 錦織聖殿 電文例「三鷹バス痴漢冤罪事件の控訴審判決に従い、上告するな」

ご支援に感謝します 津山正義さん  

 皆さんの多くの支援により無罪判決を得ることができました。本当にありがとうございます。
 2年7カ月前に巻き込まれたこの事件ですが、ついに私の無実が示されとても嬉しく思います。
 長い時間の中、信じてもらえることの強さを知ることができた戦いでした。
 この事件で学んだ多くの事を胸に、多くの人にこの事件について、私や私の大切な人たち、冤罪で苦しむ人たちの思いを伝えていきたいと思います。
 本当にありがとうございました。

鹿児島 大崎事件 再審請求を棄却 自白「大筋で信用できる」福岡高裁宮崎支部  

 1979年に殺人と死体遺棄の犯人とされた原口アヤ子さんが服役後に再審を求めてきた大崎事件で、7月15日、福岡高裁宮崎支部(原田保孝裁判長)は、原口さんと元夫の再審を認めない決定を出しました。

 午前11時過ぎ、裁判所の玄関から駆けてきた弁護団の一人が「不当決定」の垂れ幕を掲げると、「ええー」、「なんでだよぉ」と嘆く声が広がり、「裁判所は死んだのか」という怒りの声がわきました。

   * *

 原口さんら4人を有罪とした確定判決は、原口さんの「共犯者」とされた知的障がいを持つ親族3人(元夫、元夫の弟、元甥)のウソの自白が有罪の主な根拠となっていて、これらの自白を支える客観的証拠はありません。審理では、3人の供述の信用性が大きな争点となりました。
 決定は、3人のうち2人について、「供述の信用性は決して高いとは言えない」と認めながら、関係人(元夫の弟の妻)の供述調書の内容は信用できるとし、この供述が3人の供述を支え、「大筋において信用できる」と認定しました。その上で、「新たな証拠と旧証拠を合わせて総合判断しても、確定判決に疑いを抱かせるには足りない」として、請求を棄却しました。
 弁護団事務局長の鴨志田祐美弁護士は会見で、「総合評価の悪用だ」と批判しました。新旧証拠を総合評価して、犁燭錣靴は被告人の利益に瓩療澗Г鮑匿海砲眦用するというのが、最高裁判例になっている白鳥・財田川決定です。これまでの多くの再審事件は、一つひとつの証拠を「証拠価値が低い」などと個別に切り捨て、総合的な評価を避けて再審を拒んできました。今回の決定は、強要された個々の虚偽自白を「信用性がない」と認めていながら、「総合的に評価すれば信用できる」と都合よく解釈しています。鴨志田弁護士は、「白鳥・財田川決定の理念にはほど遠い決定だ」と語気を強くしました。

   * *

 原口さんは、鹿児島弁護士会の一室で、森雅美弁護団長から電話で棄却決定の知らせを受けました。言葉少なに「仕方がないねえ」と3回ほど繰り返し、電話を置いたそうです。
 原口さんは、体調もすぐれなかったことから、鹿児島市内での記者会見に姿を見せず帰途につきました。
 原審の鹿児島地裁が、一切の証拠調べをすることなく13年3月に請求を棄却したのに対し、今回の審理では、証拠開示や鑑定人尋問、原口さんの意見陳述をおこなうなど、裁判所は積極的な訴訟指揮をおこなっていただけに、支援者の期待も高まっていました。
 弁護団は白鳥・財田川決定の解釈と適用が誤っているとして最高裁に特別抗告します。
〈抗議先〉〒880―0803 宮崎市旭2―3―13 福岡高裁宮崎支部 原田保孝裁判長

岡山・倉敷民商弾圧事件 禰屋裁判 裁判官回避を要求 検察、卑劣な審理引き延し 岡山地裁  

 7月10日、岡山地裁で、岡山・倉敷民商弾圧事件の禰屋裁判第3回公判がおこなわれました。倉敷民商弾圧事件は、倉敷民主商工会の事務局員である禰屋町子さんが同会の元法人会員の脱税をほう助したとする法人税法違反と、税理士法違反として逮捕、起訴されたものです。また、同会の事務局長小原淳さんと事務局次長須増和悦さんも、税理士法違反として逮捕、起訴されており、同会では専従事務局員3人全員の勾留が続いています。
 脱税の主犯である社長夫婦には6月18日、各懲役1年6月、執行猶予3年の有罪判決が出され、確定しています。社長夫婦らは公訴事実を全て認め、禰屋さんが脱税をほう助したという具体的な事実は一切出ないまま、粗雑な審理で判決が出されました。
 社長夫婦の裁判を担当した寺田さや子裁判官は、禰屋裁判の右陪席裁判官です。弁護団は、脱税ほう助行為だけでなく、社長夫婦の脱税についても、具体的にどのように脱税したのか明らかになっていないとして事実を争っている禰屋裁判において、寺田裁判官は、有罪の心証を前提に審理に臨んでいることとなり、不公平な裁判をするおそれがあるとして、公判前に、寺田裁判官に審理から身を引くように要求(回避勧告)していました。
 第3回公判で、弁護団は寺田裁判官の回避勧告について、裁判所として検討したのかと迫りましたが、裁判所は回答する必要なしと切り捨てました。
 また、検察は、禰屋さんが具体的な会計・税務補助事務で、どの部分をどのようにほう助したのかを、一切明らかにしようとしていません。弁護団は6月30日付けであらためて、,いなる事実をどの証拠で証明しようとするのか明記させること、⊂攀鬚粒示について、裁判所に訴訟指揮を求めました。
 検察が主張と証拠を明らかにせず、いたずらに審理を長引かせる態度は、被告人たちが勾留されている本件では実質的に懲役刑を科しているに等しく、著しい人権侵害です。

三重・名張毒ぶどう酒事件 ただちに証拠開示を 高裁、高検に要請行動  

 7月10日、名張毒ぶどう酒事件の要請行動がおこなわれ、長野、大阪、愛知の3府県13人が参加しました。
 名古屋高裁に2712人分の署名を提出(累計5633人分)し、証拠開示を求める緊急の要請はがきは、1454通届いていることが分かりました。要請では、「いまだに証拠開示せずに死刑判決を維持しようとすることは許せない。ただちに証拠を開示せよ」、「裁判官が八王子医療刑務所の奥西さんと面会し、その直後に棄却決定を出すとはひどすぎる。」などと訴えました。(再審開始をめざすニュースより)

奥西さん面会記  特別面会人 稲生昌三さん  

 「ひさしぶりですね」と面会すると、今日(7月3日)は右手を大きくあげて握手。弁護団の動きや支援の活動をお話し、不当な棄却決定への怒りが広がっていること、証拠開示を求める要請はがきも開始したことを伝えました。目をパッチリと開け、顔色も気のせいか良かったです。「痛いところがありますか」と聞くと右手で腰のあたりを何度か示して、腰が痛い様子。口を動かして伝えたいのか、やはりもどかしいのか、心拍が急上昇。
 両手を一生懸命振るので、何度も何度も振り返して分かれて来ました。(奥西さんを励ます絵手紙面会通信癸横僑気茲蝓

法制審が答申案 捜査機関の権限拡大  

 法制審議会・新時代の刑事司法制度特別部会は、7月9日、3年余の審議を経て答申案をとりまとめました。答申案は、冤罪を防止するための刑事司法制度の実現という国民の期待を裏切るもので、捜査機関の権限が大きく拡大したものとなりました。
 答申案は、中心的な課題だった取調べの可視化については、可視化の範囲を、裁判員裁判対象事件と検察官の独自捜査事件に限定しました。これは全刑事裁判の約2パーセントにすぎません。一方で、刑の減軽を取引材料として、捜査機関が被疑者に対して捜査協力を求めることができる「司法取引」制度を新たに提案。これは、虚偽自白を獲得する手段として使われるおそれがあり、また、刑の減軽を得るために無実の第三者を犯罪者に陥れる危険があるものです。
 さらに、盗聴法(通信傍受法)の対象事件を大幅に拡大し、電話会社の職員による立ち会いを不要とするなど、手続を簡易化して、警察権限を拡大・強化する案が盛り込まれています。
 全事件での録音・録画を求めてきた特別部会委員の村木厚子さんは同日の会見で、「可視化の義務化の範囲は狭いが、大きな一歩。今後の見直しも含めて一定の方向性を見いだしたので賛成した」と話しました。
 同委員の周(す)防(お)正行さんは、「狭い範囲であっても、録音・録画しなければいけないんだという法律を作ることの意味の大きさを考え、とりまとめを飲んだ。将来にわたって、現場の裁判所の判断や弁護士の活躍に委ねざるを得ないのが申し訳ない」と話しました。
 布川事件の桜井昌司さんは、「(限定された可視化が)大きな一歩であることは間違いないと思うが、警察というのは密室。その運用を監視するものがない」と指摘し、「警察で冤罪が仕上げられて検察に流される。警察の取調べを可視化しなければ、冤罪を防ぐ担保になり得ない」と話しました。
 答申案は、法務大臣への答申を経て法案化され、来年の通常国会に提出される見通しです。

国民救援会が声明

 日本国民救援会は7月10日、答申案に抗議し、法制化に反対する声明を発表しました。声明はウェブで。

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