日本国憲法と世界人権宣言を羅針盤に、弾圧事件・冤罪事件・国や企業の不正に立ち向かう人々を支える人権団体

2014年6月15日号

2014年6月15日号  

名張毒ぶどう酒事件 奥西さんの再審認めず 証拠見ず、門前払い 審理せずに判断 名古屋高裁  

 人工呼吸器と無数のチューブにつながれ、残る力で無実を叫ぶ奥西勝さん(88歳)の訴えを、裁判所は冷酷に破棄しました。1961年にぶどう酒に農薬を混入し5人を殺害した犯人として死刑判決を受けた奥西さんが再審を求めている裁判で、5月28日、名古屋高裁(石山容示裁判長)は、再審を認めない不当決定を出しました。申立てからわずか6カ月。実質的な審理をせず、限りある命の炎を燃やす奥西さんに、再び「死刑」を宣告した裁判官たち。事件の真相究明を忌み嫌い、人の命を蹂躙する裁判官の姿が決定文に滲み出ています。

 名古屋高裁は決定で、弁護団が提出した証拠は従前のものと同一で、最高裁(第7次請求審)ですでに審理済みと決め付け、「請求人(奥西さん)以外に犯行の機会を持ちえた人物は存在しないという認定は揺るぎない」と、証拠を十分検討しな
いまま、事前告知もな
く形式的に棄却しまし
た。
 弁護団は4月に、裁判所に対して証拠開示の申し立てをしており、裁判所の返答を待っている状況でした。さらに、毒物に関する新たな証拠を6月に提出する意向も伝えていました。それにもかかわらず、奥西さんの無実を立証する機会をことごとく握りつぶし、裁判所は棄却決定を強行しました。

棄却の直前に裁判官が面会
 弁護団や支援者を驚愕させたのが、裁判官が奥西さんと面会し、慎重な審理を望む奥西さんの意思を確認しておきながら、その直後に棄却決定をしたという事実です。
 5月26日、裁判官のひとりが書記官を伴い、奥西さんが収監されている八王子医療刑務所に赴き、「あなたの意見を確かめる手続き」と称して奥西さんと面会し、7分間にわたって質問しました。奥西さんは気管を切開して声が出せないため、裁判官の問いに「そのとおり」と思う場合は左手を上げさせて、次のような質問をしました。
 「あなたは、犯人は自分ではないという主張ですね?」、「弁護人はこれから裁判所に新しく証拠を出すと言ってますが、その証拠も踏まえて判断してほしいということですか?」
 奥西さんが左手を上げて質問に答えると、裁判官は最後にこう言い残して立ち去りました。
 「再審を開始するかどうかについて、今後、なるべく早く検討を終えて、裁判所の判断を示すように努めます」

死刑より残忍希望さえ奪う
 この面会の翌々日の朝、裁判所は、再審請求を棄却しました。奥西さんに希望を抱かせるような意見聴取は何のためだったのか。奥西さんの主張を、いつ「検討」したのか。決定文の末尾に、次の一文が添えてありました。
 「請求人(奥西さん)の健康状態の悪化の程度を踏まえ、判断を早期に示すこととした」
 これを見た弁護団や支援者からは、「何度読んでも意味が分からない」、「人の命をなんだと思っているのか」、「奥西さんに絶望を与えるもので、死刑宣告よりも残忍な仕打ちだ」と怒りの声が上がっています。
 国民救援会愛知県本部と名張事件愛知守る会は、5月30日に名古屋高裁へ抗議行動をおこない、「わずか半年の審理で門前払い。何もしていない」、「死刑台に立たされた者の気持ちを考えて決定を書いたのか」などと訴えました。
 弁護団は6月2日、「冤罪を訴える奥西さんに十分な主張立証の機会を与えてない」として、名古屋高裁刑事2部へ異議を申し立てました。
 奥西さんは、1964年の一審で無罪判決、2005年に再審開始決定(実質的な無罪判決)と、2度も無罪の認定を受けていながら、いずれも覆されました。53年間の人生を裁判の手続きに費やしても、いまだ自由を手にできていません。
 限られた時間を無駄にはできません。国民救援会中央本部は5月29日に声明を発表し、「奥西さんの雪冤の日まで、支援のために力を尽くす」と表明しています。
〈抗議先〉〒460―0001 名古屋市中区三の丸1―4―1 名古屋高裁 石山容示裁判長

手握り、口動かし必死に訴え  

決定後の奥西さん
 特別面会人の稲生昌三さんが、棄却決定翌日の5月29日、奥西さんの面会に行きました。
 天井を見つめる奥西さんに、「弁護団から聞きましたね」と声をかけると、頷き、口を動かしました。「棄却は悔しいが、負けちゃいかんですよ」と言うと、体を起こそうと身をよじり、唇を激しく震わせ、必死に何かを訴えようとします。心拍数が急上昇し、アラームが鳴って測定不可に。看守が止めに入って面会は終了しました。
 「負けずに頑張りましょう」と言うと頷き、思いの残る手を振りほどき、病室を後にしました。

宮城・自衛隊国民監視差止訴訟 仙台高裁 監視の違法性明らか 裁判官交代で弁護団陳述  

 宮城・自衛隊国民監視差止訴訟控訴審の第8回口頭弁論が5月26日、仙台高裁で開かれ、左陪席の裁判官交代に伴う弁論の更新がおこなわれました。
 初めに原告団を代表し後藤東陽団長が意見陳述に立ち、「私たちのささやかな平和活動が、自衛隊の狹対勢力瓩箸澆覆気豐道襪気譴拭4道襪猟篁澆鯡燭犬突澆靴ぁ廚叛據垢帆覆┐泙靴拭
 続いて弁護団が陳述しました。まず、監視の内部文書発覚の経緯とその内容、イラク派兵当時の社会情勢について、詳しく説明し、自衛隊のイラク派兵を憲法違反と断じた名古屋高裁判決にも触れながら、一審において内部文書の認否すらしなかった国側の対応を厳しく批判。次に、一審判決の評価と問題点を述べ、鈴木健元情報保全隊長の4回の尋問で明らかになった国民監視の基準、対象、方法などの具体的な事実を整理して挙げ、明確に違憲・違法であると述べました。そしてこの訴訟の意義について、特に最近の集団的自衛権の行使容認という政権の動きにより、自衛隊海外派兵の一方で、国内では国民を敵視し監視を続ける異常さを厳しく指摘したうえで、情報保全隊の暴走を阻止し、人権を擁護するのは裁判所の責務であると結びました。最後に、情報保全隊の上部組織、いわば「頭脳」部分である当時の陸上幕僚監部情報保全室長である末安雅之氏の証人尋問の必要性を指摘し、裁判所が末安氏の尋問について防衛大臣に照会中であるが、その回答如何にかかわらず決定すべきことを強調しました。
 次回第9回口頭弁論(7月28日)では、原告2人の証人尋問がおこなわれます。
(原告団事務局長・堤智子)

袴田さんにチャンピオンベルト  

 東京・後楽園ホールで5月19日におこなわれた「ボクシングの日」のイベントで、袴田巖さんがリング上に上がり、先日ひで子さんが代理で受け取ったWBCの名誉チャンピオンベルトを受け取り、元気そうな姿を見せました。
 袴田さんは、このときまだ東京の病院に入院中で、病院の外出届けに「後楽園に帰る」と記入していたと言います。

なくそうえん罪関西市民集会 市民の声法制審へ 周防すおさんが司法改革を訴える  

 関西冤罪事件連絡会・たんぽぽの会が毎年開いている、「なくそう えん罪 救おう 無実の人々 関西市民集会part察廚、5月31日、クレオ大阪西ホールを満席(約440人)にして開催されました。
 第1部では、冤罪でとりかえしのつかない被害と苦痛が強いられた事実を当事者が告発しました。
 第2部では法制審特別部会委員で映画監督の周防正行さんが、大阪大学法科大学院教授の水谷規男さんの質問にこたえて、次のように語りました。
 特別部会には、〜慣沙事件の取調べの全過程の可視化、検察の手持ち証拠の全面開示、A楮佐韻慮世なを認めないと長期に勾留する「人質司法」の廃止、の3点は最低要求しようと臨んだ。委員の多くは捜査官の側に立ち、警察も検察も捜査も裁判も「うまくいっている」と冤罪への反省なんてまったくない。裁判員裁判対象事件だけの可視化では全刑事事件の2パーセント。これでは冤罪を生まない刑事司法制度の改革にはならない。冤罪当事者や市民の常識を特別部会へどんどんぶつけ、誤判を許さない司法改革を求めていくことが大事だと訴えました。
 最後に、事件当事者が登壇。ノボリ、横断幕を掲げた舞台で集会アピールを採択しました。(橋本宏一)

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