日本国憲法と世界人権宣言を羅針盤に、弾圧事件・冤罪事件・国や企業の不正に立ち向かう人々を支える人権団体

2014年5月15日号

2014年5月15日号  

袴田事件の教訓生かし冤罪生まぬ制度を今こそ  

実現しよう「取調べ全面可視化 検察の全証拠開示」誤判防止二本の柱

 3年前、誤判を防ぐ司法改革を期待されて発足した法務大臣の諮問機関・法制審議会の「新時代の刑事司法制度特別部会」の議論が最終盤に入っています。ところが、証拠開示の拡大については否定的で、取調べの可視化は限定的にして骨抜きにされています。そんな折に出された袴田事件の再審開始決定は、密室での自白強要と検察官の証拠隠しといった、冤罪を生む構造的な問題をいっそう浮き彫りにしました。事件が注目を集めているいま、特別部会が冤罪をなくす本来の目的に立ち返り、議論をやり直すようとりくみをすすめましょう。

 袴田事件で、静岡地裁が再審開始決定の有力な根拠としたのは、犯行時に袴田さんが着ていたとされる血の付いた「5点の衣類」が、袴田巖さんのものではなく、捜査機関による捏(ねつ)造(ぞう)だとする裁判官の確信でした。
 この衣類は、公判の途中で都合良く「発見」されたもので、有罪の決め手となっていました。第二次再審請求審で、あらたにこの衣類のカラー写真30点が開示されると、長期間みそに漬かったにしては不自然に薄い色であることが判明します。支援者と弁護団がみそ漬け実験をおこなうと、1年2カ月もみそに漬かると、血痕も見えなくなるほどまっ茶色に染まりました。20分も漬ければ、「5点の衣類」程度の色に染まることが分かりました。
 このみそ漬け実験結果とDNA鑑定の結果を受けて、静岡地裁は「無罪を言い渡すべき明らかな証拠に該当する」とし、さらに「肉眼で見て明らかに色合いが違えば、誰が見てもそのような判定になる」と述べています。もし、当初の裁判で、このカラー写真が提出されていれば、袴田さんが有罪になることはありませんでした。
 また、袴田さんは逮捕後、連日12時間を超える拷問のような取り調べのなかで12日目にウソの「自白」をさせられています。取調べの全過程が可視化されていれば、袴田さんが拷問的な苦しみのなかで、「泣きながら自白した」ということにはならなかったはずです。

冤罪生んでも
口をつぐむ国

 こうした国家権力の犯罪によって、袴田事件という冤罪事件が生まれたことが再審決定で明らかにされたにもかかわらず、国は、冤罪の根絶に消極的な態度を続けています。
 4月24日の参議院法務委員会では、日本共産党の仁比聡平議員が袴田事件について質問。「みそ樽から出た『5点の衣類』のカラー写真や、ズボンのタグの調書(ズボンの色を表す記号を検察がサイズであるかのように裁判所に誤認させた)といった、当時出されていれば無罪の判断につながった証拠を、なぜ提出しなかったのか」と追及すると、法務省の刑事局長は、「検察当局の活動に関わり、回答できない」と逃げました。
 仁比議員が、「袴田事件にかかわったすべての検事が証拠の評価を誤ったのか。描いたストーリーを維持するために、袴田さんを48年間苦しめたのではないか」と詰めると、刑事局長は、「個別事件についての回答は差し控える」と言い逃れました。仁比議員は、「そうやって口をつぐんで検証せず、議論を拒む。それで冤罪がなくせるのか」と厳しく批判しました。
 また仁比議員は、袴田さんが16時間を越える取調べを受け自白させられたことや、法制審特別部会の基本構想が「取調べは治安維持に貢献してきた」としたことにふれ、「取調べの可視化の問題について、法制審議会で『冤罪を繰り返さない』という立場で議論し直すべき」と指摘すると、谷垣禎一法務大臣は、「特別部会で真摯な議論がされていると思う。結論を待ちたい」と、まったく問題意識をもっていないことを露呈しました。

今こそ作ろう
冤罪の防止策

 国が誤判の責任を回避しようとするなか、222市町村が取調べの可視化を求める自治体決議をあげるなど運動が広がっています。
 こうした自治体への運動とあわせて署名行動にとりくみ、冤罪を生まない社会を実現させましょう。

証拠開示、取調べ可視化を求める署名は、国民救援会のWEBサイトからもダウンロードできます。

「皆さん、よろしく」 袴田さん、初めて公の場に  

 3月27日に釈放されて以来、袴田巖さんがはじめて公の場に姿を現しました。4月14日、再審開始決定を受けた報告集会が東京・弁護士会館でおこなわれ、袴田さんはVサインで登場。手を高々とあげたまま、大きな拍手で迎えられました。
 姉のひで子さんが「巖がやっと帰ってまいりました。ありがとうございます」と話してあいさつすると、袴田さんもマイクに向かい、「野蛮な問題を一掃して、世界は完全平和。私の支援決定で保障された。よろしくおねがいします」などと話しました。元気な笑顔とは裏腹に、精神状態が不安定になる拘禁症の影響で、意味の通らないことを話す袴田さん。無実の人が死刑に怯えて48年間拘束されることの深刻さを物語っていました。

二度と繰り返してはならぬ 法制審特別部会 冤罪当事者が要請  

 国民救援会は4月22日、法制審議会「新時代の刑事司法制度特別部会」に対して要請し、検察の手持ち証拠の開示と、取調べ全面可視化を実現するよう要請し、特別部会の議論を見直すよう求めました。
 この行動は、袴田ひで子さんや布川事件の桜井昌司さん、足利事件の菅家利和さんや、袴田事件の支援団体、自由法曹団、日本民主法律家協会、青年法律家協会などと共同でおこなわれました。

東京・埼京線痴漢えん罪事件 高裁で逆転無罪を 勝ちとる会、初公判向け宣伝  

 埼京線痴漢冤罪事件の石田崇さんは2012年11月、JR埼京線電車内で、やってもいない痴漢の罪に問われ、逮捕・起訴され、13年12月の一審判決では罰金30万円の有罪という不当判決が言い渡されました。東京高裁に控訴した石田さんと支援者は4月25日、東京都新宿区内でおこなわれた労組主催の集会に参加し宣伝をおこないました。
 石田崇さんは、「高裁で必ず逆転無罪判決を勝ちとりたい。ぜひご支援ください」と訴え、署名19筆があつまり、デモ行進にも事件ののぼり旗をたてて参加しました。
 高裁では、一審判決が、犯行電車内の防犯カメラ映像など客観的な証拠を無視している点や、「被害者」女性の証言どおりの「犯行」はできない点を訴えています。
 いよいよ5月15日午後1時30分、東京高裁での第1回公判がひらかれます。この間、石田崇さんの無罪を勝ちとる会では、不当判決を受けて、毎月事件発生日の28日を定例とした駅頭宣伝のほか、3月26日には逆転無罪判決を勝ちとる決起集会をひらき第1回公判へむけた取り組みを進めてきました。また、東京高裁に3次にわたる要請行動を組み、累計1297人分の署名を提出しています。ぜひ、署名へのご協力と、第1回公判へのみなさまの傍聴をお願いいたします。
(勝ちとる会会長・桑嶋聡)

宮城・自衛隊国民監視差止訴訟 監視全容解明を 指示した者の証人採用求め要請 仙台高裁  

 自衛隊の国民監視差止訴訟の原告と、支援するみやぎの会は4月22日、陸上自衛隊幕僚監部・情報保全室長の証人尋問を求めて仙台高裁に要請をおこない、署名2488人分を提出しました。
 控訴審では、これまでに元情報保全隊長鈴木健氏への証人尋問が4回おこなわれ、監視の実態が全ての国民に及んでいること、氏名、職業、学歴、交友関係など国民のあらゆるプライバシー情報が収集の対象になっていること、全ての行政機関から情報提供を受けていることなど、監視の驚くべき実態が明らかになりました。鈴木氏は、「集めた情報は陸上幕僚監部の中の運用支援・情報部(当時)へ報告し、指示を受けた。原告らのイラク派兵反対運動についても高度の必要性があるので監視せよと指示命令を受けた」と証言したことから、監視の全容を明らかにするためには幕僚監部の証人尋問は不可欠です。
 しかし、原告側からの「警察から情報提供を受けたことがあるか」との質問に、鈴木氏が「証言拒否」したことについて、防衛大臣に承認を求めたところ、防衛大臣は(情報収集活動に支障が生じるので)「証言を承認しない」としたことを裁判所が簡単に認めるなど、不当な訴訟指揮をとっています。
 自衛隊のイラク派兵10年にあたり、大義のないイラク戦争に自衛隊員を派兵し、それに反対する全ての国民を監視し弾圧するという二重の憲法違反を許さず、監視をやめさせるため、ご支援をお願いします。(原告団事務局長・堤智子)
 〈要請先〉〒980―0812 仙台市青葉区片平1―6―1 仙台高裁 佐藤陽一裁判長

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