日本国憲法と世界人権宣言を羅針盤に、弾圧事件・冤罪事件・国や企業の不正に立ち向かう人々を支える人権団体

2014年10月25日号

2014年10月25日号  

自衛隊国民監視差止訴訟 広範な国民運動を調査 陸上自衛隊情報保全室長 監視を正当化する証言  

 自衛隊のイラク派遣に反対するデモや集会に参加した市民を、陸上自衛隊が監視し、個人情報を集めていたのは違法だとして、東北各県の市民が監視の差し止めと損害賠償を求めてたたかっている宮城・自衛隊国民監視差止訴訟。控訴審第10回口頭弁論が10月6日、仙台高裁で開かれ、集めた情報の管理を統括していたとみられる陸上幕僚監部調査部調査課情報保全室長(当時)の末安雅之氏の証人尋問がおこなわれ、自衛隊が広範な国内運動の動向を調査していたことが改めて浮き彫りとなりました。

 一審の仙台地裁は、情報保全隊の監視行為の差し止めは認めなかったものの、情報保全隊が監視活動をおこなっていたことは違法と認め、国に損害賠償を命じました。
 控訴審で国は、情報保全隊が原告らを監視し文書を作成していたことなど、一審判決が認定したことについては争わず、一転して監視行為の正当性を主張してきました。原告側は内部文書が作られた当時の陸上自衛隊情報保全隊長を証人に呼び4回にわたり監視活動について追及しました。この中で、「どのような情報を収集するかの判断は、陸上幕僚監部調査部(当時)から指示を得た」と証言したため、弁護団が末安氏の証人尋問を申請し、実現しました。

「指示出さぬ」
 証言に矛盾も

 末安氏は最初に、保全室の業務内容は、陸上自衛隊と隊員が職務上知った(秘密の)情報が、外部に出ないよう管理する規則の制定や各種施策を実施することだと説明。また、保全室は「隊員に命令不服従を促すような外部からの働きかけなどの陸上自衛隊の活動に影響を及ぼす情報」を整理して関係各所に配布するといった情報の交通整理もおこなっていたと証言しました。
 しかし、具体的にどのように情報収集活動をおこなうか情報保全隊に指示したことはなく、情報保全隊が判断していたと証言。弁護団の追及に、「情報保全隊に直接指示する部署はない」などと述べ、情報保全隊長の証言とは矛盾する証言に終始しました。
 末安氏は、部隊を守るために、デモ、集会の情報を把握していたが、当時、収集した情報は「たくさんあった」と述べ、収集が「やりすぎとは思わない」、「情報収集し、保全措置をとったから(隊員の不服従など)支障が出なかった」など、監視活動をあくまでも正当化する証言を繰り返し、国内運動の動向を広範に調査していたことが明らかになりました。

監視差し止め
命じる判決を

 裁判は、年内に双方が最終準備書面を提出し、来年1月19日に結審の予定です。
 一審は、国家の不法行為を断罪し、「監視は違法」という画期的な成果を勝ちとりました。控訴審で、国民監視の実行部隊である情報保全隊長らの証言により、これまで闇に包まれていた国民監視活動について、一定程度明らかにさせることができました。
 集団的自衛権行使容認の閣議決定が強行され、政府にとって都合の悪い情報が隠され、広く国民が監視される恐れがある秘密保護法の施行が12月に準備されるもとで、この裁判で司法に国民監視は違憲・違法と判断させ、監視を差し止めさせることは、国に国民の人権を守らせるため、大きな意義があります。
 自衛隊の国民監視差止訴訟を支援するみやぎの会では、監視の違憲性・違法性を判断し、その差止めを求める署名(現在1万2019人分)を、さらに広げようと呼びかけています。

〈要請先〉〒980―0812 仙台市青葉区片平1―6―1 仙台高裁 佐藤陽一裁判長

〈自衛隊国民監視差止訴訟〉  

2004年に、イラクへの自衛隊派兵に反対するデモや集会などを「反自衛隊活動」として、当時の陸上自衛隊情報保全隊が監視し情報収集していたことが、しんぶん赤旗が公表した「内部文書」で発覚。監視の被害を受けたとして、原告107人が監視の差し止めを求めて提訴。一審は自衛隊の情報収集活動を違法として判断。原告5人に慰謝料の支払いを命じたが、監視の差止めは認めず、双方が控訴。原告94人、弁護団135人。 [#w7fe15f5]

秘密保護法 運用基準を閣議決定 大切な情報も秘密に  

 「わが国の安全保障」を口実に、政府にとって都合の悪い情報を国民に秘密にすることができる秘密保護法について、安倍内閣は10月14日、閣議を開き、特定秘密にする要件や手続きなどを定めた運用基準と、法律を12月10日に施行するなどの政令を決定しました。
 閣議決定された運用基準によれば、秘密指定ができるのは防衛、外交、スパイ防止、テロ防止の4分野で、各行政機関の長が幅広く秘密指定することができます。秘密にできる期間は最長60年となっていますが、例外規定があり、無制限に延長が可能です。
 秘密保護法はさまざまな問題が指摘されています。原発事故の情報など国民の命にかかわる問題であっても、政府にとって都合の悪い情報は国民の目から隠されてしまい、国会議員に対しても秘密にされるため、国民主権や議会制民主主義が骨抜きにされる危険性を持っています。また、秘密を扱う公務員や関係する業者などに対する身辺調査がおこなわれ、国民監視の体制が強まります。さらにマスメディアや市民団体が情報を得ようとすれば処罰されるなど、弾圧のための治安立法として悪用される危険性を孕(はら)んでいます。特に安倍内閣が7月に自衛隊の集団的自衛権行使を容認する閣議決定をしたことにより、情報統制をしてアメリカと一緒になって戦争を遂行するための軍事法制という側面も持っています。
 秘密保護法は、広範な国民が反対を表明するなか、昨年12月に強行可決されました。しかし、法律が成立した以降も国民救援会をはじめ、全国で廃止を求める運動が広がり、運用基準についてのパブリックコメント(国民からの意見募集)にも、短期間に2万3820件の意見が寄せられました。半数以上が反対の立場・批判的な意見でしたが、安倍内閣はこうした意見に耳を傾けず、閣議決定を強行しました。

中央本部が抗議の声明

 国民救援会中央本部は同日、鈴木亜(つぐ)英(ひで)会長名で抗議声明を発表しました。声明は、国民の反対と懸念の声を無視して閣議決定をしたことに強く抗議し、「国民救援会は多くの国民と共同して、施行を許さず、廃止をめざしひきつづき奮闘する」と結んでいます。

泉南アスベスト訴訟で原告勝訴 最高裁  

 大阪・泉南地域の紡績工場でアスベスト(石綿)を吸い、肺がんなどを発症したとして、元従業員とその遺族89人が、石綿の飛散や曝(ばく)露(ろ)の防止対策を怠った国の責任を追及し損害賠償を求めていた国賠訴訟で、10月9日、最高裁第一小法廷(白木勇裁判長)は、国の責任を認める判決を言い渡しました。
 判決は、石綿による健康被害が明らかになっていた1958年以降71年まで、粉じんを除去する換気装置の設置を義務付けなかったことは違法として、国の責任を認めました。しかし、71年以降の対策が不十分だったことについては、「著しく合理性を欠くとまではいえない」として責任を認めませんでした。このため、原告89人中82人が勝訴。一方、7人の敗訴が確定しました。
 アスベスト訴訟は2陣に分かれて提訴され、高裁段階で原告勝訴と敗訴に判断が割れていました。1陣訴訟の高裁判決は、「厳しすぎる規制は産業の発展の阻害」だとして原告の訴えを棄却。一方、2陣訴訟は、国の規制は適切ではなかったとして、国の責任を認めた判決で、国側が上告していました。最高裁は二つの高裁判決について同時に審理していました。
 アスベストによる健康被害について最高裁が国の責任を認めたのは初めてで、原告と弁護団は同日声明を発表し、「国民の生命・健康こそが至高の価値であることを確認し、国にはこれを最大限尊重して規制権限を行使する義務があることを明確に認めた意義は極めて大きい」と述べています。
 判決当日は、最高裁前に多くの支援者が集まりました。弁護団が「勝訴」「国を断罪」と書かれた垂れ幕を持って飛び出すと、「おおーっ」という歓声がわき起こりました。
 本紙2月25日号の「たたかい人」にも登場した原告の一人、石川チウ子さんは会見で、「亡くなった人たちも判決が聞きたかっただろうと思う。苦しい思いで8年間頑張ってきたので、心の底から嬉しい」と話しました。

生存権裁判(京都・北九州)原告の訴え棄却 最高裁  

 生活保護費の老齢加算減額・廃止処分の取消しを求めていた北九州と京都の生存権裁判について、最高裁第一小法廷(山浦善樹裁判長)は10月6日、原告の上告を棄却する不当判決を出しました。
 生存権裁判は、70歳以上の生活保護を受けている人に支給されてきた老齢加算が06年に廃止され、単身世帯で月約9万円の生活扶助費から1万7千円が奪われたことの取消しを求めた裁判で、憲法25条の「健康で文化的な生活」の実現をめざして争われていました。
 生存権裁判は各地でおこなわれており、現在、新潟、広島、秋田などの裁判が最高裁に係属しています。

憲法の立場で職務を 松島法相に要請  

 日本国民救援会は10月10日、松島みどり法務大臣に対し、これまでの言動で法務大臣としての資質が厳しく問われていると指摘し、「日本国憲法と国際人権規約の立場にたって、人権と民主主義を守る職務にあたること」などを求めた要請書を送付しました。
 松島大臣は過去に「犯罪者の人権などというのは二の次、三の次」(05年3月・衆院法務委員会)と発言したり、就任以降も袴田事件の再審開始決定について、「検察が抗告している」と述べるのみ(9月26日、外国特派員協会の記者会見での発言)で、誤って死刑にしてしまう危険性などに言及しませんでした。

袴田事件DNA鑑定 検察狷麕臉絖瓠嵜用できない」鑑定、別事件で「信用できる」  

 今年3月に再審開始決定が出され、東京高裁で即時抗告審がおこなわれている袴田事件で、検察が正義に反する「二枚舌」の主張をしていたことが明らかになり、国民救援会も参加する袴田巖さんの再審無罪を求める実行委員会のメンバーと布川事件の桜井昌司さん、プロボクシング元チャンピオンの輪島功一さんなどが10月8日、東京高検に抗議をおこないました。
 弁護団の会見などによると、再審開始決定の根拠となったDNA鑑定の信用性について検察は、非科学的な鑑定人独自の手法で、鑑定結果に信用性はないと主張していながら、別の事件では同じ手法を用いたDNA鑑定について、十分に科学的根拠があり信用性に問題はないと主張し、被告人に懲役15年の実刑判決を確定させていました。
 要請団は、公益の代表者である検察官にとって最も重要な行動規範である「公正さ」を顧(かえり)みない詐欺的行為で、検察に袴田事件の即時抗告を維持する資格はないと述べ、一刻も早く即時抗告を取り下げるべきだと訴えました。
 東京高検は、「前回の要請から日が近い」ことを理由に要請の受け入れを拒否。職員(写真左)が門前で文書を受け取りました。

国民の権利守る行政機関へ 司法総行動 制度改善求めて要請  

 国民に開かれた司法、国民の権利を擁護する裁判所の実現をめざして10月8日、2014年司法総行動がおこなわれました。
 裁判所や法務省、警察庁、労働委員会などの司法に関わる機関に対して、全労連、自由法曹団、国民救援会や争議団などで作る実行委員会が共同要請書を提出。制度改善や個別事件についての宣伝、要請行動が終日展開されました。
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 最高裁前の早朝宣伝では、不当解雇とたたかうJAL争議団、ロックアウト解雇とたたかうJMIU労組など35人が参加。昼の東京地裁・高裁前の集会には150人が参加し、労働裁判をたたかう代表とともに鹿児島・大崎事件首都圏守る会の
松木圓(まどか)さんが冤罪事件
の実態と大崎事件の再審実現を訴えました。
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 法務省への要請では、国連の拷問禁止委員会や人権委員会などから「中世的な制度が残る」などとの厳しい批判と改善の勧告が出されていることを真摯(し)に受け止めるべきだと指摘。また、「新時代の刑事司法制度特別部会」の答申で、取調べ可視化の対象事件が全刑事裁判の2%に限定される一方、盗聴法の対象犯罪を拡大し、他人を犯罪におとしいれることで自分の罪を減免させる司法取引制度の導入が起案されたことについて、かえって冤罪増加を招き治安強化につながる制度だと指摘。本来冤罪をなくすために設置されたはずの部会でなぜこのような結果になったのか問いただしました。法務省の担当者は、「各方面の方がたからのご意見をまとめた結果であり、今回の可視化はその第一歩、実施後の検討で拡大する可能性もある」などと弁解に終始しました。
   *   *
 警察庁への要請では、取調べの適正化を求めた要請項目について、「録音・録画は真相解明に支障がある」として可視化する意思がない旨を述べ、取調室に覗き窓を付けて視認する設備や、捜査部門以外の職員が取調べを監督する制度を拡充すると回答。国連拷問禁止委員会からも批判されている代用監獄制度については、「勾留中の23日間で真相解明するために必要だ」と述べ、取調室で冤罪が作られている実態に目を向け改善する姿勢はみられませんでした。

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