日本国憲法と世界人権宣言を羅針盤に、弾圧事件・冤罪事件・国や企業の不正に立ち向かう人々を支える人権団体

2013年4月5日号

2013年4月5日号  

故人の遺志継ぎ、ともに歩む 新たに1105人を合葬 第66回解放運動無名戦士合葬追悼会ひらく  

 平和と民主主義、国民の暮らしと権利を守り、社会進歩のために活動された方々に感謝と敬意をこめて追悼する解放運動無名戦士合葬追悼会が3月18日、東京・日本青年館で厳粛にとりおこなわれました。式典にはご遺族をはじめ約1、300人が全国から参列され、故人を偲ぶとともに、その遺志を継いですすむことを誓い合いました。66回目を迎えた今回新たに1105人が合葬され、合葬者総数は4万693人となりました。(関連記事4、5面)

 朝から強い春の風が吹くなか、式典会場となった日本青年館には、全国から合葬者のご遺族が次々と到着され、会場いっぱいとなりました。
 式典は、中央合唱団による「弔いの歌」の歌声で始まりました。舞台中央には、新合葬者のお名前と略歴が刻まれた32枚の銅製のプレートが置かれ、それを囲んで故人の遺影が整然と並んでいます。
 合葬者への黙(もく)祷(とう)のあと、主催者を代表して日本国民救援会の鈴木亜英会長があいさつをおこない、続いてあらたに合葬される1105人のお名前が読み上げられました。
 追悼歌「いのちのかぎり」の合唱に続き、各団体の代表から追悼の辞が述べられました。日本共産党・井上哲士(さとし)参議院議員、全国労働組合総連合・高橋信一副議長、日本婦人団体連合会・堀江ゆり会長が、故人の遺志を継ぎ、たたかいをすすめる決意を述べました。
 式典に寄せられたメッセージを治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟の藤田廣登事務局次長が紹介し、続いて新遺族を代表して、東京の故笹本幸男さんのご遺族・笹本美園さん、京都の故山田二朗さんのご遺族・山田フサさんが、故人の生前の活動や思い出などを語り、遺志を継いで歩む思いを述べました。
 最後に、日本国民救援会の安井純夫副会長が閉会のあいさつをおこない、式典は、終了しました。
 式典後、解放運動無(む)名(めい)戦(せん)士(しの)墓(はか)がある青山霊園まで葬送行進をおこない、名前を刻んだ銅製のプレートをお墓に収めたあと、参列者は一人ひとり菊の花を献花し、墓前で手を合わせ、故人の思い出を胸に、帰途につきました。
*   *
 翌日、希望するご遺族など関係者が、国会見学や浅草散策など都内観光を楽しみました。

福井女子中学生殺人事件 再審の扉、世論の力で たたかいは最高裁へ  

 やってもいない殺人事件の犯人として獄中で7年を過ごし、人生を大きく狂わされた前川彰司さんが、ようやく手にした希望の光・再審開始決定(11年11月)。しかし裁判所は、前川さんの声に耳をふさぎ、頑(かたく)なに再審の扉を閉ざしました。福井女子中学生殺人事件で、3月6日、名古屋高裁(志田洋裁判長)は、異議申し立てをした検察側の主張を鵜呑みにし、前川さんの再審開始決定を取り消す決定を出しました(3月15日号で報道)。前川さんと弁護団は11日に特別抗告をおこない、たたかいの舞台は最高裁に移ります。支援を広げて世論に訴え、立ち上がろうとする前川さんを支えましょう。

 午前11時、裁判所の決定に目を通した弁護団から「負けた」と告げられた前川さん。待機していた裁判所の廊下で、呆然と立ちすくみました。再審が取り消されることなど考えていませんでした。
 大勢の支援者やマスコミが第一報を待ち構える裁判所前。11時過ぎ、小走りで裁判所を出てきた弁護士が「不当決定」の垂れ幕を掲げると、「あっ!」「なんで?」とどよめきが広がり、「不当決定を撤回しろー」と、支援者からのシュプレヒコールが繰り返されました。
 数分後、父の禮(れい)三(ぞう)さんの手を握る前川さんが姿を見せると、支援者から「不当決定に負けるな」と声がかかりました。前川さんは、身を乗り出し、「やっていないことは自分が一番知っているんだ。だから大丈夫」と応えました。
 事件の地元福井県をはじめ北陸3県から訪れた支援者からは、「裁判官は何を見てるんだ」「正義はないのか」と怒りの声が。国民救援会富山県本部の藤田政治さんは、「裁判所がこんな状態だからこそ、俺たち(国民救援会)の役割があるんじゃないか」と、声をかけていました。

抗議の声次々
 その後、集まった支援者全員で名古屋高裁に対し抗議の申し入れをおこないました。
 福井県本部の岩尾勉会長は、「裁判所は、国民の正義を守る法の番人のはずだ。疑わしきは罰せずの原則はどこへ行ったのか」と問いただし、京都府本部の岸本豊子さんは、「何が真実かを明らかにすることが裁判官の職務ではないのか。今日の決定を覆すまで、前川君と私たちのたたかいは続く」と力強く宣言しました。
 愛知県本部の田中哲夫さんは、「名古屋高裁は、またぞろ、こんなひどい決定を書いたか」と手にした決定要旨を振り上げて訴えました。06年に名張事件の再審決定を取り消したのも名古屋高裁でした。「裁判によって人生を狂わされたが、前川さんは人生をやり直そうと懸命。何で変遷する証言が信用できるのか」と涙を浮かべて抗議しました。

覆す決意訴え
 記者会見を兼ねた報告集会には、父・禮三さんは決定直後に具合が悪くなり欠席。前川さんは、集会では伏し目がちでした。けれども支援者から最高裁でのたたかいへの決意を尋ねられると、正面を見据えて、「勝つまで、たたかいます。最後には、絶対勝ちます」と拳を掲げました。会場からは、「よし、いいぞ」「頑張れ!」と激励が飛び、拍手につつまれました。
 前川さんと弁護団は3月11日、最高裁へ特別抗告しました。

〈激励先〉 〒910―0036 福井市三郎丸町28―16―5 国民救援会福井県本部五十嵐方)

▼福井女子中学生殺人事件

 86年に中学3年の女子生徒が顔など数10カ所を刺されて殺された事件。別の事件で勾留中の暴力団員Aが、減刑などの便宜目的で前川彰司さんを犯人とする虚偽の供述をおこない、前川さんが逮捕される。前川さんは一貫して否認。物証もなく、裁判は「服に血を付けた前川さんを見た」とする関係者の供述の信用性が争われた。一審は、供述は変遷し、信用できないとして無罪。しかし二審は、供述の核心部分は大筋一致するとして、懲役7年の逆転有罪判決となり最高裁で確定。刑務所を出所後、04年に再審請求。名古屋高裁金沢支部は11年に、関係者の供述の信用性に疑問があるとし、「犯人とするには合理的な疑いが生じる」と再審開始を決定。検察側が異議を申し立てていた。

「刑事裁判の鉄則」適用の誤り 弁護団事務局長 吉村悟弁護士の解説  

 前川さんには「自白」がなく、逮捕直後から一貫して、「A男とA男の友達が作り上げた作り話だ」と訴えてきました。これがまさにこの裁判の争点です。それを裏付けるのが、現場からも、前川さんの指紋、足痕など、犯行を裏付ける痕跡が一切なく、血だらけの前川さんが頻繁に乗り降りしたとされる車からも、被害者の血痕が出ていないという事実です。そのことを踏まえて関係者供述の信用性を考えなくてはいけません。

供述変遷を「合理的」
 再審請求審で開示された29通の供述調書で明らかになったのは、A男の供述を支える他の関係者の供述が、A男の供述が二転三転するごとに、全く同じ変遷をたどっていたことです。「X」という供述をして、それがウソとわかると「Y」と供述し、それがダメなら「Z」という供述をする、このようなA男の供述の変遷に連鎖して、他の関係者の供述も変遷しています。
 今回の決定は、関係者たちの供述が著しく変遷している事実自体は認めているにもかかわらず、そこで挙げられた変遷の理由は、ことごとく「合理的」であるとして、供述調書を鵜呑みにしたものです。そこには、本件の取調べが、当時の捜査の筋立てによって警察官が取調べ、それが間違っていたら筋立てを変えて取調べるという実態を直視する姿勢がありません。
 本件では、取調べ過程で数々の違法が犯され、関係者の誤認逮捕や血痕の誤認といった重大事件が起きており、本件起訴も、個人識別のできない毛髪鑑定で個人識別ができると誤解して起訴をした経過がありました。また、公判段階では、何人もの証人が、取調べにあたった警察官から、「A男がそう言っているから間違いない」という強引な誘導を受けて、記憶と異なる供述調書の作成に応じさせられたと訴えています。そのことを考えれば、今回のような証拠の評価方法はありえないはずです。この決定は、公判証言や、取調べの実態を無視し、供述調書の辻(つじ)褄(つま)合わせをしているに過ぎません。

判例違反の事実認定
 事実認定のあり方について75年の最高裁白鳥決定は、再審事由は、確定判決における事実認定に合理的な疑いを明確に生じさせればよく、立証責任は検察官にあると明確に述べています。確定有罪判決に「疑い」が生じれば、再審開始をすべきだと述べているわけです。09年9月25日の最高裁判例(ゴルフ場支配人殺人未遂等事件)は、控訴審が供述だけで有罪を認定した事件について、供述の信用性がよほど高いか、被告人が犯人でなければ説明できない事由がなければ、有罪の説明が可能という程度の証拠で有罪認定をしてはいけないと述べています。決定は、この判例の原則にも違反しています。
 犯行態様について見ると、被害者の顔にビニールをかけて、何種類もの刃物で顔ばかり刺して浅い傷を付けるというものです。証言した法医学者にも、激昂からくる突発的犯行だと言う人はいません。それにもかかわらず決定は、「犯人が激情に駆られて場当たり的におこなったものと考えて矛盾はない」と認定しています。それから、被害者の傷に、現場に残された包丁では付けられない傷があることから、計画的に持ち込まれた「第3の刃物」が存在することが明らかになっています。これについても、原審で「文化包丁であっても矛盾はない」と証言した検察側証人の根拠が、弁護側証人によって崩されていますが、決定はその事実を置いて、第3の刃物がなくても説明は可能と認定しました。
 決定は、「そういう説明も可能」とか、「そういうことも考えうる」という程度の根拠で事実認定しています。しかし、状況証拠によって有罪を認定しようとするならば、前川さんが犯人でなかったら、成り立たない状況証拠がなくてはいけない、その立証は検察がなすべきであるというのが最高裁判例の考え方であり、それが、「合理的な疑いがあるときは被告人の利益に」という「刑事裁判の鉄則」の具体的な適用方法です。
 このような判例違反や重大な事実認定の誤りを是正することが、最高裁での私たちの課題だと思っています。

静岡・袴田事件 袴田さんは無実だ! 8団体70人でバースデー宣伝  

 袴田巌さんの77歳の誕生日を記念して、3月10日、東京・有楽町マリオン前で、国民救援会、アムネスティ・インターナショナル日本、日本プロボクシング協会袴田巌支援委員会などが、「袴田巌さんは無実だ! バースデー・リレーアピール」をおこない、70人を超える支援者が参加しました。宣伝行動には、布川事件の桜井昌司さん、足利事件の菅家利和さん、日本プロボクシング協会袴田巌支援委員会の新田渉世さん、元世界ジュニアミドル級チャンピオンの輪島功一さん、社民党党首の福島みずほ参議院議員らも参加し、袴田さんの支援をそれぞれ訴えました。
 新田さんは、「日本プロボクシング協会では、袴田さんの無実を信じ、事件当初から支援活動を行ってきました。2007年から毎月面会もしてきましたが、死刑の恐怖の中で拘禁症により、まともな会話が成り立たない状況です。袴田さんは、今日で77歳。ご支援をお願いします」と訴えました。輪島さんは、袴田さんの支援を訴えたあと、胸に「冤罪」と書いた冤罪マンをノック・アウトするパフォーマンス。
 国民救援会中央本部・鈴木猛事務局長は、「冤罪事件の多くは、捜査の途中から、その人が犯人ではないことが捜査機関には分かっていたと思われます。分かっていても起訴して有罪としてしまう、ここに今の刑事司法の問題があります。袴田事件でもデタラメの証拠を積み上げ、袴田さんを死刑に追い詰めました。無実の袴田さんを何としても取り戻しましょう」と訴えました。

共同した運動が必要 盗聴法改悪許すな学習会  

 盗聴法(通信傍受法)の改悪の動きが強まるもとで、盗聴法廃止ネットワーク(国民救援会も参加)の主催で3月6日、都内で学習会が開かれ、約30人が集まりました。
 講師の海渡雄一弁護士は、法制審特別部会における取調べの可視化の議論のなかで、会話傍受など盗聴法の改悪の動きが強まっていること、秘密保全法や共謀罪と盗聴法の関連性について指摘しました。
 参加者からは、盗聴法の運用実態が検証もされていないもとで、さらに権限を強めるのは問題だとの意見や、秘密保全法や共通番号制など他のたたかいとも共同した反対運動が必要との発言も出されました。

大阪・東住吉冤罪事件「高裁は再審裁判を」再審開始決定一周年宣伝  

 「東住吉冤罪事件」を支援する会と国民救援会大阪府本部は再審開始決定から1年が経った3月7日、大阪高裁の西門・東門で「直ちに即時抗告を棄却し、一日も早い再審裁判の開始を求める」宣伝を行いました。関西の各救援会本部と支援する会会員が総勢31名で560枚のビラを配布し、署名20筆が寄せられました。
 大阪、京都、兵庫、滋賀の弁士が、前日6日に名古屋高裁で福井女子中学生殺人事件が再審決定を取り消されたこと、鹿児島地裁で大崎事件が再審請求を棄却されたことに抗議するとともに、兵庫、滋賀においてもえん罪神戸質店事件JR山科京都駅間痴漢冤罪事件があることを紹介。大阪地裁で再審開始が決定された東住吉冤罪事件では、大阪高裁は一日も早く再審裁判を開始し、検察は公開の裁判で正々堂々と異議を申し立てよ、朴龍晧さんと青木惠子さんは無実と訴えました。
 宣伝行動の後、大阪高裁刑事第4部に署名を提出(累計8244筆、178団体)。朴さんのお母さんが「再審開始決定から1年。無実の息子を一日も早く帰してください」と訴えました。(尾良江)

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