日本国憲法と世界人権宣言を羅針盤に、弾圧事件・冤罪事件・国や企業の不正に立ち向かう人々を支える人権団体

12年6月5日号

12年6月5日号  

名張事件 再審認めぬ不当決定 死刑執行停止も取り消す  

 1961年に発生した三重・名張毒ぶどう酒事件で5月25日、名古屋高裁(下山保男裁判長)は、検察側の異議申立てを認め、2005年に出された奥西勝さん(86)への再審開始決定を不当にも取り消しました。また、奥西さんの死刑執行停止の決定も取り消しました。(詳報次号)

 朝早くから駆けつけた支援者約200人は、不当決定の一報に、名古屋高裁前で怒りの拳をあげ、抗議しました。
 記者会見で鈴木泉弁護団長は、「怒りに耐えられないほど悔しい。高齢で、拘置所の病舎にいる奥西さんにさらに鞭(むち)を打つ決定。弁護団は、この決定を絶対に許さない。奥西さんを生きて社会に戻すまで、全力を尽くす決意です」と述べ、最高裁へ特別抗告することを報告しました。
 奥西さんは半年前から食事がのどを通らなくなり、5月になってからは肺炎を患(わずら)っています。これ以上の拘禁は命にかかわります。
 国民救援会は、不当決定に強く抗議し、最高裁での再審開始をめざすとともに、奥西さんの刑の執行停止と即時釈放を求めていきます。

【抗議先】〒460―8503 名古屋市中区三の丸1の4の1 名古屋高裁・下山保男裁判長

救おう無実の人々5・20全国いっせい宣伝  

 白鳥事件の再審請求で「疑わしきは被告人の利益に」の刑事裁判の鉄則は再審にも適用されると判断し、後の再審・冤罪事件に大きく影響を与えた最高裁の「白鳥決定」。国民救援会と再審・えん罪事件全国連絡会は、この決定が出された5月20日前後に、全国でいっせいに宣伝行動をおこなっています(現在集約中)。各地のとりくみの一部を紹介します。

  • 大阪は、府内全25支部と2つの守る会、のべ58人が6カ所で宣伝しました。名張事件のゼッケンをつけて署名を呼びかけると、立ち止まり話しを聞いてくれる方が多く、「足利、布川事件は知っているが、まだ冤罪があるのか」と驚いている人がいました。
  • 富山では、3支部16人が宣伝。「再審開始決定を認めない検察に腹がたつ。名張も、福井事件も一審は無罪だったではないか」という感想が寄せられたり、「布川事件のことは知っていましたが、(ビラを見て)こんなにも冤罪事件があるんですか。汚名を一日も早く晴らしてあげないと」と署名に応じてくれる人もいました。
    他団体と共に
  • 広島では、県本部が呼びかけ、年金者組合、民青同盟など計6団体24人で宣伝。この他にも2つの支部が宣伝し、若い青年が寄ってきて署名してくれたり、「頑張って」とカンパを渡してくれました。
  • 岩手では、生活と健康を守る会のメンバーも交えて11人で宣伝。通行人はまばらでしたが、ビラを受け取った人に積極的に声をかけ、85人分の署名を集め、対話もはずみました。
  • 宮崎では、宣伝行動の途中で、元自民党市議会議員がビラ配布に参加。ハンドマイクで「冤罪をなくそう」と迫力のあるアドリブで訴え、通行人の注目を集めました。今回の行動では、真剣に訴えを聞いてくれる人、丁寧にビラを読んでくれる人の姿が印象的でした。
    決定を控えて
  • 名張毒ぶどう酒事件の地元三重では、5月25日の決定日行動への参加を呼びかけました。
  • たたかいの最前線で名古屋高裁がある愛知では、決定日を控え、県内全域で宣伝をおこないました。宣伝を終了してからも「署名させてほしい」という人も。この様子は新聞、テレビで報道されました。
  • 東京では、中央本部と東京都本部、名張事件、東電OL殺人事件大崎事件の支援者など20人が参加して宣伝。冤罪を生まないために取調べの全面可視化の実現などを訴え、「無実の人は無罪に」の世論を広げていこうと呼びかけました。

「国際人権」ってなあに? 人権宣言を実効化するために  

 1948年に採択された世界人権宣言は、ひとは、自由・平等で生命と身体の安全を保障されること(自由権)、健康で文化的、人間らしい生活をおくる権利をもつこと(社会権)を宣言しています。
 しかし、せっかく宣言しても、かけ声だけになってはいけません。国連人権委員会(当時)は、すでに世界人権宣言の草案を作成する段階で、原則を抽象的に宣言するだけでは不十分と認識し、加盟国に対して明確に法的拘束力を持つ規約(条約)と、これを加盟国が守ることを確保する具体的な実施システムも検討することを決定していました。

20年ちかい審議を経て国際人権規約を採択

 その後、20年ちかい審議を経て、1966年、第21回国連総会は、全会一致で国際人権規約を採択したのです。
 国際人権規約は、社会権規約(全31条)と自由権規約(全53条)という2つの条約で成り立っています。2条約の前文は共通で、ともに国連憲章と世界人権宣言の原則にもとづいており、社会権の保障は自由権の保障に欠かせない条件で、その逆もまた真であることを確認しています(人権の相互依存性)。第1条も共通で、すべての人民の自決権の保障が大前提であることを規定しています。
 また自由権規約は、規約人権委員会とよばれる委員会を設けました。委員は国家の代表ではなく個人の資格ではたらく、世界中から選ばれた国際人権の専門家で構成されています。また、加盟国には自国の人権状況を定期的に委員会に報告し、審査を受け、規約にもとづき改善を図ることを義務付けました(国家報告制度)。これは社会権規約も同様で、こうした制度によって規約の実施を確保するのです。自由権規約の個人通報制度もこうした制度のひとつですが、本体条約とは別に批准する条約(選択議定書)として設けられています(日本は未批准)。

自由権規約・社会権規約は世界人権宣言の双子の子ども

 国家が守るべき人権規定を地球規模で定めた国際人権規約は、まさに人類の憲法と呼ぶに値します。自由権規約・社会権規約は、いわば世界人権宣言の双子の子どもで、この3つの人権文書を国際人権章典とよびます。
 また、人権保障をさらに具体化するために人権宣言の孫に位置する条約として、人種差別、拷問、女性差別、障がい者、子どもの権利などに関する多くの条約がむすばれており、現在も平和に対する権利宣言など、新たな人権文書の作成がすすめられているように、国際人権は日々発展しているのです。

絵に描いた餅にしないため市民運動が欠かせない

 世界人権宣言起草委員会の委員長をつとめたエレノア・ルーズベルトは、この宣言は私たちの家庭や地域、職場や学校で活かされなければ何の意味もなさない、身近なところで人権を擁護する積極的な市民の活動がなければ進歩はとうてい期待できないのだと語りました。
 人権の促進を担当する事務局・国連人権高等弁務官事務所が、私たちNGOを国連のパートナーと位置付けるのも、人権を絵に描いた餅(もち)にしないためには草の根の市民運動が欠かせないと認識しているからなのです。

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