日本国憲法と世界人権宣言を羅針盤に、弾圧事件・冤罪事件・国や企業の不正に立ち向かう人々を支える人権団体

12年6月15日号

12年6月15日号  

名張事件 「奥西さんの命守れ」 死刑執行停止と釈放を最高検へ要請  

 再審開始決定が不当にも取り消された三重・名張毒ぶどう酒事件で、奥西勝さん(86)の死刑執行停止と釈放、外部の病院での治療を求めて、国民救援会、名張事件全国ネットワーク、「守る会」、学者・文化人・事件当事者などが相次ぎ最高検や名古屋高検への要請をおこないました。

奥西さん手錠され治療人道的立場で早期の釈放を

 5月上旬から肺炎を患っていた奥西さんは、再審開始決定の取り消し後に病状が悪化。5月27日夜、拘置所の外の病院へ救急搬送されました。鼻から酸素吸入を受け、抗生物質などの点滴がされ、導尿カテーテルの処置がされています。
 拘置所側は、ベッドで治療を受ける奥西さんの右手首に手錠を掛け、補縄につなぎ3人の刑務官が常時監視するなど、非人道的な扱いを続けています。
 こうした状況を受けて5月29日、再審・えん罪事件全国連絡会代表委員で、青山学院大学法科大学院の新倉修教授が呼びかけ人となり、ジャーナリストの江川紹子さん、漫画家のやくみつるさん、足利事件の菅家利和さん、布川事件の桜井昌司さん、杉山卓男さん、名張事件東京守る会代表委員の村井敏邦一橋大学名誉教授、奥西さんの特別面会人で、国民救援会副会長の稲生昌三さんなど10人が最高検を訪ね要請をしました。
 要請では「病院で十分な治療、リハビリを受け、適切な環境の下で健康を回復させなければ、いつ生命の危機に直面するか分からない」と指摘。法の執行に責任を有する検察庁自らが職権を行使し、万全の配慮をおこなうよう求めました。
 要請や会見のなかで、江川さんは「裁判で身の潔白を晴らしたいとしている奥西さんを釈放しても、逃走することは考えられない。検察は人道的な対応、国民が納得する対応をしてほしい」、やくさんは「(マスコミには)声を大にして裁判の不当性を訴えてもらいたい」、菅家さんは「奥西さんは半世紀も苦しんでいる。一日も早く再審開始を」と話しました。桜井さんは「昨年3月に亡くなった日野町事件の阪原弘さんのようにせず、奥西さんの命を守れ」、杉山さんは「奥西さんの命は一日一日と短くなっている。検察の体質はまったく変わっていない」と批判しました。

最高裁へ特別抗告
奥西さん 「私も頑張ります」
 弁護団は5月30日に特別抗告をおこない、審理は最高裁へと移ります。
 5月31日、弁護団の平松弁護士が奥西さんに面会し、特別抗告を申し立てたことを伝えると、奥西さんは「ありがとうございます。私も頑張ります」と答えました。

名張毒ぶどう酒事件 再審取消し「負けない、生きて取り戻す日まで」  

不当決定に怒り支援者が猛抗議 名古屋高裁

 決定日当日、名古屋高裁前には多くの報道陣と支援者約200人が集まりました。
 午前10時、決定を待ち構えている支援者と報道陣の前に、唇を噛みしめて厳しい表情の弁護団が「不当決定」の垂れ幕を掲げながら駆けだしてきました。支援者の「エー!」という声で騒然となり、涙ぐむ人の姿が見られました。「裁判所は2年間何をやっていたんだ!」という声が裁判所に向けられました。
 裁判所から出てきた鈴木泉弁護団長は、「考えられない決定です。犁燭錣靴は被告人の利益に瓩療澗Г髻∈枷十蠎らかなぐり捨てた。弁護団は今までに増して全力を投入して、この不当決定を必ずや打ち破る決意です」と怒りに身を震せて報告しました。
 支援者全員が満身の怒りを込めて「奥西さんは無実だ。再審取り消しは許さないぞ!」「奥西さんの無実の叫びを踏みにじるな!」とシュプレヒコールをあげました。

怒りに満ちた高裁抗議行動

 つづけて約130人の支援者が、高裁に対し怒りの抗議行動をおこないました。
 支援者は、「裁判官が果たすべき姿勢が見られない」「奥西さんを生きて取り戻すため、絶対に負けない」と語気を強めて口々に訴えました。布川事件の桜井昌司さんは、「誰も納得しない。3人の裁判官の汚点となる決定」、足利事件の菅家利和さんは「86歳で半世紀も閉じ込められた無実の人に、なぜいい結果を出さない。理解できない」と訴え。最後に抗議声明が読み上げられました。
 記者会見で、鈴木泉弁護団長が今回の不当決定について報告しました(別掲)。拘置所で不当決定を知った奥西さんは、「ありがとう。今回は残念でしたが、次の勝利を信じていますので、今まで以上にご支援をお願いします」と話したことが報告されました。

こころ一つに次こそ勝利を

 支援者集会では各地の守る会から「奥西さんも頑張っていくと話している。皆さんと一緒に頑張っていきたい」「心を一つにして、奥西さんが元気なうちに再審開始を勝ちとろう」と、最高裁でたたかう決意を固め合いました。
 支援者集会終了後、名古屋市内各地で宣伝行動がおこなわれ、決定の不当性を訴えました。また、奥西さんのいる名古屋拘置所に向けて、宣伝カーから「奥西さん、力を落とさないでください」「奥西さん頑張れ!」と激励しました。

科学に背く決定 鈴木泉弁護団長  

不当決定が出された5月25日、弁護団の鈴木泉団長は次のように話し、決定を批判しました。

 本日、名古屋高裁刑事2部は、不当にも検察官の異議申立を受け入れ、2005年に名古屋高裁刑事第1部がおこなった再審開始決定を取り消し、再審請求を棄却する決定を出しました。
 第7次の再審開始決定(05年)は、弁護団が提出した、事件で使われた毒物が、奥西さんがウソの「自白」で犯行に使用したとされている「ニッカリンT」という農薬ではなく、別のものであるという新証拠の証拠価値を認めました。しかし、異議審はそれを認めませんでした。
 10年、最高裁判所は、再審開始を取り消した異議審決定は「科学的知見に基づく検討をしたとはいえず、その推論過程に誤りがある疑いがある」という理由で、名古屋高裁に差し戻しました。
 その差戻し異議審では、毒物鑑定、毒物問題が中心的な争点となりました。
 差戻し異議審が始まって間もなく、検察官は従前の主張を変更して、新たにニッカリンTには、問題の成分は5%以下しか含まれていない等と主張しました。このため差戻し異議審であらたにおこなわれたニッカリンTの成分分析鑑定の結果、検察官の主張は完全に否定されました。
 しかし、今回の裁判所の決定は、検察官さえ主張していない、また鑑定書にも鑑定人証言でもまったく言及されていない事実を前提にして、科学にまったくの素人である裁判官たちが、「推論」して判断したのです。
 今回の決定は、何らの科学的証拠に基づくことなく、かつ、検察官に科せられた立証責任を弁護人に転嫁して、再審の扉を閉じてしまったものです。
 私は今回の決定で、再審の扉が必ずや開かれると信じて、この日を迎えました。決定主文を見たときは、「なぜか!」と、一瞬言葉を失いましたが、決定を読み進めていく内に、不当な内容であることを知り、強い憤(いきどお)りと必ずやこの不当決定を打ち破るという強い決意を持つに至りました。
 最高裁のたたかいで、この不当決定を破棄させ、今度こそ最高裁自らに再審開始決定を出させるべく全力をあげる決意です。

▼三重・名張毒ぶどう酒事件 1961年3月、三重県名張市で開かれた地域の懇親会で、出されたぶどう酒に毒物が混入され、それを飲んだ女性5人が死亡。ウソの「自白」をさせられた奥西勝さんが逮捕・起訴されました。奥西さんは無実を主張し、一審津地裁は無罪。二審名古屋高裁で逆転死刑判決、最高裁で確定。第7次再審請求で05年、名古屋高裁刑事1部が再審開始決定。06年、同高裁刑事2部が開始決定を取り消しましたが、最高裁がこの取消決定を「科学的知見に基づく検討をしたとはいえない」と破棄し、同高裁へ差戻して審理していました。

自衛隊国民監視差止訴訟 国が国民監視認める  

 自衛隊の国民監視差止訴訟の控訴審で、国側が情報保全隊の国民監視活動を具体的に認める控訴理由書を仙台高裁に提出していたことが判明しました。
 一審で国側は、情報保全隊による国民監視活動について記録した内部文書についても、監視活動についても、認否を拒否し続けました。しかし、国側の控訴理由書は、情報保全隊が原告を監視し、文書にまとめたことについて、「認めるものではない」としながらも、「原判決の認定については、不服申し立ての対象としない」と、国民監視活動にもとづいた内部文書の作成を事実上認めたものと言えます。
 国側は、成人式での市民の宣伝活動を監視したことについて、会場が自衛隊駐屯地から7キロ地点(大河原町)、4キロ地点(秋田市)だったことをあげて、自衛隊員やその家族も参加することから悪影響が生じることが考えられるなどと主張。「自衛隊に対する外部からの働きかけ等から部隊を保全するために必要」な情報収集だったと正当化し、監視活動をしたことを具体的に認めています。

取調べの全面可視化を 市民団体連絡会が法相に要請  

 市民団体や冤罪事件の支援団体でつくる「取調べの可視化を求める市民団体連絡会」は5月30日、取調べの全面可視化、代用監獄制度の廃止、証拠の全面開示などの早期実現を求めて、小川敏夫法務大臣に直接要請しました。要請には、呼びかけ団体のアムネスティ・インターナショナル日本、監獄人権センター、ヒューマンライツ・ナウ、国民救援会の代表が参加し、全国から寄せられた署名約7千人分を手渡し、要請しました。
 各団体の代表が発言し、国民救援会からは鈴木猛事務局長が全面可視化の実現を強く求めました。要請に対し小川大臣は、「可視化の重要性は認識している」としながらも、警察の反対などもあり、ただちに導入できる政治状況ではないなどと述べました。
 要請のなかで、名張事件の奥西勝さんの処遇について、監獄人権センターの村井敏邦さんが、「逃走の可能性のないのに、病床での片手錠は問題」と抗議し、鈴木事務局長も「人道的にも問題」と改善を求めました。

なくせ冤罪全国でいっせい宣伝 37都道府県147支部が  

 無実の人々を救う!5・20全国いっせい宣伝行動は37都道府県147支部590人が参加しておこなわれました。(中央本部集約分)
 「冤罪をなくすには取調べの可視化が必要だ」と市民の声が。(青森)/冤罪大仙市事件の畠山博さんの両親も支援を訴え。(秋田)/高校生のビラの受け取りも、署名も反応が良かった。(茨城)/「福井女子中学生殺人事件がんばってください」などの声が。(福井)/8支部1地域で1012枚を配布。(滋賀)/健康まつり会場では会員1人を拡大。(奈良)

なくそうえん罪関西市民集会 会場いっぱいに340人  

 関西の冤罪事件当事者、国民救援会などでつくるたんぽぽの会は5月26日、「なくそうえん罪 救おう無実の人々 関西市民集会」を約340人の参加で開催しました。
 第1部は、実際の冤罪事件を題材にした劇団きづがわの寸劇が演じられ、第2部では10事件の当事者、支援者が次々登壇し新たな発展を報告。力強い決意と訴えが続きました。たんぽぽアピールを万雷の拍手で確認し、たんぽぽの歌の全員合唱で終わりました。
 参加者からは、「訴えが胸に迫りました。涙が止まりませんでした」などの感想が寄せられました。

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