日本国憲法と世界人権宣言を羅針盤に、弾圧事件・冤罪事件・国や企業の不正に立ち向かう人々を支える人権団体

12年4月15日号

12年4月15日号  

自衛隊監視差止訴訟 国民監視は違法 国に賠償  

 民主運動などの監視を組織的におこなっている陸上自衛隊情報保全隊によって監視対象とされた東北6県在住の住民107人が、監視の差し止めを求め、国を相手どり提訴した自衛隊の国民監視差止訴訟。仙台地裁(畑一郎裁判長)は3月26日、原告のうち5人に対し「情報収集は人格権を侵害し、違法」として国に計30万円の損害賠償を命じる判決を言い渡しました。

 情報保全隊による国民監視は、2007年6月に日本共産党が公表した自衛隊の内部文書などで明らかになりました。文書には、デモの様子や参加者の写真が掲載され、消費税増税、医療費負担増、年金改悪などの自衛隊と無関係の運動まで監視していたことが明らかになりました。

不誠実な対応とり続けた国
 原告らは、監視活動は、国民の思想信条・プライバシー権はもとより、平和的生存権を侵害する重大な違憲・違法な行為であるとして、監視差し止めと損害賠償を求め07年に提訴しました。
 裁判で被告の国側は、内部文書や個々の監視行為について、いっさいの認否を拒否。証人尋問も承認しないなど、不誠実な態度をとり続けてきました。しかし、弁護団の追及によって、監視行為の事実が実質的に法廷で明らかとなりました。

違法認めるが差止め認めず
 判決では、「情報保全隊は、活動の状況にとどまらず、氏名、職業に加え、所属政党等の思想信条に直結する個人情報を収集しており、人格権を侵害したといえる」とし、「情報保全隊がした情報収集等は、違法とみるほかない」「自己の個人情報をコントロールする権利は、法的保護に値する行為として確立し、行政機関によって違法に侵害された場合には、損害を賠償すべき」と、情報収集を違法と断じ、5人に計30万円を支払うよう国に命じました。残る102人の原告については、「内部文書に氏名などの個人情報の記載がなく、個人情報を収集して保有したとは認められない」として請求を棄却しました。
 また、監視行為の差し止めについては、「差止めの対象たる行為を具体的に特定しているとはいい難い」として認めませんでした。

違憲と差止め求めたたかう
 判決後の報告集会で、原告団団長の後藤東陽さんは、「裁判所は法の番人として良心を示してくれた。しかし、憲法に違反するとの一言がほしかった」と話しました。
 原告団と弁護団、支援する会は声明を発表。情報保全隊から監視されたことは大きな人権侵害であり、違憲・違法と宣言すべきと指摘。5人以外の慰謝料請求を退けたことを批判しました。また、判決で監視による情報収集・保有行為が違法としながら差し止め請求を認めなかった点を、「一貫性に欠けるもの」と批判しています。
 原告団は、監視行為が憲法違反であることを認めさせ、監視差し止めを実現するため、控訴してひきつづきたたかう決意を表明しています。

次は違憲判決を
原告団事務局長 堤智子さん
 人格権の侵害を認め、監視行為を違法としたことは、良識ある判決であり喜んでいます。一方、憲法で保障された思想信条、集会の自由について判断をせず、違法な監視行為の差し止めをまったく認めなかった点で、問題の残る判決でした。
 4年あまりのたたかいのなかで、亡くなられた原告もいます。その方たちの思いも背負って、監視活動が憲法違反だと認めさせるためにひきつづき頑張っていきます。

法相の死刑執行に抗議 国民救援会が抗議声明   

 小川敏夫法相は3月29日、東京、広島、福岡の各拘置所で、それぞれ1人ずつ合計3人の死刑を執行しました。民主党政権下での死刑執行は、2010年7月に、当時の千葉景子法相が就任前の死刑廃止の主張を投げ捨てて、2人の死刑を執行して以来、1年8カ月ぶりに再開したものです。

 今年1月の法相就任記者会見で小川法相は、死刑執行に関して「逃げるつもりはない」などと執行への意欲を公言。また、元法相の千葉景子氏が省内に設置した「『死刑の在り方』を検討する勉強会」についても、「存否ではなく、死刑の執行方法、確定死刑囚の処遇の問題については議論をすすめたい」と強弁して、死刑制度の存廃を含む問題に関する国民的議論を準備することが想定されていた「勉強会」の当初の趣旨を改変させました。2月には、欧州議会が小川法相を名指しして死刑執行をしないように求める決議を採択しています。こうしたもとで、国民的議論はおろか、その前提たる情報提供すらしないまま死刑執行を再開しました。
 死刑執行の理由について小川法相は、「世論調査などで死刑制度に対する国民の支持があることを重視した」とその責任を国民に転嫁しています。しかし、国際自由権規約委員会は08年10月に、日本政府に死刑廃止について勧告しており、「世論調査の結果如何にかかわらず、公衆に対して、必要があれば、廃止が望ましいことを伝えるべき」と求めています。

 国民救援会は、3月30日、死刑執行に対して鈴木亜(つぐ)英(ひで)会長名で抗議声明を発表。死刑制度の存廃に関する国民的議論を尽くさないままに、司法が治安強化の立場から厳罰主義に傾斜して死刑判決が増加しているという異常な現状のもとで、国際人権章典の精神や死刑廃止の国際的な流れに反した死刑執行再開に厳しく抗議しています。
 国民救援会は声明で、「誤判だけでなく、松川事件などのように権力によって意図的に死刑を宣告された恐怖も身をもって体験してきた」と述べ、「人間のおこなう裁判制度に絶対的に誤りがないということはいえず、誤判による死刑はその悲惨さとともに、回復不可能な違法行為である」と強調しました。そのうえで、「近代の刑罰制度においては応報刑から教育刑、生命・身体刑から自由刑へと大きく変わってきており、世界的には、国際人権章典で死刑廃止の方向が打ち出されて、現在、世界の約71%の国で死刑が事実上廃止されている(11年、アムネスティ調べ)」と指摘。日本国内でも、裁判員裁判で国民が死刑判決に関与することから、死刑制度について論議が広がり始めているところでの死刑執行再開に強く抗議しています。
 国民救援会は、当面死刑の執行を停止し、国民的議論を尽くすうえで必要な措置をとるとともに、死刑廃止条約の批准と死刑の廃止をあらためて要求しています。

名張毒ぶどう酒事件 再審可否の判断間近 10万人署名達成を  

 1961年に三重県名張市で懇親会に出されたぶどう酒に毒物が混入され5人が死亡、12人が重軽傷を負った名張毒ぶどう酒事件の再審をめぐり、最高裁から名古屋高裁に審理が差し戻され2年が経過しました。焦点となっている毒物の鑑定や意見書も出し尽くされ、使われた毒物が奥西勝さん(86)の「自白」と違うことが明白になりました。6月5日に担当する裁判長が定年退官をすることから、それまでに再審の可否の決定が予想されています。86歳となった奥西さんの年齢を考えれば、ここで再審決定を勝ちとらなければ、獄中から生きて助け出すことができません。国民救援会中央本部は、再審開始を求める署名を全国から集中し、裁判所への要請を強めるよう呼びかけています。
 こうしたなか、3月24日〜25日に、14都道府県101人の参加で、第30回全国現地調査がおこわなれました。参加者を前に弁護団団長の鈴木泉弁護士は、「再審決定には、世論の力が必要。力を貸してほしい」と訴えました。
 現地を回った参加者は、「検察によって作られた冤罪ということを確信した」「一刻も早い再審開始と奥西さんの救出を勝ちとろう」と決意を固めました。東京から参加した園加代子さんは、帰京後すぐに署名活動にとりくみ、すでに100人分の署名を集めました。「奥西さんに生きて帰ってきてほしい。皆さんの署名が、裁判所を動かす力になると思って声をかけています」と、園さんは話しています。
 名張事件全国ネットワークなどがとりくんでいる署名は、3月26日までに約9万人分を裁判所に提出。目標としている10万人まであと8345人(4月5日現在)となっています。国民救援会愛知県本部では、4月末までに10万人達成することをめざして、「5千人の署名を愛知で責任を持って集めよう」と決意し奮闘しています。
 愛知・尾北支部では、「再審開始のために、なんとしても署名を集めよう」と、現地調査の参加者などの呼びかけで、4月6日から3日間連続での署名行動を計画しています。
〈要請先〉〒460―8503 名古屋市中区三の丸1―4―1 名古屋高裁・下山保男裁判長
〈署名の問合せ〉国民救援会愛知県本部 TEL052(251)2625

滋賀・日野町事件 遺族が再審請求「父の無念、晴らす」  

 1984年に発生した強盗殺人事件の犯人とされて再審請求し、無期懲役刑の受刑中に亡くなった滋賀・日野町事件の阪原弘(ひろむ)さん(死亡時75歳)の再審を求め、阪原さんの妻・つや子さんや長男の弘次さんなど遺族が3月30日、大津地裁に第2次再審請求を申し立てました。
 阪原さんは、大阪高裁での再審請求の審理中、刑務所内で適切な治療を受けることができなかったために衰弱し、2010年末に刑の執行停止を受けて家族の元に戻ったものの、11年3月に心不全で亡くなり、審理は終了していました。
 今回の再審請求は、阪原さんの遺志を継いだ遺族が、阪原さんの名誉を回復し、でたらめで誤った刑事裁判をただすためにおこなわれたものです。地裁前には全国から80人の支援者が集まり、弁護団とともに阪原さんの遺影を抱いて地裁に入る長女・美和子さん、弘次さんを激励しました。
 弘次さんは、集まった支援者に、「父の無念を考えた時、ふつふつと怒りが浮かんだ。父の無念を晴らすためにたたかう」と話しました。

福井・福井女子中学生殺人事件 名古屋高裁に要請  

 暴力団関係者などのウソの証言で前川彰司さん(46)が犯人に仕立て上げられた福井女子中学生殺人事件。昨年11月に名古屋高裁金沢支部が出した再審開始決定に対し、検察が異議申し立てをしたため、現在名古屋高裁本庁で異議審がおこなわれています。
 3月30日、名古屋高裁と名古屋高検への要請行動がおこなわれ、前川さんの父・禮三さんと、支援する愛知の会と国民救援会の各県本部(福井、石川、富山、岐阜、愛知、中央)から27人が参加しました。
 名古屋高裁の要請では、支援する愛知の会の荒川和美会長が、「この事件は、市民からも大きな注目を浴びている。一刻も早い再審開始を求める」と要請しました。禮三さんは、「息子は、事件があった時間、自宅で家族と食事をしていた。裁判所は正義の光をあててほしい」と要請。福井県本部の岩尾勉会長は、「検察は25年間証拠を隠し続け、再審決定にも異議を申し立てた。そういう検察を育てた裁判所にも責任がある」と追及しました。この日、再審開始を求める署名2030人、45団体分を提出しました。
 名古屋高検では、全員が「検察の異議申し立てに道理はない」と抗議し、早急に異議申し立てを取り下げろと要請しました。

福岡生存権裁判 勝訴判決を差戻し最高裁が不当判決  

 北九州市在住の生活保護受給者35人が、老齢加算の廃止や減額を決定した処分の取り消しを求めていた福岡生存権裁判で、4月2日、最高裁第2小法廷(千葉勝美裁判長)は、原告の訴えを認めた福岡高裁判決を破棄し、審理を高裁に差し戻す不当判決を出しました。2010年の福岡高裁判決は、生活保護は法律で認められた権利であり、老齢加算は正当な理由がなく廃止されたもので生活保護法に違反するとして原告勝訴の判決を出していました。なお、最高裁の判決には、保護基準の改定にあたっては「健康的で文化的な最低限度の生活」が損なわれないよう「慎重な配慮が望まれる」とする須藤正彦裁判官の補足意見が付けられました。
 老齢加算は70歳以上の生活保護受給者に支給されていたものですが、06年度に廃止され、70歳以上の生活保護受給者は支給額を2割近く減額されることになりました。そのため、食事やお風呂、人付き合いを減らし、妻の納骨さえできないなど、人間らしい暮らしができない原告もいます。
 憲法25条で、健康で文化的に生きる権利が保障されているにもかかわらず、人としての誇りも保てず、ただ生かされているだけの生活を強いる国の施策に対し、全国約100人の原告が、人間らしい暮らしと生きる希望を返せと裁判を提起しました。生活保護基準の変更は、最低賃金、社会保障給付、保険料、税の負担など他の諸制度に連動しており、国民生活全般に重要な影響を及ぼすものであり、各地で運動が広がり、国民救援会も支援しています。

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