12年2月25日号
12年2月25日号
国公法弾圧２事件 「言論の自由守れ」学者・文化人220人アピール
最高裁でたたかう国公法弾圧２事件（国公法弾圧堀越事件、世田谷国公法弾圧事件）の共闘会議は２月６日、審理を大法廷に回付し、国民の言論表現の自由を守るよう求める学者・文化人アピールの賛同署名を最高裁に提出しました。
最高裁へのアピール署名提出行動には、呼びかけ人や共闘会議のメンバー、当事者の宇治橋眞一さんなど１６人が参加し要請しました。
賛同したのは作家の早乙女勝元さん、東大教授の小森陽一さんなど学者・文化人２２０人。アピールは、憲法２１条はすべての国民に言論・表現の自由を保障しており、国家公務員であることを理由に制限したり、行政の中立的運営に影響を与えないビラ配布まで規制する必要はないと強調。日本も批准している国際人権規約にも違反し、諸外国でも公務員の政治的行為に刑事罰を科している国は例を見ないと指摘しました。そのうえで、国家公務員の政治的行為を一律全面的に禁止した猿（さる）払（ふつ）事件最高裁判決を見直すために、審理を大法廷へ回付し、国民の言論・表現の自由を守る判断をするよう求めています。
社会の発展に不可欠の闘い
呼びかけ人ら会見
最高裁への署名提出後の記者会見で、アピール運動の呼びかけ人のひとり、東大名誉教授の奥平康弘さんは猿払事件について、「憲法や行政法の学会のなかでは、ほとんどの学者がおかしいと言っている」と批判。「大事なことは国家公務員も市民だということ。憲法に基づいて市民であるべき原則が適用されなければならない。最高裁がこの事件に真剣に立ち向かい、猿払判決を見直すという姿勢をとってほしい。最高裁が違憲無罪判決を出すことが、新しい日本社会、新しい司法界を作り、来るべき社会の発展のために不可欠だ」と主張しました。
国公労連委員長の宮垣忠さんは、「沖縄防衛局長が、勤務時間中に地位を利用して、職員や家族に選挙干渉をしたことこそ違法。堀越さん、宇治橋さんが休日に市民としてビラを配ることが、なぜ国家公務員の政治的中立を犯すのか」と批判しました。
国民救援会の鈴木亜英会長は、「猿払最高裁判決を絶対とする流れを変えていきたい。原発神話を生み出した社会風土、少数者の意見を排除・抑圧する者を許すという社会構造を正していくのが私たちの目的。単に国家公務員のたたかいにとどまらず、市民の自由を獲得するたたかいだ」と強調しました。
宮城・仙台筋弛緩剤冤罪事件 守大助さん再審請求
患者の点滴に筋弛緩剤を混入させたとして、殺人などの罪で准看護師の守大助さん（４０）が無期懲役の刑を受けている宮城・仙台筋弛緩剤冤罪事件（北陵クリニック事件）で、２月１０日、弁護団が仙台地裁に再審請求書を提出。大助さんを獄中から救い出すたたかいが始まりました。
「息子は今日の日を、一日千秋の思いで待っておりました」
目に涙を浮かべて話す守大助さんの母・祐子さん。無期懲役刑が最高裁で確定してから４年。大助さんと家族が待ち望んでいた再審請求が実現しました。
綿のような雪が舞う仙台地裁。午後２時、全国から集まった７０人の支援者の激励を受けて、弁護団が再審請求書を提出しました。
逮捕から１１年。真相究明をせず大助さんを犯人と決め付けた裁判
所に､祐子さんが憤（いきどお）り
をあらわにしました。
「裁判官は無実の叫びに耳を貸さないし、真実を知ろうともしなかった。検察は、本来なら数百回鑑定できる資料を全量消費して、自分たちに都合の悪い証拠は出さない。これは公正な裁判ではない。人の一生を何だと思っているのか」
祐子さんが大助さんと面会した１月２４日、大助さんは、「いよいよだよ」と話し、再審請求に期待を込めていました。
請求後の報告集会で、弁護団長の阿部泰雄弁護士が再審請求書の３つの柱について解説。筋弛緩剤が検出されたとする成分鑑定の誤りや、患者の急変症状が筋弛緩剤の薬効と矛盾することを指摘した鑑定書、守さんの「自白」が合理性に欠けることを証明する心理学者の鑑定書を新証拠として提出したと説明しました。阿部弁護士は、「検察は、鑑定書は出すが、それを裏付けるデータを一切示そうとしない。また、守さんが使ったとされる筋弛緩剤の容器なども、写真だけはあるが、実物が開示されていない。これらの証拠の開示も求めていきたい」と力を込めました。
守大助さんを守る会の鹿又輝男会長は、「再審は、待っているだけでは審理は進まない。再審を早く開けという声をどれだけ多く集めるかにかかっている」と強調しました。
再審申し立てを受けて、獄中の大助さんから支援者あてに届いた手紙には、「この日が来ることを待っていました。何度も挫（くじ）けそうになりましたが、毎日皆さんから届くお便りに励まされ、頑張ってこられました。これまで以上に私も頑張ります」と、決意が語られていました。
昼の宣伝行動では、１時間で１２００枚のビラを配布。大きな反響がありました。
ビラを受け取った２４歳の男性は、「冤罪だと知って衝撃だった。署名があれば協力したい」と話し、足を止めて支援者と対話した２４歳の女性は、「事件のことは初めて聞いた。ちゃんと真実を明らかにしてほしい。こういう宣伝がなければ、知ることができなかった」と話しました。
この日の行動には、１１都県の国民救援会と、地元・宮城をはじめ、各地の守る会など約１００人が参加しました。
科学性に欠ける有罪判決の誤り 阿部弁護団長の話
有罪の証拠となった大阪府警の鑑定は、急変患者の血液から筋弛緩剤の成分が検出されたとしています。しかし、弁護団の実験で筋弛緩剤の標品（サンプル）を質量分析しても、検察が主張する数値は出ませんでした。
さらに急変患者の症状は、いずれも筋弛緩剤の薬効とは異なります。急変した女児は、点滴を始めて５分後に様態が急変したとされています。ここに、この事件の認識の落とし穴があります。「点滴によって」という評価は後付けです。女児は、学校で腹痛を訴え、受診前に３回嘔（おう）吐（と）しています。また、肥大型心筋症の症状、難聴の検査データもあり、これらすべての症状は、「ミトコンドリア病メラス」という病態で説明できます。
いずれも科学の力で解決できる問題です。裁判所が、科学的な審理をすることを強く求めていきたいと思います。（文責・編集部）
大阪・東住吉冤罪事件 再審求め宣伝と要請
３月に再審の可否を決定することが予定されている大阪・東住吉冤罪事件で、支援する会と国民救援会大阪府本部は、２月１０日、今年３回目となる大阪地裁前宣伝と要請行動を１２人の参加でおこない、裁判官が弁護団の提出した新証拠を真摯（し）に受けとめ、事実と道理にもとづいた判断をするよう要請しました。
朴龍晧さんのお母さん（写真）が街頭宣伝で訴えると、「がんばってください」「ひどい冤罪やね」と声がかけられました。
裁判所に提出した個人署名は累計で１万9866人分となり、次々届く要請はがきも、すべて裁判長に渡していると、要請した書記官が話しました。
支援する会では、再審開始を求める署名を早急に裁判所に集中するよう呼びかけています。
〈署名の問合せ先〉��06(6354)7215 国民救援会大阪府本部
静岡・袴田事件 袴田巌さんのＤＮＡ鑑定へ
放火と殺人の罪で袴田巌さん（７５）が死刑判決を受けている静岡・袴田事件で、袴田さんのＤＮＡ型鑑定を実施することが、２月３日の弁護団、裁判所、検察による三者協議で決定しました。
弁護側、検察側双方とも推薦する鑑定人が決まり、３月１日に鑑定人尋問が開かれ、その後東京拘置所で袴田さんのＤＮＡを採取することになります。
昨年おこなわれた血痕鑑定では、袴田さんが犯行時に着用していたとされる衣類の血痕から被害者のＤＮＡ型は検出されず、弁護団は「捜査機関によって捏（ねつ）造（ぞう）された証拠であることが明確だ」と指摘していました。確定（有罪）判決で袴田さんの血液だと認定された衣類の血痕について弁護団は、袴田さん本人のＤＮＡ型と比較する追加鑑定を求めていました。
東京・痴漢デッチ上げ沖田国賠訴訟 沖田さんの訴え棄却
電車内で携帯電話を使用していた女性を注意したところ、逆恨みされ痴漢にデッチ上げられ逮捕された沖田光男さん（６９）がたたかっていた国賠裁判で、最高裁第３小法廷（大谷剛彦裁判長）は、１月３１日付けで沖田さんの上告を棄却しました。
沖田さんは１９９９年に、電車内で女性に痴漢行為をしたとして「現行犯」逮捕されましたが、嫌疑不十分で不起訴となりました。警察や検察、ウソの被害申告をした女性を相手に起こした国賠裁判は、一、二審が沖田さんの痴漢行為を認める不当判決を出しましたが、最高裁が、女性が通話していた相手の証人尋問をおこなっていないのは審理不十分として東京高裁に差戻しました。差戻し審では、沖田さんの痴漢行為の存在を否定しつつも、「被害申告」の虚偽については「立証が尽くされていない」として訴えを退け、沖田さんが上告していました。
決定を受けて沖田さんは、「敗訴したとはいえ、いくつかの貴重な判決を勝ちとり、日本の司法をただす寄与はできた。今後は、この国の民主化、基本的人権が重んじられる社会を作るため、みなさんと力を合わせ、精一杯の努力をします｣と話しています｡
名張事件第10次再審（最高裁）署名用紙
