日本国憲法と世界人権宣言を羅針盤に、弾圧事件・冤罪事件・国や企業の不正に立ち向かう人々を支える人権団体

12年11月5日号

12年11月5日号  

思想調査は憲法違反 大阪・「思想調査」アンケート裁判  

<インタビュー>原告団のひとり 八尾高志さん

 今年2月、橋下徹大阪市長は、市職員に対する思想調査アンケートをおこないました。「アンケートは憲法違反」と7月に提訴した原告団の一人、八尾高志さんに提訴に至る思いを聞きました。

 私は、生野区役所の生活保護の係にいます。今回のアンケートは、2月9日に大阪市総務局から職場のパソコンにメールで送られてきました。

「業務命令」、しかも「処分」  

 驚いたのは、「業務命令」だとわざわざ書いてあったことです。それから、回答が正確でないと処分の対象とするということも書いてありました。しかも、アンケートは、どんな質問があるのか全体を見渡すことができないもので、まず名前を記入すると、次の質問に移り、それに答えると次の質問に行くというように、順々に質問に答えさせられる形でした。
 アンケートは、実名を記入させる項目が多く、「労働組合に誘った人は誰ですか」とか、「選挙の応援に誘った人は誰ですか」とか。実名を挙げられた人は、なんかあたかも悪いことをしていたかのような印象を与えるんですよ。
 アンケートを作成したのは、野村修也特別顧問を中心とした特別チーム第三者委員会というグループで、市が作成を委託し、第三者委員会が作成し、総務局がメールで送ったと考えられます。

市民に広く知ってほしい  

 今回の裁判は、55人の職員で、原告団を作って提訴しました。提訴するにあたって、原告団はみな、今後の生活のことなどが心配でした。
 私たちの組合(大阪市役所労働組合)は少数組合ですから、いままでも圧倒的多数に飲み込まれずに信念を貫き通してきた組合です。今度のことも自分の意見を貫いた方がいいのではないかと家族に励まされた人も多かったと聞いています。
 このまま黙っていたのでは橋下市長のやり方は変わらないし、思想信条の根本にかかわる憲法問題だと考えて、裁判で判決を出してもらおうということになりました。
 それに、大阪市民の人にもこの問題を広く知ってもらいたいので、裁判を提起しました。
 裁判は、形式上は、今回のアンケートによって精神的苦痛を受けたことに対する慰謝料請求です。しかし、明らかにしたいのは、このアンケートが思想調査であること、自治体の権力を有している市長が職員に対して思想調査をするということがどういう問題なのかということです。現在の市長に言っても無理なことかもしれませんが、憲法を守るのは、権力者だということを確認したいし、平然と憲法を守らない人のもとで市民が幸せになれるはずがないと思うんですね。
 さらに、このアンケートによって原告をはじめ職員が苦痛を与えられたのは事実ですから、謝罪をしてほしいという思いも大きいのです。このアンケートによっていままでがんばってきた自分の仕事が否定されたと感じる人がたくさんいますので、市長に認識を改めてほしいと考えています。

密告が職員の信頼をこわす  

 もともと橋下市長は、今回のアンケートのような密告制度、密告主義といいますか、ことあるごとに何かあれば、すぐに通報してくださいという意見箱みたいなものをいろいろ設けて密告を奨励しています。一緒に悪いことをしていても密告者については処分を軽くしますということを言っています。こういうことが横行すれば職員同士が信頼して仕事をしにくくなります。職員がばらばらになっていくと思います。ナチス・ドイツがこのような密告制度を多用していたと言われます。

憲法が生きる自治体大阪を  

 本来であれば、自治体というのは、憲法をどう生かすべきかということを追求すべきなんです。いまでも自治体は憲法の趣旨に沿って仕事をしていないことが多々あるんだと思います。残念ながら、今回の問題は自治体の市長自身が職員に対して憲法違反の行為をおこなうというのはそれ以前の問題だと思いますが、市長自身が憲法を守らなくてはならないということを明らかにしたいと思います。
 裁判での大阪市の言い分は、今回のアンケートを実施したのは大阪市だが、アンケートを作成したのは第三者委員会なので損害賠償請求されるのは筋違いだとか、アンケートは実施したが最終的には廃棄したので原告が精神的苦痛を受けたとは言えないはずだというのです。
 そんなおかしなことは通りません。この裁判は憲法裁判です。絶対に勝ちたいと思います。
〈激励先〉
大阪市「思想調査」裁判をささえる会 FAX‥06(6354)7206

秋田・大仙市事件 全国現地調査で畠山さんの無実確信  

 秋田・大仙市事件の第1回全国現地調査が10月21日におこなわれ、東北6県をはじめ愛知、東京などから50人が参加しました。
 この事件は、2006年10月23日、大仙市大曲の用水路で4歳の男の子の死体が発見され、母親の交際相手であった畠山博さん(当時45歳)が軽自動車内で暴力を加え、母親に「川に捨ててこい」と指示したとして逮捕、起訴され、09年に最高裁で有罪が確定しています。
 現地調査は、確定判決の証拠とされた畠山さんと共犯者とされる女性の「自白」に基づいて、“塙垳従譴箸気譴訖晴物産館(道の駅かみおか)の駐車場、男児を2人で殴打したとされる軽自動車での「犯行」再現実験、死体遺棄現場の3つのポイントを中心におこなわれました。
 調査の結果は、道の駅は紅葉の時季の休日ということもあって多くの利用者があり、「自白」や確定判決のような犯行が本当におこなわれたのであれば、目撃者が必ずいるはずなのに誰もいないこと、また、犯行に使ったとされた軽自動車内での殴打再現実験でも、「犯行態様は不自然だ」など、参加者から次々に確定判決等への疑問が出され、畠山さんの無実を確信しました。
 総括集会では、畠山さんの父親の茂之さんが「どうかみなさんのご支援で息子を助けて下さい」と、支援を訴えました。

岐阜・関ヶ原人権裁判 住民の勝訴が確定、町に損害賠償命令(最高裁)  

 小学校統廃合に反対する署名をした町民に町職員が戸別訪問し、「今でも反対か」などと質問したのは人権侵害として町民7人が2007年11月、町に損害賠償を求めた裁判で、最高裁は10月9日付で町の上告を棄却する決定をしたため、二審の原告勝訴の判決が確定しました。
 一審の岐阜地裁は、「署名に疑義があった場合、確認手段として戸別訪問は許される」と判断したのに対し、二審の名古屋高裁判決は「戸別訪問して調査することは原則として相当でない」「表現の自由・請願権を侵害する」「思想良心の自由を侵害している」と、住民側の訴えをほぼ全て認めていました。
 勝訴判決の確定を受け、原告団は今後、浅井健太郎町長に謝罪と辞任を求めていく方針です。

冤罪被害者との面会記 埼玉・介護ヘルパー窃盗冤罪事件 安澤篤史さん  

 介護ヘルパー窃盗冤罪事件で懲役1年の実刑が確定し、収監されている安澤篤史さんの面会記を、篤史さんの母・美代子さんに寄せてもらいました。

 息子篤史が6月25日に収監され、間もなく4カ月になろうとしています。川越少年刑務所から長野刑務所に移送となり、当時臨月直前のお嫁さんの美紗さんと孫娘と3人で長野へ面会に行きました。その後美紗さんが9月9日に無事第2子を出産し、落ち着くまでは私と孫が面会に行っています。
 3度目の面会の折にかなり不機嫌な様子で「救援会と関わりたくない」と言い出し、救援会のご支援を受けていることで刑務所側から何らかの圧力があるのだろうかと心配しておりました。10月12日、東京・大田支部の園さん、佐久間さんとご一緒に面会して、その理由を知ることができました。
 それは、手紙が届くたびに呼び出され離席するため、新人が離席するのはおおむね願箋(お願い事を書く用紙)を書くためですが、願箋の中味は告げ口がほとんどのため、息子は「あいつ、またちくりに行きやがった」となり、いびられたようです。受刑者から誰からの手紙か聞かれたので「家族から」と答えると、「自慢してる」。差入れの書籍を受け取りに行くとまたいびられる。
 今は何とか乗り切れたから話せるけど、実はそんな日々だったと、屈託なく笑いながら話してくれました。手紙や面会が来ない受刑者が殆どで、寂しさが増してねたむ、その気持ちがよくわかると言っていました。
 今後も要請行動と、家族と支援の会による面会を続けていきたいと思っています。第1回の要請には東京、三多摩、長野から36人もの方が来てくださり、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
 不当判決には怒りを覚えます。でも家族で全力でたたかい、そこでみなさまからの信頼を得ることができました。その信頼は私たち家族の大きな支えであり、財産です。
 美紗さんは毎日手紙を、孫は絵と字を書いています。それを見て喜ぶ篤史。私の息子一家の日常です。

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