日本国憲法と世界人権宣言を羅針盤に、弾圧事件・冤罪事件・国や企業の不正に立ち向かう人々を支える人権団体

12年1月15日号

12年1月15日号  

袴田事件/死刑の証拠、捏(ねつ)造だった  

「犯行着衣」の血液から被害者のDNA型出ず...弁護側鑑定  

弁護団再審開始と刑の執行停止を

 1966年に静岡県で4人が殺害された強盗殺人事件で死刑判決を受けた袴田巌さん(75)の再審を求める審理で、静岡地裁(原田保孝裁判長)が、袴田さんが犯行時に着用したとされる衣類のDNA型鑑定を実施した結果、被害者の血液と同一のDNA型は検出されなかったことが12月22日、明らかになりました。

 「袴田さんの無実が99%明らかになった。裁判所は、再審決定に踏み込んでほしい」
 2通の鑑定書を手に、記者会見で弁護団長の西嶋勝彦弁護士が強い口調で話しました。

 根拠に乏しい検察側の鑑定
 袴田さんの有罪判決の根拠となっている唯一の物的証拠は、犯行時に着ていたとされる、血のついた5点の衣類でした。この衣類に付着した血液と、被害者が着用していた衣類のDNA型鑑定がおこなわれました。
 鑑定は、弁護側と検察側の双方それぞれが推薦した2人の鑑定人が実施。弁護側の鑑定で、5点の衣類には、血縁関係のない4人以上の血液が付着しており、被害者のDNA型と一致しない結果となり、犯行着衣ではなかったことが証明されました。
 そもそも5点の衣類は、事件から1年2カ月後に事件現場のみそ工場のタンクでみそ漬けの状態で「発見」された捏造の疑いが強いものでした。しかし、確定判決は、被害者の血液が付着しており、袴田さんが犯行時に着用したものと認定していました。
 弁護団事務局長の小川秀世弁護士は、「今回の鑑定で5点の衣類が偽造であることが裏付けられ、警察が証拠捏造に関与したことがはっきりした。どう責任をとるのか」と語気を強めました。
 一方、検察側の鑑定は、5点の衣類のうち、緑色ブリーフから検出されたDNA型は、被害者のものと一致する可能性を排除できないなどと結論づけました。しかし、この鑑定は、裁判所があらかじめ指示した7つの鑑定事項のうち、「鑑定試料(5点の衣類など)に人血が付着しているか」について調べておらず、「検出されたDNAが、血液に由来するものか」についても「不明」としたままDNA型鑑定をおこなっています。
 西嶋弁護士は、「鑑定の体をなしていない。『被害者と一致する可能性を排除できない』というが、その根拠を示していない。裁判所から命じられた鑑定事項を検討していないのは、不十分というよりも不誠実な鑑定だ」と話しました。

 獄中の袴田さん 拘禁症が深刻
 会見に同席した袴田さんの姉・秀子さんは、「本当に長い46年でした。再審開始に向かっての第一歩です。弁護士の先生方、皆様方の応援があってでございます」と話し、獄中の袴田さんに今回の結果を伝えに東京拘置所を訪れたものの、袴田さんが拒否したため実現できなかったことを明らかにしました。
 「ずいぶん前から、『俺は毒殺される』と言って薬も飲まなくなっていたようです。面会できないのは、拘禁症などの病状が悪化しているからでしょう」
 約1年半、秀子さんと弁護団は袴田さんに面会できていません。
 「何年かかっても巌を助けださにゃいかんと思っています。これからも面会できなくても、毎月拘置所に行こうと思っています」
 鑑定を受け、弁護団は12月26日に「証拠捏造は明らか」として、再審開始と袴田さんの刑の執行停止を要請。国民救援会静岡県本部も20日に要請をおこないました。
〈再審開始要請先〉 〒420―8633 静岡市葵区追手町10―80 静岡地裁・原田保孝裁判長

名張事件/奥西さんの再審急げ−−冤罪被害者共同アピール  

 再審裁判で無罪になった足利事件の菅家利和さん(65)、布川事件の桜井昌司さん(64)、杉山卓男さん(65)の3人が12月16日、名古屋高裁と名古屋高検に対して、名張毒ぶどう酒事件の奥西勝さん(85)の再審開始と、すべての証拠の開示を要請しました。

 この要請は、桜井さんが名張毒ぶどう酒事件の一日も早い再審開始を勝ちとるために、この間無罪判決を勝ちとった菅家さん、杉山さん、志布志事件の元被告団、同踏み字事件の川端幸夫さんによびかけ、「名張毒ぶどう酒事件で速やかな再審開始決定と、奥西勝さんの釈放を求める共同アピール」を公表し、おこなわれたものです。
 「共同アピール」では、「冤罪被害者たちは、取調室の異常さや取調官の圧力、偽計などに負けて嘘の自白をさせられました。死刑や無期の重罪事件であっても、目の前の苦痛に負けて『犯人だ』と言わされてしまうのが、取調べの実態なのです。どうか、私たちの体験をご認識くださって、裁判所、裁判官としての原点に立ち返って名張毒ぶどう酒事件を判断し、人生の残り時間が少ない奥西勝さんに対して、一日も早く再審裁判を開始する決定をくだされることを願っています」と、訴えています。

 再審を開始し 早期の釈放を

 共同アピール人を代表して3人が名古屋高裁に要請。桜井さんは、「布川事件は検察が隠していた証拠が最初から明らかにされていれば起訴もできなかった。一審で無罪となっていた」、杉山さんは、「毒物問題はもう決着がついている。ただちに再審開始すべきだ」、菅家さんは、「奥西さんは高齢で、一日も早く釈放すべき」などと、それぞれ要請しました。
 その後、名古屋高検に要請し、「最高検は『検察の理念』の中で無実の者を罰しないとか言っているが、福井女子中学生殺人事件や名張事件で異議申し立てをしている検察に、そんな資格はない」などと、厳しく批判しました。

 苦しむ奥西さん 助けたい一心 

 記者会見で今回の要請の経緯について桜井さんは、「本来なら我々よりも前に奥西さんが再審開始になって無罪になっているはずだと思っています。しかし、検察官の抵抗にあい、裁判所がそれに乗っていると感じました。名張事件では我々よりもひどい。王冠の歯型鑑定などが改ざんされ、いまだに証拠が隠されている。全国にはまだまだ冤罪で苦しんでいる人がたくさんいる。冤罪の苦しさを身をもって知っている者として、冤罪犠牲者の人びとをひとりでも多く助けたい一心で行動した」と述べました。
 拘置所の奥西勝さんから、特別面会人の稲生昌三さんを通じて要請行動に対するメッセージが寄せられました。
 「もう事件から50年余、私は85歳の老齢、高齢となりました。死刑判決からも42年、もう最後の判断、再審を決めてほしい。唯々願うのみです。菅家さん、桜井さん、杉山さん、支援の励まし本当にありがとうございます。私と同じように苦しみを味わってこられたと思います。私も頑張ります。気力をふりしぼって再審無罪を勝ちとりたいと思います」

愛知・ソフトバンク過労死労災認定訴訟/全面勝利判決=監視をやめ、判決受け止めて  

 東海デジタルホン(現ソフトバンクモバイル)に派遣されていた、小出堯(たかし)さん(当時56)の自殺は、過労によるうつ病が原因として労災認定を求めていた愛知・ソフトバンク過労死労災認定訴訟で名古屋地裁(田近年則裁判長)は12月14日、原告の訴えを全面的に認める勝訴判決を言い渡しました。
 足に障がいを持つ小出さんは、仕事が原因によるうつ病を発症。02年、会社による遠地への強制配転がされた直後に自殺に至り、小出さんの自殺は労災であるとして労働基準監督署に対して労災認定を申請しましたが認定されず、09年、名古屋地裁へ提訴しました。
 また、この事件では「厚労省労災訴訟傍聴者監視問題」で、裁判の傍聴者が厚労省に監視されていたことが明らかとなりました。
 判決では、小出さんが1994年の携帯電話会社の黎(れい)明(めい)期に、うつ病を発症するまでの4カ月間、月平均100時間を超える時間外労働をしていたと認定しました。また、携帯電話に関する知識のない小出さんが、開局に向けた準備を急ピッチで進めなければならないなど会社の体制は不十分で、質、量的に過重な業務によってうつ病を発症したことを指摘しました。トラブル処理の担当者として精神的ストレスが続くなか、本人が希望しない物流倉庫への異動によって自殺したことを認める全面的勝利判決となりました。
 12月28日、愛知労働局は控訴を断念し判決が確定しました。

 無念晴らせた  妻・典子さん
 夫の仕事の大変さなどを明らかにすることができて、やっと夫の無念が晴らせた気持ちでいっぱいです。
 全国の皆さんから署名や励ましのメッセージをいただき、愛知の皆様には傍聴にきていただき、ありがたく思っています。
 厚労省によってこの事件の裁判傍聴者が監視対象となっていたことは、許せないことです。やめさせるよう、とりくんでいきます。

茨城・布川事件/刑事補償金を 検察「値引き」  

 再審裁判で、桜井昌司さんと杉山卓男さんの無罪判決が確定した茨城・布川事件で、判決確定後、2人が求めた刑事補償金(身柄拘束による不利益の補償)の請求に対し、検察側が減額を要求する意見書を出していたことが明らかになりました。この問題について桜井・杉山さんを守る会と国民救援会東京都本部、同中央本部などが12月21日、最高検察庁を訪れ、意見書を撤回し謝罪するよう求めました。
 問題の意見書は11月4日付けで水戸地検が水戸地裁宛てに提出したものです。桜井さんと杉山さんが、「強盗殺人事件について、何ら疑われるべき事情や証拠がない」とした主張に対し、検察側は意見書で、一審有罪、第一次再審請求棄却という経過にふれて、「相当とは思えない」と反論。刑事補償額の算定で減額を求め、「裁判所の健全な判断を」などと主張しました。
 要請で国民救援会中央本部の望月憲郎副会長は、「無罪で確定した判決を、検察は無視するのか。国民的な批判を浴びているのに、『疑われる根拠がある』とまだ言い続け、反省すらしない。相次ぐ冤罪をどうしたらなくせるかに力を尽くすべきだ」と強い口調で抗議。守る会の山川清子さんは、「証拠によって、自白強要・証拠隠し・証拠捏造がおこなわれていたことは明らか。犯人だと言いながら、なぜ証拠を隠し続けたのか。多くの善意の人たちに支えられ、長年かけて勝ちとった真っ白な無罪判決を汚そうとするのは許せない」と批判しました。

福岡・北九州八幡東病院不当解雇事件/上田さん 懲戒解雇撤回  

 07年に、北九州八幡東病院で入院患者の爪ケアをした行為を、傷害罪で告訴・懲戒解雇され、刑事裁判で無罪が確定した「福岡爪ケア事件」の看護師・上田里美さん(45)と病院側との和解が、11月18日成立し、懲戒解雇の撤回などを勝ちとったことが明らかになりました。
 上田さんは、「刑事事件の無罪判決、北九州市の虐待認定の撤回、今回の和解成立と、一つひとつの問題が解決でき、本当に嬉しく思っています。これからも看護師として患者さんのお世話を一生懸命に頑張りたい」と支援者にお礼を寄せました。

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