日本国憲法と世界人権宣言を羅針盤に、弾圧事件・冤罪事件・国や企業の不正に立ち向かう人々を支える人権団体

11年7月5日号

11年7月5日号  

第21回裁判交流集会が23都道府県141人の参加で成功  

 言論弾圧や冤罪、労働者をめぐる裁判で勝利しようと、6月19、20日に第21回裁判勝利をめざす全国交流集会(主催=全労連、自由法曹団、国民救援会)が静岡・熱海市でおこなわれ、23都道府県・46事件、141人が参加。裁判勝利への決意を固め合いました。

 1日目の全体会の冒頭で全労連の根本隆副議長があいさつ。布川事件の無罪確定や、国公法弾圧堀越事件の高裁勝利判決、請負労働者の団結権を認める最高裁判決などにふれ、前進する裁判闘争をさらにすすめようと話しました。
 日本共産党の井上哲士参院議員が来賓あいさつ。警察が取調べ室の「のぞき窓」などを用いて自ら不適正な取調べを監督する「可視化」はほとんど効果がないことが判明した国会答弁などに触れ、冤罪をなくすために取調べ全過程の可視化の法整備をすすめるしかないと強調しました。
 大阪労連の菅義人さん、国民救援会大阪府本部の伊賀カズミさん、日本国民救援会の鈴木亜英会長がそれぞれ特別報告をおこないました。
 つづいて「裁判闘争に勝つ」ということ――と題して元青年法律家協会議長の小野寺利孝弁護士が記念講演をおこないました。長年たたかったトンネルじん肺訴訟や中国人残留孤児裁判などの経験から、裁判で勝つとは、単に勝利判決を得るにとどまらず、裁判闘争を通じて世論を獲得し、社会変革につなげていくことだと指摘。そのためには、原告・弁護士・支援者の団結と、市民や労働者を主体とした法廷外でのたたかいが重要であることを強調しました。
 記念講演の後、参加者は、労働事件、再審・冤罪事件、言論弾圧事件の各分科会に分かれて討論を深めました。
 再審・冤罪事件の分科会には、再審無罪判決が確定した布川事件の桜井昌司さんも参加。「真実は必ず勝つ。困難があっても展望を持って明るくたたかおう」と発言しました。

 2日目の全体会では、各分科会の報告につづき、マツダ派遣切り裁判の佐藤次徳さんが「ここでの出会いを私たちの出発点として、解雇された人が共闘できる環境をつくる」と決意表明。
 自由法曹団の小部正治幹事長がまとめの報告で裁判交流集会の意義についてふれ、「様々な事件が交流し、悩みや問題点を出し合ってこそ解決していく道筋を見つけることができる。ぜひ来年も参加して経験を共有してほしい」と話しました。
 参加者全員で団結ガンバローをおこない、2日間にわたる熱い討論を終えました。

特別報告 全大阪労働組合総連合 菅義人事務局次長  

 「業務委託契約」を理由に「個人事業主」として扱われ、労働者としての団結権・団体交渉権などを奪われ、無権利で不安定な働き方を強いられている個人請負労働者の数は優に100万人以上と言われています。
 建交労・INAXメンテナンス近畿分会の事件と、音楽家ユニオン・新国立劇場の事件で、最高裁は労働者性を認める判決を示しました。この2つの裁判の勝利判決は、今後の労働組合のたたかいで生かすべき重要なものです。
 INAXメンテナンスの判決では、会社組織への組み込みや報酬の労務対価性、指揮監督や時間的拘束なども含めて判断されました。就労実態から労働者性を判断している点が重要です。
 最高裁で争われているJMIU・ビクターアフターサービス(AS)分会のたたかいでは、会社は依然として仕事を回さないという兵糧攻めを続け、組合つぶしをおこなっています。業務委託契約で働かせ、無権利で不安定な働き方を強いることは、憲法が保障する基本的人権をないがしろにするものです。
 ビクターASのたたかいでも最高裁で逆転勝利を勝ちとることは、当該労働者にとって重要であることはもちろんのこと、今後の日本の労働者・労働組合にとっても、不安定な雇用状態で労働組合の存在や意義を知らされず働き、厳しい状況のなかで競争に追い込まれるという事態を改善していくために、極めて重要です。
 大阪労連では、近く「非正規労働者部会」を立ち上げ、正規も非正規も一緒になってとりくんでいきます。

特別報告 日本国民救援会大阪府本部 伊賀カズミ副会長  

 7年前、大阪市住吉区の路上で当時の大阪地裁所長が高校生風の4人組の襲撃を受け、現金を奪われる事件が発生しました。警察は別件容疑などで10人を越える少年たちを連行。腹を殴る、首を締めるなどの暴力、密室でのいつ果てるともしれない取調べが、少年たちの精神を狂わせ、少年たちは警察の望む供述を繰り返し、3人の少年と2人の青年が犯人とされました。
 裁判は一、二審で無罪判決が確定。しかし、警察・検察は自らの過ちを認めません。対する5人は、改めて自分たちの受けた仕打ちを客観的に見つめ、同時に、冤罪の犠牲となったのは自分たちだけではないことを、国民救援会の大会、裁判交流集会や、再審えん罪事件全国連絡会に参加するなかで実感しました。
 無実の者が何故「自白」させられるのか、裁判所は、どうしてウソの「自白」を見抜けず「有罪」とするのか―冤罪の構図を明らかにし、警察や検察、裁判所をも含む権力犯罪の根絶をめざし、国賠訴訟に臨むことになりました。
 一審判決は、警察の取調べの違法性については認めましたが、検察や児童相談所の責任は免罪しました。6月3日からは控訴審が始まっています。布川事件の再審無罪判決で、警察のひどい取調べや検察の証拠隠しが明々白々となり、裁判員裁判のもと、誤判や冤罪に加担したくないという意思を示す人たちも増え始めています。多くの仲間の連帯と共同で、冤罪根絶を願う世論を喚起し、共感を得るたたかいを組織することができれば、一審を越える勝利の展望は開けると確信します。

特別報告 日本国民救援会中央本部 鈴木亜英会長  

 人権条約を裁判に活用するという視点でお話しします。
 人権条約とは国連総会で採択された人権に関する多国間条約で、批准するとその国の国内法になり、尊重し遵守する義務を負います。
 日本では、様々な人権がないがしろにされ、憲法が十分に守られていない実情があります。これは、最高裁を頂点とする裁判所がブレーキをかけていると誰もが見ています。
 そこで人権条約が注目されるのです。人権条約は、権利は制限することができても、圧殺されてはならないという人権尊重主義が徹底して貫かれています。例えば、最高裁ではいずれもその権利を否定されたマンション等集合住宅へのビラ配布や選挙時の戸別訪問や法定外文書配布は、人権条約のひとつである自由権規約では保護されるべき権利、否定されてはならない権利とされています。
 国公法弾圧2事件でも、一審段階から自由権規約に基づく表現の自由を主張しています。堀越事件の二審無罪判決は、時代の推移、国民意識の変化を取り込んだ画期的なものでしたが、何よりも人権の世界基準を視野に入れたという点で評価すべきものでした。この視野が開けたことで、猿(さる)払(ふつ)判決の時代遅れが際立つことになったと思います。私たちが国際人権を強調したからこそ、裁判所はそこに目を向けざるを得なかったのです。
 今、人権課題のかかった裁判で国際人権を主張するケースが増えています。珍しく最高裁が違憲判決を出した国籍法をめぐる裁判でも国際人権は主張されました。最高裁は子どもの人権を置き去りにした国籍法を時代遅れとせざるを得なかったのです。
 人権条約を裁判に活用し、司法に国際人権の風を吹かせましょう。

司法修習生の給費制存続を求めて市民連絡会等が宣伝  

 国民救援会も参加する「司法修習生に対する給与の支給継続を求める市民連絡会」は、6月15日、法務省前などでアピール行動をおこない、司法修習生の給費制存続を求めて訴えました。

 「当事者の声を聞いてください」、「給費制を存続してください」
 「法曹の養成に関するフォーラム」がおこなわれている法務省前で司法修習生や弁護士、市民ら40人がシュプレヒコールをあげ、修習期間中の生活を保障する給費(給与)制の存続を求めました。
 司法修習生の給費制は、昨年廃止されることが決定していました。しかし、司法修習生や若手弁護士などで組織する「ビギナーズネット」や日弁連などが、「すぐれた人権感覚を持っていても、経済的理由で法律家になれなくなる」などと給費制維持を求めたことから、存続を求める世論が急速に広がり、昨年11月に貸与制への移行の1年延期を勝ちとりました。
 これを受けて、5月から政府が有識者などを招いて構成した「法曹の養成に関するフォーラム」では、司法制度改革で導入された法曹養成制度とともに、司法修習生の給費制に関する議論がおこなわれており、依然として予断を許さない状況です。市民連絡会では、庶民感覚のない人が多数を占める司法では、国民の暮らしや権利を守れないとして、ひきつづき国民の声を集め、給費制の存続を勝ちとる運動をすすめようと呼びかけています。
 6月13日、14日には東京・新宿駅前や有楽町などで街頭宣伝をおこない、訴えを聞いて自ら署名しに来る人など、市民の関心の高さが伺えました。

取調べの可視化を求める市民連絡会が法制審議会の特別部会に対して要請  

 国民救援会が事務局団体として参加する「取調べの可視化を求める市民団体連絡会」は6月22日、法務省の法制審議会の中に新たに設置された「新時代の刑事司法制度特別部会」に対して、取調べの全過程の録音・録画の早期実現を求めて要請をおこないました。
 この日の要請では、6月29日に予定されている特別部会の初会合を前に、/靴燭柄楮瑳衙,瞭各等と切り離して、取調べの全過程の録音・録画の実現について優先して討議すること、冤罪被害を受けた多くの当事者の意見を聴取すること、市民に対して開かれた議論とするために、議事を公開し、発言者の氏名を明記した議事録の公表をすることの3点を要請しました。
 対応した法制審議会係長は、「論議にあたって、国民の理解を得ることは大切だと思う。どのように会議の内容を情報公開していくかは、1回目の会議で決定される。いただいた要望書は、委員の方に配布するようにします」と回答しました。

茨城・布川事件の草稿便宜問題で最高裁に抗議・要請  

 無罪判決が確定した茨城・布川事件で、検察・弁護団双方が判決日当日に判決文の要旨を渡すよう求めていたにもかかわらず、水戸地裁土浦支部の神田大助裁判長が検察にだけ便宜をはかり、判決謄本と同じ168頁の判決文の草稿(読み上げ用の原稿)を渡していた問題で、国民救援会中央本部は6月14日、最高裁に対し抗議の要請をおこないました。
 鈴木猛事務局長は、全国の裁判所で同様の便宜取扱いをおこなったことがあるのか最高裁自身が調査し、公表すること、同様のことを二度と繰り返さないよう対策することを求めました。
 要請には、布川事件の桜井昌司さんと杉山卓男さんも参加し、「大変不愉快。裁判長は、要請があれば弁護団にも渡したなどとマスコミにコメントしているようだが、弁護団が判決文の交付を求めていたことは私たちが一番知っている。裁判所は公平にすべきで、このようなことは即座にやめてほしい」と訴えました。

「私は無実です」――埼玉・介護ヘルパー窃盗冤罪事件をあらたに支援決定  

 国民救援会は6月3日、4日の第5回中央常任委員会で埼玉・介護ヘルパー窃盗冤罪事件を支援決定しました。

 NPO法人に勤め、利用者宅に介護ヘルパーとして訪問し、身の回りの世話をする仕事をしていた狭山市に住む安澤篤史さん(29)。2009年6月、窃盗の容疑で突然逮捕されました。在宅介護を利用していた都内に住む全盲の利用者からキャッシュカードを盗み、6月16日に銀行口座から現金3万円を引き出して盗んだとされました。
 安澤さんは逮捕から一貫して容疑を否認しましたが、一、二審で懲役1年の実刑判決を受け、現在最高裁でたたかっています。

 検察は、安澤さんが「被害者」の持っているウェストポーチを物色して、本人しか触らない長財布からキャッシュカードを盗み、そのカードでATMから3万円を引き出したとしています。
 しかし、ウェストポーチの物色や長財布からカードを盗んだことについては、検察はいつ、どこで、どのように盗んだのか、一切具体的な立証をしていません。ウェストポーチや財布の指紋鑑定などの証拠さえ裁判所に提出されておらず、動機も、盗まれたとされる3万円の使途も明らかになっていません。
 つまり、事件の証拠とされるものは、盗まれたとする「被害者」の証言だけなのです。

 「被害者」は、,金を下ろすときに手数料のかかる引き出しを頼むことはない、▲ャッシュカードを預けて引き出しを頼むのは、他の3人のヘルパーで、安澤さんに頼んだことは一度もないと主張して、安澤さんを犯人だとしました。
 しかし、証拠として提出された通帳(08年7月から09年8月)の出金記録を見ると、手数料のかかる引き出しはその間だけでも16回あり、しかも安澤さんが担当していた日に35回もお金を下ろし、「被害者」とともに外出して手数料のかかる引き出しをおこなったことも明らかになっています。また、キャッシュカードを預けたヘルパーの名前を3人あげていますが、その内の1人は預かったことはないと証言してます。
 裁判所は、客観的事実と明らかに異なるこのような「被害者」の証言を一方的に「信用できる」としています。

 安澤さんは、介護福祉士の資格をとるためにNPO法人に勤め、「被害者」の介護もおこなっていました。「被害者」の介護は、全体で7人。NPO法人の方針で、ヘルパー間で介護の方法などを相談することは許されず、通常であればヘルパーがおこなわない利用者の現金の取扱いも、何の指導やルールもなく、すべて利用者に言われるがままにおこなっていました。ヘルパーが利用者の現金をルールもなく取り扱えば、利用者の記憶違いなどにより、いつかは「窃盗事件」となることは想像に難くありません。
 安澤さんは一貫して無実を訴え、家族、友人・知人などにも支援の輪が広がり、国民救援会と相談を重ねています。
 安澤さんはお金を盗んではいません。日常の介護業務をおこなっていただけで、窃盗事件とは無関係です。

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