日本国憲法と世界人権宣言を羅針盤に、弾圧事件・冤罪事件・国や企業の不正に立ち向かう人々を支える人権団体

11年6月15日号

11年6月15日号  

「無実の人を救おう」5・20いっせい宣伝行動  

 「疑わしきは被告人の利益に」の刑事裁判の鉄則は再審にも適用される―白鳥事件の再審請求で、最高裁が判断し、後の再審・冤罪事件に大きく影響を与えた「白鳥決定」。国民救援会と再審・えん罪事件全国連絡会は、この「白鳥決定」が出された5月20日の前後に、全国でいっせいに宣伝行動をおこないました。布川事件の無罪報告の宣伝や、今後予定されているところも含め、6月2日現在40都道府県105カ所で宣伝がおこなわれ、合わせて547人が2万2千枚のビラを配布しました。

 東京では、有楽町駅前で、国民救援会中央本部と東京都本部、名張事件・大崎事件東電OL殺人事件布川事件守る会のメンバー15人が参加し、冤罪を生まないため、取調べの全面可視化・検察手持ち証拠の全面開示などの必要性を訴え、「無実の人は無罪に」の世論を広げていこうと宣伝しました。
 長野では、3支部12人が参加し、上田駅などで宣伝。飯伊支部は8駅頭で宣伝するなど奮闘しました。「冤罪があとを絶ちませんね。頑張ってください」と言う女性がいたり、雨の中でもビラの受け取りは良く、150枚のビラを配りました。

 大阪では、地下鉄我孫子駅前と、JR京橋駅前で宣伝がおこなわれ、それぞれ12人が参加。
 「冤罪事件をなくしましょう」と呼びかけ、ビラ600枚を配り、署名を訴えました。「冤罪をつくらないためには国民の監視が大事だ」、「名張事件は何とか早く解決してほしい」などの意見が寄せられました。
 岸和田支部は、飛翔館高校の解雇争議をたたかう支援共闘会議のみなさんと、特大絵手紙を掲げてのドッキング宣伝。20人を超える参加で、ビラを配り、マイクを交代で握りました。

 北海道の南空知支部は、4人の参加でハンドマイクで訴えながらビラ配布と署名にとりくみ、ビラ70枚を配りました。交差点の信号が変わっても渡らずに、ハンドマイクからの宣伝を聞いてくれている姿もあるなど、励まされた行動となりました。
 山口では、県本部と山口支部から5人が参加。ハンドマイクで宣伝しながら、ビラ300枚を配りました。
 ハンドマイクの説明を聞き、署名机に寄ってきた高校生や3人連れの女性が、「名張事件の発生から50年」「85歳で獄中に」などの話を聞き、署名をしてくれました。

茨城・布川事件 誤判の原因触れない再審判決  

 人生をかけて真実を貫いたたたかいで、ようやく再審無罪判決を勝ちとった茨城・布川事件。しかし、水戸地裁土浦支部(神田大助裁判長)が5月24日に出した判決は、誤判を生み出した捜査の問題点や、検察の証拠隠しにはほとんど触れていませんでした。

 桜井昌司さんと杉山卓男さんが犯人であることを裏付ける客観的な証拠はありません。そこで再審の裁判では、2人の捜査段階での「自白」の信用性と、現場近くで「2人を見た」とする複数の目撃証言が大きな争点になりました。

 判決は、「自白」について、犯行そのものや重要な事がらの全てにわたって供述が変遷していると認定。客観的事実と整合しない可能性が高く、2人の「自白」で食い違っている点が多いなどの問題を指摘しました。
 そのうえで、「自白調書が捜査官らの誘導によって作成された可能性を否定できない」と判断し、「自白は信用できず、任意性も疑いを払拭できない」と結論づけました。
 また、目撃供述についても、最も重要な「バイクで通りかかったとき、被害者宅前で2人を見た」とする証言について、供述の変遷や目撃したときの状況が良好ではないことから信用性に欠けると判断。他の目撃証言を合わせても、信用性を高めることはできず、2人の「自白」を支える証拠にはならないと認めました。以上のことから、2人が強盗殺人の犯人であると証明する証拠はないと結論づけ、無罪を言い渡しました。

 3時間以上におよぶ判決言い渡し。神田裁判長が閉廷を宣言すると、法廷はしばらく沈黙。足利事件など過去の再審無罪判決で見られたような、謝罪やねぎらいの言葉はありませんでした。
 判決は、2人がなぜ誤った裁判で長年苦しむことになったのかという誤判原因の究明については、一切言及しませんでした。ウソの「自白」については、「捜査官の誘導の可能性を否定できない」としましたが、改ざんされた桜井さんの「自白」テープは、「録音機の不具合の可能性も否定できない」として、捜査機関の意図的な証拠改ざんを認めませんでした。また、検察が無実を示す重要な目撃証言を隠していたことについては一切ふれませんでした。
 判決後の会見で杉山さんは、「検察の証拠隠しに触れなかったのは不満。『自白の任意性に疑念がある』という言い方をしたが、全く任意性がないと言ってほしかった」と批判。桜井さんは、「裁判長はテープの改ざんを認めませんでした。(検察は)故意に(改ざんを)しないというのです。犧枷渋辞瓩慮続ΑJ事をはっきり言わない。検察が証拠を隠したことに触れない、隠したとも言わない。検察に対する弱腰が検察(の違法行為)を増長させている」と語気を強めました。

判決文を検事に先渡しする裁判長  

 布川事件の判決言い渡し後、神田大助裁判長が、判決言い渡しに使用した朗読用の草稿を検察にのみ提供していたことが判明しました。弁護団は6月1日付けで抗議声明を発表。水戸地裁土浦支部の支部長も弁護団に対し「不適切だった」と認めました。
 弁護団によると、判決言い渡し後、検察官が控訴の検討のため判決草稿の交付を求め、神田裁判長がこれに応じて168ページの草稿を提供したというものです。弁護団も事前に、判決言い渡し時の謄本もしくは要約を交付するよう求めていましたが、マスコミ用のごく短いもの(4ページ)を、判決言い渡し後に回収することを条件に渡されただけでした。裁判所は判決謄本(原本のコピー)について、6月3日頃でないと交付できないと回答していました。
 検察側に便宜を図る不公平な取り扱い。弁護団に釈明した地裁支部長も、「前例がないわけではない」と、こうした差別的な取り扱いが過去にわたっておこなわれていたことを認めました。弁護団は会見で、今回の事実からも裁判所と検察の間に緊密な関係があることがうかがえ、裁判所の公正性を疑わせ、裁判に対する国民の信頼を損なうと指摘。山本裕夫弁護士は、「裁判所が検察と秘密を共有する関係になれば、冤罪の原因についてはっきり物を言うことができなくなる」と批判しました。

東京高検に「控訴するな」と要請・宣伝  

 布川事件の無罪判決を確定させようと、判決翌日の25日、杉山卓男さんと弁護団は、東京・霞が関の東京高検を訪れ、控訴を断念するよう要請しました。
 弁護団が申入書を手渡し要請しましたが聞き置くだけで回答はありませんでした。その後参加した支援者とともに、検察庁前で「不当な控訴はやめろ」とシュプレヒコールをあげました。
 また、判決後には、全国各地の国民救援会県本部や支部が無罪判決を伝える宣伝をおこない、検察の控訴を許すなと街頭で署名行動をおこないました。

「君が代」斉唱時に教職員に起立を強制する条例が大阪で可決  

 大阪府議会で6月3日、府内の公立学校で「君が代」斉唱時に教職員に起立を義務付ける条例が、十分な審議がおこなわれないまま、橋下徹知事が代表をつとめる「大阪維新の会」の賛成多数で可決されました(公明、自民、民主、共産の各党は反対)。条例には罰則はありませんが、橋下知事は、9月の議会で違反者を免職にする条例をつくると明言しており、府民から「憲法で保障された思想・信条の自由を侵す」「教育への政治介入だ」と非難の声があがっています。
 国民救援会大阪府本部は、この問題を緊急に府民に広げ運動化するために、自由法曹団など7団体でアピールを発表。条例は、「教職員の思想・良心を条例や職務命令で縛ることによって、子どもと教育を支配しようとするもの」と訴え、議会各会派への要請や宣伝、集会をおこなってきました。今後は、本条例の廃止や懲罰条例を提案させない運動に力を注ぎます。
 この間の議論で、橋下知事は巧妙に論点のすり替えをおこなってきました。7団体などが「条例は内心の自由を侵す」と反論しているのに対し、知事は「服務規程」をことさら強調し、「トップの方針に従わない人は、クビになって当然」と言い立て、周囲の同意を得ています。
 知事は自分の意向に従わない人たちを異端者として扱い、「文句があるなら多数派を形成しろ」と開き直ります。本来の民主主義は少数者を大事にしてこそ豊かになるものです。
 教育現場では、経済的に困窮し給食費すら払えない子もいます。家庭生活が崩壊しているような子どもたちを手当てすることこそ最優先課題です。

「ファシズムへの道」 自由法曹団大阪支部・小林徹也事務局長  

 この条例は、思想・良心の自由を侵害し、自主性を尊重すべき教育の自由を侵害することと合わせ、府民的議論が全くないという問題があります。維新の会が過半数を獲得した春の選挙のとき、橋下知事は君が代「強制」のことを一言も言っていません。
 6月4日には、109議席の議員定数を21減らす条例も強行採決。これにより維新の会は、春の選挙と同じ40%程度の得票で、6割以上の議席を得ることになります(自由法曹団大阪支部の試算)。これは、過半数を得ていないのに、あたかも府民の支持を得ているかのような虚構を作るもので、知事が独裁体制を敷こうとしているようにしか見えません。こういうなかで、君が代強制条例を作る知事のやり方は、ファシズムを想起させるものです。

レッドパージ国賠裁判で神戸地裁が政府の責任認めぬ不当判決  

 戦後、レッドパージにより職場から追放された大橋豊さんなど3人が名誉回復と国家賠償を求めた裁判で5月26日、神戸地裁(矢尾和子裁判長)は、原告の請求を棄却する不当判決を言い渡しました。
 この裁判では、1950年のレッドパージがGHQ(連合国軍総司令部)の指示か、日本政府が中心となっておこなったのかが争点となっていました。
 法廷では、北海道教育大学の明神勲名誉教授の証言で、GHQが指示したのはアカハタ(共産党の機関紙)などの発行禁止であり、レッドパージは指示をしておらず、積極的に推進したのは政府であることが明らかになりました。しかし判決では、証言にはまったく触れず、以前の最高裁判決と同じくGHQの指示と認定しました。
 原告弁護団は、「せめて、レッドパージは憲法違反であるとの一言があって当然だ」と怒りの報告をし、3人の原告は判決後、「思っていたのと逆の判決」「認めるわけにはいかない」などと語りました。

冤罪を生まないために―裁判員裁判の適正な運用求め要請  

 国民救援会中央本部は5月25日、冤罪をつくらないために、裁判員裁判での適正運用を求め、最高裁に要請しました。要請には鈴木亜英会長はじめ役員4人が参加。
 国民救援会は、2009年の裁判員制度施行にあたり10項目にわたる適正運用を求め、全国の裁判所に対し要請しました。
 しかし、施行から2年が経過し、傍聴活動や報道などから、「10項目の要求」が実現されていない実態が明らかになり、あらためて要請をおこなったものです。
 布川事件の無罪判決の翌日でもあり、要請では、「二度と布川事件のような冤罪を生まないためにも適正な運用を」とまず求めた上で、裁判官が裁判員に対し、「疑わしきは被告人の利益に」など刑事裁判の原則を公開の公判廷で説明(説示)すること、検察に対して全面的証拠開示のための措置を積極的にとることなど、「10項目」にわたって適正な運用を求めました。
 最後に、裁判員裁判が3年後に見直すことになっていることから、それに向けて広く国民の声を聞き、公開の場で検証・検討をするよう求めました。
 なお、各地の裁判所に対して、同様の要請をすすめています。

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