日本国憲法と世界人権宣言を羅針盤に、弾圧事件・冤罪事件・国や企業の不正に立ち向かう人々を支える人権団体

11年12月15日号

11年12月15日号  

福井女子中学生殺人事件/25年の闘い実る 前川さんに再審開始決定  名古屋高裁金沢支部  

  逮捕から25年――無実の叫びが再審の扉を開きました。1986年、福井市で起きた殺人事件の犯人とされた前川彰司さんが、再審(誤った裁判のやり直し)を求めていた福井女子中学生殺人事件で11月30日、名古屋高裁金沢支部(伊藤新一郎裁判長)は、再審を開始する決定を出しました。

 名古屋高裁金沢支部の前には、朝早くから大勢の支援者と報道陣が詰めかけました。
 午前9時32分、裁判所から弁護団が「再審開始」の垂れ幕を高々と掲げ駆け出してくると、朝早くから駆けつけ決定を待ち望んでいた支援者からは、「やった!」という歓声が上がり拍手に包まれました。
 前川彰司さんの父・禮三さんが裁判所からゆっくりとした足取りで出てくると、支援者がバンザイ三唱で出迎えました。
 禮三さんは、支援者にお礼を述べたあと、「言葉にならないくらい感激をしているが、無罪判決をいただくまで仕事がある」と口元を引き締めました。
 激励にきた布川事件の桜井昌司さんと杉山卓男さん、長年支援をし続けてきた福井県本部の金子光伸さんが声をかけ、固く握手を交わすと、禮三さんはこみ上げる涙を押さえるように目頭に手を当てました。

勝利の喜びを 抱き合い確認
 一方、体調を崩して入院中の前川さんは富山県内の病院で弁護団から決定書を受け取りました。
 会見で前川さんは、「そもそも検察の起訴自体がおかしく、目撃証言が変わったり、物証の無かった事件ではないか。失った時間は返ってこない。どうしてくれるのか」と怒りをあらわにし、「支えてくれた支援者の皆さん、弁護団には、言葉になりません。感謝をしています。今後もよろしくお願いします」と述べました。
 前川さんの病院に同行した桜井さんによると、前川さんは喜びが声にならない様子で、帰ろうとする桜井さんを抱きしめたそうです。「喜びが身体から伝わり、本当に嬉しかった」と桜井さんは語りました。

検察が不当な 異議申し立て
 国民救援会は名古屋高検金沢支部、同高検、最高検に対して、今回の再審開始決定を真摯に受け止め、裁判をこれ以上引き伸ばさず、再審公判で訴訟をすすめることを強く要請し、約460団体の署名をたずさえ、異議申立を断念するよう申し入れましたが、不当にも12月5日、異義を申し立てました。

これからが本番」 前川彰司さん

 ありがとうございます。桜井さん、杉山さんたち、大勢の支援、仲間たちの力のおかげです。これからが本番。この後もよろしくお願いします。(中央本部に届いた前川さんのハガキより)

「あと少し力を貸して」/前川さんの父・禮三さん  

 再審決定報告集会で、前川禮三さんは次のように挨拶とお礼を述べました。

 本当に力強い後押しを受けて世論が大きくうねりました。世論の大きな、しかも強力な広がりでこういう結果をいただくことになりました。
 また弁護団の先生方の日ごろの精力的なとりくみをいただき、また、街角に立ち署名活動やその他を通じて、街頭で声を枯らしていただいた国民救援会の皆さまがた、それに心ある私の知人友人たちの後押しで今を迎えることができました。この席を借りて厚く御礼申し上げます。
 再審の扉が開かれました。これから私なりの仕事が残されております。自分としては、あるいは私の息子・彰司としては裁判所から「あなたは無罪である」という判決をもらうまで頑張らねばなりません。従いまして、皆さまがたにも弁護団、救援会の方がたにもあと少し力を貸していただきたいと願っております。
 とりあえず一刻も早く先年亡くした妻、彰司の母である私の妻に報告をさせていただきたい。これからも、あまり余力はありませんが、私は私なりに力を尽くしてまいります。これからも後押しをお願いします。

再審決定おめでとう  

足利事件 菅家利和さん
 再審おめでとうございます。
 再審裁判が確定し、無罪になるというのが私の願いです。これまでの警察、検察、裁判所の対応は許せません。
 前川さんにも、ぜひ無罪を勝ち取るために頑張ってください。そして、無実の人、冤罪をなくすための支援運動にぜひ関わって欲しいと思います。

布川事件 桜井昌司さん
 前川さん、おめでとうございます。
 検察は、前川さんの無実の証拠を隠し、裁判では屁理屈を言うことばかりにしか使っていない。ぜひ支援者の皆さんも、マスコミもこの検察を厳しく批判していただきたい。
 警察や検察の責任だけではなく、有罪とした裁判所の責任が問われます。力を合わせて追及していきたいと思います。ぜひ今後ともご支援をお願いします。

布川事件 杉山卓男さん
 足利事件から始まって布川事件、こんど福井女子中学生殺人事件が再審開始になったことは、有意義なことです。再審は、たくさん後ろに控えています。その人たちに勇気と希望を与えられる決定です。前川さんに一日も早く無罪判決が出て、確定することを願っています。

決定のポイント  

供述の信用性を否定 新旧証拠を総合判断

 決定は、再審審理で新たに提出された客観的な証拠を重視し、有罪の根拠となった関係者供述を退けました。

「第3の凶器」
 確定判決で凶器と認定されたのは、2本の文化包丁でした。しかし、被害者の体には、2本の包丁の刃幅より小さな傷口がありました。決定は、「第3の刃物によって作られたもの」とする新証拠に基づき、凶器が2本の包丁だとした確定判決の認定に疑問が生じると判断。また、傷口の長さが短く計測される特殊な事由がある場合は、検察側が立証すべきとしました。

車の血液反応
 有罪の根拠となった「目撃」証言によれば、犯行後に血まみれの前川さんが証人らの待つ車に乗り、車のダッシュボードに血を付けたとされています。警察がおこなった血液検査の結果、ダッシュボードから被害者の血痕を示す血液反応は出ませんでしたが、検察は、湿らせたティッシュで拭き取り、車内清掃や太陽光によって成分が劣化し、血液反応が出なくても不自然ではないとしてきました。しかし、日本大学の押田茂實教授が同条件で実験をおこない、血痕を拭き取ったとしても血液反応が出ることが確認されました。決定は、ダッシュボードに血液が付着していたことを前提とする確定判決の事実認定に疑問が生じるとしました。

犯人像の違い
 確定判決では、偶発的で感情の激発による犯行と認定し、前川さんが、この犯人像に矛盾しないとしました。しかし、合理的で高度の思考能力を備えた者の犯行と考えなければ、説明の付かない点が多々認められると指摘し、犯人像は前川さんとは違うことが認められました。

総合的判断で
 新旧全証拠を総合すると、前川さんが犯人とする根拠となる、客観的事実は存在せず、犯人であるという認定には至らない蓋然性が高度に認められると言わざるを得ないとして、新証拠の明白性を認定。前川さんが有罪とされた根拠である関係者の供述の信用性に疑問を抱かせるのに十分な事実があり、この判断は検察官が提出した新証拠を検討しても変わらないとし、確定判決の認定に合理的な疑いを認めるという明確な判断をしました。
福井女子中学生殺人事件

1986年、福井市内で女子中学生が殺された事件。事件当日、前川さんは姉夫婦を招き自宅で食事会が開かれ、アリバイがあるにも関わらず、別件で逮捕された暴力団関係者が自分の罪を軽くしてもらうためのウソの供述によって、前川さんが逮捕・起訴された。一審無罪判決、二審で逆転有罪、最高裁で懲役7年が確定。

 

名張事件/毒物鑑定人の尋問へ 名古屋高裁「科学的知見深めたい」  

 名古屋高裁で再審をめぐる審理がおこなわれている名張毒ぶどう酒事件で、11月22日、弁護団・裁判所・検察官による三者協議がおこなわれ、毒物の鑑定結果を出した鑑定人を12月26日に証人尋問することが決定しました。
 名張事件は、奥西勝さんが使ったとされる毒物が、「自白」した農薬・ニッカリンTではなかったとする弁護団の主張に重点をおいて審理されており、ニッカリンTを再製造して成分分析をした鑑定書が、10月に裁判所に提出されていました。この鑑定の結果、ニッカリンTに含まれる特定の成分の量が、24・7%であることが明らかとなり、「5%以下」とする検察側の主張が退けられ、特定成分は「17%以上」とする弁護団の主張を裏付けるものとなりました。
 鑑定人の証人尋問については、これまで検察が要求し、弁護団が「必要ない」として反対していましたが、裁判所が「鑑定結果の科学的知見を深め、十分に理解したい」という観点でおこなうことを確認し、弁護団も尋問に合意しました。
 また12月2日には、毒物以外の争点について、弁護団が意見書を提出。奥西さん以外にもぶどう酒に毒物を混入させる機会があったことを示すものです。弁護団は、証人尋問と合わせて審理すれば、再審決定が出せるはずと話しています。

布川事件守る会/東京弁護士会の人権賞 35年の支援評価  

 東京弁護士会は12月1日、「布川事件桜井昌司さん杉山卓男さんを守る会」が第26回東京弁護士会人権賞を受賞したと発表し、記者会見をおこないました。人権賞は東京弁護士会が1986年から選考しているもので、35年にわたり桜井、杉山両氏を支援する活動を継続的精力的におこなってきたこと、守る会が桜井さん夫婦と杉山さんをジュネーブでの国連拷問禁止委員会の日本政府報告審査に派遣し、日本の刑事司法の実情を広く世界に広めたことを受賞の理由に挙げました。
 会見で守る会の中澤宏事務局長は布川事件のたたかいの歩みを振り返りながら、「福井女子中学生殺人事件に続いて、東電OL殺人事件、名張事件で無罪を勝ちとり、守る会の活動を国家賠償を請求する運動に発展させたい」と決意を述べました。また、桜井さんも「冤罪はたくさんあるので、全員が無罪を勝ちとれる年にしたい」と語りました。

すべての事件で勝利を−再審・えん罪事件全国連絡会が総会  

 再審・えん罪事件全国連絡会の第20回総会が、11月23〜24日、東京都内で開催され48人が参加しました。
 総会に先立ち、「再審裁判のたたかいの課題と展望」と題して、岡部保男弁護士による記念講演がおこなわれ、連絡会のホームページでの告知を見た市民も参加しました。
 講演では、世論の力を背景に大衆的な運動が重要であること、真実・正義を裏付ける証拠にもとづいて理解者を広く組織し、世論が常識となるまでねばり強く宣伝することが必要であることが強調されました。
 総会では、事件支援に対して、国民の支持と共感が生まれていることや、各地での教訓的なとりくみについて報告され討議しました。
 満場一致で議案を採択し、よりいっそう運動を前進させることを確認しました。

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