日本国憲法と世界人権宣言を羅針盤に、弾圧事件・冤罪事件・国や企業の不正に立ち向かう人々を支える人権団体

11年10月25日号

11年10月25日号  

三重・名張毒ぶどう酒事件・・毒物鑑定、検察主張崩れる  

 名古屋高裁で再審請求の審理がおこなわれている名張毒ぶどう酒事件で、10月3日、奥西勝さんが使用したとして有罪の根拠となった毒物の成分分析の鑑定結果が、鑑定人から裁判所、弁護団、検察の3者に渡されました。弁護団は7日に会見を開き、「検察主張の誤りが明らかにされ、弁護団主張の正しさが科学的、客観的に実証された」と表明しました。11日には、裁判所に意見書を提出し、検察が望むこれ以上の「再製・再現」実験と鑑定をおこなう必要はなく、検察の異議申立てを棄却し、直ちに再審を決定するよう求めました。

「一日も早く再審を」     奥西勝さん、心境語る

 12日に奥西さんと面会した愛知県本部の稲生昌三副会長によると、奥西さんは、「これ以上審理を引き伸ばさず、もう結着して欲しい。一日も早く裁判所は再審開始を決めて欲しい。期待の想いで正月と86歳(1月14日が誕生日)を迎えたい」と心境を話しました。

鑑定で奥西さんの無実明らか・・・「再審急げ」の声を広げて  

 名張事件の差戻し審の大きな焦点は、事件に使われた毒物が農薬・ニッカリンTであったかどうかです。「ぶどう酒にニッカリンTを入れた」とするウソの「自白」が、奥西勝さんの有罪の根拠となっています。

「自白」崩れる
 弁護団は、「ニッカリンTには、特定の副生成物・トリエチルピロホスフェートが含まれているが、事件直後のペーパークロマトグラフ試験では検出されていないため、使われた毒物はニッカリンTではない」と主張してきました。
 弁護団が未開封のニッカリンTを用いて鑑定をおこなった結果、トリエチルピロホスフェートは17%以上含まれることが明らかになりました。これに対して検察は、「5%以下」と主張しました。
 こうした争点を明らかにするため、裁判所は、製造元企業にニッカリンTを当時のレシピで再製造させ鑑定することを決定。成分分析をおこなうことに弁護団も同意しました。
 ぶどう酒に毒物を混ぜたことを想定し、鑑定はニッカリンTを水に溶かして分析をおこないました。その結果、再製ニッカリンTはトリエチルピロホスフェートが24・7%、弁護団が提供したニッカリンTは16・6%含まれるという結果が出ました。これにより、検察の主張は崩れ、犯行に使われた毒物はニッカリンTではないことが実証され、奥西さんの無実がより明らかになりました。

議論に決着を
 一部マスコミが、今回の鑑定を「検察に沿う分析結果」「今後の審理が長期化」などと報道しましたが、まったく的外れです。
 検察は今回の鑑定にいたるまで、主張を二転三転と変遷(せん)させました。当初、「当時の鑑定でトリエチルピロホスフェートが検出されなかったのは、加水分解したから」(異議審=名古屋高裁)と主張。その後「発色が弱いから」(特別抗告審=最高裁)と変わり、現時点(差戻し審=名古屋高裁)においては、「従来の主張を留保する」と述べるとともに、新たに、「トリエチルピロホスフェートの比率は5%以下、微量であるか別な成分の可能性」との主張を持ち出しました。
 「いまだ科学的知見に基づく解明がなされていない」として最高裁から差し戻された現在の審理。今回の鑑定で、検察の主張は科学的な根拠がないことが証明されました。名古屋高裁は、毒物に関する議論をすぐに決着させるべきです。

命かけた闘い
 鑑定人は、依頼された成分分析と別に、事件当時もおこなわれたエーテル抽出の実験をおこない、「当時の方法で鑑定した場合、トリエチルピロホスフェートが検出されない可能性がある」としました。しかし、この実験は、酸性条件にしていない、芒(ぼう)硝(しょう)で脱水後ろ過していないなど、事件当時と異なる条件設定のため、再現実験の意味を成していません。このことは、検察が実施を求めるペーパークロマトグラフ試験の再現実験も、当時の実験条件が確定できず、条件しだいで結果が大きく変わることから、無意味であることを逆に証明しました。
 奥西さんはすでに85歳となり、これ以上の審理引き伸ばしは命にかかわります。名古屋高裁は、検察の異議申し立てを棄却して、再審開始と奥西さんの釈放を決定すべきです。

■全国から声を
 鑑定結果が出たことで、審理は山場を迎えました。11月13日〜20日の『なくせ冤罪! 全国いっせい行動』をはじめ、署名やハガキなどで、「再審を確定し釈放せよ」の声を全国から名古屋高裁に集中しましょう。

〈要請先〉〒460―8503 名古屋市中区三の丸1―4―1 名古屋高裁・下山保男裁判長

ふくしま復興共同センター  東電・各省庁に要請  

 東京電力福島第一原発の事故によって放出された放射線による被害を受けた福島県民183人と支援する労組、民主団体の代表が、10月7日、「なくせ原発! 返せ!美しい福島を」をスローガンに、文科省や経産省などの各省庁と東京電力に対する要請行動をおこないました。

 行動は、国民救援会福島県本部も参加するふくしま復興共同センターが主催したもので、福島県内各地から183人がバス5台で参加。福島県本部の石川信事務局長と目黒幸子常任委員が参加し、原発被災地の声を届けました。

子供だけでも、被曝防ぎたい
 要請団はまず、衆議院議員会館で文部科学省や経済産業省、内閣府などに対して交渉をおこないました。
 川俣町の農家の方は、「学校給食の食材を納入していたが、4月からは一品も入れることができていない。食材の検査体制を早急に整備して、食材の安全を確保してほしい」と訴えました。観光の町で知られる喜多方市の男性からは、「すでに風評被害が出ている。犖業から30キロ圏内瓩覆匹箸い線引きをせず、県内全域で除染を急ぐべきだ」と要望が出されました。
 目黒幸子さんは、県内の学校が、放射線の影響から窓を開けることができないため、エアコンの設置が必要なのに自治体によって配備が遅れている実態を報告。それにもかかわらず、福島市議会では、「暑さ寒さに強い子どもを作ることも教育だ」などという答弁が市側からされていることを紹介し、「福島の子どもがなぜそんな理不尽なことを言われるのか。国が責任をもってエアコンの設置をすすめてほしい」と要求しました。
 福島市で3人の子育てをしている女性は、「原発事故が発生した当初、高い放射線が放出されていたことを政府は把握していながら、なぜ知らせてくれなかったのか。せめて子どもだけでも避難させることができたはず」と追及。これに対し官僚側は沈黙し、一人として回答できませんでした。
 県民の要望に対して官僚側からは「最大限の努力」「順次すすめる」といった一般的な回答しか出てこなかったため、会場からは「国は国民の味方じゃないのか、東電と国民どっちを守るのか」と批判が飛び交いました。

「原発いらぬ」東電本店要請
 つづいて都内の東京電力本店前で抗議集会をおこない、「命よりも経済効率優先は許せない」「原発で被害を受けたすべての県民に賠償を」などと訴え、シュプレヒコールをしました。
 また、代表50人が東電幹部に対し要請をおこないました。要請に参加した石川信事務局長は、「東電側は『政府の中間指針に基づいて補償をすすめる。指針にないものについては、狒蠹因果関係瓩あれば賠償の対象にする』と述べました。しかし、農作物が出荷できない、子どもが外で遊べない状況は、原発との因果関係があることは明白のはず。なぜ責任を回避するようなことを言うのか」と憤(いきどお)りました。


司法修習生 給費制の存続を  

 「人権の守り手」として、弾圧事件や冤罪事件、労働事件などで、身を粉にして活動するような弁護士が減ってしまうかもしれない――いま経済的理由などで、弁護士や裁判官、検察官などの法曹をめざす人が減っています。それを加速させるのが、10月末の司法修習生への給費制廃止です。給費制の存続を求める「ビギナーズ・ネット」代表の萱野唯さんにお話を聞きました。

民主主義の基礎築く、憲法と共に給費制誕生  

萱野さんが法曹をめざす動機は何ですか?

 小さい頃、祖父から戦争体験の話を聞いたのをきっかけに、様々な社会問題に関心を持ち、社会的に弱い立場の人が理不尽な苦しみを強いられていると感じ、そのような人を救済できればと思い、弁護士をめざし司法試験の勉強をしています。
 東日本大震災では、多くの弁護士が被災地に手弁当で行って、被災者の法律相談にのり喜ばれましたが、ぼくもそのような市民に身近な法曹になりたいと思っています。

司法修習生の給費制とはどのような制度ですか?

 法曹になる前に、司法試験に合格した人は、1年間各地の地方裁判所に配属され、裁判官や検察官、弁護士に付いて三者の立場を経験して法曹の仕事を学びます。この人を、司法修習生と呼びます。
 修習生は、配属地は一応希望できますが、最終的に決めるのは最高裁です。また、守秘義務が課され、修習に専念するためアルバイトは禁止されています。
 修習生に対しては、修習期間中、給与が支給されます。これが給費制です。現在、月額で20万円ほどです。
 この制度は、1947年の憲法施行日に始まりました。新憲法のもとで、民主主義の基礎を築くために、公務員である裁判官、検察官に加え、時には国と対峙(じ)する弁護士も国費で養成しようと始まったと聞いています。
 同様に、研修医にも補助金が出されていますが、それは司法修習生をモデルに導入されたものです。

人権守る法曹になれない−経済的理由で困難増す−  

給費制の意義はどのようなことですか?

 1つは、法曹の公共性です。弁護士の使命は、お金もうけではなく、「基本的人権を擁護し、社会正義を実現すること」(弁護士法1条)です。民間人であっても、その社会的・公共的な役割をもっていることです。
 2つ目は、司法修習生の準公務員的な地位に対する生活保障です。実は、修習生は経済的負担が大きいんです。東京出身で、大分で修習しているある人は、2回分の引越し費用や入居初期費用の負担があるうえに、就職活動のため毎週のように東京に帰らなければならないので、お金がかかります。それにもかかわらずアルバイトが禁止なので、給費制がなくなれば大変だと話していました。
 3つ目は、経済的な理由で、多様な人材が得られなくなることです。司法試験を受けるために、大学で4年、ロースクール(法科大学院)で2年から3年学び、司法試験の合格をめざします。法科大学院では半数以上の学生が奨学金を借りていて、その平均は350万円になります。給費制がなくなれば、さらに約300万円の借金が上積みされることになり、法曹をめざすことがいっそう困難になってしまいます。法曹志望者が激減するなか、法曹になる夢をあきらめる決定打になってしまうのではないでしょうか。実際に、昨年、給費制が廃止されることになっていたので、司法試験合格者のなかで、「これ以上の経済的負担は無理」と修習をあきらめた人がいました。
 また、弁護士になっても、多額の借金の返済が負担になり、人権を守りたいとの想いをもちながらもそのような弁護活動が難しくなることも考えられます。検察官も裁判官も出世ばかりを考えてしまう懸念もあります。

やはり給費制の存続が必要ですね。

 法律により10月末で給費制が廃止になります。しかし、昨年も10月末で廃止されましたが、運動で実施の1年延期の法律が通りました。10月27日には国会へのパレード(午後0時15分、日比谷公園霞門出発)をおこないます。11月に入っても国会議員への働きかけを強めます。市民の皆様からも、近くの国会議員事務所に電話や手紙で意見を届けてください。ご協力をお願いします。


2011年司法総行動−国民の人権守る司法へ  裁判所、警察庁、法務省などへ要請  

 市民の立場に立った司法制度の改革を求めて、2011年司法総行動(実行委員会=全労連、自由法曹団、日本国民救援会、東京地評、東京争議団などで構成)が、10月5日におこなわれ、約80人が参加。最高裁、東京高裁・地裁、警察庁、法務省、労働委員会に分かれて要請行動をおこないました。
 要請では、東日本大震災と原発事故の発生のなかで、国民の命と暮らし、労働者の雇用などがいっそう脅かされており、国民の基本的人権を守る司法の役割を果たすよう強く申し入れ、事前に作成・提出した共同要請書に基づき、制度改善要求および個別事件に関する要請事項を提示して、対応する省庁に回答を求めました。
 国民救援会は、裁判所に対して、冤罪が多発するなかで違法・不当な捜査、証拠隠しを監視し、被告人らの権利を尊重して十分な立証を保障すること、法務省に対しては、証拠改ざん事件の徹底糾明と取調べの全面可視化などを強く求めました。警察庁に対して、暴行・脅迫による自白の強要、無実の証拠隠し・改ざんなどをなくす抜本対策を講じること、言論表現活動に対する弾圧・不当な捜査をやめるよう強く要求しました。


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