日本国憲法と世界人権宣言を羅針盤に、弾圧事件・冤罪事件・国や企業の不正に立ち向かう人々を支える人権団体

10年7月25日号

10年7月25日号  

国公法弾圧2事件が最高裁要請行動  

大法廷に回付し、猿払判決を見直し無罪判決を  

 3月に東京高裁で無罪判決が出された国公法弾圧堀越事件と、5月に同じ東京高裁で有罪判決が出された世田谷国公法弾圧事件。どちらの事件も最高裁第2小法廷(千葉勝美裁判長)に係属し、最高裁でのたたかいがスタートしました。7月14日、国民救援会がとりくんでいる最高裁統一要請行動に、当事者と支援者ら12人が参加し、初めて最高裁に直接無罪を訴えました。

 この日、2事件の守る会は連名で、「2つの事件を大法廷に回付し、猿払事件最高裁判決を見直し、無罪判決を」と最高裁へ要請しました。
 世田谷事件の宇治橋眞一さんが、公務員の政治活動の自由を制約する憲法違反の国家公務員法と人事院規則を合憲とした猿払判決の不当性を訴え、実害のないビラ配りをむりやりに犯罪にした公安警察の言論弾圧を批判、「最高裁は明確な憲法判断を」と迫りました。
 また、堀越明男さんは、公務員の政治活動の自由を勝ちとりたいと述べ、東京高裁の無罪判決に触れて、大法廷に回付し、15人の裁判官での違憲無罪判決を強く求めました。
 つづいて支援者らも、世田谷事件で東京高裁が一切審理することなく不当な有罪判決を言い渡したことなどを厳しく批判し、「国民の常識に基づいた判断を」、「時代遅れの猿払最高裁判決は見直すべき」と力強く訴えました。
 2事件の守る会では、最高裁で統一した共同の署名をとりくもうと準備中で、全国大会(7月31日)までには完成します。
〈要請先〉〒102―8651 千代田区隼町4―2 最高裁第2小法廷・千葉勝美裁判長

布川事件第一回公判始まる  

 傍聴席に小さく笑顔を見せて入廷する桜井昌司さん、対照的にやや緊張した表情で歩を進める杉山卓男さん。7月9日におこなわれた布川事件の再審の第1回公判に、傍聴を求める622人が集まり、法廷内外には熱気があふれました。

 「あんたたち、恥ずかしくないのか」
 桜井さんの怒りの声が法廷に響き渡りました。42年前におこなわれた一審の初公判と全く同じ、2人を犯人とする起訴状を朗読した検察官2人を睨みつける桜井さんと杉山さん。その後ろには22人の弁護団。まさしくこの裁判の正義がどちらにあるのかをはっきりと知らしめる法廷となりました。
 起訴状朗読のあと、意見陳述に立った桜井さんと杉山さんはあらためて「私は無実です。人殺しの犯人ではありません。殺害現場にもいなかった。無関係です」ときっぱりと述べました。杉山さんは取調べでの自白強要を振り返り、「心ならずも嘘の自白をさせられてしまった自分自身の情けなさと後悔は、この43年間悔やんでも悔やみきれません」と述べ、桜井さんは「警察と検察の不法行為を見逃さないでください」と裁判所に強く求めました。また、家族のことにも触れて桜井さんからは「妻は『2人で投票に行くのが夢』と結婚式で挨拶した」、杉山さんからは「息子は『人殺しの子ども』と言われている。それを晴らしたい」と胸を打つ発言でした。

 その後、弁護団が検察を厳しく追及しました。この8年余にわたる再審請求の審理のなかで明らかになった、2人の無実を証明する目撃証言などの証拠を検察が隠していたこと、「自白」テープなどの証拠の捏(ねつ)造を鋭く指摘。「違法・不当な捜査によって誤った確定判決へと導いた検察に、有罪を主張する資格はない」と批判し、無罪判決しかありえないと強調しました。
 再審裁判で検察はあらためて有罪立証をするため、被害者の口に詰められていた下着などのDNA型鑑定をおこなうなどと主張していました。この点について、弁護団は意見書と合わせて、法廷でこのDNA型鑑定の危険性を指摘。そもそもDNA型鑑定をおこなうための適正な保存がされておらず、さらには取調べでも何度も桜井さん、杉山さんの前に現物を示されたような証拠のDNA型鑑定は信用性がないどころか、新たな冤罪を生みかねない危険極まりない主張だと厳しく批判しました。
 また、その一方で、検察が隠していた、犯行現場の被害者宅前で桜井さん、杉山さんとは違う人を見たとする目撃者の供述調書の証拠調べに同意しないという検察の姿勢を厳しく批判しました。弁護団は再審請求審でなされた8年間の充実した審理を尊重すべきで、これまで主張していなかったことをあらたに主張するのは許されないとし、検察は弁護団の請求している証拠調べに同意し、DNA型鑑定の請求を撤回すべきと主張しました。
 検察は起訴状だけでなく冒頭陳述までも「原審(有罪となった一審)の通り」の一言で済ませ、またDNA型鑑定について「(弁護団の意見書に対して)反論がありますか」と裁判長が尋ねたのに対して、「ないとはいえない」と答えるなど、無責任な態度を繰り返しました。裁判長は「意見があれば早急に提出するように」と検察に念押しするなど、迅速な審理を進めたい意向が見受けられ、DNA型鑑定などの証拠を調べるかどうかに関しては次回(7月30日)以降に決めることとなりました。
 次回公判では「自白」テープの再生や弁護団がおこなった再現実験の映像などの証拠が調べられることとなっています。

支援者らは公判傍聴と宣伝行動  

 公判中、支援者は小雨が降る中、土浦駅前で宣伝行動をおこないました。ビラを受け取った男性が無罪判決を求める署名用紙にサイン。話を聞くと、「苦しんでる人は助けなくっちゃね」と笑顔で話しました。また、地元の男子高校生グループも、「マジで? そんなので犯人にされてんの?」と声をあげて驚き、署名しました。地元茨城での関心の高さもあり、多くの通行人がビラを受け取り、署名に協力しました。
 記者会見では守る会の代表世話人・清水誠さんが「攻めて、攻めて、攻め抜いた弁護団」と評し喝采が湧きました。当日は守る会からの80人の参加者をはじめ、足利事件の菅家利和さん、守大助さんのご両親、ジャーナリストの江川紹子さんなど各地から支援者が駆けつけました。
 守る会では毎月の裁判所要請と土浦駅前での宣伝行動、公判傍聴をひきつづきおこない、一日も早い無罪判決を求めていきます。また、9月10日の第3回公判後から11日にかけて、第20回全国現地調査もおこないます。
 桜井さんは支援者の前で、「今日という日を迎えられたのは、ここにいるみなさんのおかげです」と笑顔を見せました。最後の最後まで運動を広げきって、無罪判決を早急に勝ちとりましょう。
〈要請先〉〒300―0043 茨城県土浦市中央1―13―12 水戸地裁土浦支部 神田大助裁判長

桜井さん、杉山さんの記者会見要旨  

 桜井 第1回公判が始まり、ようやく無罪判決に向かってスタートし、ほっとしました。検察官が42年前と同じ起訴状を朗読しました。改めて読み上げられると非常に腹が立ってきました。よし、やってやるしかないな、という気持ちです。
 杉山 今日は穏やかな気持ちで裁判に臨もうと思っていたんですが、桜井の興奮が私にも伝わってきたので、落ち着けと自分に言い聞かせていました。無罪判決までもう少しがんばっていこうという気持ちになりました。


――検察は法廷で消極的でしたが。
 杉山 有罪立証をすると言っていますけど、立証するだけのものがないんでしょう。だからああいう消極的な態度になってしまうんだと思います。
 桜井 そもそも検察というのは再審請求審において何の立証もしてこなかったんですね。ですから、弁護団と検察の証拠や資料に差があるのは当然です。検察がDNA鑑定をするといっていますが、往生際の悪さを感じます。


――他の冤罪事件について。
 桜井 冤罪事件はウソの自白で始まり、それをカバーする警察のデッチ上げ、検察の証拠隠しによって作られます。布川事件を通じて、全国の皆さんに冤罪事件というのは証拠をデッチ上げられているんだということを訴えたいですし、もっと厳しく検察や裁判所を見ていただきたいという思いを伝えていきたいと思います。そして、布川事件の中で、できたら検察の証拠開示を義務付ける狆攀魍示法瓩里茲Δ覆發里鮑遒辰董冤罪事件で苦しむ人の力になりたい。
 杉山 布川事件は「自白」だけで有罪となり、検察の証拠隠し、「自白」テープの改ざんが明らかとなった冤罪のオンパレードなんです。布川事件が勝ったら、他の冤罪でたたかう人たちに勇気を与えることができると思います。布川事件に他の事件も続いてもらいたい。

ジャーナリスト・江川紹子さんのコメント  

 この裁判で罪に問われるべきは、やはり検察であり、裁判所だと思います。
 いま、いろいろな冤罪の問題が出てきていますが、検察の証拠隠しが大事なポイントだと思います。大阪の郵便不正事件でも、検察官のメモが全部廃棄されているんです。検察官が自分たちの不利益になるものを隠蔽したり廃棄することは、現在でもおこなわれています。裁判所は、冤罪の元になった検察の証拠隠しの体質をきちっと断罪すべきだと思います。
 検察は、40年以上も苦しんできた人に対して、証拠隠しをしたり有罪立証を新たにしようとする態度を示しています。組織防衛のつもりかもしれませんが、「真実の発見や正義よりも、組織防衛のほうを優先するのか」と国民に思われたら、検察としてマイナスになると思います。裁判員制度で、国民が検察の主張を聞いて、有罪か無罪かを判断するときに信用されません。
 菅家さんの無実が明らかになったとき、謝罪をしたことで、警察や検察の評価は一瞬ですが上がりました。「間違ったら謝ってくれる」というところで、すべてとは言いませんが、国民は評価します。検察は国民のそういった面を信頼していないのではと思います。

(文責・編集部)

関係者のコメント  

国民救援会茨城県本部横倉達士事務局長
布川事件と出会って、35年ほどになる。再審裁判で負けるとは思っていない。早く無罪判決を勝ちとりたい」

足利事件・菅家利和さん
「間違いなく無罪が出ると思う。2人は無実なんだから、無罪にしなきゃいけない。桜井さんと杉山さんが無罪になったら、一緒に他の冤罪の犠牲者の支援活動をしたい」

宮城・筋弛緩剤冤罪事件・守大助さんの母・祐子さん
「2年前の今日、大助が千葉刑務所に収監されました。朝、東北道を走ってきましたが、2年前の同じ時間、大助もこの道を通ったと考えると、涙があふれました。『桜井さんと杉山さんが勝ったら、次は大助だよ』と、車中から声をあげました」

弁護団の意見陳述(要旨)  

 再審開始までに32年もの歳月が経過し、事件から43年が経過している。司法がなぜ無実の2人に強盗殺人犯の汚名を着せ、苦難の人生を強いてしまったのか。再審公判では2人の無実を速やかに明らかにするとともに、冤罪が生み出された原因が明確にされなければならない。
 2人は無罪である。(原審の一審以来)無罪の主張は6度にわたってしりぞけられ、獄中生活は29年余に及び、逮捕当時20歳と21歳の青年だった2人は還暦をこえたが、無実の訴えはいささかも揺らぐことはなかった。42年余、1万5000日を超す生涯をかけた訴えは、それだけで無実を明らかにしている。

 8年余に及ぶ再審請求の審理は、警察及び検察による数々の違法・不正の行為が、誤った確定判決を招いたことを明らかにした。2人の無罪立証に役立つ多数の証拠が収集されていたが、捜査官はこれらの証拠を無視・軽視して、自白に追い込んだほか、目撃供述をことごとく捜査の都合にあわせて変容させた。それどころか桜井テープには11カ所の編集痕があることまで明らかとなった。
 2人と犯行を結びつける確実な証拠は何一つ見いだせず、検察官は自らつくりあげた供述証拠を根拠として、2人を無理矢理起訴に持ち込んだのである。
 公判においても、目撃証人の初期の供述調書など、審理に必要不可欠な証拠を公判に提出しようとせず、編集痕のあるテープの開示を避けるため、取調官の偽証まで許してしまった。

 弁護人は検察官に対しこれらの違法・不正な行為について謝罪を申し入れたが、検察官はこれに応じないので、公開の法廷においてあらためて検察官の意見をうかがいたい。
 43年、2人にいわれなき強盗殺人の汚名を着せ、苦難の道を歩ませたことについて、心から謝罪をすべきであり、自らの違法・不正を猛省し、自らを厳しく律するべきと考える。

 本再審公判の使命の第1は、2人に一刻も早く、無罪判決を宣告し、救済をはかることである。以下の2点を強調しておきたい。
 8年余に及ぶ審理の結果である再審開始決定を尊重すべきである。再審の目的は無(む)辜(こ)の救済であることをかんがみれば、謝罪も反省もない検察官には、あらたな有罪立証を行う資格はないというべきである。
 本再審公判の使命の第2は、確定審が誤判に陥った原因を明確にすべきことである。

 検察官は、いまなお何らの謝罪もないまま、本再審公判の進行を妨害し、確定判決と離れたあらたな有罪立証を試みようとしている。それは、重要な目撃者の供述調書を、再審公判の証拠とすることを拒否したことである。また、取調時に2人のDNAが混入した危険性がある下着の鑑定を請求していることである。検察官には請求する資格などなく、DNA型鑑定請求を直ちに撤回し、審理の迅速な進行に協力することを求める。
 検察官がこの要求に応じないのであれば、裁判所は道理のない鑑定請求を速やかに却下し、2人に対し早期に無罪判決を宣告するよう求める。

兵庫でポスター貼りを弾圧する事件が発生  

 兵庫県神戸市西区の住宅街で、7月9日、選挙運動用のポスターを信号柱と道路標識柱に掲示したとして公職選挙法違反の容疑で日本共産党後援会の男性1人が逮捕されました。
 逮捕した神戸西署の私服警察官は、短時間の宣伝のためにポスターを仮止めする前から男性を見張っており、仮止めし終わるとパトカー3台と制服警官を呼び、「これは違反だ」と言ってきました。そして警告もなく、多数の警官が男性をむりやりパトカーに押し込んで逮捕しました。
 公選法145条では国や公共団体の工作物などへの選挙のポスター掲示を禁じていますが、電柱や公営住宅など、選挙の公正を害さないものへの掲示は適用除外としています。また、憲法や国際人権条約も言論・表現の自由と市民の知る権利の保障を明確に規定しています。

全国の運動で釈放・不起訴を  

 国民救援会兵庫県本部は当日ただちに抗議行動をおこない、全国から多数の抗議電報が送られましたが、10日、神戸西署は不当にも身柄を送検し、神戸地裁は神戸地検の勾留請求を認める不当決定をおこないました。これにより、男性は19日まで拘束される可能性があります。
 県本部、地元の神戸西支部などは、神戸西署への抗議行動と市民に真相を知らせる宣伝、男性の激励行動を連日おこないながら、地検に対して釈放・不起訴を求めています。接見した弁護士によると、男性は元気で、激励のシュプレヒコールで大変励まされており、「黙秘でがんばる」と決意しているとのことです。
 市民の真面目な選挙運動に弾圧を加えることは許されません。一日も早く不起訴と釈放を勝ちとり、弾圧を跳ね返しましょう。
〈要請先〉〒650―0016 神戸市中央区橘通1―4―1 神戸地方検察庁・島宣満検事 筍娃沓検複械僑掘烹僑娃僑掘殖藤腺悖娃沓検複械僑掘烹僑娃僑

大阪・地裁所長オヤジ狩り国賠の公判で検事が証人尋問  

 大阪地裁所長が襲われ、現金を奪われた事件で、犯人とされた成人男性2人と元少年3人が、警察や検察などの責任を追及して訴えているオヤジ狩り事件国賠裁判の口頭弁論が7月6日、大阪地裁でおこなわれました。
 この日証人として出廷したのは、事件当時大阪地検で凶悪事件を担当していた徳久検事。被告(国や府など)代理人の質問に答えて捜査・起訴は間違っていなかった、少年たちの供述調書は一貫しており、信用性があった、成人2人のアリバイは確たるものではなかったと述べました。
 原告代理人の戸谷弁護士が、成人たちの刑事裁判でおこなった証言と全く変わらないが、少年たち3名も含め、全員が無罪となった今、捜査上問題があったとは考えていないのかと、鋭く追及。「犯人」とされた少年の1人のアリバイを証明する携帯の通話記録の存在や、きちんと解析すれば犯人を見誤ることにはならなかった防犯カメラの映像から、犯人でないことを確認できたのではないか、さらに客観的証拠が何もない少年たちの「自白」とその変遷から、信用性判断が重要ではなかったのかと迫りました。しかし徳久検事は、警察・検察ともに事件が無罪となったことについて検討していないので返答できないと答弁。まったく反省のかけらもない態度に傍聴席から怒りの声が起こりました。
 若干の証人・証拠の採用を留保したまま、次回は9月21日に最終意見陳述の予定です。

福岡・自由ケ丘高校不当解雇事件で解雇無効の勝利判決  

 北九州市の自由ケ丘高校元教諭の前田光子さんが、不当解雇された元同僚の職場復帰を支援するビラの封筒詰めを生徒に手伝わせたことなどを理由に懲戒解雇されたのは、組合活動を嫌悪する不当解雇だとして同校を運営する福原学園に地位確認などを求めた自由ケ丘高校不当解雇事件。福岡高裁は6月29日、解雇無効の一審判決を支持し、学園側に未払い賃金の支払いを命じる判決を出しました。
 福岡私教連は、判決を重く受け止め、ただちに前田先生を職場に復帰させるよう求めていましたが、学園側は不当にも7月5日上告し、今後は最高裁でたたかわれることとなります。

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