日本国憲法と世界人権宣言を羅針盤に、弾圧事件・冤罪事件・国や企業の不正に立ち向かう人々を支える人権団体

10年4月15日号

10年4月15日号  

東京・国公法弾圧堀越事件が東京高裁で無罪判決  

 言論弾圧裁判史上に名を残す歴史的な判決が出ました。元社会保険事務所職員の堀越明男さんが、「しんぶん赤旗」号外を配布したことで国家公務員法違反に問われた国公法弾圧堀越事件で、東京高裁(中山隆夫裁判長)は3月29日、一審の有罪判決(罰金10万円・執行猶予2年)を破棄し、無罪判決を言い渡しました。

 「主文、原判決を破棄する。被告人は無罪」
 裁判長が告げると、法廷内に「おぉー」というどよめきと拍手が沸き起こりました。裁判長は、「こんなことで喜んでいてはいけない」と傍聴者を制止して判決理由を述べました。堀越さんは緊張した表情のまま判決にじっと聞き入りました。

 中山裁判長は判決理由のなかで、国家公務員の政治活動を禁じる国家公務員法(国公法)と人事院規則そのものは合憲と判断。しかし、国公法の規制目的である「行政の中立的運営とそれに対する国民の信頼の確保」という視点から堀越さんのビラ配布行為について見てみると、/場から離れた自宅周辺で、公務員であることを明らかにせず、マンションの郵便ポストにビラを投函する行為が、行政の中立的運営を阻害するものとは考えられない、¬閏膽腟舛成熟した現在では、国民は表現の自由が重要な権利であるとの認識を深めており、公務員がビラを配っても行政の中立性に不安を覚えることはない、との判断を示しました。
 以上のことなどから、堀越さんのような行為まで処罰することは、「表現の自由」を保障した憲法21条に反するとして無罪を言い渡しました。
 裁判長は、判決の最後に、意見表明ともいえる異例の「付言」をおこないました。付言は、時代の進展のなかで国民の意識も変わり、表現の自由の大切さを強く認識するようになっており、公務員が政治活動をしていても、表現の自由の権利の行使として許容できるようになってきていると指摘。また、規制が諸外国と比べて広すぎることや、世界標準という視点から見ても、公務員の政治活動の自由については、議論し再検討されるべき時が来ているという認識を示しました。
 判決は、堀越さんと弁護団の奮闘、言論弾圧3事件の共同したたたかい、全労連・国公労連や多くの労働組合や民主団体とともに、支援運動にとりくんだ成果です。

 裁判所の外には、穏やかな春の日差しと、集まった支援者の笑顔が待ち受けていました。晴れ晴れとした顔でマイクを握った堀越さんは、「(無罪の)サクラが咲いたと全国に発信できたことを本当に喜んでいます。たたかいは続くと思いますが、最後まで全力でたたかう」と述べ、大きな拍手で祝福されました。

「歴史変えた」画期的な判決  

 「歴史が変わった」――堀越明男さんが記者会見で強調したように、堀越事件の東京高裁判決は、言論弾圧事件の流れを変える画期的なものとなりました。国家公務員が普通の市民として休日にビラ配りをすることがなぜ犯罪となるのか。この理不尽な事件に対し、裁判所は市民的な常識の視点に立って判断しました。不当判決がつづく一連の言論弾圧裁判に歯止めをかける歴史的な判決でした。

 この判決で特徴的だったことは、「表現の自由がとりわけ重要な権利だという認識が国民に深まっている」という状況認識を示したことです。これまでの言論弾圧事件の有罪判決では、言葉のうえでは「表現の自由」を認めつつも、矮小化して判断していました。
 裁判官がこのような立場に立つことができたのは、言論弾圧各事件が共同で「ビラ配布は犯罪ではない」という市民常識を広げるたたかいをすすめてきた成果です。とくに葛飾ビラ配布弾圧事件の運動が「ビラの大切さ」や言論・表現活動の重要性についての世論づくりをすすめたことが、昨年11月の最高裁の不当判決に対してマスコミ、世論からの厳しい批判を引き出す原動力になりました。1600人が参加した昨年の12・4集会をはじめとする一連の集会の成功も世論を後押しする力になりました。

 国家公務員であるといっても、堀越さんが休日に職場と離れた場所でビラ配りをすることは、市民として当たり前の権利です。そもそも、公務員といっても一般から募集している以上、さまざまな思想・信条を持つ人がいるのが当然で、その人たちが私的な時間に政治活動をおこなってもおかしくありません。
 職種や権限、勤務時間の内外にかかわらず、公務員の政治活動は一律全面的に禁止すべきという悪しき判例を示したのは、1974年の猿(さる)払(ふつ)事件最高裁大法廷判決です。当時の郵政職員が、勤務時間外に公営掲示板に政党のポスターを貼ったことで、公務員の政治活動を禁じた国家公務員法に違反するとされたものです。公務員が政治活動をすると、行政の中立性がゆがみ、国民の信頼も失うというのが、禁止を正当化した理由です。
 今回の高裁判決も、猿払判決の枠組みを形のうえでは維持しました。しかし、堀越さんがビラを配っていても、誰からも公務員であることは分からない点や、仮に堀越さんが公務員であることが分かっても、それをもって国民が行政の中立性に疑問を抱くことはなく、冷静に受け止めることができると判断して、国公法による規制は「表現の自由」を定めた憲法に違反すると結論づけたのです。猿払判決の一番害のある部分を犢抜き瓩砲靴討い襪里任后
 さらに判決は、公務員の政治活動の規制は諸外国と比べても広すぎると指摘。世界標準の視点で考え直すことを示唆(しさ)するなど、弁護団の主張や守る会の運動、国連自由権規約委員会の批判を反映したものといえます。
 一方で判決は、公安警察が堀越さんを尾行して行動を盗撮した違法な捜査については触れていないなど、不十分な点も見られますが、相次ぐ言論弾圧裁判での不当判決が続くなかで、流れを変える意義ある判決です。

 世田谷国公法弾圧事件の宇治橋眞一さんも、堀越さんと同様、休日に職場から離れた地域で、公務員であることを名乗らずにビラ配布をしていました。今回の判決の論理を当てはめれば、宇治橋さんも無罪となります。
 世田谷事件では、証人申請はすべて却下されたとはいえ、堀越事件で採用された学者の意見書などはすべて証拠採用されており、無罪判決を出せる条件はそろっています。
 5月13日の判決まで、「ビラ配布は犯罪ではない」という世論をさらに広げて、言論弾圧に終止符を打ちましょう。(編集部)

報告集会での堀越明男さんのコメント  

 「サクラ咲く」ということを、青空の下、全国に発信できたこと、自分としても本当に嬉しく思います。
 この6年間、みなさん方から叱咤激励を受けてたたかってきました。逮捕されたときも、たたかっているときも、私は憲法が有る限り絶対大丈夫だという信念を持っていました。6年間たたかって本当によかったと思います。ビラまきが自由にできるということなので本当に喜んでいます。
 今後も憲法を守り、平和活動のために、全力をあげてたたかい抜きます。本当にありがとうございました。

世田谷国公法弾圧事件の宇治橋さんのコメント  

 堀越さんには、花道を作っていただきました。葛飾ビラ配布弾圧事件で荒川さんが敗れた中で、言論弾圧裁判の流れを変えたという点では非常に大きいと思います。世田谷事件の判決まではあと1カ月。みなさんの力を得ながら運動を展開し、勝利したいと思います。
〈無罪要請先〉〒100-8933 千代田区霞が関1-1-4 東京高裁・出田孝一裁判長

資料・判決付言  

 我が国における国家公務員に対する政治的行為の禁止は、諸外国、とりわけ西欧先進国に比べ、非常に広範なものとなっていることは否定し難いところ、当裁判所は、一部とはいえ、過度に広範に過ぎる部分があり、憲法上問題があることを明らかにした。また、地方公務員法との整合性にも問題があるほか、かえって、禁止されていない政治的行為の方に規制目的を阻害する可能性が高いと考えられるものがあるなど、本規則による政治的行為の禁止は、法体系全体から見た場合、様々な矛盾がある。加えて、猿払事件当時は、広く問題とされた郵政関係公務員の政治的活動等についても、さきの郵政民営化の過程では、国会で議論はなく、その関心の外にあったといわざるを得ない。しかも、その後の時代の進展、経済的、社会的状況の変革の中で、猿払事件判決当時と異なり、国民の法意識も変容し、表現の自由、言論の自由の重要性に対する認識はより一層深まってきており、公務員の政治的行為についても、組織的に行われたものや、他の違反行為を伴うものを除けば、表現の自由の発現として、相当程度許容的になってきているように思われる。また、様々な分野でグローバル化が進む中で、世界標準という視点からも改めてこの問題は考えられるべきであろう。公務員制度の改革が論議され、他方、公務員に対する争議権の付与の問題についても政治上の課題とされている折から、その問題と少なからず関係のある公務員の政治的行為についても、上記のような様々な視点の下に、刑事罰の対象とすることの当否、その範囲等を含め、再検討され、整理されるべき時代が到来しているように思われる。

足利事件で菅家さんに無罪判決が確定  

 栃木・足利事件の再審裁判の判決公判が、3月26日、宇都宮地裁(佐藤正信裁判長)でおこなわれ、「菅家利和さんを犯人としたDNA型鑑定に証拠能力はなく、自白は虚偽で信用できない」と認定。菅家さんに無罪判決を言い渡しました。

 1500人を越える市民が注目するなか、菅家利和さんは裁判所に入廷しました。佐藤裁判長は無罪判決を言い渡し、菅家さんはうなずきながら判決に聞き入りました。
 判決はまず、菅家さんを「犯人」と仕立て上げた旧DNA型鑑定について、新しいDNA型鑑定の結果と照らし合わせて、旧DNA型鑑定は、そもそも科学的に信頼された手法でおこなわれたとは言えないと指摘。再鑑定の結果、犯人のものと見られるDNA型と菅家さんの型が一致しなかったことから、証拠能力が無いと判断しました。
 ウソの「自白」については、誤った鑑定結果を告げられたうえのもので、「全く信用できない」とし、菅家さんの無実は「誰の目にも明らか」としました。
 判決言い渡し後、3人の裁判官が立ち上がり、「申し訳ありませんでした」と深々と頭を下げ、謝罪の言葉を述べました。菅家さんは涙を流し、布川事件の桜井昌司さんと抱き合い、喜びを分かち合いました。
 弁護団はこの判決について、課題は残るとしながらも「誤判究明のための第一歩」と評価しました。
 報告集会には、300人を越える市民が参加、布川事件名張毒ぶどう酒事件など、全国から冤罪事件の関係者も駆けつけました。菅家さんから、昨年12月に再審開始決定が確定した布川事件の桜井さん、杉山卓男さんに財田川事件の勝利を機に作られた「無罪」の垂れ幕が渡され、足利事件の勝利を布川、名張へとつなげようとの思いを一つにしました。

三重・名張毒ぶどう酒事件 現地調査おこなう  

 3月27日、28日、第28回えん罪名張毒ぶどう酒事件全国現地調査(主催=名張事件全国ネットワーク、国民救援会、再審・えん罪事件全国連絡会)が、三重県名張市でおこなわれ、24都道府県から144人が参加しました。
 参加者は、奥西勝さん(84)が強要されたウソの「自白」を検証するために、犯行に使った毒物(農薬)を捨てたとされる名張川や、ぶどう酒が運ばれた道筋など現地を回り、各所で弁護団の説明を聞きました。事件が起きた葛(くず)尾(お)の集落では毒物を混入したとされる10分間に奥西さんが毒物を入れる機会がなかったことや、変遷していく住民の証言、事件の問題点などが、パネルを使ってわかりやすく説明され、奥西さんが無実であるとの確信を深めました。
 現地調査に先立ち、事件学習会がおこなわれ、特別面会人の田中哲夫さんから、「全国のみなさんの熱く長いご支援に心よりお礼を申し上げます。私もみなさんと同じように頑張らなきゃいかんね」と奥西勝さんのメッセージが紹介されました。
 質疑の中で弁護団の小林弁護士は「これだけ証拠が明らかとなり、国民が注目している。運動を進めていかないといけない」と述べ、大きな拍手が起こりました。
 岐阜から参加した2人の大学生からは「人づてに現地調査があることを聞き、初めて参加しました。実際に自分で歩いてみないとつかめないことがあると感じました。奥西さんがこの場にいてほしい」との感想が聞かれました。

岐阜・関ケ原「健路」裁判で町長側に賠償命令  

 小学校の統廃合をめぐって住民が町に提出した署名簿を使い、町職員が署名した人を戸別訪問するのは人権侵害だとしてたたかっている関ケ原人権裁判。戸別訪問を指揮した浅井町長がこの裁判の原告ら6人の氏名を、私的に発行している新聞「健路」に掲載して配ったのはプライバシーの侵害だとして提訴した関ケ原「健路」裁判で、3月25日、岐阜地裁大垣支部(堤雄二裁判官)は、原告6人のうち4人について「プライバシーへの配慮を怠った悪質な不法行為」と認め町長側に損害賠償を命じる判決を出しました。
 裁判終了後、報告集会と記者会見がおこなわれ、弁護団は「歴史的で手堅い判決。プライバシーの侵害を認め、悪質な不法行為と断罪している」と報告しました。

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