日本国憲法と世界人権宣言を羅針盤に、弾圧事件・冤罪事件・国や企業の不正に立ち向かう人々を支える人権団体

10年11月25日号

10年11月25日号  

岐阜・関ケ原人権裁判で岐阜地裁が原告一部勝訴の判決  

 小学校の統廃合を巡る署名を住民が町に提出したところ、町側が署名した住民宅を戸別訪問し、「誰に頼まれて署名したのか」などと問いただしたことは請願権や思想・良心の自由の侵害だとして原告8人が岐阜地裁に提訴した岐阜・関ケ原人権裁判で11月10日、岐阜地裁(内田計一裁判長)は原告一部勝訴の判決を言い渡しました。

 「戸別訪問に行き過ぎがあった」
 裁判長は損害賠償の一部を認める主文を告げた後、町側の署名への圧力をこう表現しました。
 判決は、まず請願権の行使について「請願を実質的に萎(い)縮(しゅく)させるような圧力を加えることも許されない」としました。その上で、町がおこなった戸別訪問について「誰に署名を頼まれたのか」「今も考えに変わりはないか」などを尋ねたことは、署名をした人や集めた人に対して圧力を加えるものであったと認めました。
 一方で、請願の趣旨や署名が自筆のものかを確認するための戸別訪問は許されるなどとし、この事件後、町で署名が集まらなくなったことや戸別訪問が署名の効果を減殺する目的でおこなわれたことなど具体的な事実には踏み込まない形式的な判断をしました。

 弁護団は、この判決について「町が不当な圧力で人権侵害をしたと認定した判決で勝利」だと前置きした上で、「署名は請願先に対面することなく意見を表明する権利。職員が訪問すれば萎縮する町民が出るのは明らか」とし、「署名に不当な圧力を加えてはならないと明言しながら、署名に疑問があった場合に、同意さえあれば戸別訪問は許されると認めたのは納得できない」と批判しました。
 次に、人権侵害に対する損害賠償額の低さにも触れました。原告らは、請願権やプライバシー権、思想・良心の自由の侵害などに対して8人で400万円と弁護費用の40万円を求めていましたが、判決が認めたのは1万5400円でした。そのことからも言論・表現の自由、請願権、プライバシーなどの人権侵害に対する意識が低い内容だと指摘しました。
 加えて、狭い町の中で署名に対する戸別訪問がおこなわれたことで、町民の中でどういう結果が起きたのか、どういう効果があるのかなどについては、一切判断をしなかったと批判しました。

 判決後の記者会見で原告代表の野村浩之さんは、「町側が署名の活動に圧力をかけたことは認められた。勝利したと感じています」と話し、「全世界で署名にかける思い、政治的手法が、真っ向から否定されることになってはいけないと裁判をたたかってきた」と思いを語りました。
 原告、支援者と弁護団は19日に協議をおこない、控訴するかどうかを検討するとしています。
 また、この日は町長が自ら発行する「健路」という雑誌において、この裁判の原告らの名前を公表して非難したことはプライバシーの侵害であるとして提訴している関ケ原「健路」裁判の口頭弁論もおこなわれ、結審しました。一審は岐阜地裁で勝利判決が出され、現在名古屋高裁でたたかっており、判決は1月20日に決まりました。

関ケ原人権裁判
 05年に関ケ原町で町立小学校の統廃合反対の運動が起き、町に住民の過半数を超える署名が提出されました。これに対して、町長が町職員に命じ、署名をした町民宅を訪問させ、「本当に署名をしたのか」「いまでも気持ちは変わらないのか」「誰に頼まれたのか」など内心に踏み込む質問をさせたものです。町民8人が、町職員による戸別訪問は、請願権・表現の自由・プライバシー権の侵害に当たるとして、町を相手取り、合計440万円の損害賠償を求めて提訴しました。

検証・検察の不正義 被疑者は「人質」  

 郵便不正事件で、村木厚子元局長の無罪判決と、検事によるデータ改ざんの発覚によって、検察の一連の捜査のあり方が大きく問題視されています。そのなかのひとつが、検察の見立てた筋書き通りの供述をするまで被疑者の勾留を続ける「人質司法」です。

 「容疑を認めれば在宅(起訴)だ。あなたは否認するんですね」
 逮捕直前、厚生労働省の村木厚子元局長は、検事にそう告げられました。検察官の言葉を逆に取れば、容疑を認めれば身体拘束をしないということ。村木元局長は否認したため、09年6月に逮捕。保釈されるまでの約150日間、大阪拘置所で過ごしました。

 検察の取調べは、真実を探ることではありませんでした。あらかじめ検事が作ったストーリーに沿った供述を被疑者にさせ、調書にサインをさせることが狙いでした。
 「あなたは起訴されます。私の仕事は、あなたの供述を変えることだ」
 検事はそう言い放ち、執拗に供述を迫りました。
 「否認を続けると裁判で厳しいことになるよ」「執行猶予がつけば大した罪ではない」
 「自白」させようと躍起になる検事。あるときは、村木元局長が何も話していないうちから供述調書を持ってきてサインを求めることもありました。
 村木元局長は、「検事さんの物差しは、私たち一般市民のものと違う。私にとっては公務員として30年やってきたことの信頼を失う問題だ」と、検事に泣いて訴えました。

 検察が村木元局長を訴追する根拠としたのは、部下である元係長や実態のない障害者団体の役員などからとった供述調書でした。検察は元係長をはじめ、村木元局長の犯行を示唆する供述をした11人を証人として出廷させましたが、大半の証人が、供述はすべて検事の作り話だと証言。元係長も裁判でこう証言しました。
 「自分が独断でやっているというのに、いくら言っても聞いてもらえない。村木さんと私のやりとりが書かれているところは、全部でっち上げです」
 元係長が自分の意に反して、供述調書にサインしたのはなぜか――その理由が、元係長が取調べの様子を克明に記録した「被疑者ノート」から明らかになりました。
 「私の記憶がないのをいいように作文されている」「検事に抵抗する気力がなくなった」「もう無駄な抵抗はしないでおこうと思う。早くここから出たい。まともにものを考えられる状況ではない。また逮捕されて20日間拘置されたら困る」
 ノートには、元係長が身体を拘束され、言い分を聞いてもらえなかったことで、ウソの供述をせざるを得なかったことがはっきり書かれていました。元係長の証言によれば、検事は取調べの際、保釈の話をしたあとに調書へのサインを求めたといいます。保釈を餌にした明らかな利益誘導でした。元係長は、検察の調書作りに「協力」したため、逮捕から約40日で保釈されました。

 長期の勾留によって被疑者の自由を奪い、捜査機関の思うままに供述を誘導する取調べは、「人質司法」と呼ばれ批判されています。さらにそれに輪をかけているのが、弁護士以外との面会を禁ずる接見禁止処分です。被疑者を孤立させることで、捜査機関によってコントロールされやすい環境が作られているのです。
 こうした人質司法がまかりとおっていることは、裁判所にも責任があります。最高裁によると、09年度の地裁段階での逮捕状認容率は99・2%、勾留認容率は97・7%、接見禁止認容率は91・1%です。
 裁判所が安易に被疑者の勾留を許可することで、捜査機関によって虚偽の自白が生み出されます。さらに裁判所が虚偽の自白に依拠して判決を書くので、捜査機関はさらに自白偏重に傾倒していく――こうした悪循環を断つためには、取調べの全過程を可視化するしかありません。
 元係長のノートには「トランプ遊び2時間」とも書かれています。あるとき検事は取調べをせずに、事務官を交えて元係長とともにトランプゲームで「遊び」、貴重な人生の一部を奪われている被疑者の時間を弄(もてあそ)んでいました。

検察の在り方検討会議が初会合 国民救援会が申入れ  

 大阪地検の証拠改ざん問題を受けて、柳田稔法務大臣が設置した諮問機関「検察の在り方検討会議」(座長・千葉景子前法相)の初会合が、11月10日開かれました。
 国民救援会は会合に先立つ9日に法務省に申し入れをおこない、会議を国民に公開することや、冤罪犠牲者、支援者、弁護団の実体験の声を、委員のメンバーが十分聞くよう要求。合わせて、手持ち証拠の全面開示と取調べの全面可視化を最高検に求めるよう要請しました。
 国民救援会は今後、各事件の支援組織などと共同して、冤罪犠牲者が受けた取調べの記録を資料化して委員に配布し、検討会議の答申が抜本改革につながるよう求めていく方針です。
 会議は、検察の捜査や組織のあり方が主な議題となり、取調べの可視化についても検討されます。委員は、法曹3者、元警察官僚のほか、法学者やジャーナリストなど総勢15人。

国公法2事件 共闘会議向け要請  

 最高裁に係属している、国公法弾圧堀越事件世田谷国公法弾圧事件の支援共闘会議が11月16日に結成されます。幅広い民主団体や労働組合などの結集で、運動をもうひとまわり広げ、違憲無罪判決を勝ちとる力にしようと、2事件の守る会が共闘会議への賛同を求めて熱心に要請行動をしています。

 世田谷国公法弾圧事件の宇治橋眞一さんは各地の国民救援会の支部大会などで訴えながら、都内の民主団体、労働組合を回り支援共闘会議への参加を呼びかけています。11月10日には、堀越、世田谷両事件の守る会、国民救援会とともに共闘会議の結成総会が開かれる文京区などを回り要請しました。
 宇治橋さんが身を乗り出して、事件の概要、猿払事件最高裁判例や国公法・人事院規則の不当性を説明し、「ぜひ支援共闘会議に参加してほしい」と訴えると、多くの団体から、「ビラまきで躊躇するようなことになってはいけない」、「結成総会が地元で開かれるんですね。参加します」など、好意的な反応が返ってきました。また、元最高検次長検事の古田祐紀裁判官が世田谷事件の審理をすることについても、「捜査側の人間が裁判をするなんて」と驚きの声が出ました。
 この日、5人で約20団体を回り、古田裁判官の回避を求めるハガキと署名をお願いしました。ある組合では2百枚の個人署名にとりくむということで、早速用紙を届けました。
 11月6日、7日に東京・夢の島公園で開かれた「赤旗まつり」会場では、堀越さん、宇治橋さんとともに、地元である東京の仲間が参加者に署名を呼びかけ歩き回り、1千人を越える方から署名の協力を得ることができました。

地元・東京の支部が奮闘  

 20万署名を提起している国公法弾圧2事件。国民救援会は年内5万人を目標に掲げ、地元・東京の支部も奮闘しています。

  • 目黒支部
     東京・目黒支部は、9月の支部常任委員会で署名活動の重要性を論議し、年内に会員数の2倍を超える500人分の署名を集めることを決め、行動にとりくんでいます。
     10月7日、宇治橋眞一さんと目黒支部の役員など4人が、加盟団体を中心に目黒区内13団体を訪問。署名用紙と、リーフレット「ビラをまくことは犯罪ですか?」をセットにして合計500部を渡して、署名への協力を要請しました。
     要請行動のなかで、地方公務員の労働組合からは、「地方公務員にも国家公務員のような罰則規定を盛り込むべきだという動きがある。国公法が憲法違反だという判決が出れば、地方公務員も安心して政治活動ができる」といった話や、民主団体からは、「国家公務員だけでなく、平和運動などの民主的な運動を萎縮される目的でおこなわれた弾圧だ」などの話が寄せられるとともに、どこでも宇治橋さんの訴えを真剣に聞いてくれました。
     地域で救援新聞を手配りで配達をしている会員も、署名用紙の配布と回収にとりくみ、署名への協力をお願いしています。
     11月15日現在、194人の署名を集め、支部会員数まであと十数人と迫りました。
  • 世田谷支部
     世田谷国公法弾圧事件発生の地元である世田谷支部では、以前から署名活動や裁判の傍聴、宣伝行動をおこなってきました。
     年内5万人署名の大会決定を受けて、1カ月ほど前から署名活動に本格的にとりくみ、支部として年内に2000人以上の署名を集めようと目標を決めて、奮闘しています。
     世田谷支部と世田谷国公法弾圧事件の世田谷の会では、1カ月に1回は街の中に打って出ようと、今月から駅前の繁華街で宣伝行動をとりくむ計画を立てています。

自衛隊の国民監視差止訴訟で仙台地裁が原告5人のみ証人採用  

 陸上自衛隊の情報保全隊による国民の監視と情報収集の差止めを求めて107人の住民が仙台地裁に提訴している裁判で11月1日、第18回口頭弁論が開かれました。仙台地裁(畑一郎裁判長)は情報保全隊の幹部ら3人と学者2人の証人採用を却下し、原告5人のみを採用しました。この事件では、情報保全隊の幹部らの証人採用をめぐって原告と被告の国側で激しく争われていました。

 「原告5人を採用する。他は採用しない」
 畑一郎裁判長が告げると、法廷は一瞬静まり返りました。勅使河原弁護団長が立ち上がって異議を申し立て、「裁判官の忌避も含めて相談したいので休憩を取りたい」と発言し、休廷となりました。

 この日の冒頭、弁護団は被告(国)が誤った法令解釈で情報保全隊の監視活動などを正当化していることなどを厳しく批判しました。また、国側が監視された集会やデモが公の場でおこなわれていたことを殊更に強調し、権利侵害は認められないと主張していたのに対して、監視活動が原告らのプライバシー権などを侵害していることをあらためて論証し、国側の「証人尋問は必要ない」とする言い分を突き崩していました。
 再開後、原告弁護団が情報保全隊幹部を採用しない理由を次々とただしたのに対し、裁判長は「防衛省が承認しなかったから」と繰り返すのみでした。また学者証人については、「事実関係ではなく法律論だから不要」と返しました。一方、国側が認否を拒否している内部文書については「立証が済んでいる」と述べ、自衛隊が作成したものだと判断している可能性があることを示しました。

 「防衛大臣の許可なしに幹部を証人に呼べないのでは、司法が行政に屈服しているのでは」。報告集会では、怒りの声も漏れました。弁護団は全員が証人採用されなかったことに慙(ざん)愧(き)の念をにじませましたが、原告5人が採用されたことは、これまでの署名などの運動が裁判所を動かした結果と評価。裁判所が具体的な監視事実を聞いて、権利侵害に当たるならば救済しなければならないと考えている可能性もあるとして、ひきつづき裁判所に監視による被害を突きつけていくことが大切だと強調しました。
 自衛隊幹部の証人尋問を求める署名は、団体署名1055団体、個人署名8819人分を地裁に提出していました。原告団と支援する会は今後、公正な判決を求める署名を呼びかけていきます。また、12月15日には仙台市内で自衛隊問題に詳しいジャーナリスト・半田滋さんを招いた決起集会を予定しています。

東京・痴漢えん罪西武池袋線小林事件で支援者が適切な医療を要請  

 膠原病で手指を動かすことが困難な無実の小林卓之さんが、痴漢の犯人として懲役1年6月の実刑判決を受け収監された痴漢えん罪西武池袋線小林事件で、11月9日、国民救援会東京都本部と支援する会は東京拘置所での小林さんの処遇について十分な医療処置が受けられるように、法務省矯正局に対して宣伝と要請行動を20人でおこないました。小林さんは膠原病強皮症と脳梗塞などを発症し、主治医から刑の執行は生命の危険があるとされており、支援者と弁護団は小林さんの刑の執行停止を求めています。
 要請では、現在拘置されている東京拘置所において、必要な薬を制限されただけでなく、診察に来た医師に手指を動かすためにお湯がほしい旨を伝えたところ、「ぜいたくを言うな」などと怒鳴られたなどの状況を伝え、適切な医療さえも受けられないのは、人権上、人道上も許せないとして、東京拘置所に適切な指導をおこない、必要な医療上、保健衛生上の処置をおこなうよう求めました。矯正局は成人矯正課の専門官2人が対応し、「適切に対応する」とだけ述べたため、支援者らは「具体的にどうするのか」と問いただしましたが、具体的な処遇については回答を避けました。
 支援する会は、ひきつづき小林さんの刑の執行停止と適切な医療処置を求めて運動を進めています。

司法修習生給費制問題で修習予定者らが宣伝行動  

 若手法律家などで組織するビギナーズネットや日弁連、「司法修習生に対する給与の支給継続を求める市民連絡会」は、国会議員会館前で、現在開かれている臨時国会での法改正を求めて、宣伝行動をおこないました。
 今年の司法試験合格者は11月末から司法修習に入ります。その新第64期司法修習予定者がマイクを握り、給費制存続を訴えました。
 「貸与制になると知った法科大学院や大学で学ぶ後輩が、法曹への道をあきらめている。現実をしっかりと見てほしい」、「修習に必要な本1冊を買うのにも、借金が増えることを考えなければならない」、「司法試験に合格したにもかかわらず、経済的に苦しく地方への転勤ができず、司法修習生としての採用を諦めた人がいる。私自身も法科大学院卒業までに奨学金を600万円借りている。修習では貸与を申請して、さらに300万円の借金を重ねようと考えている」などの切実な訴えで、給費制存続を求めました。

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