日本国憲法と世界人権宣言を羅針盤に、弾圧事件・冤罪事件・国や企業の不正に立ち向かう人々を支える人権団体

10年10月25日号

10年10月25日号  

大阪地検特捜部の証拠改ざん問題で全国に宣伝・要請を呼びかけ  

 大阪地検特捜部の証拠改ざん問題で、最高検は改ざんをおこなった検事を起訴しました。この検事による他の事件での改ざんはなかったと会見し、問題の幕引きを図る構えを見せています。国民救援会は、10月中に全国の検察庁や裁判所への要請・街頭宣伝をおこなうことを各都道府県本部に呼びかけており、これまでに大阪、愛知につづいて埼玉県本部が要請をおこないました。今後各地で行動がおこなわれます。

 埼玉県本部は10月12日、桜井和人会長をはじめ3人でさいたま地検とさいたま地裁に対し要請をおこないました。
 地検で要請団は、「捜査のプロである検察がウソをつくようであれば、裁判員となって審理に関わる国民から信用されなくなる」と追及。さらに、「警察のチェックを検察がすることになっているが、検察のチェックは誰がするのか。第三者機関による検証が必要じゃないのか」と述べると、応対した職員は、「その通りですね」と回答しました。
 つづく地裁では、「裁判で有罪率が99%になることの実態は、裁判官が検察官のウソを見抜けていないだけでなく、時に検察に助け舟を出したり、脆(ぜい)弱(じゃく)な立証を補強して、どうにかして有罪に持ち込んでいるからだ」と指摘。「真実を追究する裁判所となることを望んでいる」と要請しました。
 要請書では地検に対して、他の事件でも改ざんや「自白」強要がおこなわれていないか検証し、公表することを求めるとともに、警察・検察での取調べの全過程の全面可視化(録音・録画)や、いまおこなわれている再審を含むすべての裁判で、検察官の手持ち証拠すべてを開示するよう求めています。

兵庫・神奈川で街頭宣伝  

 兵庫県本部は、10月9日、県本部大会後、たんぽぽの会(関西えん罪事件連絡会)と共同で、JR西宮駅前で宣伝行動をおこないました(写真上)。
 30人が参加し、東住吉冤罪事件の朴龍晧さんのお母さんなど事件関係者が、不正な捜査で冤罪が数多く引き起こされてきた事実を訴えました。
 雨が降る中、横断幕に注目が集まり、ビラ200枚を配布し、市民の関心を寄せました。

 神奈川県本部では、10月7日、JR関内駅前で8人で宣伝行動をおこないました。
 「冤罪を生んできたのは、検察だけじゃない。それを支えた裁判所の責任も重大だ」と訴え、ビラを配りました。
 ビラを受け取った30代の男性は、「(改ざんは)ふざけるなという思いだ。検察は信用できない。やっぱり取調べの可視化が必要でしょう」と話しました。

中央本部が会長声明  

 改ざん問題を受けて国民救援会中央本部は、10月8日、会長声明を発表しました。
 声明では、問題は、刑事裁判の原則を脅かす重大な違法行為だとしたうえで、マスコミが「前代未聞」と報道しているが、これまでも検察は罪のない人たちを犯人に仕立て上げてきており、起こるべくして起きた事件だと強調。証拠の改ざんや、無罪につながる証拠隠し、有罪の筋書きに合致するような「自白」の強要などが常態化していたと指摘しました。さらに、警察や検察の違法活動を容認してきた裁判所の姿勢が、こうした問題を増長させたと裁判所の責任も追及しています。
 こうした指摘のうえで声明は、これまでの誤判の検証や、証拠の全面開示、取調べの全面可視化などをするよう求め、警察、検察、裁判所が、憲法と国際人権規約を学び、「冤罪を生まない」という刑事裁判の目的をつねに実現する立場を堅持するよう求めています。(全文はこちら

「自白」はこうして作られた・上 爪ケア事件・上田里美さんに聞く  

 検察の証拠改ざん問題によって、捜査機関が有罪の証拠を「つくる」実態の一部が露呈しました。一方、改ざんの痕跡を見つけづらい証拠があります。それは「自白」調書。密室のなかで言葉がどのように改ざんされ、ウソの「自白」が作られるのか――今年9月に逆転無罪が確定した、福岡・爪ケア事件の上田里美さんの話からその実態が浮かびあがってきました。(文責=編集部)

 2007年7月2日の早朝でした。突然訪ねてきた警察官に、私は連行されました。
 警察署に着くなり取調室に入れられました。スチールデスクひとつ置かれた3畳に満たない窓のない部屋。そこで刑事さんがこう告げました。
 「ここは反省する空間だ」

 刑事さんから、「病院で起きた患者の爪剥ぎ事件は、あなたがやったことで間違いないか」と言われました。私は、「爪切りはしましたが、爪を剥がしてはいません」と答えましたが、刑事さんは納得しません。話が平行線のまま昼近くになったときです。刑事さんが手錠を取り出し、「あなたを傷害の罪で逮捕します」と言いました。初めて見た手錠。それが自分の手にかけられるなんて――頭の中が真っ白になりました。
 午後から本格的な取調べが始まりました。刑事さんに、どういうふうに爪を剥がしたのかと追及されました。私は、「爪切りはしたけれども、爪剥ぎはしていない。まして虐待ではありません」と反論しました。すると刑事さんは、「この写真を見るからには切ったとは思えない。剥いだと表現するしかない」と写真を見せてきました。私が切った患者さんの爪でした。
 「肥(ひ)厚(こう)した爪は、切るとこうなるんです」と冷静に言いましたが、理解してもらえません。「判断するのは写真だ。言葉では、剥いだとしか表現できない」と。
 切ったという事実をそう表現するしかないなら、私はそれでもかまわないと投げやりな気持ちになり、「あなたがそう書きたいなら書けばいい」と言いました。どこかで反論すればいいと思っていました。

 取調べは次の日も、また明くる日も続きました。いくらケアのための爪切りだと言っても、「それは、看護師として話してるからだ。人として考えなさい。なにも知識がない人が見たらどう思う」と返され、全く話が噛み合いません。
 延々と同じ事を聞かれるので、もし自分がまったく看護に無知だったら、ケアされた爪を見てどう思うのかな、刑事さんがいう「人」というのは、こんな心理なのかな、と少し考えてみました。
 「もし、私に看護の知識がまったくなかったら、この爪どうしたんですかと聞くかもしれません」
 私はゼロの状態の自分を想像して答えるにようにしました。そのうち、「刑事さんはこう聞いているのだから、こんな答えを求めているんだろうな」と考えて話すようになりました。刑事さんが納得する答えが出せないと「もう1回考えなさい」と言われるので、「じゃあこう答えればいいのかな」と。○×テストをしているような感覚でした。
 これは○だった。これは×だった。これは宿題になった。留置場で一晩考えないといけない。翌朝、「どう?」と聞かれる。「こんな感じでしょうか」「うん、そうだね」「ああ、○がもらえた」――取調べが始まって1〜2カ月たった頃には、そんな感覚になっていました。(つづく)

爪ケア事件

入院中の寝たきり患者が、病変し肥厚した足の爪をシーツなどに引っかけてケガをしないようにと、専用ニッパーで爪を切ってケアをした看護師の上田里美さんが傷害罪で起訴された事件。マスコミが「看護師が爪を剥がして虐待」などと大きく報道。その後逮捕された。一審は、爪切りが看護行為であったことを認めながら、上田さんの「自白」調書に依拠し、「痛みや出血に無配慮」で、「自分の楽しみのための行為」だったとして、懲役6月・執行猶予3年の有罪判決。二審の福岡高裁(陶山博生裁判長)で9月16日に逆転無罪判決が出され確定。日本看護協会が、「虐待でなく看護ケア」とする見解を出していた。

国公法2事件で古田裁判官が回避しない意向を伝える  

 同じ最高裁に係属している国公法弾圧2事件の弁護団が、最高検の元次長検事として堀越事件を捜査・指揮した最高裁の古田佑紀裁判官は不公平な裁判をするおそれがあるとして世田谷事件の審理を回避するよう求めていた問題で、同裁判官は10月6日付で回避しないことを書記官を通じて弁護団に通知しました。弁護団は10月8日、あらためて回避を求める回避勧告補充書を提出しました。古田裁判官は堀越事件のみ回避しています。
 弁護団が今回提出した補充書では、古田裁判官が堀越事件の「捜査の指揮にかかわった」と明言していることから、起訴するか否かの判断にもかかわっていて、検察として国家公務員の政治的行為を「犯罪」として見ていたからこそ起訴したのだと指摘。そうであれば、争点が同じ世田谷事件においても、堀越事件を起訴したときの検察の見方で審理する可能性がきわめて高く、公正な審理が期待できないとして回避を求めています。

東京・痴漢えん罪西武池袋線小林事件で出頭命令下る  

 膠原病で手指を動かすことが困難な小林卓之さんが痴漢の犯人とされ、1年10月の懲役が確定した痴漢えん罪西武池袋線小林事件。検察庁は服役のために10月13日に出頭するよう小林さんに「呼び出し状」を出しました。しかし、小林さんは膠原病強皮症と脳梗塞などで、現在も加療・療養中の身で、刑務所で服役できる状況ではありません。小林さんの担当医は、「加療が必要な状態で、これを中断すれば生命を保つことのできないおそれがある」と診断しています。
 刑事訴訟法482条では、「刑の執行によって著しく健康を害するとき、または生命を保つことができない虞があるとき」や、「刑の執行によって回復することのできない不利益を生ずる虞があるとき」には、検察官は刑の執行を停止することができるとされています。国民救援会東京都本部と支援する会は10月8日、13日と、東京高等検察庁に対して、小林さんの刑の執行停止を求める要請・宣伝行動をおこないました。東京高検は署名の受け取りを拒否しようとするなど、高圧的な態度に終始しましたが、出頭は19日に延期されることになりました。弁護団と支援者は、最後まで刑の執行停止を求めると同時に、再審申立ての準備を始めています。

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