日本国憲法と世界人権宣言を羅針盤に、弾圧事件・冤罪事件・国や企業の不正に立ち向かう人々を支える人権団体

09年9月5日号

09年9月5号  

国民救援会埼玉県本部が裁判員裁判を傍聴  

 国民が刑事裁判に参加する裁判員裁判が8月3日の東京地裁を皮切りに、各地の地裁ではじまっています。8月10日から3日間、さいたま地裁でおこなわれた裁判員裁判(殺人未遂事件)。埼玉県本部では役員を中心に傍聴を呼びかけ、20倍近い倍率のもとで連日傍聴券をひきあてました。傍聴をしたみなさんに、見て聞いて感じたことをうかがいました。

■編集部 まず、これまでの裁判と比べて変わったと思われた点は?

■長澤 一般の人にもわかるように、検察官も弁護人も努力をしていた。とくに検察側はモニターを使って主張の骨子や証拠を映したりしてね。
 裁判官の声もいつもは小さくて聞こえないことがあるけど、今回はよく聞こえたよ。
 これまでだと証拠も見えなかったり、書面のやりとりだけがおこなわれていて、裁判が終わってから弁護士の説明を聞かないと内容がわからないこともあったけど、そういうことはなかったね。

■小林 検察官がとてもていねいに原稿を読んでいたという印象です。被告人が被害者を刺した状況を検証している写真をモニターに映し出したり工夫はしていました。
 法律用語をできるだけ使わず、わかりやすくしようとしていました。たとえば検察官は、「取調べのときの調書に」と言ったあとで、それを「取調べでお話しされたときの書類に」と言い換えたのが印象的だった。

■長澤 凶器の出刃包丁をケースに入れて、6人の裁判員に回して見せて、犯罪のひどさを印象づけようとしていたね。

■小山内 論告求刑と最終弁論を傍聴したけど、検察官は書類を見ながら弁論し、そのポイントがモニターに映し出された。弁護人のほうは、何も見ずに、裁判員たちの目を見ながら弁論していたのが印象的だった。被告人も「さん」づけで呼んでいたわ。
 争点が量刑ということもあり、検察官は論告で過去の量刑をモニターに示し、被害者にまったく落ち度がないと強調してた。弁護人は量刑の傾向をまとめたグラフをモニターに映し、執行猶予の例も示し、被害者にも犯行に至る原因になった大きな落ち度があったこと、被告人は自首しており深く反省していること、社会で更生できることなどを話して執行猶予を求めていた。少し救われた気持ちになった。

■編集部 裁判長は「疑わしきは被告人の利益に」など、冤罪を起こさないための心得を法廷で裁判員にいいましたか。

■長澤 なかったね。

■編集部 ほかに感じられた点は?

■長澤 裁判のなかみじゃないけど、法廷に入るときに金属探知機の棒のようなものでチェックされたね。はじめてだったよ。

■小山内 私もはじめて。カバンも預けさせられたし。

■小林 ボディチェックもされたし、携帯電話の持ち込みは禁止、腕時計も調べられた。

■編集部 それでは、裁判員のようすについては?

■小林 裁判員は本当に真剣でした。緊張感があった。

■小山内 そうだったね、一言も聞き漏らさないようにとみんな食い入るようにして迫力があった。くたびれているようだったけど、あれだけ真剣に聞いていれば疲れるわよ。

■長澤 休憩も何回もあったけど、疲れるだろうからね。

■編集部 これまでは、検察官や弁護人が提出した証拠を採用するかどうか、法廷の場で議論されました。今回、制度の導入にあたり、事件の争点や証拠の整理、裁判の進行を、裁判所、検察官、弁護人で公判前に決める手続が新たにつくられましたが、その影響はありましたか?

■小山内 裁判員は証拠を整理する過程に関与してないわけだから、それで判断するのは苦しかったと思う。複雑になったら、今回のようにはいかないと思った。

■小林 出されたものだけで料理するんだから容易でないと感じた。

■編集部 最後に、傍聴をされて感じられたことは?

■長澤 今回の事件は、事実については争いがなくて、量刑の問題だったけど、これが否認事件だったら、たかだか3日や4日の裁判じゃ、裁判員も判断に困るだろうと感じたね。

■小山内 否認事件など事件が複雑になれば、裁判員も「間違ったらどうしよう」と、もっともっと悩むと思う。だから、疑いがあるときには無罪にしようということを伝えていくことが大事だと思ったわ。
 これからもチャンスがあれば傍聴していきたい。実際に裁判を見て聞いて、問題点を指摘していくことが大事よね。

■小林 やはり実際に傍聴をしてみることが大事だと感じたね。裁判員と目があうこともあったけど、見守る傍聴者がいれば、いい意味で裁判員も安心できると思う。

■編集部 裁判員制度の問題点を明らかにして、その改善を求めていくうえでも、裁判の傍聴が大切だと感じました。ありがとうございました。

■3日目傍聴 東海林忠良常任委員

 刑事裁判ははじめて傍聴しました。
 判決の言い渡しは、初犯であることや罪を認めていることを認めたうえで懲役4年6月にしたと述べ、1、2分程度で終わってしまいました。もう少し説明があってもいいのではと思いました。事件を知らない人が傍聴をしたら、どういう事件でなぜ有罪になったのかもわからないのではないかと感じました。
 傍聴して感じたことは、これまで3人(少ないときは1人)だった裁判官が、裁判官3人と裁判員6人の9人になり、高い壇から見下ろされると、傍聴席にいてとても圧力を感じました。被告や証人などはもっと強く感じるのではないでしょうか。せめてみんなと同じ高さにしてもらえればと思いました。
 それから法廷に入るときにボディチェックをされるなど警戒が厳しく、国民に開かれた裁判とはどこか逆行するように感じました。

埼玉・裁判員裁判の日程  

●事件から初公判まで
 5月4日、Aが男性を出刃包丁で刺し、重傷を負わせる。その後警察に出頭し、逮捕。5月25日、殺人未遂罪で起訴。6月に2度、裁判の争点の整理や進行などについて、裁判官、検察官、弁護人が協議(公判前整理手続)。

●公判
□第1日(8月10日)
 午前中に、裁判員選任手続で6人の裁判員・4人の補充裁判員を選ぶ。
〈第1回公判〉午後1時15分に開廷
・被告人の氏名・住所などを確認。
・検察が起訴状を読み上げる。
・裁判官が被告人Aに、黙秘権があることを知らせ、起訴内容への意見を求める。A「間違いありません」。弁護人が執行猶予を求める。
・検察官が起訴の内容を述べる。つづいて、弁護人が主張を述べる。(休憩)
・検察官が、Aの血が付いたジャンパーや被害者のキズの状況を示す画像などをモニターに映し出す。プラスチックケースに入れた凶器を裁判員に回覧し、主張を述べる。(休憩)
・被害者への質問。まず検察官が質問。(休憩)つづいて弁護人が質問。(休憩)裁判長が裁判員に「裁判員の方から質問は?」と促す。裁判員が手をあげ、裁判長が指名し、4人が質問。(4時53分終了)

□第2日(8月11日)
〈第2回公判〉午前10時に開廷
・弁護人が、Aの謝罪文をモニターに映し出し、読みあげる。
・Aへの質問。まず検察官が質問。(休憩)つづいて弁護人が質問。(休憩)裁判員5人が質問。(休憩、昼休み)
・被害者が意見を述べる。
・検察官が論告、懲役6年を求刑。
・弁護人が最終弁論で執行猶予を求める。最後にAが「罪を償いたい」と述べる。(2時18分結審)
*午後3時から2時間、最終評議。

□第3日(8月12日)
*午前9時30分から3時間、最終評議。
〈第3回公判〉午後3時に開廷
・裁判長が懲役4年6月の判決を言い渡す。

裁判員裁判 社説はどう見たか  

 8月3日から東京地裁で全国初の裁判員裁判がおこなわれた。裁判員裁判のスタートを新聞はどのように評価したのだろうか。

 新聞各紙の社説を読むと、制度への期待と今後の課題が共通して述べられていた。
■裁判員制度への期待
 「プロの裁判官が持ち得ないような視点こそが大切」(朝日)など、市民感覚が活かされることへの期待。日本経済新聞は、「公権力の行使に対する積極的なチェック機能を果たす」との面から期待を述べる。「図解や写真を多用して、裁判員の視覚に訴え、平易な言葉で分かりやす」い(産経)との評価。この点で、労力と資力で圧倒的に不利になる「弁護人をバックアップする仕組み」づくりを東京新聞は求める。

 「制度の理解を広めるには、裁判員の貴重な体験を語ってもらい、検証していくことが大切だ」(中国)。制度の検証にむけてもっとも多かった意見は、厳しい守秘義務の見直しを求めるものだった。また、南日本新聞は、「裁判官が公判前に、被告の『無罪推定』の原則を裁判員に徹底したかどうかも注目したい」と述べる。河北新報は、市民が参加する検証機関の設置を求めた。
 取調べの可視化の実現を求める社説もみられた。福島民友新聞は、松川事件60年での社説で、松川の教訓を生かすうえで全面可視化を求めた。

 裁判員の辞退問題では、東奥日報が、思想・信条の自由にもとづく裁判員辞退を認めていないことへの疑問を呈し、琉球新報は、守秘義務を課し「罰則を盾にした参加の強制」は「『苦役』に当たるのではないか」と批判し、「本人が辞退を希望すれば認められるよう」提案する。
 社説の視点が裁判員にあたっているもとで、神奈川新聞は「被告人の権利がないがしろにされた部分がなかったか…考えなければならない」と、大事な視点を提起する。

 「冤罪」から切り込んだ社説が見られないなかで、信濃毎日新聞は、「冤罪を生んではならない」と、推定無罪の原則や「検察官の立証に合理的な疑いがないかどうか、裁判員が厳しく目を光らせる」心構えを記し、「被告の言い分に十分耳を傾けることが大切」と締めくくった。

名張・布川事件定例宣伝行動  

 愛知奥西勝さんを守る会と愛知県本部は144回目となる名古屋市大須観音宣伝を、7月28日、雨のなか6人で行いました。毎月の宣伝は12年目を迎えます。特別面会人の稲生昌三さんは、「奥西さんに自由を。無実の人をこれ以上苦しめてはいけない」とマイクで訴えました。

 布川事件守る会と都本部、中央本部などで毎月、東京・銀座で宣伝をおこなっています。8月20日は、13人でビラを配り、宣伝しました。再審請求人の桜井昌司さんは、「冤罪生まぬため捜査の可視化が必要だ。布川事件で再審無罪を勝ちとり、他の冤罪事件の力になりたい」と訴えました。

岐阜・関ヶ原人権裁判 町の主張に矛盾  

 岐阜県関ケ原町で、小学校の統廃合に反対する署名を町に提出したところ、町職員が署名をした住民を訪ね、「誰に頼まれたのか」「自分で署名したのか」などと問いただした事態をうけ、町長を相手に起こした裁判の第10回口頭弁論が8月12日、岐阜地裁でおこなわれました。
 この日の裁判で町側は、「署名の代筆は、私文書偽造や同行使にあたる」とした上で、「町民が犯罪者で、これを調査するとすれば、犯罪の捜査だから警察の仕事で、町は代筆については戸別訪問はおこなわなかった」などと、当初の訪問調査目的を否定する矛盾した主張をしました。(県版より)

東京で警察の違法な取調べに抗議  

 東京・町田市で起きた人権侵害事件について、国民救援会三多摩総支部、町田支部は当事者の一家とともに、7月14日、事件を送検しないよう町田署に申し入れました。

 事件は6月16日午後9時頃、市内在住の山田直也さん(23歳)が乗用車で走行中に検問を受けた際、後部座席に野球のバットがあったことが軽犯罪法第1条2項(正当な理由がないのに他人の生命・身体に危害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯した)にあたるとして「忠(ただ)生(お)地区交番」に同行を求められたものです。山田さんは「職場の行事でスイカ割りをするのに持参していたものだ」と再三にわたり説明しましたが、取調べた警察官は「認めなければ家に帰さない」などと高圧的に供述を迫り、「護身用として所持していた」との「上申書」の提出を強要しました。
 奇しくも山田さんは国民救援会中央本部の山田善二郎顧問のお孫さんであり、事件を聞いた山田顧問が、取り調べをした警察官に事情を尋ねたところ、「上申書は本人が自発的に書いた」などと声高に語るだけであったため、あらためて町田署への申入れをおこなったものです。
 申入れでは「忠生地区交番は『安全安心社会』の拠点となるマンモス交番として開設されたはずだが、こんな人権侵害の拠点になるようではまったく安心できない」などと追及しましたが、対応した忠生地区交番所長らは「捜査は適法」などと繰り返し、申入れ書も受け取りませんでした。
*  *
 青年に対する軽犯罪法を口実とした無法な職務質問が都内各所でも横行していることから、事件は氷山の一角であり、若者を警察権力の無法から守るとりくみが求められています。三多摩総支部と町田支部は、関係者と相談の上、早期解決のためにがんばろうと声をかけあっています。
(三多摩総支部・生江尚司)

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