日本国憲法と世界人権宣言を羅針盤に、弾圧事件・冤罪事件・国や企業の不正に立ち向かう人々を支える人権団体

09年8月25日号

09年8月25日号  

東京地裁で全国初の裁判員裁判開かれる  

 市民が刑事裁判に参加する裁判員裁判の初めての裁判が、8月3日から4日間、東京地裁で開かれました。国民救援会東京都本部と中央本部11人は裁判員候補者や傍聴に来た人たちにビラを配り、冤罪を生まない裁判の実現を呼びかけました。

 初の裁判員裁判の対象となったのは、近隣の住民を刃物で刺殺したとして、殺人罪に問われた事件です。連日公判の模様は新聞・テレビに報道され、国民の注目を集めました。

 初公判の行われた3日、裁判員が参加する初めての公判が開かれるとあって、早朝から多くのマスコミが東京地裁の門前に駆けつけ、カメラの放列をつくりました。
 ごった返す裁判所前で、「国民救援会」と書かれた黄色いノボリを高々と掲げ、選任手続きに訪れた裁判員候補者と見られる人たちに、「市民が参加する裁判で冤罪を生み出してはなりません。誤判を防ぐためにビラを読んでください」と呼びかけ、ビラを配りました。
 足利事件の菅家利和さんの笑顔が表紙を飾るビラは受け取りがよく、1時間半で約700枚を配りました。ビラでは、警察の自白強要と検察の証拠隠し、科学的証拠を無視する裁判官の有罪志向が、これまで多くの冤罪を生んでいる実態を指摘。さらに、検察の主張を聞いても納得できなければ有罪にはしない「疑わしきは罰せず」の原則や、有罪判決が確定するまでは被告人は無罪の扱いを受ける「無罪推定の原則」をまもろうと訴えました。
 裁判所前に止めた宣伝カーからは、東京都本部の安井純夫会長がマイクを握り、「市民が裁判に参加する点では画期的なことだが問題点が多い。冤罪を防ぐために、ウソの自白が生み出される警察の取調べをすべて録音・録画し、検察官の手持ち証拠は、被告人に有利な証拠も含めてすべて開示すべきだ」と訴え、国民救援会が求めている緊急改善要求を紹介。さらに、今回の裁判が殺人事件であることをあげて、「大きな事件をたった4日間で審理することにも問題があるが、被告人に有利な証拠が見つかっても、裁判の途中で出すことができない手続は、被告・弁護側に大変不利になる、直ちに改善すべきだ」と、制度の問題点を厳しく指摘しました。

 裁判員裁判に対する市民の関心は高く、58席の傍聴券を求めて初日だけで2382人、4日間で6977人が列をつくりました。新聞・テレビでも公判の様子を大きく取り上げ、国民救援会の宣伝行動も報じられ、瑞慶覧事務局長がインタビューに応じました。
 国民救援会はこれまでに裁判員制度学習会を約250回、延べ約7千人が参加して行いました。また、全国の裁判所のうち49裁判所に対し、適正な運用を求める要請を行い、街頭での宣伝行動にもとりくみました。10月には自由法曹団と共同で、冤罪を生まないための刑事裁判の原則を普及するためのパンフを作成します。ひきつづき、国民の司法参加の積極的意義を生かし、誤判を生まない制度改善めざし、全国で宣伝・学習・傍聴活動をすすめます。

大阪でも事件当事者らが宣伝  

 8月3日は関西の冤罪当事者などで組織する「たんぽぽの会」と国民救援会のメンバー30人も大阪地裁前で宣伝を行いました。6月に上告棄却された奈良・えん罪香芝強制わいせつ事件・中南源太さんの母親などが「私たちのような冤罪犠牲者を二度と出さないでください」と訴えました。

数字で見る人権ァ々駝運該  

 国民の人権と民主主義を守るうえで「人権の砦(とりで)」として重要な役割を担っている最高裁判所。
 その最高裁の裁判官が適任であるかどうか、主権者である国民が直接チェックし、不適任な裁判官をやめさせる制度が、国民審査制度です。
 最高裁の裁判官は、内閣が任命し、その他の全国の裁判官は、最高裁が指名した名簿によって、内閣が任命します。
 国民審査制度は、憲法(79条)で保障されたもので、任命後、最初の総選挙の際に国民が審査し、直接投票を行います。投票の結果、「罷免(ひめん)を可とする(×印)」票が投票数の過半数を超えた裁判官は、罷免(リコール)されます。その後も10年ごとに同様に審査をします。

 それでは、この国民審査の結果は、私たちの意思を正しく反映しているのでしょうか。
 今まで20回の国民審査が行われ、148人の最高裁裁判官がその対象となりましたが、罷免された裁判官は1人もいません。「罷免を可とする」票の割合がもっとも高かったものが72年国民審査での下田武三裁判官の15・2%で、近年では10%を下回っています(グラフ 法数字の上では9割を超える人が「信任」していることになります。
 では、国民が裁判官に信頼を置いているかといえば決してそうではありません。08年に中央調査社が発表し、時事通信が報道した「『議員、官僚、大企業、警察等の信頼感』調査」で、裁判官が信頼できるかどうかを5段階で回答する世論調査があります。
 グラフ△鮓て下さい。
 この調査で、裁判官への信頼感に対して「5点(大変信頼できる)」をつけた人は7・7%、「4点」をつけた人は23・0%に過ぎません。つまり裁判官を信頼している人は30・7%と3割程度にとどまっています。それなのに「国民審査」では9割以上の人が「信任」票を投じていることになります。
 この2つの結果には大きなギャップがあります。

 なぜ、こういったことが起きるのでしょうか。2つのことが考えられます。
 1つ目は、何より国民審査制度の意義を知らせる活動や、審査の判断に用いるべき資料の提供がほとんど行われていないという問題です。
 国民の理解を深めるために、最高裁や選管が国民にわかりやすい判断材料を積極的に提供することが必要です。
 もう1つは、国民審査の投票方法の問題です。
 たとえば、やめさせたい裁判官には「×」印をつけなければなりません。もし判断に迷い、何も記入しないまま空白で投じたものは「信任」、「○」などをつけたものは無効票とされます。対象となる裁判官についての判断材料が十分でない現状では、空白、つまり、「信任」票が増えてしまう結果になってしまいます。
 ちなみに第1回の国民審査が行われたときに、このような審査のやり方に異議が出され、裁判となりました。52年に最高裁はこの方式を容認する判決を出しましたが、国民審査の当事者である最高裁が、まさに「我が身かわいさ」で出した判決というほかありません。
 また、審査対象となるすべての裁判官が1枚の用紙に載っているため、個別の裁判官ごとの棄権ができないという問題点も、以前から指摘されています。
 なお、投票方法について、国民救援会が参加している選挙運動の権利を守る共同センターは、投票の記載方法を、「信任」、「不信任」、棄権に区分できるように変更することを求めています。

 今度の総選挙と同時に行われる国民審査は、裁判員制度が始まり、司法に対する国民の注目が集まっているなかで行われます。今度の審査では、9人の裁判官が対象となっています(本紙7月25日号参照)。
 国民審査の意義を広く知らせて、「憲法守らぬ裁判官に『×』を」の声を大きく広げましょう。

東電OL殺人事件 ゴビンダさんの妻・ラダさんの訴え  

 ネパール人のゴビンダ・プラサド・マイナリさんが東京高裁に再審を申し立てている東電OL殺人事件。7月9日、ゴビンダさんの妻・ラダさんが同高裁を訪れ、要請文を提出しました。その一部を紹介します。

 東京高裁裁判官様へ

 私は、横浜刑務所に服役している夫に会うために6月24日、ネパールからやって参りました。今回の来日で7回目となります。夫を支援する会のおかげで夫と会う機会をもつことが出来たことは嬉しいことです。しかしまた刑務所の面会室で自分の夫の顔を見るとき、この上なく悲しくもあります。
 夫は12年前、犯してもいない罪で逮捕されました。私たち家族は驚きとともに言い尽くせぬ苦しみに陥りました。夫の両親と幼い子どもたちを世話する日々を過ごしてきましたが、あと何年このような境遇に耐えていかねばならないのか分かりません。夫の父は、自分の息子はいつ戻ってくるのかと待ちわびながら2年前に亡くなり、高齢で持病を抱える母は、息子の顔をもう一度見たいと神様に祈って暮らしております。夫が日本に出掛けるとき、まだ幼かった娘のミティラとエリサは今、大きく成長し学業を修めています。娘たちは、父は無実であるから、いつか必ず一緒に暮らすことが出来ると信じております。

 菅家さんに対し、東京高裁が最新の方法による鑑定の結果、彼が犯人ではないと認めたことを聞きました。夫もまた同様に無実の人間のひとりです。夫は無実であり、これは冤罪なのです。
 夫に面会すると彼がいつも訴えることは、自分は神様に誓って悪いことはやっていない、自分は無実であり、地裁が下した無罪判決を覆して無期懲役とした高裁は間違っている、再審によって審理してもらえれば無実が明らかになるだろう、ということです。

 高裁の裁判官の皆様、どうか夫に対し無実を証明する機会をお与えください。皆様の公正なご判断により誤った判決を正し、夫を自分の故国ネパールに戻して下さることを望むとともに、またそうなることを固く信じております。

足利事件で誤判の究明求め1都6県が要請  

 DNA型の再鑑定の結果、17年半拘置されていた菅家利和さんの無実が明らかになった栃木・足利事件で、東京高裁は6月23日、再審開始決定を行いました。しかし、東京高裁は、菅家さんと弁護団が求めた、事件当時のDNA型鑑定を行った警察庁科学警察研究所の技官などの証人尋問を行わず、なぜ冤罪を生んだのか、その真実究明を避けました。
 再審開始決定を受け、今秋にも再審公判が宇都宮地裁で開かれます。7月23日、国民救援会栃木県本部をはじめ1都6県の26人は、地裁に対し徹底した審理を行うよう求めて、宣伝・要請を行いました。
 要請の冒頭、地元栃木県本部の石井事務局長が応対した訟廷管理官に要請書を手渡し、「再審公判で菅家さんと弁護団が求める証人尋問などを行い、徹底した誤判の真相解明に努めるとともに、裁判所自らの責任を明確にして国民の信頼にこたえよ」と訴えました。つづいて各県の代表者が要請書を提出し、それぞれ意見を述べました。群馬県本部の兼松事務局長は、「ウソの自白がなぜ起きるのか。真相を究明してほしい」。埼玉県本部の小林事務局長は、「裁判所は、警察の違法捜査を追認した責任がある。誤判の検証を」などと訴えました。
 報道によると、8月7日、裁判所、検察官、弁護団での三者協議が行われました。弁護団は、誤判の原因解明のため、事件当時に科警研が行ったDNA型鑑定のデータ開示や、技官の証人尋問を求めました。ひきつづき9月4日にも三者協議が行われる予定です。
 検察庁は、再審公判で無罪を求め、誤判原因の追及を行わせずに、裁判の幕引きを狙っています。
 「徹底した審理を行え」との声を裁判所に集中しましょう。
〈徹底審理要請先〉〒320―8505 宇都宮市小幡1―1―38 宇都宮地裁・佐藤正信裁判長

大阪・東住吉冤罪事件が再審請求  

 大阪・東住吉冤罪事件で無実を訴えつづける朴龍晧さん(大分刑務所に拘禁)が7月7日に、同じく青木惠子さん(和歌山刑務所に拘禁)が8月7日に、大阪地裁に対し、裁判のやり直しを求めて再審請求を行いました。
 事件は、1995年7月、大阪市東住吉区で発生しました。青木さんの自宅が火事となり、入浴中の長女が逃げ遅れて亡くなりました。警察は、青木さんと内縁の夫・朴さんが、長女の保険金を目当てに、自宅のガレージにガソリンをまいて放火し殺害したとして逮捕しました。
 火をつけたとされるライターや、車からガソリンを抜いたとされるポンプ等も見つからず、2人の犯行であることを示す証拠は何もありませんでしたが、裁判所は、強要された「自白」によって、2人を無期懲役とし、06年に刑が確定しました。
 今回の再審請求にあたり弁護団は、車から漏れたガソリンが気化し、気化ガソリンが風呂釜の煙突に吸い込まれるように流れ、風呂釜の種火に引火したという鑑定などを新証拠として提出し、火災原因が放火ではなく事故によるものであることを明らかにしました。

東京・町田痴漢冤罪事件のAさんが収監  

 昨年12月に最高裁で1年6月の実刑が確定した東京・町田痴漢冤罪事件のAさんが7月23日、東京地検立川支部に出頭し収監されました。今年2月に出頭命令が出されていましたが、直後に大腸がんが発見され、手術し、延期されたものです。
 当日は朝から70人以上の支援者が駆けつけました。「救う会」、国民救援会都本部や支部、大阪の堺・美木多応援団、学生時代の仲間でつくる町田冤罪事件糾(ただ)す会などから激励のあいさつが続きました。
 Aさんは「真実を求めて裁判をたたかうとどうして実刑にされるのか、理解できない。事実と証拠を無視した裁判は納得できない。必ず健康な体で出てきて真実を明らかにしたい」とあいさつしました。ご家族も声をつまらせながらあいさつし、今後の支援を訴えました。
 最後に検察庁まで全員で歩き、Aさんは家族と最後の抱擁をかわして地検に入りました。
   
 救う会と国民救援会は、東京地検立川支部と立川拘置所に対し、大腸がんの半年ごとの検診を主治医のいる病院で実施すること、東京に近い刑務所に服役させることを要請しました。

「自由で公正な選挙を」 共同センターが宣伝  

 総選挙(8月18日公示、30日投票)にむけて、自由で公正な選挙を実現しようと、全労連、自由法曹団、国民救援会で構成する選挙運動の権利を守る共同センターは8月4日、東京・JR御茶ノ水駅前で宣伝行動を行いました。全労連の今井文夫国民運動局長、自由法曹団の鷲見賢一郎幹事長、国民救援会の瑞慶覧淳事務局長らが市民に訴えました。
 「『いまの政治を変えたい』との国民の声が大きく盛り上がるなか、総選挙が行われます。しかし、公職選挙法のもとでは、ビラに候補者名を記載できない、宣伝カーが自由に出せない、戸別訪問が禁止されるなど、政党や候補者が政策を知らせる機会が制限されており、国民の自由な運動が不当に抑圧されています」
 「政党の政策などが書かれたビラを配布しただけで、住居侵入や国家公務員法違反などの理由で逮捕され、裁判にかけられる事件が起きており、国連自由権規約委員会からも、不当に運動を制限している法律を撤廃せよとの勧告が出されています」
 ビラを受け取った市民が、「なぜ日本では、選挙のときに警察が厳しく取り締まるのか」と話しかけ激励する姿もありました。

「裁判員制度改善を政策に」 各政党へ要請書送付  

 総選挙を前にして、国民救援会中央本部は8月4日、冤罪を生まないために、裁判員制度について緊急改善を求める要請書を、自民党、公明党、民主党、共産党、社民党、国民新党、新党日本の各党に送付しました。
 要請書では、「裁判員裁判は、基本的に全有権者を裁判員選任の対象としているために、これに対する国民の関心や不安に明確に応える責務を各政党も負っている」と指摘しています。
 そのうえで、現在の裁判員制度には、被告人の防御・弁護権の保障や誤判の防止という点で重大な問題点があり、「国民の司法参加という裁判員制度本来の積極的意義を実現するためにも、現状の裁判員制度が抱える問題点を直視」し、それを改善することが必要だと訴えています。
 具体的には、国民救援会が裁判員制度の施行にあたり求めてきた5点の緊急改善要求(*)をふまえ、「人権擁護と公正な裁判の実現にむけた方針を政策(マニフェスト)に掲げ、その実現のために尽力する」よう強く求めています。

*5点の緊急改善要求
ー萃瓦找當の全面的可視化(録音・録画)
検察官手持ち証拠の全面的開示、少なくとも検察官手持ち証拠のリストの開示
「裁判員であった者」に対する守秘義務規定の削除
じ〇,開示した証拠の目的外使用禁止規定の廃止
ジ判前整理手続終了後に弁護人の新たな立証を制限する規定の廃止

3人の死刑執行に対して国民救援会で抗議声明  

 法務省は7月28日、3人の死刑を執行しました。森英介法務大臣が昨年9月に就任以来、3回目の執行で、計9人となりました。
 国民救援会は翌29日、鈴木亜英会長名で、抗議声明を発表しました。声明では、「死刑制度の存廃に関する国民的議論を尽くさないままに、現在の司法が治安強化の立場から厳罰主義に傾斜し、死刑判決を増加させているという異常な現状のもとで、国際人権章典の精神や死刑廃止の国際的な流れからの内外の厳しい批判に逆行する」と、厳しく抗議しています。昨年10月には国連自由権規約委員会から「死刑廃止を前向きに考慮」するよう日本政府へ勧告が出されたばかりです。声明は最後に、「当面、死刑の執行を停止し、死刑廃止条約を批准して、死刑を廃止すること」を求めています。

群馬・警察裏金告発大河原事件で「守る会」結成を確認  

 群馬県警の裏金づくりに抗議したことで、公務執行妨害をデッチ上げられ逮捕・勾留されたうえ、懲戒免職処分にされた元警部補・大河原宗平さんが、現職復帰を求めて闘っています。
 7月31日、愛媛県警の裏金問題を実名で告発し、県警の不当な処分とたたかった元巡査部長の仙波敏郎さんらを招き、報告集会を開き、125人の参加で大成功しました。集会は、弁護団が主催し、県労会議や大河原さんが所属する県自治体一般労組、国民救援会県本部が後援。
 仙波氏は講演で、「警察本来の任務とかけ離れた『犯罪組織』となっている日本の警察を正すために大河原さんを現職復帰させなければなりません。最後までみなさんの支援を」と呼びかけました。
 最後に、大河原さんが現職復帰するまでたたかい続ける決意を述べ、「守る会」の結成と、次回10月2日の裁判への参加を確認しました。

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