日本国憲法と世界人権宣言を羅針盤に、弾圧事件・冤罪事件・国や企業の不正に立ち向かう人々を支える人権団体

09年7月5日号

09年7月5日号  

足利事件で再審開始決定  

 無実の罪で17年半の間身柄を拘束されていた菅家利和さんが裁判のやり直しを求めていた栃木・足利事件で、東京高裁(矢村宏裁判長)は6月23日、再審を開始する決定を出しました。しかし裁判所は、菅家さんと弁護団が要求していた誤判の原因究明のための証人尋問や証拠調べなどを行わず、決定文のなかでも誤判の原因について言及しませんでした。

 午前9時45分、菅家利和さんと弁護団は、支援者の激励を受けながら、決定書を受け取るため東京高裁に入りました。菅家さんは拍手をする支援者に、笑顔で応えました。
 10時に決定書を受け取った弁護団が、支援者と報道陣が待つ玄関前に現れると、「早期幕引き 再審開始」「誤判の解明拒否」と書かれた垂れ幕を示し、集まった支援者に決定内容を報告しました。
 直後に記者会見が行われ、菅家さんは硬い表情で、「嬉しいことは嬉しい。少しは気が晴れた」と語りました。誤判の原因を究明しようとしない裁判所の姿勢について聞かれると、「(ただ無罪と言われても)納得できません。裁判官にも、謝っていただきたい」と語気を強めました。

 決定は、裁判所が行った2人の鑑定人によるDNA型の再鑑定の結果、「申立人(菅家さん)は本件の犯人ではない可能性が高い」と認めました。「自白」についても、DNA型再鑑定の結果にもとづけば、「信用性に疑問を抱かせるのに十分な事実といえる」と認め、「他に申立人が本件の犯人であると認めるに足りる証拠はない」として、再審請求を棄却した宇都宮地裁の決定を取り消し、再審を開始するとしました。
 菅家さんを有罪とした根拠は、警察に強要されたウソの「自白」と、これを支える当時の誤ったDNA型鑑定でした。鑑定の信用性が崩れたことで「自白」も支えを失い、菅家さんが犯人ではないことが証明されました。
 今回実施した再鑑定のうち、弁護団が推薦した筑波大学の本田克也教授の鑑定では、菅家さんと犯人のDNA型は一致しないとする結論と合わせて、有罪の根拠とされた、事件当時の科学警察研究所におけるDNA型鑑定は、鑑定方法そのものに誤りがあっただけでなく、鑑定結果の判断にも問題があったことを明らかにしています。菅家さん自身も、本田鑑定を採用して、当時の鑑定の誤りを明らかにすることを望んでいました。しかし決定は、「本田鑑定の信用性について判断するまでもない」として、科警研のずさんな鑑定の問題を不問にしました。
 また、今回裁判所が再鑑定を行った理由について決定は、「DNA型鑑定の重要性及びDNA型鑑定に関する著しい理論と技術の進展の状況などにかんがみ」としました。しかし、弁護団は最高裁に係属していた12年前から再鑑定を要求しており、宇都宮地裁での再審請求審では6年もかけて審理したにもかかわらず、結局再鑑定を拒否しました。決定は、再鑑定の実施を拒み続けた裁判所自身の責任には一言も言及していません。
 「自白」についても、なぜウソの「自白」がなされ、なぜ裁判所がウソの「自白」を信用したのかについて言及しませんでした。

 裁判所の前では、支援者が待ち受けていました。裁判所から出てきた菅家さんは、「どうもありがとう、お世話になります」と笑顔で支援者と握手を交わしました。
 再審開始決定が確定するため、宇都宮地裁で再審公判が開かれます。検察側は無罪を論告することが予想され、誤判の検証を行うことなく無罪判決が言い渡される可能性があると弁護団は危惧(きぐ)しています。
 国民救援会は同日、鈴木会長名で声明を発表し、「きたるべき再審審理において、誤判の徹底した真相解明を要求する」と表明し、「今後の冤罪・誤判を防ぐために、取調べ全過程の可視化をはじめ、裁判員になり得るすべての国民に対して、『疑わしきは被告人の利益に』という刑事裁判の目的・原則を普及する啓発活動を、さらに積極的に展開する」と決意を明らかにしています。
〈真相究明要請先〉
 〒320―8805 宇都宮市小幡1―1―38 宇都宮地裁

取調べ可視化法案の徹底審議を求める緊急要請行動  

 栃木・足利事件で、犯人でもない菅家利和さんは暴力的な取調べを受け、ウソの「自白」をさせられ、有罪とされました。ウソの「自白」をさせないために、改めて取調べの全面可視化(録音・録画)を求める世論が広がっています。
 国会では、取調べの全面可視化法案が4月に参議院で可決されましたが、衆議院では審議をされないままです。このような事態に対し、国民救援会中央本部は6月19日、法案の徹底審議・可決を求めて、衆議院の全法務委員へ緊急の要請を行いました。この要請には、4県本部の代表など12人が参加しました。
 参加者は、手分けをして、衆議院議員会館の各委員の控え室を回り要請しました。足利事件について話すと、いずれの議員秘書も関心を示し、訴えを聞きました。民主党のある議員秘書は「可視化法案のことですね。(成立に向けて)がんばります」と回答。公明党の議員への要請では、06年に公明新聞に掲載された全面可視化を求める「主張」を提示し要請すると「しっかり頑張ります」と回答しました。
 法務委員会での徹底審議・可決を求める声を法務委員会へ届けましょう。
〈要請先〉〒100―0014 千代田区永田町1―7―1 衆議院法務委員会・山本幸三委員長

再審無罪となった死刑事件の弁護団が裁判員へ“お願い”  

 裁判員制度施行にあたって、これまで再審無罪となった死刑確定4事件(免田、財田川、松山、島田)の弁護団有志32人(現在、健在な元弁護人全員)は、誤判を防ぐためのアピール「8つのお願い」を6月22日、発表しました。
 発表にあたって開かれた記者会見で、岡部保男弁護士は、アピールを発表した目的について、「なぜ誤判が生じたのか、誤判を防止するためには何が必要かという点をまとめ、広く裁判員になる国民に伝えること」にあると説明しました。
 「8つのお願い」は、 嵌鏐霓佑鰐戯瓠廚箸いα按鵑悩枷修卜廚燹↓検察官に有罪の立証責任がある、M罪の確信が持てなければ「無罪」とする、ぐ稻,柄楮困篆用できない証拠には「No(ノー)」と意見を述べる、ゼ萃瓦戮賄正であったかを確認する、Υ嫩蠅賄正であるかどうかを十分確認する、有罪・無罪の判断は被害者の心情と離れ、証拠から判断する、論告・最終弁論、とくに弁護人の弁論に耳を傾ける、の8点です。
 アピール全文は、下記のホームページで見ることができます。
http://www.enzaiboushi.com

福岡・九州低温輸送裁判で福岡地裁小倉支部が不当判決  

 会社を解散したのは労働組合つぶしが目的で解雇は無効と建交労九州定温輸送分会の5人の組合員がたたかっていた事件の判決が6月11日、福岡地裁小倉支部(岡田健裁判長)で言い渡され、親会社ワイケーサービスに対し、各原告に100万円の慰謝料と10万円の弁護費用の支払いを命じたものの、地位の確認を認めない不当なものでした。
 判決は、会社側が従業員に組合員と口をきかないよう命じたり、具体的な経営改善策をとっていないことなどから、会社の解散は労組排除の意図によるものであり、解散と解雇は不当労働行為に該当するとともに、故意による不法行為を構成すると認め、賠償の支払いを命じました。しかし、解散した会社の事業が、資本関係のない別会社に引き継がれており、親会社に継続されていないことなどを理由に地位の確認は認めませんでした。
 原告団は、「解雇を容認した不当判決ですが、そのなかで親会社の不当な目的での子会社解散には一定の歯止めをかける内容も含まれている」との感想とともに、「労働組合を排除する理由で会社を解散、組合員を解雇することは許されない」と語りました。原告、会社ともに控訴しました。
(北九州総支部)

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