日本国憲法と世界人権宣言を羅針盤に、弾圧事件・冤罪事件・国や企業の不正に立ち向かう人々を支える人権団体

09年7月25日号

09年7月25日号  

日弁連が取調べの全面可視化を求める集会  

 富山・氷見(ひみ)事件、鹿児島・志布志事件、そして栃木・足利事件と、警察が取調室で人権無視の自白強要を行い、冤罪を生んでいる実態が次々と明らかにされています。裁判員制度がスタートしたもとで、日本弁護士連合会の主催で、取調べの全面可視化(録音・録画)を求める集会が7月4日、東京・弁護士会館で開かれ、269人が参加しました。

 集会ではジャーナリストの鳥越俊太郎さん、茨城・布川事件の桜井昌司さんが講演を行い、つづいて、元裁判官の安原浩さんを交えて、パネルディスカッションが行われました。足利事件の菅家利和さんは会場から電話をつなぎ、氷見事件の柳原浩さんは会場で、取調べ全面可視化の必要性をそれぞれ訴えました。

 鳥越さんは「ザ・スクープ」等のテレビ番組で冤罪事件や警察の裏金問題・権力犯罪などをとりあげているジャーナリスト。取材のなかでも警察がウソをつきつづけていることを暴露しています。警察が自ら交番を爆破し、共産党員を犯人にデッチ上げた菅生(すごう)事件、20人の無実の労働者が列車転覆の犯人とされた松川事件を、小学校から学生時代にかけて見てきた経験から、「警察はウソをつくだけでなく、デッチ上げをやるということを学んだ」と語りました。また、いずれの事件でも裁判所がその虚構を見抜けなかった事実を指摘し、「(日本の)司法制度というのは、根底から腐ってるんじゃないか」と懸念を表明しました。その上で、「警察・検察は、全面可視化にすると『日本の治安に影響を与える』と国民を脅している。しかし、検察が有罪を立証するための録画しか行わない一部可視化では意味がない。(自白の任意性が争われたときに)検証できる保証が必要」と、取調べの過程すべてを録画することに賛同の声を上げました。

 桜井さんは、「自白」を録音したテープが警察によって編集されたこと、すらすらと「自白」できるように何度も取調べられた経験を挙げ、警察・検察が全面可視化を拒否し、一部録画でごまかそうとしていることに対して、「これからも冤罪を作り続けると言ってるのと同じだ」と厳しく非難しました。
 柳原さんは、自身が取調べで、警察から「『はい』か『うん』しか答えるな」と言われたことなど、警察の思うままに調書が作られた実体験を語り、「取調べの全面可視化は絶対に必要だ」と強調しました。
 会場から電話をつないだ菅家さんも、取調官に受けた暴力を克明に語り、「もうどうでもいいや、となって自白してしまった」と当時の心境を語りました。
 元裁判官の安原さんは、「自白調書を安易に信用してはならない」としたうえで、調書に依存している今の裁判を批判しました。
 最後に、取調べの全過程の可視化実現を求めるアピールを採択しました。

最高裁判所裁判官国民審査  

 衆院選とあわせて、最高裁裁判官の国民審査が行われます。今回の国民審査の対象となっている9人の裁判官の略歴や、最高裁で関与した事件の判断を紹介します。資料も参考に、憲法を守らない、人権を守らない裁判官に「×」印(不信任)をつけましょう。なお、国民救援会の支援事件にかかわって、勝利判決・決定は「〇」、不当判決・決定は「●」で示しました。

最高裁長官
 竹崎博允(たけさきひろのぶ)
 第2小法廷
 裁判官出身 65歳

2008年11月25日任命
最高裁経理局長、最高裁事務総長、名古屋高裁長官、東京高裁長官などを歴任。国民から出された批判を検討しないまま、裁判員制度導入を推進した。

 那須弘平(なすこうへい)
 第3小法廷
 弁護士出身 67歳

2006年5月25日任命
〈判決・決定〉●北陵クリニック事件で不当決定/●えん罪高石小強制わいせつ事件で不当決定/●東住吉冤罪事件(朴さん)で不当決定/○大阪地裁所長オヤジ狩り事件で勝利決定/●蒲原沢土石流国賠裁判で不当決定/●明治乳業争議市川訴訟で不当決定/●冤罪香芝強制わいせつ事件で不当決定/小選挙区選挙で候補者届出政党と無所属候補者に対する選挙運動の差異を合憲/東京・「君が代」伴奏裁判で原告敗訴/両親が結婚していないことを理由に日本国籍を認めない国籍法は違憲/防衛医大教授痴漢事件で無罪

 涌井紀夫(わくいのりお)
 第1小法廷
 裁判官出身 67歳

2006年10月16日任命
〈判決・決定〉●スズキ思想差別裁判で不当決定/●冤罪御殿場少年事件で不当決定/●NTTリストラ東京訴訟で不当決定/○JMIU東武スポーツ争議で原告勝訴/中国人強制連行戦後補償裁判で原告敗訴/住基ネット違憲裁判で住民ら逆転敗訴/NHKの従軍慰安婦報道改編裁判で原告ら逆転敗訴/小選挙区選挙で候補者届出政党と無所属候補者に対する選挙運動の差異を合憲/両親が結婚していないことを理由に日本国籍を認めない国籍法は違憲

 田原睦夫(たはらむつお)
 第3小法廷
 弁護士出身 66歳

2006年11月1日任命
 日弁連司法制度調査会副委員長などを歴任。
〈判決・決定〉●北陵クリニック事件で不当決定/●えん罪高石小強制わいせつ事件で不当決定/●蒲原沢土石流国賠裁判で不当決定/●明治乳業市川訴訟で不当決定/○大阪地裁所長オヤジ狩り事件で勝利決定/●冤罪香芝強制わいせつ事件で不当決定/小選挙区選挙で候補者届出政党と無所属候補者に対する選挙運動の差異を違憲/東京・「君が代」伴奏裁判で原告敗訴/両親が結婚していないことを理由に日本国籍を認めない国籍法は違憲/防衛医大教授痴漢事件で有罪

 近藤崇晴(こんどうたかはる)
 第3小法廷
 裁判官出身 65歳

2007年5月23日任命
 最高裁首席調査官、仙台高裁長官などを歴任。
〈判決・決定〉●北陵クリニック事件で不当決定/●えん罪高石小強制わいせつ事件で不当決定/●蒲原沢土石流国賠裁判で不当決定/●明治乳業争議市川訴訟で不当決定/●冤罪香芝強制わいせつ事件で不当決定/両親が結婚していないことを理由に日本国籍を認めない国籍法は違憲/防衛医大教授痴漢事件で無罪

 宮川光治(みやかわこうじ)
 第1小法廷
 弁護士出身 67歳

2008年9月3日任命
 日弁連司法基盤整備・法曹人口問題等基本計画策定協議会座長などを歴任。
〈判決・決定〉●冤罪御殿場少年事件で不当決定/●NTTリストラ東京訴訟で不当決定/○JMIU東武スポーツ争議で原告勝訴

 櫻井龍子(さくらいりゅうこ)
 第1小法廷
 行政官出身 62歳

2008年9月11日任命
 労働省労政局勤労者福祉部長、労働大臣官房審議官、労働省女性局長などを歴任。
〈判決・決定〉●冤罪御殿場少年事件で不当決定/●NTTリストラ東京訴訟で不当決定/○JMIU東武スポーツ争議で原告勝訴

 竹内行夫(たけうちゆきお)
 第2小法廷行政官出身
 66歳

2008年10月21日任命
 小泉内閣時代に外務事務次官として、憲法違反の自衛隊のイラク派兵を推進した責任者。
〈判決・決定〉●町田痴漢冤罪事件で不当決定

 金築誠志(かねつきせいし)
 第1小法廷
 裁判官出身 64歳

2009年1月26日任命
 司法研修所長、大阪高裁長官を歴任。
〈判決・決定〉●冤罪御殿場少年事件で不当決定/●NTTリストラ東京訴訟で不当決定/○JMIU東武スポーツ争議で原告勝訴

 最高裁の主な判決

 前回の国民審査(2005年9月)以降、国民救援会の支援事件に対する最高裁の主な判決等。○数字は第1〜第3の小法廷名。

不当判決・決定

2005年 岩手・国立医療病院人工呼吸器停止事故藤村裁判
2006年 鹿児島・大崎事件
    愛知・団体生命保険裁判
    埼玉・政党助成金訴訟
    大阪・東住吉冤罪事件(朴さん)、(青木さん)
2007年 東京・亀戸交番暴力警官事件
    神奈川・デパート地下痴漢えん罪事件
    京都・長生園不明金民事事件
2008年 大分・選挙弾圧大石市議事件
    宮城・北陵クリニック事件
    静岡・スズキ思想差別事件
    静岡・袴田事件
    大阪・えん罪高石小強制わいせつ事件
    長野・えん罪ひき逃げ事件
2009年 東京・町田痴漢冤罪事件
    長野・蒲原沢土石流国賠訴訟
    千葉・明治乳業争議市川訴訟
    静岡・冤罪御殿場少年事件
    NTTリストラ東京訴訟
    奈良・冤罪香芝強制わいせつ事件

勝利判決・決定

2006年 高知・サッカー落雷事故北村裁判
2008年 大阪・大阪地裁所長オヤジ狩り事件(少年審判)E豕・沖田国賠訴訟
2009年 栃木・JMIU東武スポーツ争議

 「憲法の番人」「人権の砦」であるべき最高裁。しかし、これまでの最高裁は、多くの裁判で国や大企業を擁護し、言論弾圧や冤罪を追認してきました。本来の役割を果たさせるためにも、「憲法を守らない裁判官」に「×」印を付け、国民の意思を示すことが必要です。
 国民審査に関する運動は、選挙運動とは異なり、虚偽宣伝以外の制限はありません。街頭宣伝や集会などで、国民審査の意義を広く知らせましょう。

 現行の国民審査では、対象となる裁判官ごとに、不信任とする場合のみ「×」印を付けます。何も書かない場合は信任と見なされ、その他の記入は無効とされます。本来であれば、信任・不信任・棄権の意思が明らかになるような投票方法にすることが必要です。
 なお、信任か不信任かの判断がつかない場合は、投票用紙を受け取らないか、受け取った投票用紙を返します。

 最高裁裁判官の国民審査は、憲法(79条)で定められた大切なもので、主権者である国民が、最高裁を監視し、適任でない裁判官をやめさせる制度です。
 内閣が任命した最高裁裁判官を、任命後初めて行われる衆院選の際に国民が審査します。その後は10年ごとに同様に審査します。
 投票の結果、「不信任」票が投票数の過半数となった裁判官は、罷免(リコール)されます。

足利事件特集  なぜ裁判は誤ったのか  

足利事件とは

 日本最古の学校「足利学校」で知られる栃木県足利市。
 同市では、1979年、84年と、いずれも幼い女の子が誘拐され、殺される事件が発生し、未解決のままとなっていました。住民の不安は募り、警察への批判が強まるもとで足利事件が起きました。

●女児、殺される

 90年5月12日夕方、足利市内のパチンコ店で遊んでいた、当時4歳の女の子が行方不明となり、翌13日、近くの渡良瀬川河川敷で遺体となって発見されました。女の子の首には絞めた痕があったことから、警察は誘拐・殺人事件として捜査を始めます。
 しかし1年経っても犯人は捕まらず、2件の未解決事件にくわえて警察への批判が強まっていきます。元警察幹部は「女児を狙って5年ごとに起きた事件が解決できず、プレッシャーを感じていた」と当時を振り返ります(東京新聞)。

●菅家さん、有罪に

 警察は、聞き込みなどから、幼稚園のバス運転手・菅家利和さん(当時45歳)をマーク。菅家さんの捨てたゴミを違法に「押収」し、そこに付いていた体液と女の子の下着に付いていた体液のDNA型が一致するかどうかを鑑定するため、警察庁科学警察研究所へ依頼します。両者のDNA型が「一致する」との鑑定結果に警察は飛びつきます。事件から1年半後の91年12月、菅家さんを強制連行し、「科学的鑑定があるんだ」と「自白」をさせ、逮捕しました。
 菅家さんは法廷でも「自白」を維持しましたが、第6回公判で覆し無実を主張。しかし宇都宮地裁は「自白」とDNA型鑑定を証拠に無期懲役を言い渡し、東京高裁、最高裁もそれを追認。菅家さんは収監されます。

●再審開始へ

 「私はやっていない」。菅家さんは宇都宮地裁に再審を申し立てますが、再審は認められず、東京高裁に即時抗告。ようやく再鑑定が認められ、DNA型は一致しないとの鑑定結果をうけ釈放を勝ちとりました。しかし逮捕から17年半のときが過ぎ去り、大切な人生は奪われ、菅家さんの無実を信じていた両親は亡くなっていました。
 6月23日、東京高裁は再審開始を決定。死刑・無期懲役事件では、島田事件以来22年ぶりに再審が確定し、今秋にも、宇都宮地裁で再審公判が行われます。

 冤罪を引き起こすもっとも大きな原因は、密室で作られるウソの「自白」です。そこで国民救援会は、取調べ全過程の録音・録画(可視化)の実現を求めています。
 足利事件もやはりウソの「自白」が、誤判の原因でした。そしてその「自白」を支えた証拠がDNA型鑑定。「自白」に依存した捜査、裁判の問題点を検証します。

 「やっていない」―何度も犯行を否定する菅家さんの髪をつかみ、足を蹴り、刑事は自白を迫りました。
 子どもの頃から気が弱かった菅家さんは恐怖を抱き、取調べが始まって13時間後、「信じてくれないならどうでもいい」と「自白」。他の未解決事件についても責められ、「自白」しました。裁判になっても当初は、「傍聴席に刑事がいるんじゃないか」と恐怖が消えず、罪を認めました。
 しかし菅家さんの「自白」には犯人しか知り得ない事実(「秘密の暴露」)はなく、他の証拠と食い違う点もありました。

「自白」との矛盾

 「自白」によれば、菅家さんはパチンコ店の駐車場で女の子に声をかけ、自転車に乗せて、当時大勢の人がいた渡良瀬川運動公園を通り、公園内に自転車を停め、その後、殺害し、河川敷に遺体を捨てたことになっています。
 当時、公園の堤防に沿った芝生でゴルフの練習をしていた男性は、ボールが歩行者に当たらないように周囲を終始注意していましたが、菅家さんを目撃していません。
 公園内の野球場で練習をしていた、菅家さんとも面識がある男性は、菅家さんが通ったとされるところが見える位置にいましたが目撃していません。また、菅家さんが自転車を停めたと「自白」した場所はボールが飛んでいく可能性があるので停めた人には常に声をかけていますが、やはり菅家さんを見ていません。
 公園の外周コースでマラソンの練習をしていた男性は、菅家さんが「自白」で自転車を停めたとされる場所を、4、5回走りましたが、自転車を目撃していません。

「自白」との矛盾

 「自白」によれば、午後7時30分ころに遺体を遺棄し、灯りもなく、高さ3辰發△覦韻箜(かや)、いばらの藪の中を約40辰睥イ譴疹貊蠅肪絨瓩鬚箸蠅北瓩蝓∈討嗅鵤僑悪知イ譴真緤佞帽圓着衣を投げ棄て、そこから約150知イ譴申蠅砲△觴転車を置いた場所に戻って、自転車でフードセンターに行き、買い物をしたことになっています。
 警察の検証によれば、遺体を遺棄した場所から自転車のある場所まで6分7秒かかったとなっています。しかし、検証は葦などが枯れた冬に行われており、当時と同じ時期ではその3倍時間がかかることが実験などでわかりました。時間が3倍かかると、フードセンターの営業時間に間に合わず買い物ができません。また、フードセンターのレジの記録には、菅家さんが買物をした記録はありませんでした。なお、裁判所は、現場の検証を実施しませんでした。

「自白」との矛盾

 「自白」では、立っていた女の子の正面から首を両手で絞めて殺したことになっています。
 再審請求の際に弁護団が提出した山形大学・鈴木教授の鑑定によれば、遺体の状況から、殺害方法は、「自白」と異なり首を後ろから手で絞めたもので、溺水のあとが見られることから水溜りなどに顔をつけられた可能性があるとしています。

 このような「自白」の矛盾や問題点を警察・検察・裁判所は無視したのです。

足利事件と名張事件

 無実の死刑囚・奥西勝さんが再審を求めいている名張毒ぶどう酒事件。一度は、ぶどう酒に混入された毒物が違うとの最新の科学的鑑定によって再審開始が決定されました。しかし異議審で名古屋高裁刑事2部は、奥西さんが、死刑となるような重大事件で、逮捕の前に「自白」していることを重視し、科学的鑑定を否定し、再審を取り消しました。
 足利事件でも、菅家さんは重大な事件で、逮捕の前に「自白」しています。しかし今回、最新の科学的鑑定(DNA型鑑定)によって、「自白」が信用できないとされました。
 名張事件弁護団は7月2日、足利事件の開始決定をうけ、「自白に依拠した事実認定がいかに危険であるかを明確にした」と指摘し、足利事件の教訓を踏まえた判断を求める補充書を最高裁に提出しました。

足利事件パンフレット作成委員会作成「えん罪足利事件・無実の人を無罪に!」より転載(一部編集)

 「幼女殺しで元運転手逮捕―DNA決め手、全面自供へ」―菅家さんが逮捕された日の読売新聞は大きな見出しをかかげました。「自白」を支えたのは、「科学的な証拠」であるDNA型鑑定でした。
 足利事件で科警研が鑑定をしたのが91年8月〜11月、警察庁がDNA型鑑定に関する指針を発表したのは翌年4月のことでした。当時、警察の内部でもDNA型鑑定について試行錯誤の状態にあったのです。
 当時の鑑定の精度は、千人に1・2人が一致するという程度で、足利事件で現場に残された体液と同じ型をもつ男性は足利市内だけで約516人(性犯罪が可能な年齢をその半分としても約258人)が「該当」し、これに近隣の地域も含めればその対象者は大きくふくらみます。
 冷静に考えれば、DNA型鑑定の結果は、菅家さんが犯人である可能性以上の意味はもたず、決して「決め手」となるようなものではなかったのです。
 今回再鑑定を依頼された本田教授が、当時の科警研と同じ方法で鑑定したところ、DNAの型は一致しませんでした。鑑定の精度の問題だけでなく、鑑定そのものが誤っていたのです。

 今回、DNA型鑑定の誤りが冤罪を生む原因となりましたが、「科学的鑑定」は信頼度が高いとされているだけに、誤った場合、冤罪を生む恐れがあります。
 宮城・北陵クリニック事件では、守大助さんを有罪とした鑑定を弁護団が検証しようとしたところ、すでに警察の鑑定で資料は全部使用されて再鑑定ができませんでした。これでは、鑑定が正しいのかどうか検証できません。このように再鑑定ができない場合は、その鑑定を証拠として認めないとすべきです。
 科学的鑑定を採用するにあたり、次のような点が求められます。
〃抻 Ω〇,蓮鑑定がその後に検証(再鑑定)できるように鑑定で使った資料を適正に保存しておくこと
∈枷十蠅蓮∧杆鄰弔再鑑定を求めた場合は実施する、あるいは弁護団独自の鑑定に協力すること

 なぜ、菅家さんの無実がもっと早く明らかにならなかったのでしょうか。
 足利事件の弁護団は、最高裁の段階から、DNA型の再鑑定の実施を裁判所に求めていました。しかし、最高裁は再鑑定を実施しないままに、2000年に菅家さんの訴えを棄却しました。
 再審請求を受けた宇都宮地裁も、5年間も審理を行いながら、弁護団の再鑑定の要求を拒否しつづけ、再審を認めませんでした。
 「最高裁や地裁が再鑑定を実施していればもっと早く菅家さんを救い出せた」と批判が出るのも当然です。
 ここから引き出せる教訓は、裁判所が冤罪の訴えに耳を傾け、必要な証拠を十分調べることの必要性です。
 実は、足利事件と同じように、裁判所が犯人と決めつけ、無実を訴える被告人や弁護団が求める証拠調べなどを行わないまま有罪としている事例はいくつもあります。
▼長野・えん罪ひき逃げ事件
 塚田学さんは、一審有罪判決を不服として東京高裁に控訴しました。弁護団は、「ひき逃げ」された遺体の状況から、塚田さんの車でひかれたとするには不可能であるとの新しい科学的鑑定を出しました。しかし、裁判所はその証拠を調べないまま、1回の公判で結審し、控訴を棄却しました。
▼奈良・冤罪香芝強制わいせつ事件
 中南源太さんは一審有罪判決を不服として控訴。弁護団が、中南さんの冤罪を示す証拠の取調べを求め、それに検察官も同意したにもかかわらず、大阪高裁は証拠を調べず、控訴を棄却しました。
▼東京・沖田国賠
 東京高裁は、沖田光男さんに痴漢をされたとする女性と、当時、携帯電話で通話していた男性(沖田さんの主張と一致する供述をしていた)の取調べを行わず、沖田さんの訴えを退けました。(この事件では、最高裁が、男性を調べなかったのは審理不尽として、東京高裁に差し戻しました)

足利事件と裁判員制度

 冤罪を生まないためには、被告人・弁護団の主張や証拠を十分に聞き、調べることが必要です。
 裁判員制度に伴い、弁護側の立証を制限する規定が設けられました。裁判の争点などを整理する公判前整理手続で決まった証拠以外、その後に弁護人が新たに証拠を提出することを制限するという内容で、非常に問題です。
 国民救援会は、緊急改善要求で、「被告人の防御権、弁護人の弁護権を侵害する公判前整理手続終了後の弁護人の立証制限規定を廃止する」よう求めています。

誤判原因の徹底的究明を
〈要請先〉〒320―8505 宇都宮市小幡 1―1―38 宇都宮地裁

●無実の人を救う再審の理念と現状

 足利事件を機会に、改めて再審のもつ意味と再審をめぐる状況について考えてみます。

 日本の裁判は、一審(地裁)、二審(高裁)、三審(最高裁)と3度の審理を受けることができます。それは、もし一審で誤って犯人にされても、二審、三審でそれを発見し、無辜(むこ)の人をけっして罰しないための仕組みです。しかしそれでも誤って有罪判決が確定した場合に裁判をやり直し、救済しようと設けられているのが再審です。
 戦前も再審制度はありました。しかし、「一人の犯人も逃さない」という必罰主義の考えから、無罪が確定した人に、検察が有罪を求めて再審を求めることができました(不利益再審)。
 戦後、日本国憲法は、「無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない」(39条)と、不利益再審を禁止し、有罪が確定した人が無罪や刑の軽減を求めるときにだけ再審ができるようになったわけです。そこには「無実の人は一人も罰しない」という考えがあり、再審は無辜の人を救済する制度であることがはっきりと示されました。

 しかし、当初の運用をみると、再審の理念とは遠いものでした。
 裁判所は、司法の権威を守ることに重点を置き、一度確定した判決を見直そうとはせず、再審は「針の穴にらくだを通すよりむずかしい」「開かずの扉」と言われ、ほとんど開かれませんでした。
 強盗殺人で無期懲役判決を受けた吉田石松さんは、50年間無実を訴え続けようやく再審の扉をこじ開け、無罪を勝ちとりました。冤罪を晴らすために一生を費やした吉田さんは「昭和の岩窟王」と呼ばれ、再審無罪の判決を聞いた9カ月後に亡くなりました。
 弘前大教授夫人殺人事件では、真犯人が名乗り出てきたにもかかわらず、裁判所は再審を認めませんでした。無実を訴えた那須隆さんは「むしろ刑事訴訟法から再審を削ってください。…余計に苦しまなければならない」と絶叫しました(那須さんは「白鳥決定」後に再審が開始され、無罪になりました)。

 固く閉ざされた再審の門を、冤罪を訴える多くの人たちが叩きつづけ、それが一つの決定を勝ちとりました。
 1975年5月20日、最高裁第1小法廷が白鳥事件に対して行った決定、「白鳥決定」です。最高裁は、再審請求は認めませんでしたが、決定のなかで、「疑わしいときは被告人の利益に」という刑事裁判における鉄則が再審においても適用されるとの新たな判断を示しました。それまでの再審で裁判所がとってきた、「疑わしいときは確定(有罪)判決の利益に」という立場を否定したのです。
 この決定も力にしながら、当事者・支援者・弁護団、日弁連などの大きなたたかいが展開され、相次ぎ再審開始・無罪を勝ちとりました(別表参照)。そのなかに、4人の死刑確定囚が含まれていたことは社会に大きな衝撃を与えました。

 ところが、90年代後半頃から、再審の流れへの犁嬶瓩強まり、再審を認めない事態が生まれました。
 そのような状況のもとでも、日産サニー事件、大崎事件名張毒ぶどう酒事件でいったんは再審開始決定を勝ちとりました。しかし不当にも3事件とも、その後再審開始決定が覆されました。
 そのせめぎ合いのなかで、布川事件が05年地裁で再審開始を勝ちとり、高裁でも勝利し、いま最高裁で確定をめざしています。

 近年、痴漢冤罪事件や志布志事件、氷見事件など、冤罪が社会的に注目を集め、裁判員制度の導入に伴い、刑事裁判に対する国民の関心がこれまでになく高まっています。
 このようなもとで今回、足利事件が、死刑・無期懲役事件では島田事件以来、22年ぶりに再審開始を確定させたことは大きな成果です。
 足利事件につづき、名張、布川両事件で再審開始決定を勝ちとり、再審の扉を大きく広げましょう。

■再審のしくみ

 再審の手続は、再審請求、再審公判の2段階に分かれています。
 まず再審請求です。
 確定(有罪)判決を出したもともとの裁判所に再審を請求します。足利事件では無期懲役を出した宇都宮地裁に、一方東電OL殺人事件の場合は、一審無罪、二審(東京高裁)が出した無期懲役が確定したので、東京高裁に請求しました。
 法律では、再審を開くための理由が7つ上げられていますが、もっとも基本的な理由は、無罪などを言い渡すべき「明らかな証拠をあらたに発見したとき」です。よく、「新規・明白な証拠」といわれるのはこの証拠です。
 請求審では、弁護団が提出した証拠の「新規性」や「明白性」の有無が審理されます。具体的には、これまで出された証拠に新証拠を加え総合評価したときに、確定判決に「合理的な疑い」が生じれば再審開始となります。
 再審開始決定が確定すると、次に再審公判が開かれます。
 再審公判は、確定判決を出したもともとの裁判所で、通常の公判手続で事実調べがなされます(再審の理念から、再審開始決定の判断をふまえ、加えて検察官の積極的な有罪立証は許されないでしょう)。検察官の求刑と弁護人の弁論を受け、裁判所が有罪・無罪などの判決を出します。但し、有罪の場合、確定判決よりも重い刑を言い渡すことはできません。

東京・沖田国賠訴訟 第1回口頭弁論行われる  

 電車内で携帯電話を使用している女性を注意したところ、痴漢にデッチ上げられて逮捕され、21日間勾留され不起訴となった沖田光男さんが、虚偽の被害申告をした女性、自白を強要した都(警察)と国(検察)を訴えていた沖田国賠訴訟で、7月2日、東京高裁で差戻し審の第1回口頭弁論が行われました。

 裁判で、女性は次のように証言しました。
沖田さんが痴漢をしてきたので、「離れてよ」と言ってひじ鉄砲をした、これに対し沖田さんが「電車の中で携帯電話を話すんじゃない」と怒鳴ったので「変なこと(痴漢)をしておいて何を言っているんですか」と反論した、再び沖田さんが「電話を話すんじゃない」と怒鳴ったので、電話を切った。

 一、二審の裁判所は、この女性の証言を一方的に信用したうえで、沖田さんが痴漢をしたと認定し、国賠請求を棄却しました。
 これに対し最高裁は昨年11月、沖田さんと女性の会話を電話越しに聞いていた第三者の男性に対する証人尋問を行わないのは審理不尽だとして、女性に対する訴えについて審理を東京高裁に差し戻しました(都と国についての訴えは不当にも棄却)。
 この最高裁判決は、「被害者」の話だけを鵜のみにした、それまでの痴漢事件の捜査と裁判のあり方に警鐘を鳴らしました。

 口頭弁論では、当時、女性と通話をしていた男性が証言に立ちました。
 男性は、「被害者」とされる女性との携帯電話での通話の途中、女性が「変な人が近づいてきた」と話し、その後つづけて「電車の中で電話しちゃいけない」という男性(沖田さん)の声を聞いた、と証言。「女性が『離れてください』と言ったのか」との質問に、「聞いていない」と答えました。
 今回の男性の証言から、沖田さんと女性の間に口論をした事実はなく、女性の供述が矛盾していることが明らかになりました。また、電話を注意したのは2度ではなく1度だけとする沖田さんの主張の正しさが裏付けられました。
 報告集会で沖田さんは、「証人が事実をありのまま述べてくれたことで、真相が少しずつ明らかになってきた」と笑顔で話しました。弁護団は、「痴漢冤罪裁判の流れを変えるために、世論を大きくしたい。支援のみなさんにも署名と宣伝を大きく広げていただき、連携して勝利判決を勝ちとりたい」と訴えました。
 次回8月27日午前11時から弁護団の弁論が行われ、結審となります。
〈要請先〉〒100―0013 千代田区霞が関1―1―4 東京高裁・大橋寛明裁判長

国公法弾圧堀越事件の第10回公判で国際法学者が証言  

 東京・国公法弾圧堀越事件の第10回公判が7月8日、東京高裁で開かれ、国際法学者の榊原秀訓・南山大学教授がイギリスにおける公務員制度と比較して、日本の国家公務員制度について証言しました。
 教授は、イギリスの公務員制度について、〔閏膽腟噌餡箸箸靴董可能な限り多くの市民が政治的生活において積極的役割を果たすことが望ましいこと、公務員制度の政治的中立性とそれに対する信頼、この´△離丱薀鵐垢鯊臉擇砲垢詢場であり、刑罰を規定した法律もないことを明らかにしました。
 1948年からの公務員の政治活動の制約についての制度化を検討するなかで、政府と公務員が協議して、政治的行為の制約が3類型つくられたことを紹介しました。第1は「自由類型」=国会議員への立候補を含め、自由に政治的活動に参加できる現業などの労働者。第2は「制約類型」=執行権を持つ幹部公務員。全国的な政治活動は禁止されているが、許可を受ければ地方の政治活動に参加できる。第3に「中間類型」=許可を受ければ全国的な政治活動と地方の政治活動に参加できる。
 この制度は、個々の公務員の市民的自由を広く認めたうえで、公務員制度自体の政治的中立性を重視して制約の範囲を考えています。一方、国公法の政治活動規制を合憲とした猿払最高裁判決では、公務員制度の政治的中立性を個々の公務員の中立性に拡大し、極度にその自由を抑え込んでおり、猿払事件における被告人(現業公務員)は、イギリスでは「自由類型」にあたり、政治活動の制約は受けないと証言しました。
 また78年には、制約を受ける公務員を減らす見直しが行われ、「制約類型」の公務員を、大臣と密接な関係にいる職員や政府を代表して説明に当たる公務員に限定し、全公務員の26%から3・1%に減らしたことと合わせ、「自由類型」、「中間類型」の公務員を含めると公務員の約半数がほとんどの形態の政治活動に参加可能である実態を指摘しました。
 最後に、本件で堀越さんが行った行為(ポスティング)は、イギリスでは制約の対象とならず、全く問題とならないと述べました。
 この間、ドイツ、フランス、イギリスの公務員制度についての学者証言のなかで、日本の公務員制度の政治活動にたいする異常な規制が明らかになりました。次回公判は9月16日です。

東電OL殺人事件の被告ゴビンダさんの妻・ラダさんが来日  

 無期懲役刑を受け、現在東京高裁に再審を求めている東京・東電OL殺人事件のゴビンダ・プラサド・マイナリさんを「支える会」は7月9日、東京高裁に対し、再審開始を求め、13人で要請しました。
 この日の要請には、ネパールから来日したゴビンダさんの妻・ラダさんも参加し、事前にネパール語で文書にしてきた要請書を切々と読み上げました。
 「12年前に夫が無実の罪で逮捕され、家族はびっくりしました。夫の父は無実が明らかになる前に亡くなりました。2人の娘は父が無実で帰ってくると信じています。日本に来たときに(足利事件の)菅家さんの話で、東京高裁が無期懲役の判決が誤りだとしたことを聞きました。夫にも無実を証明する機会を下さい」
 つづいて、国民救援会前会長の山田善二郎さんや海外在住ネパール人協会日本支部会長のヴァバン・ヴァッタさんをはじめ参加者全員が、ゴビンダさんは無実であり、再審を開始し無罪判決を出してほしいと訴えました。

奥西さんと袴田さんに定額給付金が支給  

 再審を求めている無実の死刑囚、三重・名張毒ぶどう酒事件の奥西勝さんと静岡・袴田事件の袴田巌さんに、定額給付金が支給されることがわかりました。
 奥西さんとの特別面会人・稲生昌三さんによれば、7月8日の面会の際に、「定額給付金の申請用紙が名張市から届いたので所長印をもらって提出した。もらえないと思っていました」と奥西さんが話したとのことです。
 また、袴田さんの場合、保佐人の姉・秀子さんが静岡市に申請し、送られてきた給付金を7月16日、袴田さんに差し入れました。
 国は今年3月、各自治体に対し、「(定額給付金の支給について)住民基本台帳に基づくため、受刑者の除外は難しい」との事務連絡をしています。

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