日本国憲法と世界人権宣言を羅針盤に、弾圧事件・冤罪事件・国や企業の不正に立ち向かう人々を支える人権団体

09年6月5日号

09年6月5日号  

裁判員制度スタート 「冤罪生むな」と大阪・東京で集会  

 「無実の人びとを救おう」と5月20日を中心に、5・20全国いっせい宣伝行動が、今年も全国各地でとりくまれました。この行動は、誤った裁判をやり直す再審の狭き扉を開けた最高裁の「白鳥決定」(75年)が出された日にちなみ、毎年行われているものです。ちょうど裁判員制度施行(5月21日)と重なり、市民の関心も集まりました。大阪と東京では「裁判員制度のもとで冤罪を生むな」と開かれた集会に、多くの人が参加し、冤罪犠牲者の訴えに耳を傾けました。

 「なくそうえん罪 救おう無実の人々 関西市民集会Part供廚5月16日、大阪市内で開かれ、関西2府4県から400人が参加しました。
 第1部は、7件の冤罪事件関係者が登壇し、常識の通用しない不当判決を告発しました。冤罪香芝強制わいせつ事件で被告とされた中南源太さんの母・まり子さんは、「犯行時間は家で『僕の生きる道』というテレビを見ていた。アリバイがあるのに裁判官は認めようとしない。被害者が言う犯人の身長や特徴も違うのに源太は犯人にされた」と、言葉を詰まらせました。
 第2部では、事件当事者から見た裁判員制度をトークで解説。大阪地裁所長オヤジ狩り事件の藤本敦史さんなど3人や、長生園不明金事件の西岡廣子さんが発言しました。
 藤本さんは、「公判が重ねられてから、アリバイを証明する電話の通話記録が出て、無罪判決の有力な証拠になったが、(裁判員制度のもとでは)公判前整理手続のため『後出し証拠』とされ、認められない」と、制度の問題点を指摘しました。
 西岡さんは、弁護団が何度も議論を重ねて作成した上告趣意書をたった3週間で棄却されたことを紹介しました。「最初から聞く耳を持たないのが最高裁の裁判官だった。司法に絶望した」と語り、「だからこそ裁判員には、刑事裁判の原則『疑わしきは罰せず』で裁判をやってほしい」と訴えました。
 集会の最後に、関西の冤罪関係者が力を合わせ、再び無実の罪で泣く人が出ないよう、裁判員制度への改善を要求し、運動を進めるため、「たんぽぽの会」(関西えん罪事件連絡会)の結成を提案。藤本さんの姉・浜谷恵さんが宣言文を読み上げ、満場の拍手で確認しました。
 集会終了後、さっそく街頭宣伝へ。JR天満駅前でノボリを立て、通りを行く人々に、ハンドマイクで集会の内容を伝え、無実の人を救おうとビラを配り支援を訴えました。

 裁判員制度施行を翌日に控えた5月20日、東京都内で「なくせ冤罪! 5・20大集会」が行われ、650人が参加しました。
 ステージでは、「死刑と裁判員」と題して講談師の田辺凌鶴(りょうかく)さんが講演。有罪か無罪かをめぐって悩む裁判員の姿を演じながら、制度が持つ問題点を浮き彫りにしました。
 つづいて、「冤罪はこうして作られる」と題した構成劇が行われ、警察での密室の取調べによって、嘘の自白が作られていく過程が再現されました。また、検察の証拠隠しや鑑定偽造の問題、マスコミ報道によって無実の人が犯人扱いされてしまう事実を、芝居とスライドを組み合わせて解説しました。「どんな制度でも冤罪を防ぐことはできない。冤罪を見抜く市民の目が大切だ」と締めくくり、裁判員が果たす役割を強調しました。
 フィナーレでは、冤罪事件の当事者・家族が舞台に上がり、支援への感謝と決意を述べました。
 北陵クリニック事件の守大助さんの父・勝男さんは、「刑務所での面会のとき、大助から『家に帰りたい、帰りたい』と言われ、涙ながらに面会時間の20分を過ごすこともありました。明日も面会します。また、『家に帰りたい』と言うでしょう。この悲しい現実を、みなさんの協力で早く抜け出したい」と語りました。母の祐子さんはハンカチで目頭を押さえ、会場からもすすり泣く声が漏れました。
 会場から当事者たちに暖かい拍手が送られ、冤罪の悲劇を二度と起こすまいと誓い合いました。

栃木・足利事件でDNA再鑑定不一致  

 菅家(すがや)利和さんが無実を訴え、現在、東京高裁に再審を求めている栃木・足利事件。菅家さんのDNAの型と現場に残された体液のDNAの型は一致しないとの再鑑定結果が裁判所に提出され、再審の扉が大きく開きました。一日も早い再審開始、無罪をめざし運動を強めましょう。

 1990年5月13日、栃木県足利市の渡良瀬川河川敷で4歳の女児が死体となって発見されました。この時期、足利市付近では、この事件のほかに3つの女児殺人事件が起きており、市民から警察捜査への批判が強まっていました。
 事件から1年半後の91年12月1日、警察は菅家さんを「任意同行」で連行したうえ「自白」を強要、その夜に「自白」したため、翌2日逮捕しました。菅家さんは、殺人、誘拐罪などで起訴され、無実を訴えましたが、2000年、最高裁で無期懲役が確定しました。
 有罪判決の最大の根拠となったのは、菅家さんのDNAの型と女児の下着に残された体液のDNAの型が「16―26」(MCT118法)で一致したとされる警察庁の科学警察研究所による鑑定結果でした。

 菅家さんと弁護団は、02年、宇都宮地裁に再審を申し立てました。弁護団は、「自白」の殺害方法が違うとの新鑑定などを提出。そして、DNAの鑑定結果は誤っているとして、再鑑定の実施を裁判所に強く求めました。しかし、裁判所は再鑑定を拒否、そこで弁護団は独自に専門家に依頼し、菅家さんと現場に残された体液のDNAの型が一致しないとの新鑑定を提出しました。
 昨年3月、宇都宮地裁(池本寿美子裁判長)は、再審請求を退ける不当決定を出しました。裁判所は、DNA鑑定について、みずから再鑑定を拒否しておきながら、弁護団の提出した鑑定については、鑑定で調べられたDNAが菅家さんのものかどうかあやしいとして、鑑定の内容に踏み込まず、退けました。
 菅家さんはただちに東京高裁に不服を申し立てました。弁護団は改めて裁判所に対してDNAの再鑑定を要求、これを受け裁判所は再鑑定の実施を決定し、大阪医科大学・鈴木広一教授(検察側推薦)と筑波大学・本田克也教授(弁護側推薦)に対して再鑑定を依頼しました。
 再鑑定は、菅家さんの口腔粘膜などを採取し、殺された女児の下着に残った体液とのDNAの型が調べられ、鑑定結果が4月末に裁判所に提出されました。
 鈴木教授は、遺伝子の32部位についてDNA型を調べましたが、下着から抽出されたDNA型と菅家さんの型は25部位で一致しませんでした。また、本田教授も、遺伝子の10部位についてDNA型を調べましたが、同じく7部位で一致しなかったとの鑑定結果を出しました。これらの鑑定結果から、下着に付着している体液は菅家さんのものではないことが科学的に明らかになりました。しかも驚くべきことに、本田教授が科警研と同じ方法(MCT118法)で調べたところ、菅家さんの型は「18―29」で、下着に残された体液の型は「18―24」と一致せず、科警研の鑑定自体が誤っていたこともはっきりしました。
 これまでDNA鑑定をやれば無実がわかると訴え続けてきた菅家さんは、弁護団から今回の鑑定結果を知らされ、「うれしい」と話しました。
 アメリカでは、DNA鑑定によって124人もの死刑囚の冤罪が明らかになっています。

 弁護団は5月19日、2つの鑑定によって菅家さんの無実が明らかになったとして、東京高検に対し、刑の執行を停止し、菅家さんをすぐに釈放するよう申し立てました。
 今後、裁判所での審理は、今回の鑑定結果をうけて弁護団、検察双方が意見書を提出し、その後審理を行い、裁判所が再審を開始するかどうかを判断することになります。

 5月16日、17日、全国現地調査が行われ、13都道県から弁護団、支援者など約150人が参加、うち約30人がマスコミ関係者で社会的な関心の高さがうかがえました。
 16日は、足利市民プラザで事前学習を行いました。開会のあいさつに立った弁護団の渋川孝夫弁護士は、「やっとここまで来たかという思い」だと述べ、「DNA型鑑定で不一致の結果が出ましたが、慢心せず頑張りたい」と述べました。つづいて、佐藤博史弁護士から、「自白」の問題点やDNA鑑定などについて事件の説明がされました。
 その後参加者はバスに分乗し、女児が失踪した現場であるパチンコ店や、菅家さんが「自白」で女児を殺害したと述べた渡良瀬川運動公園をはじめ関連場所を回りました。「自白」で殺害をしたとされる時間に、夜間検証を行いました。参加者は、パチンコ店から歩いて、渡良瀬川運動公園を通り、死体を遺棄したとされる河川敷に入って検証しましたが、暗闇のなかで葦に囲まれた河川敷で「自白」通りの行為を行うことがほとんど不可能であることを確認しました。
 翌17日も関連する場所を回り、「自白」の不自然さを確認。その後、足利市民プラザで弁護団への質問や感想を出し合いました。
 最後に、市民に向けた弁護団のアピールを満場の拍手で確認し、一日も早く再審を開始させ、菅家さんの無罪を勝ちとることを誓い合いました。

〈再審開始要請先〉〒100―8933 千代田区霞が関1―1―4 東京高裁・矢村宏裁判長

布川事件が読売新聞に意見広告  

 茨城・布川事件の守る会は、最高裁での再審開始をめざし、世論をさらに広げようと、裁判員制度実施の前々日5月19日、読売新聞に意見広告を掲載しました(写真)。1都8県(関東地方、静岡、山梨。約600万部)向けで、紙面の3分の1の大きさです。
 「裁判のやり直し 一日も早く無罪判決を!」との見出しをかかげ、昨年の国連の勧告を紹介し、証拠開示と取調べの可視化こそ冤罪を防ぐ保障であることや、布川事件で検察が証拠を隠し、自白を強要した事実を紹介しています。
賛同金へご協力を
 これまで多くの方がたから賛同金への協力が寄せられていますが、守る会ではひきつづき協力をお願いしています。
〈賛同金〉個人1口千円、団体1口5千円。郵便振替‥口座名「布川事件桜井杉山君を守る会」/口座番号「00130―2―2896」/通信欄に「意見広告賛同金」とお書きください。問合せは、守る会TEL03(5842)6464まで。

NTTリストラ裁判(東京)大企業の横暴を容認  

 NTTのリストラとたたかう8人の労働者(東京原告団)に対し、最高裁第1小法廷(湧井紀夫裁判長)は5月8日、労働者の上告を受理せず、棄却する不当な決定を行いました。
 2002年、NTTが11万人のリストラを強行し、50歳以上の社員に対し、賃金が3割下がる子会社への転籍を強要、これを拒否した労働者に異職種の職場や遠隔地への配転を命じました。これに対し、配転は不当だとして全国で裁判が起こされました。
 これまでの裁判のなかで、NTTが巨額な利益を上げ、過酷なリストラを行わなければならない必要性がなかったことが明らかになったにもかかわらず、最高裁は、労働者を救済せず、大企業の横暴を容認しました。
 原告団や弁護団らは、今回の決定に対し、「私たちは、この不当決定に屈することなく、NTTリストラの柱である『50歳定年制』の廃止、不当配転による人権侵害阻止、他のリストラ裁判勝利のために引き続き全力をあげる」との抗議声明を出しました。
 NTTリストラ裁判では、札幌、静岡、大阪、松山の裁判がつづいています。大阪高裁では、配転は業務上の必要性はなく違法と断罪する判決も勝ちとっています。ひきつづき支援をお願いします。
〈抗議先〉〒102―8651 千代田区隼町4―2 最高裁第1小法廷・湧井紀夫裁判長

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