日本国憲法と世界人権宣言を羅針盤に、弾圧事件・冤罪事件・国や企業の不正に立ち向かう人々を支える人権団体

09年5月25日号

09年5月25日号  

栃木・足利事件でDNA型不一致の鑑定結果  

 菅家利和さんが無実を訴え、東京高裁に裁判のやり直し(再審)を求めている栃木・足利事件で、現場に残された体液のDNA型と菅家さんの型が一致しないとの鑑定結果が、裁判所が依頼していた2人の鑑定医から提出されました。今後、この鑑定結果をふまえた双方の意見書をもとに、裁判所が再審開始か否かを検討します。
 事件は、90年に栃木県足利市で女児が殺害され、その犯人とされた菅家さんのDNA型が、現場に残された体液のDNA型と一致するとの鑑定結果を最大の根拠に無期懲役が確定したものです。菅家さんは再審を求めましたが、宇都宮地裁は昨年、弁護人の求めた鑑定を拒否したうえ、弁護人の提出したDNA鑑定も採用せず、再審請求を棄却しました。
 今回の鑑定結果は、菅家さんの無実を示すものであり、国民救援会は一日も早い再審を裁判所に強く求めていきます。

数字で見る人権◆“鷙  

 いま、少年犯罪(非行)の増加・凶悪化が言われています。メディアを騒がす少年の犯罪には決まって「変容する少年に刑事罰を」との論議がついてまわります。果たして少年は凶悪化したのか。数字で見る人権・第2回は「非行」を追っていきます。

 罪を犯した20歳未満の少年を保護するため、少年法という法律があります。
 近年、数度にわたって少年法が「改正」されました。07年「改正」では、14歳未満の少年に対する警察の調査権限を認めることや、少年院に送致できる年齢の引き下げ等が行われました。当時の法務大臣はその理由として「(少年の)強盗などの凶悪犯の検挙人員が高水準で推移している上、いわゆる触法少年(14歳未満で刑罰法令に触れた少年)による凶悪重大事件も発生」しているとし、低い年齢の少年の非行を強調しました。
 法務省作成の『平成17年版犯罪白書』も「最近の少年非行は……国民の不安を増大させる原因の一つ」と少年非行の凶悪化が治安に対する不安の一因としています。
 しかし、本当にそうなのでしょうか。データを見ながら検証します。

 07年における少年刑法犯(10歳以上20歳未満)の検挙人員はおおよそ15万人、人口比では1・2%となっています(グラフ 法F睫は、窃盗と横領(遺失物等横領、すなわち放置された自転車の窃盗やネコババなどが99%以上)で8割を超え、殺人67件、強盗814件となっています。

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 少年法「改正」の際に名前の挙がった強盗と殺人についての検挙人員の推移を見ると、殺人については増減しながらも一貫して減り続け、40年前の5分の1です(グラフ◆法

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 強盗については96年以降にやや増加が見られます。この背景には、97年に当時の警察庁長官が「悪質な非行には厳正に対処、補導を含む強い姿勢で挑む」と発言したことにより、それまで窃盗および傷害として処理された事件(万引きが店員を突き飛ばして逃げるなど)が、強盗として扱われるようになったことも指摘されています。
 14歳未満の少年だけをとれば強盗については明らかな増加は見られません。殺人に至っては57年よりほとんど一桁を維持し続けており、警察の調査権限を認めることが「凶悪重大事件」や「国民の不安」の解決に真剣に答えているとは言えません。

 この「改正」に対して日弁連や自由法曹団など、現場の弁護士からは批判の声が挙がっています。警察の調査権限を認めることについては、「非行の背景にある複雑な事情を調査できるのは警察ではない」と指摘し、「かえって警察が少年や関係者から、自白の強要等を行ったことによって真相解明が阻害される例も多い」と報告されています。
 国民救援会が支援し、無罪が確定した大阪・オヤジ狩り事件でも、警察の過酷な取調べで少年がウソの「自白」をさせられたことが明らかとなっています。
 また、少年院送致の年齢引き下げに対しても「幼い少年の更正施設としては少年院は不適」という意見もあり、子どもの発達と状況に応じた適切な教育・福祉施設の拡充を求めています。
 国連子どもの権利委員会は04年、日本政府に対し、00年の少年法「改正」で刑事訴追の最低年齢が16歳から14歳に引き下げられたことに懸念を表明しました。あわせて、「問題行動を伴う子どもを犯罪者として取り扱わないよう確保すること」などの勧告を行っています。07年に「改正」された少年法には、この懸念・勧告や子どもの権利条約などを検討した形跡も認められません。

 ではなぜ、少年の犯罪が注目を集めているのでしょうか。
 06年に全国を対象に、2年前と比べ自分が住んでいる地域で犯罪が増えていると思うか、日本全体で犯罪が増えていると思うかをたずねたところ、居住地域で増えていると答えた人は27・0%(とても増えた3・8%、やや増えた23・2%)にもかかわらず、日本全体で増えていると答えた人は90・6%(とても増えた49・8%、やや増えた40・8%)にのぼったという犯罪学、統計学等を専門とする浜井教授の調査結果があります(浜井浩一・芹沢一也『犯罪不安社会』光文社新書)。これは回答者の多くが、自分の周りでは治安は悪化していないが、日本全体では治安が悪化していると感じていることを表すものです。
 浜井教授は、その理由を探るため、もう一つ興味深い調査を行っています。主に朝日新聞のデータベースで「凶悪」および「殺人」を検索し、85年と00年の記事件数と実際の殺人事件の数を調べたところ、事件数は減っているにもかかわらず、記事数は5倍になっています。こういった実態と報道のズレが住民の「治安が悪化している」という認識に影響しているのではないかと指摘しています。
 実態に基づかない「治安悪化」対策では、短絡的で安直な厳罰化や警察権限の拡充、警察官の増員といった策しかとれません。少年の更生や犯罪被害の根絶を本当に願うならば、現場の実態と調査に基づいた効果のある対策をとるべきではないでしょうか。

裁判員制度での冤罪防止を求め全国で裁判所請願  

 5月21日から施行される裁判員制度を控え、憲法と国際人権規約に基づく適正な制度の運用を求めて、全国の裁判所へ請願が行われています。5月15日現在、32都道府県38裁判所に対して行われました。

宮城
 自由法曹団支部、県労連、国民救援会県本部の代表3人で、5月12日に仙台地裁に請願しました。
 事前にマスコミ各社に案内を流し、裁判所にも伝えていたにもかかわらず、当日は取材を認めないとの対応だったので、厳重に抗議。記者も、「取材を認めない理由は何か。文書で回答を」と抗議し、ようやく取材を認めました。裁判所は、部屋も用意していませんでしたが、「立ち話で文書を受け取るつもりか」と抗議し、部屋も用意させました。
 裁判所側は総務課長ら2人が対応。こちらの説明をメモに取り、「必ず検討します」と回答。検討の結果を聞くために、もう一度訪ねることとしました。

富山
 4月30日、県本部および支部から4人が富山地裁に請願、その後に同地裁高岡支部にも請願しました。総務課長らが対応。請願書に対して、「裁判員裁判の参考にさせていただきたい」と回答。裁判官へ届けるよう求めると、「裁判官に見せてもいい」と回答しました。

静岡
 4月27日、県本部と静岡支部、静岡県評で静岡地裁に請願を行いました。
 裁判所は、総務課長など2人が応対。請願が行われたことについては、全ての裁判官にも文章で伝え徹底するよう要請しました。
 静岡県評からは、労働組合の立場から裁判員制度にとりくんでいる内容や、裁判員制度が実施されたら、冤罪を生まない裁判にしなければならないと請願。静岡支部からは、これからは国民が裁判に関心を持つようになる、裁判員が参加する裁判では、冤罪を生まないように審議を尽くすことなどを要請しました。
 請願は約50分間行い、同地裁浜松支部と沼津支部へも同時に請願しました。

広島
 県労連、自由法曹団、平和と憲法を守る共同センター、国民救援会県本部の4団体11人で5月12日、広島地裁に請願をしました。
 裁判所側は、総務課長以下2人で対応。今回の申し入れは、裁判官には伝えると言明しました。
 なお、この請願行動のとりくみを、テレビ局5社が放映し、新聞2社が報道しました。

東京・国公法弾圧堀越事件 第9回公判  

 5月13日、国公法弾圧堀越事件の控訴審第9回公判が東京高裁で行われ、フランス行政法の研究者で専修大学大学院の晴山一穂教授が証言しました。
 晴山教授は、フランスではフランス革命の人権宣言(1789年)によって、市民と同じように一般公務員も「意見の自由」が保障されており、公務員の政治活動の自由は権利とされ、刑事罰はないと証言しました。そして、公務員が職務中には「職務を公平に行うという中立義務」、職務外では「自分の意見を表明する際には、公権力や上司に粗野・無作法の仕方をとってはならないという慎重義務」が課されているだけであると述べました。また、それぞれの国で違いがあるが、民主主義国では公務員の政治活動や言論の自由を認めることは普遍的なことであり、公務の中立性は必要であるが、それは公務員に政治的中立性を求めることではないと最高裁猿払判決を批判しました。
 そして、堀越明男さんのビラ配布は、一市民として正当な行為であり、罰せられるものではなく、国家公務員の政治活動を禁止している日本の国家公務員法・人事院規則は憲法違反であると明確に証言しました。
 公判では、左右の陪席裁判官の交代に伴い、鈴木亜英弁護士が更新弁論を行い、昨年10月の国際自由権規約委員会が、堀越事件をはじめ世田谷国公法事件や葛飾ビラ配布弾圧事件などについて、「表現の自由に対するあらゆる不合理な制限措置を撤廃しなければならない」と勧告したことを指摘し、堀越事件が国際人権規約にも違反していると陳述しました。
 その後、弁護団がこの規約委員会の勧告などを証拠として申請したことに対し、検察は不同意とし、弁護団は「それこそが国際人権規約無視だ」と厳しく批判し、裁判所が間に立ち、検討することになりました。

静岡・えん罪御殿場少年事件で報告集会  

 4月13日に最高裁で上告棄却の不当決定が出された静岡・えん罪御殿場少年事件で、報告集会が4月18日に御殿場市で開かれ、110人が参加し、不当決定への怒りの声を上げ、少年たちを最後まで支援しようと誓い合いました。
 事件は、女子高校生のウソの「強姦未遂」の訴えで少年たち10人が逮捕されたものです。一審で女子高校生が「犯行時間帯」に他の青年とデートしていたことが明らかになりましたが、「犯行日」を1週間変更し、裁判所もそれを信用し、一審は懲役2年、二審も懲役1年6月の不当判決を言い渡し、最高裁に上告していました。
 この日の集会では、弁護団の鈴木勝利弁護士が、「最高裁の決定は弁護団の主張に一切答えることなく、説明責任を果たしていない」と厳しく批判しました。国民救援会中央本部の芝崎孝夫さんは、「少年たちの無実に確信をもって、最高裁の不当決定に抗議し、少年たちや家族を激励しよう」と報告しました。
 少年たちと家族からは、「最高裁の決定は悔しい」「自分たちは無実であると胸を張って、不当な服役にも立ち向かっていきたい」と決意とお礼を込めたあいさつがあり、会場から激励の大きな拍手がおくられました。
 集会では、「再審をやれないのか」という質問も出て、その可能性の検討も必要との意見もあり、守る会は少年たちの服役が終了しても、彼らの無実を晴らし、真に復権するまで、激励・支援を続けることを確認しました。
 少年たちは収監のため、5月26日に、検察庁に出頭するよう命令が出ています。

岡山・山陽本線痴漢冤罪事件 岡山地裁が不当判決  

 岡山地裁は5月13日、山陽本線痴漢冤罪事件で無実を訴えている山本真也さんに対し、不当にも懲役6月・執行猶予3年の有罪判決を出しました。山本さんはただちに広島高裁岡山支部に控訴しました。
 この事件は、2006年11月に、山本さんが満員電車内で痴漢の犯人として逮捕され、その後過去の事件(同年9月)までも山本さんの犯行であるとして起訴されたものです。山本さんは一貫して否認し、公判においても被害女性との身長差や満員電車内の再現DVDからも犯行が不可能なことが明らかになりました。
 判決では、被害女性の供述を一方的に信頼し、最大の争点となった身長差による犯行態様の極端な不自然・不合理性については、脚を曲げたり広げたり、肩を下げるなどの姿勢を「組み合わせれば可能」とし、証拠にもとづかず、かつ証拠に反する推論で弁護人の主張を退けました。
 痴漢事件では、最高裁がこの4月、痴漢冤罪事件の無罪判決のなかで、被害者供述だけに頼り判断することに警鐘を鳴らし、慎重審理を求めましたが、その教訓は活かされていません。
 報告集会で山本さんは、「判決に屈することなく、真実を明らかにし、無罪を勝ちとるまでたたかう」と力強く決意を述べました。
 国民救援会では岡山県本部を中心にとりくみをすすめ、短期間で全国から団体署名309団体や個人署名6844筆が寄せられ、裁判長への私信送付のとりくみを行ってきました。
 ひきつづき、山本さんの無罪をめざしてとりくみを強めます。(県本部)
【抗議先】〒700―0807 岡山市北区南方1―8―42 岡山地裁・磯貝祐一裁判長
【激励先】〒700―0054 岡山市北区下伊福西町1―53 岡山民主会館内 国民救援会岡山県本部

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