日本国憲法と世界人権宣言を羅針盤に、弾圧事件・冤罪事件・国や企業の不正に立ち向かう人々を支える人権団体

09年4月25日号

09年4月25日号  

裁判員制度が国会で集中審議  

 5月21日の裁判員制度の実施を控えて、「新たに冤罪を生むのでは」との不安と批判が国民の間に広がっています。このようなもとで、裁判員制度について、4月3日と9日の2日間にわたり国会において集中審議が行われました。当初、自民党は委員会の開催に消極的でしたが、国民の世論と国民救援会などの運動によって開催となったものです。

 集中審議は、衆議院法務委員会が4月3日に、参議院法務委員会では参考人も招いて9日に行われました。
 審議の特徴は、
〕震酖泙鯡笋錣此国民救援会が指摘する問題点や改善要求が取り上げられたこと
∪府や最高裁が、冤罪を起こさないという立場ではなく、いかに「迅速」に裁判をすすめるかという立場での答弁に終始したことです。
 参議院での審議を中心に見ていきます。

 委員の質問でもっとも多かったのは、裁判員に課された守秘義務についてでした。
 裁判員法では、裁判員は評議の中身などについて、一生、他の人に漏らすことが禁じられ、それに違反すると罰則が加えられます。国民救援会は、守秘義務をなくすよう求めています。
 参考人からは次のような指摘がされました。
 四宮啓弁護士=「アメリカでは、裁判終了後は守秘義務がなく、陪審員も(プライバシーを侵害しないよう)判断し話している。裁判員の経験を社会が共有し、評議の中味を検証するために裁判員経験者の意見を率直に聞くことが必要」
 竹田昌弘共同通信編集委員=「評議がブラックボックスになってはいけない。裁判官には(守秘義務違反での)罰則がない。裁判官が優れているとの上から目線ではないか」
 また、民主、公明、共産、社民の委員からは、守秘義務規定の削除や適用範囲の限定を求める意見が相次ぎ、「裁判員制度を検証する場合には守秘義務をはずすべき」との意見が共通して出されました。
 これに対し、森英介法相は、プライバシー保護や自由な評議の保障などを理由に、守秘義務をはずすことを拒否しました。

 検察官の開示した証拠を、審理目的以外に使用することを禁じている点も取り上げられました。国民救援会は、この「目的外」使用禁止規定の削除を求めています。
 日本共産党の仁比聡平委員は、「検察の証拠を批判的に分析することで冤罪からの救済が図られている」と指摘、これを受けて竹田氏は自らの取材経験を語り、「島田事件では実際の調書を読むことで事件がよくわかった。なくしてほしい条文だ」とし、「冤罪を指摘する活動が立件対象にならないようにすべき」と意見を述べました。
 また、社民党の近藤正道委員は、「松川(事件)が代表的な裁判批判だ。(裁判批判のために)この規定を削除するか、重大かつ悪質なものへ限定すべき」と質問。これに対し法務省の大野恒太郎刑事局長は、「(目的外使用により)証拠隠滅やプライバシー侵害がある。証拠の概要は禁止されていないが、証拠の写しそのままは問題だ」と述べました。
 審議ではこのほかに、四宮氏が、検察が被告人に有利な証拠を隠すなどの検察官手持ち証拠の開示問題について「アメリカでは、検察には被告人にプラスの証拠を開示する義務がある」と指摘。竹田氏からは、「死刑判決の場合は全員一致を要件とするよう検討を」、「裁判員への裁判官の説示(説明)のあり方が大事。説示では、有罪・無罪を判断するのではなく、有罪か有罪でないかを判断することを説明すること」などの意見が述べられました。
 一方、衆議院の審議においても、守秘義務の解除や検察官証拠リストの開示などを求める意見が出され、加えて警察・検察での取調べの全面可視化(録音・録画)を求める意見も出されました。

 今回の審議を通じ、いま国民救援会がとりくんでいる学習活動や市民への宣伝活動、そして冤罪を生まないための5項目の緊急改善要求運動、裁判所に対する適正運用を求める10項目の請願活動をすすめることの重要性が改めて浮き彫りになりました。

数字で見る人権 〇犒  

 昨年、死刑の執行により15人が命を落としました。
 06年以降、執行数が増えつづけ、2〜3カ月に1回のペースで行われるようになり、今年は4人が執行されました(4月17日現在)。07年からは、執行の直後に法務大臣が会見を開き、処刑された人の名前と犯罪事実を発表するようになりました。
 各国の死刑執行の状況を見てみましょう。アムネスティ・インターナショナルの調査によると、死刑執行を続けている国・地域は日本のほかに中国、イラン、アメリカなど59。08年に執行数が多かった国を並べると、日本は10番目です。
 いっぽう、死刑制度を法律によって廃止した国・地域は92。さらに10年以上執行を停止している事実上の廃止国を含めると138になります。死刑の廃止は世界の趨勢(すうせい)です。
 07年と08年には、国連総会で死刑執行の一時停止を求める決議が採択されました。07年に国連拷問禁止委員会から、08年に国連自由権規約委員会から日本政府に対して死刑執行を停止するよう勧告が出されています。ところが日本政府は「国内事情」などを理由に、これら決議・勧告を無視しています。

 死刑執行と同様に、死刑判決の確定数も近年増加し、厳罰化の傾向が強くなっています。
 このところの判決の特徴としては、一審の無期懲役判決を二審で破棄して死刑にしている点(詐欺グループ4人リンチ死事件、埼玉本庄夫婦強盗殺人事件)や、被害者が1人の場合(奈良小1女児殺害事件、長崎市長射殺事件、闇サイト殺人事件)でも死刑を適用している点です。
 裁判所はこれまで、死刑を適用する際に、殺害された被害者の数や殺害方法の執拗性、残虐性など9項目にわたる基準を定めた「永山基準」(永山事件最高裁判決・83年)を参考にしていましたが、現在はこの基準にとらわれない量刑判断を行っています。
 一部マスコミ報道も「闇サイト殺人 死刑判決はやむを得ぬ」(東京新聞・09年3月19日)、「闇サイト殺人 常識に沿った死刑判断だ」(産経新聞・09年3月19日)などと厳罰傾向を容認する主張をしています。

 政府が死刑制度を維持する背景には、81・4%の人が死刑容認と答えた04年の内閣府の世論調査(廃止は6%)があります。
 一見、死刑制度存続を望む意見が圧倒的多数のように見えますが、この調査にはカラクリがあります。「どんな場合でも死刑は廃止すべきである」「場合によっては死刑もやむを得ない」「わからない・一概に言えない」の選択肢を提示し、「場合によっては」という曖昧な含みを持たせて死刑容認に回答を誘導しているのです。さらに、この文面からは誤った裁判で無実の人が処刑される危険があることを読みとることはできません。80年代に4人の死刑囚が再審無罪によって命を取り戻した事実をふまえ、誤判の可能性を明記すべきです。
 アムネスティが07年に行った死刑制度についての街頭アンケートによれば、「(死刑制度は)あった方が良い」37・5%、「ない方が良い」22・5%、「終身刑があればなくても良い」40・0%となっています。設問の作り方によって結果が大きく変わることが分かります。恣意的な誘導を排し、国民の真意を探る努力をすべきです。
 なお国連自由権規約委員会の総括所見では、日本政府は世論調査の結果如何にかかわらず死刑廃止を検討すべきで、廃止が望ましいことを国民に呼びかけるべきだと勧告しています。

 5月に始まる裁判員制度においては、思想信条を理由とする裁判員の辞退を認めていません。死刑反対の人であっても、死刑判決に加担させられるのです。また、評決は全員一致ではなく、多数決で行われます。6人の裁判員のうち、4人が死刑判決に反対しても、ほかの2人の裁判員と、3人の職業裁判官の賛成で死刑の評決をすることができます。
 新聞報道によると、これまでに500回を超える模擬裁判が各地の地裁で行われてきました。しかし、死刑が求刑された案件、死刑判決が出された案件は1件もありません。最高裁は記者会見で、「重い刑の判断をする場合、裁判員の心理的負担などを現実的に検証するのは難しく、模擬裁判の題材としては適当ではない」と説明しています。最高裁は模擬裁判によって死刑判決をめぐる問題が浮き彫りになるのを恐れたのでしょう。もういちど冷静な目で死刑制度の存廃を考え議論する必要があります。
 国民救援会は、当面の死刑執行停止と、死刑廃止条約を批准して死刑制度を廃止することを求めています。

 このシリーズでは、数字で見たいテーマを募集しています。編集部までお寄せください。

静岡・えん罪御殿場少年事件 最高裁が不当決定  

 静岡・えん罪御殿場少年事件に対し、最高裁第1小法廷(櫻井龍子裁判長)は4月13日付で、元少年4人の訴えを退け、上告棄却の不当決定を行いました。
 2001年、御殿場市の女子高校生が、男性との交際を親に隠すため、架空の強姦未遂事件をデッチ上げ、その「犯人」として、当時15〜17歳だった少年10人が逮捕されました。少年たちは、警察官による脅しや強制、誘導等でウソの「自白」をさせられ、そのうち少年審判で5人が「自白」を撤回し、そのうち4人が刑事裁判にかけられました。
 一審では、「犯行」時間帯に女子高校生が「犯行現場」とは別の場所で男性と会っていたことが明らかとなりましたが、女子高校生が「事件は1週間前」と供述を変え、裁判は続行。結局、裁判所は、女子高校生の供述を鵜呑みにする一方で、「犯行日についての(少年らの)自白は捜査官の誤導によるが、それ以外の自白は信用できる」として全員を懲役2年とする不当判決を言い渡しました。二審も少年らを「犯人」と決め付け、懲役1年6月の不当判決を言い渡しました。
 なお、4人とともに自白を覆した元少年についても同じ4月13日付で、最高裁第1小法廷(湧井紀夫裁判長)は元少年の訴えを退け、懲役2年6月・執行猶予4年が確定しました。
 地元では、4月18日に抗議集会を開き、最高裁への抗議と元少年らと家族の激励を行う予定です。
〈抗議先〉〒102―8651 千代田区隼町4―2 最高裁第1小法廷・櫻井龍子裁判長
〈激励先〉〒412―0004 御殿場市北久原 勝又育夫方 無実の少年たちを守る会

東京・東電OL殺人事件 ゴビンダさん支援集会開く  

 東電OL殺人事件で、無期懲役とされ、現在、東京高裁に再審を求めているネパール人のゴビンダ・プラサド・マイナリさんを支援する集会が4月4日、都内で開かれ、65人が参加しました。
 集会では、「支える会」作成の「10年目の現場検証」を上映、弁護団の鈴木郁子弁護士から「再審の課題と争点」について報告を受けた後、監獄人権センターの中元義明氏が「無期刑と受刑者処遇」について講演しました。講演では、刑事被収容者処遇法の制定でいったん緩和された面会条件が、昨年5月の新通達で再び絞り込まれていること(ゴビンダさんの場合も、何度も面会している支援者が最近不許可になる事態が起きています)、無期懲役確定者が2000年代に入り急増し、平均服役期間が31年を超えていることが報告されました。また、在日ネパール人会副会長から激励のあいさつがあり、獄中のゴビンダさんからの、「横浜刑務所で6回目の桜をみています。皆さん、署名をたくさん集めてください」とのメッセージが読み上げられました。
 集会は、ゴビンダさんを励まし、再審開始とゴビンダさんの帰国を実現しようと確認し合いました。

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