名張要請
えん罪名張毒ぶどう酒事件
事件発生から５１年に及ぶ奥西勝さんの真実の叫びが、またもや非情にも拒否されました。私たち支援者・国民の１０万名に及ぶ思いが無惨にも踏みにじられました。
本日、名古屋高等裁判所刑事第２部（下山保男裁判長）は、本事件について再審の扉を開けることを頑なに拒否しました。この決定は、「疑わしきは被告人（再審請求人）の利益に」という「刑事裁判の鉄則」を逸脱し、司法の真実に対する謙虚さや公正かつ厳正になされるべきはずの「国民の裁判を受ける権利」を踏みにじりました。私たちは、奥西さんの無実を確信し、永年にわたり「生きて返せ」と運動を展開してきた者として、満身の怒りに震えながら、今回の不当決定を厳しく糾弾し、断固抗議するものです。
そもそも、本事件は、原審一審において完全無罪を言い渡されています。そして、本件再審請求における原一審においては、確定死刑判決の、犯行に使われたぶどう酒の瓶に装着されていたと認定された四つ足替栓の足の極端な折れ曲がりは人間の歯では到底成傷不可能であることや、ぶどう酒に混入されていた毒物は判決が認定した農薬ニッカリンＴとは異なること、さらにはぶどう酒瓶は封緘紙を破らずに開栓可能であり、犯行機会の時間帯に関する認定も崩壊したこと、こうして自白を支える間接証拠が完全に崩壊し、自白は強要された虚偽のものであったことなどが明確に確認され、再審開始決定と死刑の執行停止が宣言されたのです。
本件差戻異議審においては、検察の不当な訴訟活動により、これらの争点が絞られて審理された嫌いはあるものの、検察が最後まで抵抗した毒物問題において、その主張と立証は完全に瓦解していました。それに眼を塞ぎ、重大な誤りを繰返した本決定は、もはや裁判と呼べる代物とは言えません。
奥西勝さんは、すでに８６歳、今回の不当決定によって死刑執行の停止も取り消され、ふたたび死刑の恐怖とたたかいながら最高裁に特別抗告を行い、たたかうことを余儀なくされました。
奥西勝さんは、半年前から食事も細くなり、最近では肺炎を発症し病舎に移され、朝晩点滴を打っての生活が続いています。高齢の奥西さんは、いつ病気が急変し生命の危機が直面するかもわかりません。
私たちは、人道的立場から検察の職権で刑の執行停止と直ちに奥西さんを釈放することを強く要請します。
２０１２年５月２５日
最高検察庁
笠間 治雄・検事総長
会 長 鈴 木 亜 英
名張事件第10次再審（最高裁）署名用紙
