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東京高裁の再審開始決定について

【声 明】

足利事件東京高裁の再審開始決定について  

2009年6月23日
日本国民救援会
会 長 鈴 木 亜 英

 本日、東京高裁(矢村宏裁判長)は、足利事件即時抗告審において、菅家利和さんの再審請求を認め、原審・宇都宮地裁(池本寿美子裁判長)が棄却した不当決定を取り消して、再審開始を決定した。菅家さんは、無実でありながら逮捕以来17年半という長期におよぶ拘禁を強いられてきた冤罪犠牲者である。また、東京高検自体が再審開始を容認する意見書を提出したことからも、再審開始決定は当然である。

 しかし、この決定には看過できない重大な問題がある。足利事件は、1990年栃木県足利市で発生した、当時4歳の女児に対する誘拐・殺人事件について、菅家さんが犯人とされて逮捕・起訴され、求刑どおりの無期懲役判決が確定し、服役させられたものである。この確定判決の事実認定は、女児の死因(法医学鑑定)、「いたずら行為」(唾液・精液付着の鑑定)、死体遺棄の場所(実況見分調書)を除いて、もっぱら自白に依拠していた。ところが、その自白とは、不自然・不合理な変遷をくり返し、また、客観的事実と決定的に矛盾するものであった。確定判決は、このような自白の信用性を支える「ひとつの重要な間接事実」として、当時精度も低く、技術も確立していないDNA型鑑定を盲信した結果、誤判に陥ったものである。

 したがって、再審の審理・判断にあたっては、自白の信用性を支える「ひとつの重要な間接事実」とされたDNA型鑑定には証明力がまったくなかったという事実を確認することにとどまらず、なぜこうした誤りが起こったのかを解明し、さらに、自白の信用性を認めた確定判決における事実認定の全般にわたって、その正当性を厳しく吟味する必要があった。そのようにしてこそ、菅家さんの長年の困苦にこたえ、名誉回復をはかることができるからであり、また、真相解明・無辜の不処罰という刑事裁判の根本目的に沿い、再発防止のための警鐘となるからである。国民の司法に対する信頼はこのようにして初めて回復し得るものである。

 ところが東京高裁は、これにいっさい応えることなく、DNA型不一致の再鑑定結果のみで再審開始を決定した。これでは、「無罪にするのだから文句をいうな」というに等しく、自らも身をおく司法機関の犯した誤りを免罪し、事件の真相解明に蓋をするものというほかない。高裁決定は、今日なおも続発している冤罪・誤判の構造に対してまったく無反省であることを白日の下にさらした。すなわち、捜査過程における代用監獄での見込みによる自白強要と、裁判過程における刑事裁判の鉄則を捨て去った有罪志向・自白偏重・科学の軽視は厳しく咎められなければならない。

 国民救援会は、きたるべき再審審理において、誤判の徹底した真相解明を要求する。

 また、いまなお各地で無実の叫びをあげて助けを求めている冤罪犠牲者の救援に向けて、全国で支援を強化する。同時に、今後の冤罪・誤判を防ぐために、取調べ全過程の可視化をはじめ、その発生システムを支える制度の抜本的改善を求めるとともに、裁判員になり得るすべての国民に対して、「無辜の不処罰」、「推定無罪の原則」、「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の目的・原則を普及する啓発活動を、さらに積極的に展開する決意をあらためて表明するものである。

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